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休業補償給付はいくら出るのか──労働者災害補償保険法14条の「百分の六十」を条文で確かめた

休業補償給付はいくら出るのか──労働者災害補償保険法14条の「百分の六十」を条文で確かめた
休業補償給付はいくら出るのか──労働者災害補償保険法14条の「百分の六十」を条文で確かめた

仕事中のけがや業務上の病気で働けなくなったとき、休業補償給付がいくら出るのかは、生活に直結する問題です。

給料の何割になるのか、休んだ初日から出るのか、会社は何を払うのか。

この記事は、労働者災害補償保険法第十四条を中心とする条文の言葉だけで、その答えを1つずつ確かめます。

条文の確認日は2026年10月17日です。

先に結論を書くと、額は給付基礎日額の百分の六十で、支給は賃金を受けない日の第四日目からになります。

ここから先は、この一文に出てくる言葉を条文の並びどおりに追っていく。

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休業補償給付はいくら出るのか=14条1項の「百分の六十」

休業補償給付の額と支給の始まりを決めているのは、第十四条第一項の前半です。

休業補償給付は、労働者が業務上の負傷又は疾病による療養のため労働することができないために賃金を受けない日の第四日目から支給するものとし、その額は、一日につき給付基礎日額の百分の六十に相当する額とする。

(労働者災害補償保険法 第十四条第一項)

額の式は「一日につき給付基礎日額の百分の六十」で、一日単位で計算する形になっています。

ここで掛け算の元になる「給付基礎日額」は、第八条が別に決めている言葉だ。

つまり、休業補償給付の額は「給付基礎日額をどう出すか」と「百分の六十」の2つで決まります。

第十四条第一項の言葉その言葉が決めていること
業務上の負傷又は疾病による療養のため原因が業務上であり、療養中であること
労働することができないために療養のために働けないこと
賃金を受けない日その日の賃金を受けていないこと
第四日目から支給する支給は四日目からで、最初の三日間は入らないこと
一日につき給付基礎日額の百分の六十一日あたりの額の式

条文が置いている数字は、この前半では「第四日目」と「百分の六十」の2つだけです。

労災保険で治療そのものがどう出るかは、労災保険の療養補償給付はどこまで出るのかを条文で確かめた記事で確かめています。↓

休業補償給付が出る3つの条件=療養のため・労働できない・賃金を受けない

第十四条第一項は、休業補償給付が出る日を3つの言葉の重なりで切っています。

労働者が業務上の負傷又は疾病による療養のため労働することができないために賃金を受けない日

(労働者災害補償保険法 第十四条第一項)

条文がつないでいるのは療養のため・労働することができない・賃金を受けないの3つです。

1つでも欠けると、その日は第十四条第一項の「日」に当たらない並びになる。

たとえば療養中でも、賃金を受けている日は「賃金を受けない日」という言葉から外れます。

休業補償給付が業務災害の給付であることは、第十二条の八第一項の列挙が示しています。

第七条第一項第一号の業務災害に関する保険給付は、次に掲げる保険給付とする。

(労働者災害補償保険法 第十二条の八第一項)

休業補償給付

(労働者災害補償保険法 第十二条の八第一項第二号)

第二号に、休業補償給付の名前が置かれています。

同じ条の第二項が、給付の出発点を「請求」に置いている点も押さえておきたいところだ。

その請求に基づいて行う。

(労働者災害補償保険法 第十二条の八第二項)

会社や監督署が自動で始めるのではなく、補償を受けるべき労働者の請求に基づいて行う給付という書き方です。

条件条文の言葉外れる場面の例
原因業務上の負傷又は疾病業務と関係のない私傷病
状態療養のため労働することができない療養中でなく働ける状態
賃金賃金を受けない日その日の賃金が全額支払われている日

業務上か通勤によるかで給付の名前が変わる点は、後半の見出しで並べます。

休業補償給付は第四日目から=最初の三日間と労働基準法76条

第十四条第一項の「第四日目から」という言葉は、最初の三日間がこの給付に入らないことを意味します。

では最初の三日間はどうなるのかというと、ここで効くのが労働基準法第七十六条です。

労働者が前条の規定による療養のため、労働することができないために賃金を受けない場合においては、使用者は、労働者の療養中平均賃金の百分の六十の休業補償を行わなければならない。

(労働基準法 第七十六条第一項)

第七十六条は、使用者に「療養中平均賃金の百分の六十の休業補償」を義務づけている。

「前条の規定による療養」とは、第七十五条の業務上の負傷又は疾病の療養を指します。

労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかつた場合においては、使用者は、その費用で必要な療養を行い、又は必要な療養の費用を負担しなければならない。

(労働基準法 第七十五条第一項)

一方で、労災保険から給付が出る部分について使用者の責任を外すのが、第八十四条第一項です。

この法律に規定する災害補償の事由について、労働者災害補償保険法(昭和二十二年法律第五十号)又は厚生労働省令で指定する法令に基づいてこの法律の災害補償に相当する給付が行なわれるべきものである場合においては、使用者は、補償の責を免れる。

(労働基準法 第八十四条第一項)

使用者が免れるのはこの法律の災害補償に相当する給付が行なわれるべきものである場合に限られます。

第十四条が支給を第四日目からとしているので、最初の三日間は労災保険の休業補償給付が行われない日になる。

その三日間には第八十四条第一項の言葉が当たらず、使用者の第七十六条の休業補償が残るという読み方になります。

休業の日労災保険法第十四条労働基準法第七十六条
一日目から三日目支給しない(第四日目から)使用者が平均賃金の百分の六十の休業補償
四日目以降給付基礎日額の百分の六十を支給第八十四条第一項で使用者は補償の責を免れる

第七十六条は「業務上」の療養が前提なので、通勤災害の最初の三日間にはこの条文の言葉が当たりません。

休業補償給付の基礎になる給付基礎日額=8条の「平均賃金に相当する額」

「百分の六十」を掛ける元の額が、第八条の給付基礎日額です。

給付基礎日額は、労働基準法第十二条の平均賃金に相当する額とする。

この場合において、同条第一項の平均賃金を算定すべき事由の発生した日は、前条第一項第一号から第三号までに規定する負傷若しくは死亡の原因である事故が発生した日又は診断によつて同項第一号から第三号までに規定する疾病の発生が確定した日(以下「算定事由発生日」という。)とする。

(労働者災害補償保険法 第八条第一項)

給付基礎日額は労働基準法第十二条の平均賃金に相当する額で、計算の起点は算定事由発生日です。

算定事由発生日は、事故が発生した日か、診断によって疾病の発生が確定した日になる。

けがなら事故の日、病気なら診断で確定した日が、平均賃金を数える起点に置かれます。

平均賃金をそのまま使うのが適当でないときの逃げ道が、第二項です。

労働基準法第十二条の平均賃金に相当する額を給付基礎日額とすることが適当でないと認められるときは、前項の規定にかかわらず、厚生労働省令で定めるところによつて政府が算定する額を給付基礎日額とする。

(労働者災害補償保険法 第八条第二項)

「厚生労働省令で定めるところ」の中身は、施行規則第九条第一項に並んでいます。

法第八条第二項の規定による給付基礎日額の算定は、所轄労働基準監督署長が、次の各号に定めるところによつて行う。

(労働者災害補償保険法施行規則 第九条第一項)

労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)第十二条第一項及び第二項に規定する期間中に業務外の事由による負傷又は疾病の療養のために休業した労働者の同条の平均賃金(以下「平均賃金」という。)に相当する額が、当該休業した期間を同条第三項第一号に規定する期間とみなして算定することとした場合における平均賃金に相当する額に満たない場合には、その算定することとした場合における平均賃金に相当する額とする。

(労働者災害補償保険法施行規則 第九条第一項第一号)

第一号は、平均賃金の期間中に業務外の負傷や病気で休業した期間がある人の扱いを定めています。

私傷病で休んだ分だけ平均賃金が下がる場面を、そのまま給付の元にしない作りだ。

二つ以上の会社で働く複数事業労働者については、第八条第三項が会社ごとの額を合算する形を置いています。

当該複数事業労働者を使用する事業ごとに算定した給付基礎日額に相当する額を合算した額を基礎として

(労働者災害補償保険法 第八条第三項)

端数の扱いは第八条の五が一文で決めています。

給付基礎日額に一円未満の端数があるときは、これを一円に切り上げるものとする。

(労働者災害補償保険法 第八条の五)

休業補償給付と平均賃金の数え方=労働基準法12条の「三箇月間」

給付基礎日額の元になる平均賃金は、労働基準法第十二条第一項が定義しています。

この法律で平均賃金とは、これを算定すべき事由の発生した日以前三箇月間にその労働者に対し支払われた賃金の総額を、その期間の総日数で除した金額をいう。

(労働基準法 第十二条第一項)

割る数はその期間の総日数で、働いた日数ではない点に注意が要ります。

第二項で、賃金締切日があるときは直前の賃金締切日から数える形になる。

第三項は、期間と賃金の総額の両方から差し引く期間を5つ挙げています。

前二項に規定する期間中に、次の各号のいずれかに該当する期間がある場合においては、その日数及びその期間中の賃金は、前二項の期間及び賃金の総額から控除する。

(労働基準法 第十二条第三項)

業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業した期間

(労働基準法 第十二条第三項第一号)

第一号が、業務上の負傷や疾病で療養のために休業した期間だ。

第四項は、臨時の賃金や三箇月を超える期間ごとの賃金を総額に入れないと定めています。

第一項の賃金の総額には、臨時に支払われた賃金及び三箇月を超える期間ごとに支払われる賃金並びに通貨以外のもので支払われた賃金で一定の範囲に属しないものは算入しない。

(労働基準法 第十二条第四項)

労働基準法第十二条休業補償給付の計算への効き方
第一項事由の発生した日以前三箇月間の賃金の総額をその期間の総日数で割る
第二項賃金締切日があれば直前の締切日から数える
第三項業務上の療養の休業期間などは日数と賃金の両方から控除する
第四項臨時の賃金・三箇月を超える期間ごとの賃金は総額に入れない
第六項雇入後三箇月に満たない者は雇入後の期間で数える

賞与のように三箇月を超える期間ごとに支払われる賃金は、第四項で平均賃金の総額から外れます。

平均賃金が使われる別の場面は、解雇予告手当はいくらかを労働基準法20条・12条で確かめた記事で確かめています。↓

休業補償給付の休業給付基礎日額=8条の2の四半期ごとの改定

休業補償給付には、給付基礎日額をそのまま使わずに改定する仕組みが第八条の二に置かれています。

休業補償給付、複数事業労働者休業給付又は休業給付(以下この条において「休業補償給付等」という。)の額の算定の基礎として用いる給付基礎日額(以下この条において「休業給付基礎日額」という。)については、次に定めるところによる。

(労働者災害補償保険法 第八条の二第一項)

休業の給付の計算に使う額には、休業給付基礎日額という別の名前が付いています。

次号に規定する休業補償給付等以外の休業補償給付等については、前条の規定により給付基礎日額として算定した額を休業給付基礎日額とする。

(労働者災害補償保険法 第八条の二第一項第一号)

第一号が原則で、第八条で出した額をそのまま使う。

第二号は、四半期ごとの平均給与額が大きく動いたときの改定を定めています。

算定事由発生日の属する四半期(この号の規定により算定した額(以下この号において「改定日額」という。)を休業給付基礎日額とすることとされている場合にあつては、当該改定日額を休業補償給付等の額の算定の基礎として用いるべき最初の四半期の前々四半期)の平均給与額の百分の百十を超え、又は百分の九十を下るに至つた場合において

(労働者災害補償保険法 第八条の二第一項第二号)

線は百分の百十と百分の九十で、その幅を外れると額が改定されます。

改定の率は「その上昇し、又は低下した比率を基準として厚生労働大臣が定める率」になる。

改定が効き始めるのは、上昇又は低下した四半期の翌々四半期に属する最初の日以後に支給すべき事由が生じた分です。

第八条の二第一項使う額条文の条件
第一号第八条で算定した給付基礎日額第二号に当たらない休業補償給付等
第二号厚生労働大臣が定める率を掛けた額(改定日額)四半期の平均給与額が百分の百十を超え、又は百分の九十を下るに至った場合

平均給与額は、毎月勤労統計の毎月きまつて支給する給与の額を基礎にする額だと、同じ号のカッコが定めている。

休業補償給付と療養開始から一年六箇月後=8条の2第2項の年齢階層

休業が長く続いた場合について、第八条の二第二項が別の線を引いています。

休業補償給付等を支給すべき事由が生じた日が当該休業補償給付等に係る療養を開始した日から起算して一年六箇月を経過した日以後の日である場合において、次の各号に掲げる場合に該当するときは、前項の規定にかかわらず、当該各号に定める額を休業給付基礎日額とする。

(労働者災害補償保険法 第八条の二第二項)

起点は療養を開始した日から起算して一年六箇月を経過した日です。

その日以後の分は、年齢階層ごとに厚生労働大臣が定める最低限度額と最高限度額の間に収める形になる。

第一号が最低限度額に満たない場合、第二号が最高限度額を超える場合を受け持っています。

厚生労働省令で定める年齢階層(以下この条において単に「年齢階層」という。)ごとに休業給付基礎日額の最低限度額として厚生労働大臣が定める額

(労働者災害補償保険法 第八条の二第二項第一号)

年齢階層ごとに休業給付基礎日額の最高限度額として厚生労働大臣が定める額

(労働者災害補償保険法 第八条の二第二項第二号)

限度額の決め方は第三項にあり、年齢階層ごとに労働者を賃金月額の高低で二十の階層に分ける方法をとっています。

前項第一号の厚生労働大臣が定める額は、毎年、年齢階層ごとに、厚生労働省令で定めるところにより、当該年齢階層に属するすべての労働者を、その受けている一月当たりの賃金の額(以下この項において「賃金月額」という。)の高低に従い、二十の階層に区分し、その区分された階層のうち最も低い賃金月額に係る階層に属する労働者の受けている賃金月額のうち最も高いものを基礎とし、労働者の年齢階層別の就業状態その他の事情を考慮して定めるものとする。

(労働者災害補償保険法 第八条の二第三項)

期間休業給付基礎日額の扱い根拠
療養開始から一年六箇月を経過する日の前まで第八条の額(平均給与額の変動で改定あり)第八条の二第一項
一年六箇月を経過した日以後年齢階層ごとの最低限度額・最高限度額の範囲に収める第八条の二第二項

最低限度額と最高限度額は厚生労働大臣が毎年定める額で、第三項が「毎年」と定めています。

一部だけ働いた日の休業補償給付=14条1項ただし書の「部分算定日」

療養中に、所定労働時間の一部だけ働く日もありえます。

その日の額を決めているのが、第十四条第一項のただし書だ。

ただし、労働者が業務上の負傷又は疾病による療養のため所定労働時間のうちその一部分についてのみ労働する日若しくは賃金が支払われる休暇(以下この項において「部分算定日」という。)又は複数事業労働者の部分算定日に係る休業補償給付の額は、

(労働者災害補償保険法 第十四条第一項)

この日の名前が部分算定日で、一部だけ働く日と賃金が支払われる休暇が入ります。

から部分算定日に対して支払われる賃金の額を控除して得た額

(労働者災害補償保険法 第十四条第一項)

部分算定日の額は、給付基礎日額からその日に支払われる賃金の額を控除し、その残りに百分の六十を掛ける式になる。

控除後の額が最高限度額を超える場合は、最高限度額に相当する額で止めるカッコも付いています。

日の種類第十四条第一項の式
まったく働かず賃金を受けない日給付基礎日額 × 百分の六十
部分算定日(一部だけ働いた日・賃金が支払われる休暇)(給付基礎日額 − その日に支払われる賃金の額)× 百分の六十

請求書の側でも、施行規則第十三条第一項第六号の二が、その年月日と賃金の額を書かせています。

休業の期間中に業務上の負傷又は疾病による療養のため所定労働時間のうちその一部分についてのみ労働した日がある場合にあつては、その年月日及び当該労働に対して支払われる賃金の額

(労働者災害補償保険法施行規則 第十三条第一項第六の二号)

一部だけ働いた日は、年月日と支払われる賃金の額を分けて記録しておくことになります。

障害厚生年金と重なるときの休業補償給付=14条2項の調整

同じけがや病気で、厚生年金の障害厚生年金や国民年金の障害基礎年金を受けられる場合もあります。

休業補償給付を受ける労働者が同一の事由について厚生年金保険法(昭和二十九年法律第百十五号)の規定による障害厚生年金又は国民年金法(昭和三十四年法律第百四十一号)の規定による障害基礎年金を受けることができるときは、

(労働者災害補償保険法 第十四条第二項)

このときの休業補償給付は、第一項の額に政令で定める率を乗じて得た額に調整されます。

率は別表第一の区分に応じた政令で定める率のうち、傷病補償年金について定める率だ。

さらに、その額が政令で定める額を下回る場合は、政令で定める額にするというカッコが付いています。

請求書では、施行規則第十三条第一項第八号がその年金の種類と支給額を書かせる並びです。

その年金の種類及び支給額並びにその年金が支給されることとなつた年月日

(労働者災害補償保険法施行規則 第十三条第一項第八号)

第三項では、支給額を証明することができる書類を請求書に添えることも求めている。

第一項第八号に規定する場合に該当するときは、当該厚生年金保険の障害厚生年金等の支給額を証明することができる書類を、同項の請求書に添えなければならない。

(労働者災害補償保険法施行規則 第十三条第三項)

休業補償給付が行われない場合=14条の2と施行規則12条の4

療養のため働けず賃金を受けない日でも、休業補償給付を行わない場合が第十四条の二に置かれています。

労働者が次の各号のいずれかに該当する場合(厚生労働省令で定める場合に限る。)には、休業補償給付は、行わない。

(労働者災害補償保険法 第十四条の二)

刑事施設、労役場その他これらに準ずる施設に拘禁されている場合

(労働者災害補償保険法 第十四条の二第一号)

少年院その他これに準ずる施設に収容されている場合

(労働者災害補償保険法 第十四条の二第二号)

対象は刑事施設等に拘禁されている場合と少年院等に収容されている場合の2つです。

具体的な場面は、施行規則第十二条の四が並べている。

拘禁刑若しくは拘留の刑の執行のため若しくは死刑の言渡しを受けて刑事施設

(労働者災害補償保険法施行規則 第十二条の四第一号)

労働者の故意による事故については、保険給付全体に効く第十二条の二の二第一項があります。

労働者が、故意に負傷、疾病、障害若しくは死亡又はその直接の原因となつた事故を生じさせたときは、政府は、保険給付を行わない。

(労働者災害補償保険法 第十二条の二の二第一項)

故意の犯罪行為や重大な過失、療養の指示に従わない場合は、第二項が「全部又は一部を行わないことができる」としています。

条文場面休業補償給付の扱い
第十四条の二第一号刑事施設、労役場その他これらに準ずる施設に拘禁行わない(省令で定める場合に限る)
第十四条の二第二号少年院その他これに準ずる施設に収容行わない(省令で定める場合に限る)
第十二条の二の二第一項故意に事故などを生じさせた行わない
第十二条の二の二第二項故意の犯罪行為・重大な過失・療養の指示違反全部又は一部を行わないことができる

休業補償給付から傷病補償年金への切替え=18条2項の「行わない」

療養が長引いたときの給付の切替えを決めているのが、第十二条の八第三項です。

傷病補償年金は、業務上負傷し、又は疾病にかかつた労働者が、当該負傷又は疾病に係る療養の開始後一年六箇月を経過した日において次の各号のいずれにも該当するとき、又は同日後次の各号のいずれにも該当することとなつたときに、その状態が継続している間、当該労働者に対して支給する。

(労働者災害補償保険法 第十二条の八第三項)

条件は療養の開始後一年六箇月を経過した日に、治っておらず傷病等級に該当することです。

傷病補償年金に移ると、休業補償給付は止まる。

そのことを一文で定めているのが、第十八条第二項です。

傷病補償年金を受ける者には、休業補償給付は、行わない。

(労働者災害補償保険法 第十八条第二項)

切替えの前後で休業補償給付が払われ続けた分は、第十二条第三項が傷病補償年金などの内払とみなすと定めている。

その支払われた休業補償給付、複数事業労働者休業給付又は休業給付は、当該障害補償給付若しくは傷病補償年金、複数事業労働者障害給付若しくは複数事業労働者傷病年金又は障害給付若しくは傷病年金の内払とみなす。

(労働者災害補償保険法 第十二条第三項)

療養の状態出る給付根拠
療養開始から一年六箇月まで・働けず賃金を受けない休業補償給付第十四条第一項
一年六箇月を経過して治っておらず傷病等級に該当傷病補償年金(休業補償給付は行わない)第十二条の八第三項・第十八条第二項
一年六箇月を経過したが傷病等級に該当しない休業補償給付(休業給付基礎日額は年齢階層の限度額の範囲)第十四条第一項・第八条の二第二項

3行目のように、傷病等級に当たらなければ休業補償給付が続く並びになります。

休業補償給付を受けている間の解雇=労働基準法19条と労災保険法19条

休業補償給付を受けて休んでいる間に解雇されるかどうかは、労働基準法第十九条第一項が線を引いています。

使用者は、労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後三十日間並びに産前産後の女性が第六十五条の規定によつて休業する期間及びその後三十日間は、解雇してはならない。

(労働基準法 第十九条第一項)

業務上の療養で休業する期間とその後三十日間は、解雇してはならない期間です。

ただし書は、第八十一条の打切補償を支払う場合などを例外にしている。

第七十五条の規定によつて補償を受ける労働者が、療養開始後三年を経過しても負傷又は疾病がなおらない場合においては、使用者は、平均賃金の千二百日分の打切補償を行い、その後はこの法律の規定による補償を行わなくてもよい。

(労働基準法 第八十一条)

労災保険法第十九条は、傷病補償年金を受けている場合に、この打切補償を支払ったものとみなす定めです。

業務上負傷し、又は疾病にかかつた労働者が、当該負傷又は疾病に係る療養の開始後三年を経過した日において傷病補償年金を受けている場合又は同日後において傷病補償年金を受けることとなつた場合には、労働基準法第十九条第一項の規定の適用については、当該使用者は、それぞれ、当該三年を経過した日又は傷病補償年金を受けることとなつた日において、同法第八十一条の規定により打切補償を支払つたものとみなす。

(労働者災害補償保険法 第十九条)

みなされるのは療養の開始後三年を経過した日において傷病補償年金を受けている場合などに限られます。

休業補償給付を受けている段階は、労災保険法第十九条の言葉には当たらない。

解雇してはならない期間の全体は、解雇制限とは何かを労働基準法19条の「三十日間」で確かめた記事で確かめています。↓

休業補償給付の請求書に書くこと=施行規則13条1項の各号

休業補償給付も、請求書を出すところから始まります。

休業補償給付の支給を受けようとする者は、次に掲げる事項を記載した請求書を、所轄労働基準監督署長に提出しなければならない。

(労働者災害補償保険法施行規則 第十三条第一項)

提出先は所轄労働基準監督署長で、療養の給付と違い指定病院等を経由する形ではありません。

休業の期間、療養の期間、傷病名及び傷病の経過

(労働者災害補償保険法施行規則 第十三条第一項第六号)

第六号が、休業の期間、療養の期間、傷病名及び傷病の経過だ。

第二項は、誰の証明を受けるかを項目ごとに割り振っています。

同項第六号に掲げる事項中療養の期間、傷病名及び傷病の経過については診療担当者の証明を受けなければならない。

(労働者災害補償保険法施行規則 第十三条第二項)

施行規則第十三条第一項記載する事項証明する人(第二項)
第三号・第四号負傷又は発病の年月日、災害の原因及びその発生状況事業主
第五号平均賃金事業主
第六号休業の期間、療養の期間、傷病名及び傷病の経過休業の期間は事業主、療養の期間・傷病名・経過は診療担当者
第六号の二一部分についてのみ労働した日の年月日と賃金の額事業主(第三号から第七号までの範囲)
第八号障害厚生年金等の種類・支給額・支給されることとなった年月日第三項で証明書類を添える

事業主の証明と診療担当者の証明の2つがそろって、請求書の形が整う。

休業補償給付の請求権と時効=42条の「二年」と12条の5

休業補償給付を請求できる期間は、第四十二条第一項が決めています。

療養補償給付、休業補償給付、葬祭料、介護補償給付、複数事業労働者療養給付、複数事業労働者休業給付、複数事業労働者葬祭給付、複数事業労働者介護給付、療養給付、休業給付、葬祭給付、介護給付及び二次健康診断等給付を受ける権利は、これらを行使することができる時から二年を経過したとき、障害補償給付、遺族補償給付、複数事業労働者障害給付、複数事業労働者遺族給付、障害給付及び遺族給付を受ける権利は、これらを行使することができる時から五年を経過したときは、時効によつて消滅する。

(労働者災害補償保険法 第四十二条第一項)

休業補償給付は行使できる時から二年で、時効によって消滅する側に並んでいます。

休業補償給付は日ごとに支給事由が生じるので、行使できる時も日ごとに来る書き方になる。

受ける権利そのものの守りは、第十二条の五に置かれています。

保険給付を受ける権利は、労働者の退職によつて変更されることはない。

(労働者災害補償保険法 第十二条の五第一項)

保険給付を受ける権利は、譲り渡し、担保に供し、又は差し押さえることができない。

(労働者災害補償保険法 第十二条の五第二項)

退職しても権利は変わらず、譲り渡し、担保に供し、又は差し押さえることができないという守りが付いています。

税金と社会保険料の扱いは、第十二条の六の一文です。

租税その他の公課は、保険給付として支給を受けた金品を標準として課することはできない。

(労働者災害補償保険法 第十二条の六)

条文休業補償給付への効き方
第四十二条第一項行使することができる時から二年で時効によって消滅
第十二条の五第一項退職によって変更されない
第十二条の五第二項譲り渡し・担保・差押えができない
第十二条の六租税その他の公課の標準にしない

休業補償給付と休業給付・複数事業労働者休業給付・休業手当の違い

名前の似た給付が、条文にはいくつも並んでいます。

通勤災害で働けないときの給付は休業給付で、第二十二条の二第二項が第十四条を準用している。

休業給付は、労働者が通勤による負傷又は疾病に係る療養のため労働することができないために賃金を受けない場合に、当該労働者に対し、その請求に基づいて行なう。

(労働者災害補償保険法 第二十二条の二第一項)

二つ以上の会社の業務が重なって原因になったときは、第二十条の四の複数事業労働者休業給付です。

複数事業労働者休業給付は、複数事業労働者がその従事する二以上の事業の業務を要因とする負傷又は疾病による療養のため労働することができないために賃金を受けない場合に、当該複数事業労働者に対し、その請求に基づいて行う。

(労働者災害補償保険法 第二十条の四第一項)

会社の都合による休業で払われるのは、労働基準法第二十六条の休業手当になる。

使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない。

(労働基準法 第二十六条)

名前原因条文額の言葉
休業補償給付業務上の負傷又は疾病労災保険法第十四条第一項給付基礎日額の百分の六十(第四日目から)
複数事業労働者休業給付二以上の事業の業務を要因とする負傷又は疾病労災保険法第二十条の四第十四条を準用
休業給付通勤による負傷又は疾病労災保険法第二十二条の二第十四条を準用
休業補償(使用者)業務上の負傷又は疾病労働基準法第七十六条第一項平均賃金の百分の六十
休業手当使用者の責に帰すべき事由による休業労働基準法第二十六条平均賃金の百分の六十以上

同じ「百分の六十」でも、原因と払う人が違う別々の給付だという点が表から読めます。

会社の都合で休んだときの手当は、休業手当はいくら払われるのかを労働基準法26条で確かめた記事で確かめています。↓

通勤中のけがで休業給付を受ける場面は、通勤災害はどこまで通勤なのかを労災保険法7条で確かめた記事にまとめています。↓

休業補償給付と健康保険の傷病手当金=健康保険法55条の調整

けがや病気で休むと、健康保険の傷病手当金も思い浮かびます。

被保険者に係る療養の給付又は入院時食事療養費、入院時生活療養費、保険外併用療養費、療養費、訪問看護療養費、移送費、傷病手当金、埋葬料、家族療養費、家族訪問看護療養費、家族移送費若しくは家族埋葬料の支給は、同一の疾病、負傷又は死亡について、労働者災害補償保険法、国家公務員災害補償法(昭和二十六年法律第百九十一号。他の法律において準用し、又は例による場合を含む。次項及び第百二十八条第二項において同じ。)又は地方公務員災害補償法(昭和四十二年法律第百二十一号)若しくは同法に基づく条例の規定によりこれらに相当する給付を受けることができる場合には、行わない。

(健康保険法 第五十五条第一項)

第五十五条第一項は、労災保険法などで相当する給付を受けることができる場合には、傷病手当金などを行わないと定めている。

業務上のけがで休むときは、健康保険の傷病手当金ではなく労災保険の休業補償給付の側になります。

傷病手当金の支給の始まりは、健康保険法第九十九条第一項が別の言葉で決めています。

被保険者(任意継続被保険者を除く。第百二条第一項において同じ。)が療養のため労務に服することができないときは、その労務に服することができなくなった日から起算して三日を経過した日から労務に服することができない期間、傷病手当金を支給する。

(健康保険法 第九十九条第一項)

こちらは「三日を経過した日から」で、第十四条の「第四日目から」と並べると数え始めの形が似ている。

私傷病で休むときの手当の額は、傷病手当金はいくらもらえるのかを健康保険法99条で確かめた記事で確かめています。↓

休業補償給付についてよくある質問

休業補償給付は給料の何割ですか?

第十四条第一項は、一日につき給付基礎日額の百分の六十に相当する額と定めています。

給付基礎日額は、第八条第一項で労働基準法第十二条の平均賃金に相当する額とされています。

休業補償給付は休んだ初日から出ますか?

第十四条第一項は、賃金を受けない日の第四日目から支給すると定めています。

最初の三日間は、労働基準法第七十六条の使用者の休業補償が残る並びです。

最初の三日間は会社が払うのですか?

労働基準法第七十六条第一項は、使用者に療養中平均賃金の百分の六十の休業補償を義務づけています。

第八十四条第一項が使用者を免れさせるのは、労災保険法の給付が行なわれるべきものである場合です。

半日だけ働いた日も休業補償給付は出ますか?

第十四条第一項ただし書は、所定労働時間の一部分についてのみ労働する日を部分算定日としています。

その日の額は、給付基礎日額から支払われる賃金の額を控除した額の百分の六十です。

休業補償給付はいつまで出ますか?

第十四条第一項の条件に当たる日が続く間ですが、傷病補償年金を受ける者には第十八条第二項で休業補償給付を行いません。

傷病補償年金の条件は、第十二条の八第三項の療養の開始後一年六箇月を経過した日の状態です。

休業補償給付の請求はいつまでにすればよいですか?

第四十二条第一項は、休業補償給付を受ける権利を、行使することができる時から二年を経過したときに時効によって消滅するとしています。

会社を辞めたら休業補償給付は止まりますか?

第十二条の五第一項は、保険給付を受ける権利は労働者の退職によって変更されることはないと定めています。

健康保険の傷病手当金と両方もらえますか?

健康保険法第五十五条第一項は、同一の疾病又は負傷について労災保険法の相当する給付を受けることができる場合に、傷病手当金を行わないと定めています。

休業補償給付を条文で確かめた結果の一覧

条文で確かめたこと
  • 額は一日につき給付基礎日額の百分の六十(第十四条第一項)
  • 支給は賃金を受けない日の第四日目から(第十四条第一項)
  • 最初の三日間は労働基準法第七十六条の使用者の休業補償が残る(第八十四条第一項の範囲外)
  • 給付基礎日額は労働基準法第十二条の平均賃金に相当する額(第八条第一項)
  • 四半期の平均給与額が百分の百十超・百分の九十未満で改定(第八条の二第一項)
  • 療養開始から一年六箇月後は年齢階層ごとの限度額の範囲(第八条の二第二項)
  • 一部だけ働いた日は賃金を控除した額の百分の六十(第十四条第一項ただし書)
  • 拘禁・収容中は行わない(第十四条の二)、傷病補償年金を受ける者には行わない(第十八条第二項)
  • 時効は二年(第四十二条第一項)、退職で変わらず差押えもできない(第十二条の五)

休業補償給付で条文を当てはめるときの材料は、平均賃金の元になる賃金の記録と、休んだ日ごとの賃金の有無の2つです。

施行規則第十三条第一項が請求書に平均賃金と休業の期間を書かせているのは、その2つで額が決まるからだ。

個別の事情への当てはめは、事業場を管轄する労働基準監督署に相談する領域になります。


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参考文献

この記事で使った一次資料

条文の確認日は2026年10月17日です。

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