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休業手当はいくら払われるのか──労働基準法26条の「6割」と民法536条2項の線を条文で確かめた

「会社の都合で休みになった日は、給料は出ない」。

転職の面接で前職の休業について聞かれたとき、この前提で答えてしまう人がいます。

この記事は、会社の都合で働けなかった日に何が支払われるのかを、法令の条文だけで確かめます。

体験談も、伝聞も、社会保険労務士事務所のまとめも使いません。

使うのは、e-Gov法令検索に載っている労働基準法と民法の条文だけです。

先に結論を書きます。

労働基準法は休業手当の下限を「平均賃金の百分の六十以上」と書いており、民法は会社側に責任がある場合に賃金の全額を請求できる形を別に用意しています。

つまり6割は上限ではなく、労働基準法が刑罰つきで確保している下限です。

条文の確認日は2026年9月17日です。

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休業手当の金額は労働基準法第26条の「百分の六十以上」が下限です

検索されている問いの答えを先に置きます。

休業手当の金額を決めている条文は1つだけで、労働基準法の第二十六条です。

使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない。

(出典:労働基準法 第二十六条第一項(休業手当))

読み取れることは3つあります。

  • 支払う相手=休業させられた当該労働者
  • 計算の土台=その労働者の平均賃金
  • 割合=百分の六十以上(「以上」なので6割で頭打ちにはならない)

条文は『六十』とだけ書いていて、上限の数字は書いていません。

6割ちょうどで支払う会社が多いのは、条文がそこを下限として定めているからで、6割が正しい金額だと条文が言っているわけではありません。

休業手当が発生する条件は「使用者の責に帰すべき事由」の一語です

第二十六条が支払いの引き金にしているのは、休業の理由です。

使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては

(出典:労働基準法 第二十六条第一項(休業手当))

ここが休業手当のいちばんの争点になります。

条文はこの言葉の中身を定義していません。

労働基準法の中に『使用者の責に帰すべき事由とは何か』を説明した条文は置かれていません。

そのため、個別の休業がこれに当たるかどうかは、条文の文言だけでは決まりません。

この記事で確かめられるのは、当たると判断された場合に何が発生するか、までです。

休業手当の土台になる平均賃金は労働基準法第12条で計算します

第二十六条は金額そのものを書かず、平均賃金という別の言葉に投げています。

その平均賃金を定義しているのが第十二条第一項です。

この法律で平均賃金とは、これを算定すべき事由の発生した日以前三箇月間にその労働者に対し支払われた賃金の総額を、その期間の総日数で除した金額をいう。

(出典:労働基準法 第十二条第一項)

注意すべきなのは、割る数が『労働日数』ではなく『総日数』だという点です。

休日を含んだ暦の日数で割るため、月給制の人の平均賃金は、1日あたりの所定内賃金より小さい数字になります。

そのうえで、第一項にはただし書があります。

ただし、その金額は、次の各号の一によつて計算した金額を下つてはならない。

(出典:労働基準法 第十二条第一項)

この最低保障は、日給・時給・出来高払いで働く人のために置かれています。

賃金の決まり方第12条第1項が置いている最低保障
労働した日または時間で算定される/出来高払制その他の請負制賃金の総額を、その期間中に労働した日数で除した金額の百分の六十
一部が月・週その他一定の期間で定められているその部分の総額を総日数で除した金額と、上の金額の合算額

シフトの本数が月ごとに大きく変わる働き方では、総日数で割った数字が実態より下がります。

その下がりすぎを止めるのが、この最低保障の役割です。

休業手当の平均賃金には、数えない期間と数えない賃金があります

第十二条は、計算に入れないものも指定しています。

まず、起算日です。

前項の期間は、賃金締切日がある場合においては、直前の賃金締切日から起算する。

(出典:労働基準法 第十二条第二項)

賃金の締め日が月末なら、事由が起きた日ではなく直前の締め日から3か月をさかのぼります。

次に、期間から丸ごと落とすものです。

前二項に規定する期間中に、次の各号のいずれかに該当する期間がある場合においては、その日数及びその期間中の賃金は、前二項の期間及び賃金の総額から控除する。

(出典:労働基準法 第十二条第三項)

控除されるのは次の5つです。

  • 業務上の負傷・疾病の療養のために休業した期間
  • 産前産後の女性が第六十五条によって休業した期間
  • 使用者の責めに帰すべき事由によって休業した期間
  • 育児休業・介護休業をした期間
  • 試みの使用期間

3つ目に注目してください。

会社都合の休業そのものが、平均賃金の計算期間から外れます。

休業が長引いたときに、前の休業のせいで次の休業手当が下がっていく、という形にならないための仕組みです。

賃金の側でも、入れないものが決まっています。

第一項の賃金の総額には、臨時に支払われた賃金及び三箇月を超える期間ごとに支払われる賃金並びに通貨以外のもので支払われた賃金で一定の範囲に属しないものは算入しない。

(出典:労働基準法 第十二条第四項)

賞与のように3か月を超える期間ごとに支払われるものは、平均賃金には入りません。

入社して3か月たっていない場合の扱いも条文にあります。

雇入後三箇月に満たない者については、第一項の期間は、雇入後の期間とする。

(出典:労働基準法 第十二条第六項)

休業手当の6割と、民法第536条第2項の全額は別の話です

『休業なら6割』と覚えてしまうと取りこぼすのが、民法の側の条文です。

賃金は労働契約に基づく反対給付なので、民法の危険負担の規定も重なって働きます。

債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができない。この場合において、債務者は、自己の債務を免れたことによって利益を得たときは、これを債権者に償還しなければならない。

(出典:民法 第五百三十六条第二項(債務者の危険負担等))

この条文の「債権者」は、労務の提供を受ける側、つまり会社です。

会社側に責任がある事情で働けなくなった場合、労働者は反対給付、つまり賃金の履行を拒まれない形になります。

根拠書かれている割合条文が用意している担保
労働基準法第26条平均賃金の百分の六十以上刑罰(第120条)と付加金(第114条)
民法第536条第2項割合の記載なし(反対給付を拒めない)民事の請求

2つは同じ場面を別の角度から規定しています。

労働基準法が刑罰つきで下支えしているのが6割で、その上に民法の請求が乗る構造です。

なお民法は、免れた利益の扱いも同じ項の後半に書いています。

この場合において、債務者は、自己の債務を免れたことによって利益を得たときは、これを債権者に償還しなければならない。

(出典:民法 第五百三十六条第二項(債務者の危険負担等))

休業手当を払わない会社には第120条の罰金と第114条の付加金があります

第二十六条には、守らせるための条文が2つ付いています。

1つ目は罰則です。

次の各号のいずれかに該当する者は、三十万円以下の罰金に処する。

(出典:労働基準法 第百二十条第一項)

この第一号が並べている条文の中に、「第二十三条から第二十七条まで」が入っています。

第二十六条はその範囲に含まれるので、休業手当の不払いは罰金の対象です。

2つ目は付加金です。

裁判所は、第二十条、第二十六条若しくは第三十七条の規定に違反した使用者又は第三十九条第九項の規定による賃金を支払わなかつた使用者に対して、労働者の請求により、これらの規定により使用者が支払わなければならない金額についての未払金のほか、これと同一額の付加金の支払を命ずることができる。ただし、この請求は、違反のあつた時から五年以内にしなければならない。

(出典:労働基準法 第百十四条第一項(付加金の支払))

条文は第二十六条を名指しで挙げており、未払額と同じ額をもう一度命じることができる形になっています。

ただし、これは裁判所が労働者の請求によって命じるものです。

自動的に2倍が支払われる仕組みではありません。

請求の期限も同じ条文のただし書にあります。

ただし、この請求は、違反のあつた時から五年以内にしなければならない。

(出典:労働基準法 第百十四条第一項(付加金の支払))

休業手当は賃金なので、支払い方も労働基準法が決めています

休業手当は労働基準法第二十六条が使用者に支払わせる手当です。

その支払い方は、賃金の支払いを定めた第二十四条第二項の形に乗ります。

賃金は、毎月一回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない。

(出典:労働基準法 第二十四条第二項(賃金の支払))

休業した月の給与計算に乗せて、通常の給与日に支払われるのが条文の姿です。

『落ち着いてからまとめて』は、条文の形からは出てきません。

休業手当について、条文から確かめられなかったこと

この記事で扱ったのは条文に書いてあることだけです。

逆に、条文を読んでも出てこなかったものを並べます。

  • 「使用者の責に帰すべき事由」に当たる具体的な事情の一覧
  • 1日のうち一部だけ休業した場合の計算方法
  • 休業手当に税や社会保険料がどうかかるか
  • 支払われなかったときに、どこへどう申し出るかの手順

これらは労働基準法と民法の条文には書かれていません。

個別の事情に当てはめた判断は、事業場を管轄する労働基準監督署または弁護士の領域です。

まとめ|休業手当は「6割が下限」で、上に民法の請求が乗ります

条文だけで確かめられたことを、最後に並べます。

  • 休業手当の根拠は労働基準法第二十六条で、下限は平均賃金の百分の六十以上
  • 土台の平均賃金は第十二条第一項=直前3か月の賃金総額÷総日数
  • 日給・時給・出来高払いには第十二条第一項ただし書の最低保障がある
  • 会社都合の休業期間・育児介護休業・試用期間などは第十二条第三項で計算から外れる
  • 賞与など3か月を超える期間ごとの賃金は第十二条第四項で算入しない
  • 民法第五百三十六条第二項は、会社側に責任がある場合に反対給付を拒めない形にしている
  • 不払いは第百二十条の三十万円以下の罰金の対象で、第百十四条の付加金は違反から五年以内の請求

「休業なら6割」という覚え方は、条文の下限だけを見た言い方です。

条文が置いているのは下限であって、上限ではありません。


この記事で使った一次資料

条文の確認日は2026年9月17日です。

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