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賃金支払の5原則とは何か──労働基準法24条の通貨・直接・全額・毎月・一定期日を条文で確かめる

「給料の払い方には5つのルールがある」。

転職先の給与規程を読むときや、前職の未払いを整理するときに、この言葉に当たります。

この記事は、その5つがどの条文のどこに書かれているのかを、逐語で確かめます。

体験談も、伝聞も、社労士事務所のまとめも使いません。

使うのは、e-Gov法令検索に載っている労働基準法の条文だけです。

先に結論を書きます。

賃金支払の5原則は、労働基準法第二十四条という1つの条文の、第一項と第二項に全部収まっています。

第一項に3つ、第二項に2つです。

条文の確認日は2026年9月17日です。

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賃金支払の5原則は労働基準法第24条の2つの項に全部入っています

検索されている問いの答えを先に置きます。

まず第一項です。

賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。

(出典:労働基準法 第二十四条第一項(賃金の支払))

この一文の中に、3つの原則が並んでいます。

次に第二項です。

賃金は、毎月一回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない。

(出典:労働基準法 第二十四条第二項(賃金の支払))

こちらに残りの2つが入っています。

原則条文の言葉書かれている場所
通貨払い通貨で第24条第1項
直接払い直接労働者に第24条第1項
全額払いその全額を第24条第1項
毎月1回以上払い毎月一回以上第24条第2項
一定期日払い一定の期日を定めて第24条第2項

5つの原則は別々の条文に散っているわけではありません。

条文としては、たった2文です。

賃金支払の原則①通貨払いは、条文が例外の入口を2つ指定しています

通貨で支払う、という原則には、同じ第一項のただし書が付いています。

ただし、法令若しくは労働協約に別段の定めがある場合又は厚生労働省令で定める賃金について確実な支払の方法で厚生労働省令で定めるものによる場合においては、通貨以外のもので支払い

(出典:労働基準法 第二十四条第一項(賃金の支払))

読み取れる入口は2つです。

  • 法令または労働協約に別段の定めがある場合
  • 厚生労働省令で定める賃金について、確実な支払の方法で厚生労働省令で定めるものによる場合

1つ目の入口が『労働協約』であって『就業規則』ではない点は、条文を読まないと取り違えます。

労働協約は労働組合と結ぶものなので、会社が就業規則を書き換えるだけでは、この入口は開きません。

2つ目の入口は、中身を厚生労働省令に預けています。

条文本体には、その省令が何を定めているかは書かれていません。

賃金支払の原則②直接払いには、条文上のただし書がありません

第一項のただし書をもう一度見ると、開いている入口は2つだけです。

通貨以外のもので支払うことと、賃金の一部を控除することです。

『直接労働者に』の部分について、第二十四条第一項は例外を書いていません。

つまり条文の形の上では、直接払いがいちばん硬い原則です。

家族の口座へ振り込む、上司がまとめて受け取って渡す、といった形は、この一語から外れます。

転職時に前職の給与の受け取り方でもめたときは、まずこの一語を確認することになります。

賃金支払の原則③全額払いで、控除が許される場合は2つだけです

給与から天引きされているものが正しいかを確かめるときに使うのが、ここです。

法令に別段の定めがある場合又は当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定がある場合においては、賃金の一部を控除して支払うことができる。

(出典:労働基準法 第二十四条第一項(賃金の支払))

控除の入口も2つです。

控除の入口条文が要求しているもの
法令に別段の定めがある場合法令そのもの
労使協定がある場合過半数組合、無ければ過半数代表者との書面による協定

2つ目の入口は『書面による協定』と書かれています。

口頭の同意や、入社時の包括的な同意書という言葉は、条文には出てきません。

また、協定の相手は個人ではなく、事業場の過半数を代表する側です。

したがって、本人が同意したかどうかは、この条文が置いている要件とは別の話になります。

賃金支払の原則④⑤は毎月1回以上と一定期日で、両方そろって1組です

第二項の2つは、切り離すと意味が変わります。

賃金は、毎月一回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない。

(出典:労働基準法 第二十四条第二項(賃金の支払))

回数だけを満たしても、日付が動いていれば条文の形になりません。

逆に日付を決めていても、支払いが2か月に1回なら、やはり形になりません。

  • 毎月一回以上=月をまたいで払わない
  • 一定の期日=日付が特定できる(『月末』は特定できるが『第4金曜』は月により動く)
  • 2つは同じ項に並んでいて、片方だけでは足りない

なお条文は『毎月一回以上』なので、月2回払いや週払いは、この原則に反しません。

賃金支払の5原則から外れるのは「臨時の賃金等」です

第二項には、ただし書が付いています。

ただし、臨時に支払われる賃金、賞与その他これに準ずるもので厚生労働省令で定める賃金

(出典:労働基準法 第二十四条第二項(賃金の支払))

賞与が毎月支払われないのは、このただし書があるからです。

ただし、このただし書が外しているのは第二項の2つだけです。

通貨払い・直接払い・全額払いは、賞与にもそのまま掛かります。

賞与を現物で渡す、賞与から勝手に控除する、という扱いは、第一項の側から外れます。

賃金支払の5原則の外側に、条文はもう2つの支払いの場面を置いています

第二十四条の前後には、支払いのタイミングを動かす条文が2つあります。

1つ目は、非常時の繰り上げです。

使用者は、労働者が出産、疾病、災害その他厚生労働省令で定める非常の場合の費用に充てるために請求する場合においては、支払期日前であつても、既往の労働に対する賃金を支払わなければならない。

(出典:労働基準法 第二十五条第一項(非常時払))

出産・疾病・災害などの費用に充てるための請求があれば、支払期日より前でも、既に働いた分の賃金を支払う形になります。

2つ目は、退職や死亡のときです。

使用者は、労働者の死亡又は退職の場合において、権利者の請求があつた場合においては、七日以内に賃金を支払い、積立金、保証金、貯蓄金その他名称の如何を問わず、労働者の権利に属する金品を返還しなければならない。

(出典:労働基準法 第二十三条第一項(金品の返還))

『七日以内』という数字が条文に置かれているのは、権利者の請求があった場合です。

請求が無くても7日以内に払われる、とは書かれていません。

争いがある場合の扱いも同じ条文にあります。

前項の賃金又は金品に関して争がある場合においては、使用者は、異議のない部分を、同項の期間中に支払い、又は返還しなければならない。

(出典:労働基準法 第二十三条第二項(金品の返還))

賃金支払の5原則に違反した場合は第120条の罰金の対象です

第二十四条には罰則が付いています。

次の各号のいずれかに該当する者は、三十万円以下の罰金に処する。

(出典:労働基準法 第百二十条第一項)

この第一号が並べている条文の中に「第二十三条から第二十七条まで」があります。

第二十三条(金品の返還)・第二十四条(賃金の支払)・第二十五条(非常時払)は、いずれもこの範囲に入ります。

賃金支払の5原則は、努力目標ではなく罰金つきの義務として書かれています。

賃金支払の5原則について、条文から確かめられなかったこと

この記事で扱ったのは条文に書いてあることだけです。

読んでも出てこなかったものを並べます。

  • 通貨以外での支払いを認める厚生労働省令の中身
  • 『一定の期日』として認められる書き方の具体例
  • 労使協定で控除できる項目の範囲
  • 違反があったときに、どこへどう申し出るかの手順

これらは労働基準法の条文本体には書かれていません。

個別の事情に当てはめた判断は、事業場を管轄する労働基準監督署または弁護士の領域です。

まとめ|賃金支払の5原則は条文2文に収まっています

条文だけで確かめられたことを並べます。

  • 5原則の根拠は労働基準法第二十四条で、第一項に3つ・第二項に2つ
  • 通貨払いの例外は、法令か労働協約の定め、または省令で定める確実な支払方法の2つ
  • 直接払いについて、第二十四条第一項はただし書を置いていない
  • 全額払いの例外は、法令の定めか、過半数組合・過半数代表者との書面による協定の2つ
  • 第二項のただし書が外しているのは、臨時の賃金・賞与などの支払い回数と期日だけ
  • 第二十五条は非常時の繰り上げ払い、第二十三条は退職・死亡時の七日以内の返還
  • 第二十四条違反は第百二十条の三十万円以下の罰金の対象

『5原則』という覚え方は、条文の見出しではなく、第二十四条の2文を数えた呼び名です。

条文に戻れば、確かめるべき場所は2文しかありません。


この記事で使った一次資料

条文の確認日は2026年9月17日です。

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