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解雇予告手当はいくらか──労働基準法20条・21条・12条の条文で金額と対象を確かめた

「明日から来なくていい」と言われたら、いくら払われるのか。

この場面で出てくる言葉が解雇予告手当です。

この記事は、その金額と、出る場合・出ない場合の線を条文で確かめます。

体験談も、伝聞も、転職サイトのまとめも使いません。

使うのは、e-Gov法令検索に載っている条文と、厚生労働省が公表しているページだけです。

先に結論を書きます。

条文が書いている額は「三十日分以上の平均賃金」で、予告した日数の分だけ減らせる仕組みになっています。

なお、この記事に出てくる金額は、所得税や社会保険料を差し引く前の額面(税込)です。

条文と公表資料を確認した日は2026年9月16日です。

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解雇予告手当はいくらか──条文は「三十日分以上の平均賃金」と書いています

根拠は労働基準法第二十条第一項です。

使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも三十日前にその予告をしなければならない。三十日前に予告をしない使用者は、三十日分以上の平均賃金を支払わなければならない。但し、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合又は労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合においては、この限りでない。

(出典:労働基準法 第二十条第一項(e-Gov法令検索))

条文は2つの行為を並べています。

1つは「少くとも三十日前にその予告をしなければならない」。

もう1つは「三十日前に予告をしない使用者は、三十日分以上の平均賃金を支払わなければならない」。

⇒ つまり使用者に与えられているのは、30日の時間を渡すか、30日分の金を渡すかの選択です。

なお、条文の中に「解雇予告手当」という語そのものは出てきません。

この呼び方は行政の側が使っているもので、厚生労働省のページには次のように書かれています。

やむを得ず解雇を行う場合でも、30日前に予告を行うことや、予告を行わない場合には解雇予告手当(30日分以上の平均賃金)を支払うことが必要です。

(出典:労働契約(契約の締結、労働条件の変更、解雇等)に関する法令・ルール|厚生労働省)

この記事が何を根拠にしているか

先に、この記事の作り方を書いておきます。

条文はe-Gov法令検索の本文を開いて、そこにある文字列だけを引用しています。

行政の説明は、厚生労働省が公開しているページを開いて、そこに載っている文だけを引用しています。

解雇予告手当は「予告した日数」の分だけ減らせます(第二十条第二項)

30日前の予告と30日分の手当は、全か無かではありません。

前項の予告の日数は、一日について平均賃金を支払つた場合においては、その日数を短縮することができる。

(出典:労働基準法 第二十条第二項(e-Gov法令検索))

条文は「一日について平均賃金を支払つた場合においては、その日数を短縮することができる」と書いています。

言い換えると、予告日数と手当の日数を足して30日になっていればよい、という構造です。

条文の文言から組み合わせを表にします。

予告した日数条文上、短縮できる日数支払うことになる解雇予告手当
30日以上前に予告した―0日分
20日前に予告した平均賃金10日分を支払えば10日短縮10日分
10日前に予告した平均賃金20日分を支払えば20日短縮20日分
予告しなかった(即日)―30日分以上

表の「日数」は、すべて第二十条第一項・第二項の文言から出てくる数字です。

条文は上限を書いていません。

第一項の書き方は「三十日分以上の平均賃金」であり、これより多く払うことを妨げる文言はありません。

解雇予告手当の土台になる「平均賃金」は労働基準法第十二条が決めています

金額の話は、結局ここで決まります。

この法律で平均賃金とは、これを算定すべき事由の発生した日以前三箇月間にその労働者に対し支払われた賃金の総額を、その期間の総日数で除した金額をいう。

(出典:労働基準法 第十二条第一項(e-Gov法令検索))

分母は「その期間の総日数」です。

出勤日数ではなく、暦の日数で割ると条文に書かれています。

起算点についても第二項に文言があります。

前項の期間は、賃金締切日がある場合においては、直前の賃金締切日から起算する。

(出典:労働基準法 第十二条第二項(e-Gov法令検索))

賃金の総額に入らないもの

第一項の賃金の総額には、臨時に支払われた賃金及び三箇月を超える期間ごとに支払われる賃金並びに通貨以外のもので支払われた賃金で一定の範囲に属しないものは算入しない。

(出典:労働基準法 第十二条第四項(e-Gov法令検索))

「三箇月を超える期間ごとに支払われる賃金」には、支給間隔から見て賞与が当たり得ます。

ただし条文は賞与という語を使っていないため、個別の手当がどちらに入るかは条文だけでは決まりません。

日数が短い人・入社まもない人の扱い

雇入後三箇月に満たない者については、第一項の期間は、雇入後の期間とする。

(出典:労働基準法 第十二条第六項(e-Gov法令検索))

試用期間中の人については、施行規則が別に文言を置いています。

試の使用期間中に平均賃金を算定すべき事由が発生した場合においては、法第十二条第三項の規定にかかわらず、その期間中の日数及びその期間中の賃金は、同条第一項及び第二項の期間並びに賃金の総額に算入する。

(出典:労働基準法施行規則 第三条(e-Gov法令検索))

⇒ 試用期間は「除く」のではなく「算入する」と書かれています。

日給・時給の人には下限があります

第十二条第一項にはただし書きがあります。

ただし、その金額は、次の各号の一によつて計算した金額を下つてはならない。

(出典:労働基準法 第十二条第一項ただし書(e-Gov法令検索))

その第一号が次の計算です。

賃金が、労働した日若しくは時間によつて算定され、又は出来高払制その他の請負制によつて定められた場合においては、賃金の総額をその期間中に労働した日数で除した金額の百分の六十

(出典:労働基準法 第十二条第一項第一号(e-Gov法令検索))

⇒ 日給制・時給制の人は、暦日数で割った額と、労働日数で割って60%にした額の、高いほうが平均賃金になります。

解雇予告手当を条文の式どおりに計算してみる

ここでは条文の式だけを使って、割り切れる数字で試算します。

設定は次のとおりです。

  • 賃金締切日は毎月末日
  • 解雇予告の事由が発生したのは3月中
  • 直前の締切日から遡る3か月は12月・1月・2月=31日+31日+28日=90日
  • この3か月に支払われた賃金の総額は90万円(月給30万円・賞与なし)

第十二条第一項の式に当てはめます。

段階条文計算
賃金の総額労働基準法第12条第1項90万円
期間の総日数労働基準法第12条第1項90日
平均賃金総額÷総日数10,000円
解雇予告手当(予告なし)労働基準法第20条第1項10,000円×30日=30万円
解雇予告手当(10日前に予告)労働基準法第20条第2項10,000円×20日=20万円

この表の数字は、条文の式に上の設定を入れただけのものです。

端数が出たときの処理について、第十二条の本文に文言は見当たりませんでした。

第八項は「第一項乃至第六項によつて算定し得ない場合の平均賃金は、厚生労働大臣の定めるところによる」と書いており、細目が条文の外にあることが分かります。

解雇予告手当が要らない場合として条文が挙げているのは2つだけです

第二十条第一項の但書は、例外を2つしか書いていません。

但書が挙げる事由条文の文言
天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合第20条第1項但書前段
労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合第20条第1項但書後段

そして、この2つは会社が自分で判断して終わりにはできません。

前条第二項の規定は、第一項但書の場合にこれを準用する。

(出典:労働基準法 第二十条第三項(e-Gov法令検索))

準用されている前条第二項は次の文です。

前項但書後段の場合においては、その事由について行政官庁の認定を受けなければならない。

(出典:労働基準法 第十九条第二項(e-Gov法令検索))

⇒ 但書を使うには行政官庁の認定が要る、と条文に書かれています。

どこへ出すかは施行規則が指定しています。

法第十九条第二項の規定による認定又は法第二十条第一項但書前段の場合に同条第三項の規定により準用する法第十九条第二項の規定による認定は様式第二号により、法第二十条第一項但書後段の場合に同条第三項の規定により準用する法第十九条第二項の規定による認定は様式第三号により、所轄労働基準監督署長から受けなければならない。

(出典:労働基準法施行規則 第七条(e-Gov法令検索))

宛先は「所轄労働基準監督署長」と書かれています。

解雇予告手当の規定が最初から適用されない4種類の労働者(第二十一条)

第二十一条は、第二十条そのものを適用しない人を4つ挙げています。

前条の規定は、左の各号の一に該当する労働者については適用しない。但し、第一号に該当する者が一箇月を超えて引き続き使用されるに至つた場合、第二号若しくは第三号に該当する者が所定の期間を超えて引き続き使用されるに至つた場合又は第四号に該当する者が十四日を超えて引き続き使用されるに至つた場合においては、この限りでない。

(出典:労働基準法 第二十一条(e-Gov法令検索))

各号と、但書が定める復活の線を並べます。

号対象となる労働者但書=この線を超えると第20条が適用される
一号日日雇い入れられる者一箇月を超えて引き続き使用されるに至つた場合
二号二箇月以内の期間を定めて使用される者所定の期間を超えて引き続き使用されるに至つた場合
三号季節的業務に四箇月以内の期間を定めて使用される者所定の期間を超えて引き続き使用されるに至つた場合
四号試の使用期間中の者十四日を超えて引き続き使用されるに至つた場合

⇒ 試用期間中でも、14日を超えて働いていれば第二十条が戻ってきます。

表の左2列は各号の文言、右の列は但書の文言から取ったものです。

なお、第十二条第七項は日日雇い入れられる者の平均賃金について別の決め方を置いています。

日日雇い入れられる者については、その従事する事業又は職業について、厚生労働大臣の定める金額を平均賃金とする。

(出典:労働基準法 第十二条第七項(e-Gov法令検索))

解雇予告手当を払っても、解雇そのものが有効になるわけではありません

ここが、いちばん誤解されやすいところです。

第二十条は手続の条文で、解雇の当否を決める条文は別にあります。

解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

(出典:労働契約法 第十六条(e-Gov法令検索))

厚生労働省も同じ趣旨をページに書いています。

解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合、権利を濫用したものとして無効となります。

(出典:労働契約(契約の締結、労働条件の変更、解雇等)に関する法令・ルール|厚生労働省)

⇒ 30日分の平均賃金を受け取ったことと、その解雇が有効かどうかは、別々の条文の話です。

解雇の理由は書面で求められます

労働者が、第二十条第一項の解雇の予告がされた日から退職の日までの間において、当該解雇の理由について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない。

(出典:労働基準法 第二十二条第二項(e-Gov法令検索))

請求できる時期は「予告がされた日から退職の日までの間」と書かれています。

前二項の証明書には、労働者の請求しない事項を記入してはならない。

(出典:労働基準法 第二十二条第三項(e-Gov法令検索))

そもそも解雇できない期間もあります

使用者は、労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後三十日間並びに産前産後の女性が第六十五条の規定によつて休業する期間及びその後三十日間は、解雇してはならない。

(出典:労働基準法 第十九条第一項(e-Gov法令検索))

この期間は、手当を払うかどうか以前に、解雇してはならないと書かれています。

解雇予告手当が払われないときに条文が用意している手段

第二十条に違反した場合の効果は、複数の条文に分かれて置かれています。

裁判所が同額の付加金を命じることができます

裁判所は、第二十条、第二十六条若しくは第三十七条の規定に違反した使用者又は第三十九条第九項の規定による賃金を支払わなかつた使用者に対して、労働者の請求により、これらの規定により使用者が支払わなければならない金額についての未払金のほか、これと同一額の付加金の支払を命ずることができる。ただし、この請求は、違反のあつた時から五年以内にしなければならない。

(出典:労働基準法 第百十四条(e-Gov法令検索))

⇒ 条文は「これと同一額の付加金」と書いています。

命じることが「できる」という書き方で、必ず命じられると書かれてはいません。

罰則も置かれています

次の各号のいずれかに該当する者は、六月以下の拘禁刑又は三十万円以下の罰金に処する。

(出典:労働基準法 第百十九条(e-Gov法令検索))

同条第一号の列挙の中に「第二十条」が入っています。

賃金の請求権の時効

この法律の規定による賃金の請求権はこれを行使することができる時から五年間、この法律の規定による災害補償その他の請求権(賃金の請求権を除く。)はこれを行使することができる時から二年間行わない場合においては、時効によつて消滅する。

(出典:労働基準法 第百十五条(e-Gov法令検索))

申告と相談の窓口

事業場に、この法律又はこの法律に基いて発する命令に違反する事実がある場合においては、労働者は、その事実を行政官庁又は労働基準監督官に申告することができる。

(出典:労働基準法 第百四条第一項(e-Gov法令検索))

使用者は、前項の申告をしたことを理由として、労働者に対して解雇その他不利益な取扱をしてはならない。

(出典:労働基準法 第百四条第二項(e-Gov法令検索))

民事のもつれについては、厚生労働省が別の制度を案内しています。

都道府県労働局ではこれら3つの紛争解決援助制度をご用意しています。ご利用は無料です。

(出典:個別労働紛争解決制度(労働相談、助言・指導、あっせん)|厚生労働省)

労働者がこれらの制度を利用したことを理由として、事業主が労働者に対して不利益な取扱いをすることは法律で禁止されています。

(出典:個別労働紛争解決制度(労働相談、助言・指導、あっせん)|厚生労働省)

この記事で確かめたこと──解雇予告手当はいくらで、どんなときに出るのか

  • 条文が書いている額は「三十日分以上の平均賃金」です(労働基準法第20条第1項)。
  • 予告した日数の分だけ、支払う日数を短縮できます(同条第2項)。
  • 土台の平均賃金は、直前3か月の賃金の総額を「その期間の総日数」で割った額です(第12条第1項)。
  • 日給・時給の人には、労働日数で割って60%にした額という下限があります(第12条第1項第1号)。
  • 支払わなくてよい事由は但書の2つだけで、どちらも行政官庁の認定が要ります(第20条第3項・第19条第2項)。
  • 第21条の4種類は適用外ですが、試の使用期間中の者は14日を超えると戻ってきます。
  • 手当を払っても、解雇の有効性は労働契約法第16条で別に判断されます。
  • 違反には同額の付加金(第114条)と罰則(第119条)が置かれています。

⇒ したがって、解雇予告手当は「30日分以上の平均賃金」を基本線として、予告日数の分だけ減る金額です。

⇒ 出ないのは、条文の但書2つに当たり、かつ行政官庁の認定を受けた場合か、第21条の適用外に当たる場合です。


この記事で使った一次資料

条文と公表資料の確認日は2026年9月16日です。

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