「退職金には税金がかからない」。
退職や転職の話が出ると、この一言をよく聞きます。
この記事は、その話が日本の税法の上でどこまで成り立つのかを確かめます。
体験談も、伝聞も、転職サイトのまとめも使いません。
使うのは、e-Gov法令検索に載っている条文と、国税庁および市区町村が公開している資料だけです。
先に結論を書きます。
退職金にも税金はかかりますが、勤続年数に応じた控除を引き、残りを半分にしてから課税する仕組みになっています。
ですから、勤続年数が長い人ほど「税金が1円もかからない金額」の上限が高くなります。
退職金の税金は、控除を引いて半分にしてから計算する仕組みです
いちばん先に押さえるのは、この計算の順番です。
退職所得を定めているのは所得税法第30条
退職金は、給与とは別の「退職所得」という区分で扱われます。
退職所得とは、退職手当、一時恩給その他の退職により一時に受ける給与及びこれらの性質を有する給与(以下この条において「退職手当等」という。)に係る所得をいう。
同じ条の第2項が、金額の出し方を決めています。
退職所得の金額は、その年中の退職手当等の収入金額から退職所得控除額を控除した残額の二分の一に相当する金額(当該退職手当等が、短期退職手当等である場合には次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める金額とし、特定役員退職手当等である場合には当該退職手当等の収入金額から退職所得控除額を控除した残額に相当する金額とする。)とする。
国税庁のタックスアンサーは、この条文を1行の式にしています。
(収入金額(源泉徴収される前の金額) - 退職所得控除額) × 1 / 2 = 退職所得の金額
引き算が先で、半分にするのが後です。
この順番を逆にすると、税額はまったく別のものになります。
この記事が何を根拠にしているか
根拠にしたのは、次の3種類です。
- e-Gov法令検索に載っている所得税法・地方税法の条文
- 国税庁のタックスアンサーおよびパンフレット「暮らしの税情報」
- 柏市・茅ヶ崎市・荒川区・東京都北区が公開している住民税の案内ページ
条文と公的資料に書いていないことは、この記事では書きません。
退職金の税金を左右する退職所得控除額は、勤続年数で2つに分かれます
税額を決めているのは、金額よりもまず勤続年数です。
20年を境に計算式が変わる
前項に規定する退職所得控除額は、次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める金額とする。 一 政令で定める勤続年数(以下この項及び第七項において「勤続年数」という。)が二十年以下である場合 四十万円に当該勤続年数を乗じて計算した金額 二 勤続年数が二十年を超える場合 八百万円と七十万円に当該勤続年数から二十年を控除した年数を乗じて計算した金額との合計額
20年を超えた分は、1年あたり40万円ではなく70万円で積み上がります。
下限も条文にあります。
第三項及び前号の規定により計算した金額が八十万円に満たない場合(次号に該当する場合を除く。) 八十万円
勤続1年で退職しても、控除額は40万円ではなく80万円になるということです。
障害者になったことが直接の原因で退職した場合には、さらに加算があります。
障害者になつたことに直接基因して退職したと認められる場合で政令で定める場合 第三項及び第一号の規定により計算した金額(当該金額が八十万円に満たない場合には、八十万円)に百万円を加算した金額
計算式を表にする
| 勤続年数 | 退職所得控除額 | 根拠条文 |
|---|---|---|
| 20年以下 | 40万円 × 勤続年数 | 所得税法第30条第3項第1号 |
| 20年超 | 800万円 + 70万円 ×(勤続年数 - 20年) | 所得税法第30条第3項第2号 |
| 上記の計算で80万円に満たないとき | 80万円 | 所得税法第30条第6項第2号 |
| 障害者になったことが直接の原因で退職したとき | 上記の額 + 100万円 | 所得税法第30条第6項第3号 |
国税庁のパンフレットは、勤続年数の数え方を次のように書いています。
勤続年数に1年未満の端数があるときは、たとえ1日でも1年として計算します。
10年2か月なら11年、29年2か月なら30年です。
1日の差で控除額が40万円または70万円変わる場面がある、ということでもあります。
年数ごとの控除額を出しておく
上の2つの式に、そのまま年数を入れた結果が次の表です。
| 勤続年数 | 退職所得控除額 | 使った式 |
|---|---|---|
| 5年 | 200万円 | 40万円×5年 |
| 10年 | 400万円 | 40万円×10年 |
| 15年 | 600万円 | 40万円×15年 |
| 20年 | 800万円 | 40万円×20年 |
| 25年 | 1,150万円 | 800万円+70万円×5年 |
| 30年 | 1,500万円 | 800万円+70万円×10年 |
| 35年 | 1,850万円 | 800万円+70万円×15年 |
| 40年 | 2,200万円 | 800万円+70万円×20年 |
これらは税額そのものや控除額であって商品の価格ではないため、税込・税抜という区分はありません。
退職金の額がこの控除額以下であれば、差し引く残額が出ないので退職所得の金額は生じません。
退職金の税金が2分の1で済まない場合が、税法に2つあります
「半分にしてから課税」は原則であって、例外が条文に2つ置かれています。
例外1:勤続5年以下の役員等(特定役員退職手当等)
第二項に規定する特定役員退職手当等とは、退職手当等のうち、役員等(次に掲げる者をいう。)としての政令で定める勤続年数(以下この項及び第七項において「役員等勤続年数」という。)が五年以下である者が、退職手当等の支払をする者から当該役員等勤続年数に対応する退職手当等として支払を受けるものをいう。
国税庁は、この場合の扱いをはっきり書いています。
特定役員退職手当等については、この残額の2分の1とする措置はありません。
条文にいう「役員等」の範囲も第5項に列挙されています。
一 法人税法第二条第十五号(定義)に規定する役員 二 国会議員及び地方公共団体の議会の議員 三 国家公務員及び地方公務員
役員等勤続年数も1年未満は切り上げるので、4年11か月は5年として数えます。
例外2:勤続5年以下の従業員(短期退職手当等)
短期退職手当等に係る退職所得の計算においては、収入金額から退職所得控除額を控除した残額のうち、300万円を超える部分の金額については「2分の1課税」を適用しないこととされています。
こちらは全額ではなく、300万円を超えた部分だけが2分の1の対象から外れます。
同じ国税庁のページに、金額を入れた例が載っています。
退職所得の金額=150万円+{800万円 -(300万円 + 200万円)} = 450万円
勤続4年2か月で退職金800万円を受け取った場合の計算です。
控除額は40万円×5年=200万円、差額は600万円、そのうち300万円までが半分になります。
この扱いは、令和4年1月1日以後に支払うべき退職手当等から適用されています。
3つの区分を表にする
| 区分 | 課税退職所得金額の計算 | 根拠 |
|---|---|---|
| 一般退職手当等 | (収入金額 - 退職所得控除額)× 1/2 | 所得税法第30条第2項 |
| 短期退職手当等(差額300万円以下) | (収入金額 - 退職所得控除額)× 1/2 | 所得税法第30条第2項第1号 |
| 短期退職手当等(差額300万円超) | 150万円 + {収入金額 -(300万円 + 退職所得控除額)} | 所得税法第30条第2項第2号 |
| 特定役員退職手当等 | 収入金額 - 退職所得控除額(2分の1にしない) | 所得税法第30条第2項・第5項 |
課税退職所得金額に1,000円未満の端数があるときは切り捨てる、と国税庁は書いています。
退職金の税金は「退職所得の受給に関する申告書」を出したかどうかで変わります
ここが、手続きひとつで税額が跳ね上がる唯一の場所です。
出していないと20.42%が引かれる
退職手当等の支払を受ける居住者がその支払を受ける時までに退職所得の受給に関する申告書を提出していないときは、第百九十九条の規定により徴収すべき所得税の額は、その支払う退職手当等の金額に百分の二十の税率を乗じて計算した金額に相当する税額とする。
条文は20パーセントですが、ここに復興特別所得税が上乗せされます。
退職手当等の支給額に20.42パーセントの税率を乗じて計算した所得税および復興特別所得税の額(1円未満の端数は切り捨てます。)を源泉徴収します。
注意すべきなのは、この20.42%が「支給額そのもの」に掛かる点です。
退職所得控除も、2分の1計算も、この場面では入りません。
国税庁は、支給額800万円の場合の税額を1,633,600円と示しています。
同じ800万円でも、申告書を出して勤続11年で計算すると源泉徴収税額は91,890円です。
差は1,541,710円になります。
出していれば確定申告は原則不要
退職金等の支払者が所得税額および復興特別所得税額(令和9年以後は所得税額、防衛特別所得税額および復興特別所得税額。以下同じです。)を計算し、その退職手当等の支払の際、退職所得の金額に応じた所得税等の額が源泉徴収されるため、原則として確定申告は必要ありません。
出し忘れた場合も、取られたままにはなりません。
この場合には、退職手当等の受給者本人が確定申告をして、「退職所得の受給に関する申告書」の提出を受けている場合と同様の計算を行い所得税および復興特別所得税の精算をすることになります。
提出先は税務署ではなく勤務先
国税庁の手続案内は、提出先をこう書いています。
退職手当等の支払者は、税務署長から特に提出を求められた場合以外は、税務署への提出の必要はありません(退職手当等の支払者が保管することになっています。)。
提出の期限は「退職手当等の支払を受ける時まで」です。
退職金が振り込まれてから気づいた場合は、確定申告で精算する側に回ることになります。
| 申告書の提出 | 所得税等の計算 | 確定申告 |
|---|---|---|
| 提出した | 控除額を引いて2分の1にしたうえで速算表の税率 | 原則として不要 |
| 提出していない | 支給額 × 20.42%(控除も2分の1も入らない) | 自分で精算する |
退職金の税金のうち住民税は、申告書を出しても出さなくても変わりません
ここは所得税とまったく別の作りになっています。
住民税も分離課税だが、税率は固定
当該退職手当等に係る所得を他の所得と区分し、本款に規定するところにより、当該退職手当等の支払を受けるべき日の属する年の一月一日現在におけるその者の住所所在の市町村において課する。
税率は市町村分と道府県分に分かれて条文に書かれています。
分離課税に係る所得割の税率は、百分の六とする。
分離課税に係る所得割の税率は、百分の四とする。
合わせて10%です。
そして、申告書を出さなかった場合の条文が、所得税とは正反対の書き方になっています。
退職手当等の支払を受ける者がその支払を受ける時までに退職所得申告書を提出していないときは、前条第二項の規定により徴収すべき分離課税に係る所得割の額は、その支払う退職手当等の金額について第三百二十八条の二及び第三百二十八条の三の規定を適用して計算した税額とする。
出していないときも、出しているときと同じ条文で計算する、と書いてあります。
自治体の案内も同じ読み方をしている
所得税においては「退職所得の受給に関する申告書」の提出がない場合には、退職手当等の収入金額に対して20パーセントの税率を適用して計算した税額によることとされていますが、住民税においては税率(市民税6パーセント、県民税4パーセント)は変わりません。
ただし、所得税においては「退職所得の受給に関する申告書」(市民税・県民税における「退職所得申告書」を兼ねています)の提出がない場合、退職所得控除額や税率の扱いが変わりますが、市民税・県民税においては、そのような制度はありません。
2つの自治体が、別々のページで同じことを書いています。
なお、住民税の側でも申告書を出さないこと自体には条文上の制裁が用意されています。
市町村は、分離課税に係る所得割の納税義務者が退職所得申告書を正当な理由がなくて提出しなかつた場合には、その者に対し、当該市町村の条例で十万円以下の過料を科する旨の規定を設けることができる。
科すかどうかを決めるのは市町村の条例です。
所得税と住民税を並べる
| 項目 | 所得税・復興特別所得税 | 住民税(市町村民税・道府県民税) |
|---|---|---|
| 課税の方法 | 他の所得と分離して課税 | 他の所得と分離して課税 |
| 税率 | 課税退職所得金額に応じて5%〜45% | 市町村民税6% + 道府県民税4% |
| 申告書を出さなかった場合 | 支給額 × 20.42% | 出した場合と同じ計算 |
| 納める先 | 国 | 支払を受けるべき日の属する年の1月1日現在の住所地の市町村 |
| 根拠 | 所得税法第30条・第199条・第201条 | 地方税法第328条・第328条の3・第50条の4 |
退職金の税金は、いつ誰がどこへ納めるかまで条文で決まっています
退職金の税金は、自分で納めに行くものではありません。
所得税は支払者が翌月10日までに国へ
居住者に対し国内において第三十条第一項(退職所得)に規定する退職手当等(以下この章において「退職手当等」という。)の支払をする者は、その支払の際、その退職手当等について所得税を徴収し、その徴収の日の属する月の翌月十日までに、これを国に納付しなければならない。
文末は「しなければならない」です。
住民税は特別徴収以外の方法が認められていない
市町村は、分離課税に係る所得割の徴収については、特別徴収の方法によらなければならない。
前項の特別徴収義務者は、退職手当等の支払をする際、その退職手当等について分離課税に係る所得割を徴収し、その徴収の日の属する月の翌月の十日までに、総務省令で定める様式によつて、その徴収すべき分離課税に係る所得割の課税標準額、税額その他必要な事項を記載した納入申告書を市町村長に提出し、及びその納入金を当該市町村に納入する義務を負う。
所得税も住民税も、期限は同じ「翌月10日」です。
住民税だけは「翌年」ではなくその年に終わる
給与や事業の所得にかかる住民税は、前の年の所得に対して翌年になってから課されます。
退職所得だけは、この原則から外れています。
個人住民税は原則として前年中の所得に対してその翌年に課税する方法(前年所得課税主義)をとっていますが、退職所得についてはその性質を考慮し、他の所得と分離して退職所得の発生した年に課税する方法(現年分離課税主義)をとっています。
つまり、退職金の住民税は翌年に請求書が来るのではなく、受け取った時点で引かれて終わります。
荒川区は、この分離課税がもたらす副次的な効果も書いています。
現年分離課税の対象となる退職手当等に係る退職所得は、損益通算や繰越控除の対象にはならず、控除対象配偶者等に該当するかどうかの判定の為の所得にも含まれません。
(出典:退職金に係る住民税|荒川区)
配偶者控除などの判定に、退職金の額は乗ってこないということです。
特別徴収票の提出には最近の変更がある
なお、令和8年1月1日以降に支払われる退職手当等については、令和8年度税制改正により、特別徴収票の提出を当面の間省略することができます。
(出典:退職所得にかかる住民税|東京都北区)
これは会社側の手続きの話で、受け取る側の税額が変わるものではありません。
退職金の税金を、国税庁が公表している金額で計算してみます
式だけでは実感が湧かないので、公表されている計算例をそのまま追います。
速算表を先に置く
| 課税退職所得金額(A) | 所得税率(B) | 控除額(C) |
|---|---|---|
| 195万円以下 | 5% | 0円 |
| 195万円を超え330万円以下 | 10% | 97,500円 |
| 330万円を超え695万円以下 | 20% | 427,500円 |
| 695万円を超え900万円以下 | 23% | 636,000円 |
| 900万円を超え1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
| 1,800万円を超え4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
| 4,000万円超 | 45% | 4,796,000円 |
税額は、この表から求めた金額に102.1%を掛けて計算します。
課税退職所得金額から源泉徴収すべき所得税および復興特別所得税(令和9年分以後は所得税、防衛特別所得税および復興特別所得税)の額は、次の速算表を使用すると簡単に求められます。
102.1%の0.1%分が復興特別所得税にあたります。
例1:勤続10年2か月・退職金800万円
国税庁の計算はこうです。
- 勤続年数は11年(1年未満の端数は1年に切上げ)
- 退職所得控除額は 40万円 × 11年 = 440万円
- 課税退職所得金額は (800万円 - 440万円)× 1/2 = 180万円
- 税額は 180万円 × 5% × 102.1% = 91,890円
800万円受け取って、所得税等は91,890円です。
例2:勤続29年2か月・退職金2,300万円
- 勤続年数は30年(1年未満の端数は1年に切上げ)
- 退職所得控除額は 800万円 + 70万円 × 10年 = 1,500万円
- 課税退職所得金額は (2,300万円 - 1,500万円)× 1/2 = 400万円
- 税額は (400万円 × 20% - 427,500円)× 102.1% = 380,322円
2,300万円に対して所得税等は約38万円です。
控除額が1,500万円もあるため、実際に課税される部分は400万円まで縮んでいます。
例3:申告書を出していない場合の800万円
退職金の支給額 × 20.42% = 800万円 × 20.42% = 1,633,600円
例1とまったく同じ800万円で、税額は約17.8倍になります。
差を生んでいるのは金額でも勤続年数でもなく、紙を1枚出したかどうかです。
死亡退職金の税金は、所得税ではなく相続税の対象になります
同じ退職金でも、受け取る人が本人でない場合は税目そのものが変わります。
死亡退職により支払う退職手当等で相続税の課税の対象となるものは、所得税の課税の対象とならないため、所得税および復興特別所得税の源泉徴収は必要ありません。
国税庁のパンフレットは、対象になる範囲と非課税枠を書いています。
被相続人の死亡によって、死亡後3年以内に支払が確定した退職金が、相続人などに支払われた場合には、その退職金は相続税の課税対象となり、所得税等の課税対象にはなりません。
相続人が取得した退職金のうち相続税の課税対象となる金額は、〔500万円×法定相続人の数〕を超えた部分です。
住民税の側でも同じ扱いになります。
死亡により退職した人に支給すべき退職手当等で、その人の相続人等に支給されることとなったもの
所得税が非課税とされるものは、住民税も課税されないという整理です。
退職金の税金で、個別に確かめる2つの点
税額の計算とは別に、一人ひとりの事情で変わる点を並べます。
過去に退職金を受け取っている場合の控除額の調整
所得税法第30条第6項第1号は、前年以前に他の退職手当等を受け取っている場合の控除額を「政令で定めるところにより」計算するとしています。
国税庁のタックスアンサーNo.2732には、前年以前4年内・9年内・19年内という区切りで重複期間を調整する説明が置かれています。
自分が重複期間の調整に当たるかどうかは、国税庁のタックスアンサーNo.2732で確かめてください。
同じ年に2か所以上から退職金を受け取る場合も、控除額の計算が異なることがあると国税庁が注記しています。
会社ごとの退職金規程
いつ・いくら支払われるかは、税法ではなく各社の退職給与規程が決めています。
税法が決めるのは、支払われた金額に対して税額がどう決まるかまでです。
退職金の税金についてよくある質問
退職金はいくらまでなら税金がかかりませんか
退職金の額が退職所得控除額以下であれば、差し引く残額が出ないため退職所得の金額は生じません。
条文の式に当てはめると、勤続20年なら800万円、勤続30年なら1,500万円が境目になります。
勤続年数の端数はどう数えますか
国税庁は「1年未満の端数があるときは、たとえ1日でも1年として計算します」と書いています。
29年2か月は30年として扱われます。
退職金を受け取ったら確定申告は必要ですか
「退職所得の受給に関する申告書」を出していれば、源泉徴収だけで課税関係が終わるため原則として不要です。
ただし、医療費控除や寄附金控除の適用を受けるなどの理由で確定申告書を出すときは、退職所得の金額を記載する必要があります。
申告書を出し忘れて20.42%引かれました。戻ってきますか
国税庁は、受給者本人が確定申告をして精算すると書いています。
その際は、申告書を出していた場合と同じ計算をやり直すことになります。
住民税は退職した翌年にも請求されますか
退職所得にかかる住民税は現年分離課税なので、退職金から引かれた時点で完結します。
一方で、退職までに受け取った給与などにかかる住民税は前年所得課税なので、翌年度に別途課されます。
退職金は配偶者控除の判定に影響しますか
荒川区は、現年分離課税の対象となる退職所得は「控除対象配偶者等に該当するかどうかの判定の為の所得にも含まれません」と書いています。
これは住民税についての記載です。
まとめ:退職金の税金は「控除→2分の1→分離課税」の3段で決まります
条文から言えることを3行にします。
- 退職所得控除額は勤続20年以下なら40万円×年数、20年超なら800万円+70万円×(年数-20年)で、下限は80万円です(所得税法第30条第3項・第6項)。
- 控除を引いた残りを2分の1にするのが原則ですが、勤続5年以下の役員等は2分の1にせず、勤続5年以下の従業員は300万円を超える部分だけ2分の1にしません(同条第2項・第4項・第5項)。
- 「退職所得の受給に関する申告書」を出さないと所得税等は支給額の20.42%になりますが、住民税は市町村民税6%・道府県民税4%のまま変わりません(所得税法第201条第3項、地方税法第328条の6第2項)。
⇒ したがって、退職金の税額を下げるために自分でできることは、退職金を受け取る前に申告書を出すこと、この1点に尽きます。
⇒ 金額の妥当性を確かめたいなら、源泉徴収票の勤続年数と、上の表の控除額を突き合わせるのがいちばん早い方法です。
この記事で使った一次資料
- 所得税法(e-Gov法令検索)
- 地方税法(e-Gov法令検索)
- No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)|国税庁
- No.2732 退職手当等に対する源泉徴収|国税庁
- 別紙 退職所得の源泉徴収税額の速算表|国税庁
- No.2740 勤続年数が5年以下の者に対する退職手当等(短期退職手当等)|国税庁
- No.2737 役員等の勤続年数が5年以下の者に対する退職手当等(特定役員退職手当等)|国税庁
- A2-29 退職所得の受給に関する申告(退職所得申告)|国税庁
- 退職金と税|国税庁(暮らしの税情報 令和8年度版)
- 退職手当等に係る市・県民税の計算方法|柏市
- 退職所得(分離課税)の個人住民税(市・県民税)について|茅ヶ崎市
- 退職金に係る住民税|荒川区
- 退職所得にかかる住民税|東京都北区
条文と公的資料の確認日は2026年9月12日です。
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