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ストレスチェックは義務なのか──労働安全衛生法66条の10と「五十人」の線を条文で確かめた

ストレスチェックは義務なのか──労働安全衛生法66条の10と「五十人」の線を条文で確かめた
ストレスチェックは義務なのか──労働安全衛生法66条の10と「五十人」の線を条文で確かめた

ストレスチェックは全部の会社に義務なのか、それとも規模によって変わるのか。

転職先を選ぶときにも、入った会社で案内が来たときにも、まずそこが気になるところです。

この記事は、労働安全衛生法と労働安全衛生規則、それに施行令と附則の言葉だけで、義務の範囲と手続を確かめます。

先に結論を書くと、実施義務は条文で「行わなければならない」と置かれていて、五十人未満は努力義務に読み替える条文が附則にあります。

条文の確認日は2026年10月8日です。

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ストレスチェックという語は労働安全衛生法に無い──条文の言葉は「検査」

最初に押さえておきたいのは、「ストレスチェック」という言葉そのものが条文に出てこないことです。

条文の見出しと本文が使っているのは「心理的な負担の程度を把握するための検査」という言い方になります。

事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師、保健師その他の厚生労働省令で定める者(以下この条において「医師等」という。)による心理的な負担の程度を把握するための検査を行わなければならない。

(労働安全衛生法 第六十六条の十第一項)

条文の上では、ストレスチェック=心理的な負担の程度を把握するための検査として読むことになります。

規則の側では、この検査を「検査」と略す定めが置かれています。

事業者は、常時使用する労働者に対し、一年以内ごとに一回、定期に、次に掲げる事項について法第六十六条の十第一項に規定する心理的な負担の程度を把握するための検査(以下この節において「検査」という。)を行わなければならない。

(労働安全衛生規則 第五十二条の九)

以下では、記事の読みやすさのために「ストレスチェック」と書きますが、引用の中は条文の言葉そのままです。

ストレスチェックの実施義務の本体=66条の10第1項の「行わなければならない」

義務かどうかを決めているのは、第六十六条の十第一項の述語です。

主語は事業者で、述語は「行わなければならない」になります。

条文の要素条文の言葉読み取れること
主語事業者は義務を負うのは会社の側
対象労働者に対し労働者を分ける言葉は第一項に無い
実施者医師、保健師その他の厚生労働省令で定める者(医師等)誰が行うかは省令で決まる
内容心理的な負担の程度を把握するための検査これがストレスチェックの条文上の名前
述語行わなければならない義務の形

第一項の言葉には、条文に「ストレスチェック」の語は無いという前の章の点を除けば、規模の条件が書かれていません。

規模の条件は、次に見る附則で入ってきます。

ストレスチェックが義務でなくなる線=労働安全衛生法附則4条の読み替え

五十人未満は努力義務、という言い方の根拠は、労働安全衛生法の附則第四条に置かれています。

見出しは「心理的な負担の程度を把握するための検査等に関する特例」です。

第十三条第一項の事業場以外の事業場についての第六十六条の十の規定の適用については、当分の間、同条第一項中「行わなければ」とあるのは、「行うよう努めなければ」とする。

(労働安全衛生法 附則第四条)

この附則がやっているのは、第六十六条の十第一項の述語の読み替えです。

第十三条第一項の事業場以外では、「行わなければ」が「行うよう努めなければ」に替わるという仕掛けになります。

事業場66条の10第1項の述語根拠
第十三条第一項の事業場行わなければならない第六十六条の十第一項
それ以外の事業場行うよう努めなければならない附則第四条の読み替え

「当分の間」という言葉が附則に入っているので、読み替えは期限を切らない形で続いています。

では第十三条第一項の事業場とは何か、という問いが残ります。

ストレスチェックの「五十人」はどこに書いてあるのか──法13条1項と施行令5条

附則第四条が指している第十三条第一項は、産業医の選任を定めた条文です。

事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、厚生労働省令で定めるところにより、医師のうちから産業医を選任し、その者に労働者の健康管理その他の厚生労働省令で定める事項(以下「労働者の健康管理等」という。)を行わせなければならない。

(労働安全衛生法 第十三条第一項)

第十三条第一項の中に数字はなく、「政令で定める規模の事業場」と書かれているだけです。

その政令が労働安全衛生法施行令の第五条になります。

法第十三条第一項の政令で定める規模の事業場は、常時五十人以上の労働者を使用する事業場とする。

(労働安全衛生法施行令 第五条)

ここで初めて常時五十人以上の労働者を使用する事業場という数字が出てきます。

3つの条文をつなぐと、線はこうなります。

「五十人」に行き着く条文のつながり
  • 附則第四条=第十三条第一項の事業場以外は「行うよう努めなければ」に読み替える
  • 第十三条第一項=政令で定める規模の事業場ごとに産業医を選任する
  • 施行令第五条=法第十三条第一項の政令で定める規模の事業場は、常時五十人以上の労働者を使用する事業場

この3段を踏まないと「五十人」という数字は条文から出てきません。

ストレスチェックの条文そのもの(第六十六条の十)には、人数が1つも書かれていないからです。

長時間労働の側から健康を見る条文は、36協定の限度時間と特別条項の4つの線を条文で確かめた記事で確かめています。↓

ストレスチェックの報告義務にある「常時五十人以上」=安衛則52条の21

人数の線は、もう1か所、規則の報告の条文にも出てきます。

常時五十人以上の労働者を使用する事業者は、一年以内ごとに一回、定期に、電子情報処理組織を使用して、検査及び面接指導の結果等について、次に掲げる事項を所轄労働基準監督署長に報告しなければならない。

(労働安全衛生規則 第五十二条の二十一)

報告先は所轄労働基準監督署長、手段は電子情報処理組織、頻度は一年以内ごとに一回です。

報告の条文は、主語の中に「常時五十人以上」を書き込んでいるところが附則第四条と違います。

報告する中身も号で列挙されています。

常時使用する労働者の数

(労働安全衛生規則 第五十二条の二十一第三号)

検査を受けた労働者の数及び面接指導を受けた労働者の数

(労働安全衛生規則 第五十二条の二十一第五号)

検査の結果についての第五十二条の十四第一項の規定に基づく集団ごとの分析の実施の有無

(労働安全衛生規則 第五十二条の二十一第八号)

人数の線が出てくる場所条文何を決めているか
努力義務への読み替え附則第四条+第十三条第一項+施行令第五条検査を行う義務の述語
報告の義務安衛則第五十二条の二十一第一項監督署長への報告
検査の対象第六十六条の十第一項・安衛則第五十二条の九第一項常時使用する労働者

同じ「五十人」でも、条文の置き場所と役目は別です。

報告を受ける側の権限については、労働基準監督署に何ができるのかを条文で確かめた記事に並べています。↓

ストレスチェックの頻度と項目=安衛則52条の9の「一年以内ごとに一回」と3領域

検査をいつ、何について行うかは、安衛則第五十二条の九が決めています。

頻度は一年以内ごとに一回、定期にです。

項目は3つの号に分かれています。

職場における当該労働者の心理的な負担の原因に関する項目

(労働安全衛生規則 第五十二条の九第一号)

当該労働者の心理的な負担による心身の自覚症状に関する項目

(労働安全衛生規則 第五十二条の九第二号)

職場における他の労働者による当該労働者への支援に関する項目

(労働安全衛生規則 第五十二条の九第三号)

号条文の言葉何を聞く項目か
第一号職場における当該労働者の心理的な負担の原因に関する項目負担の原因
第二号当該労働者の心理的な負担による心身の自覚症状に関する項目自覚症状
第三号職場における他の労働者による当該労働者への支援に関する項目周囲の支援

条文が求めているのはこの3領域が入っていることで、質問の文言そのものは条文に書かれていません。

対象は「常時使用する労働者」で、第五十二条の九第一項の主語の中に置かれています。

ストレスチェックを実施できる者=安衛則52条の10の医師・保健師ほか

第六十六条の十第一項の「厚生労働省令で定める者」の中身は、安衛則第五十二条の十です。

法第六十六条の十第一項の厚生労働省令で定める者は、次に掲げる者(以下この節において「医師等」という。)とする。

(労働安全衛生規則 第五十二条の十第一項)

医師

(労働安全衛生規則 第五十二条の十第一項第一号)

保健師

(労働安全衛生規則 第五十二条の十第一項第二号)

検査を行うために必要な知識についての研修であつて厚生労働大臣が定めるものを修了した歯科医師、看護師、精神保健福祉士又は公認心理師

(労働安全衛生規則 第五十二条の十第一項第三号)

第三号は、研修を修了していることを条件に職種を広げた号です。

歯科医師・看護師・精神保健福祉士・公認心理師は、厚生労働大臣が定める研修の修了が条文上の条件になります。

同じ条の第二項には、実施の事務に関わってはいけない人の定めがあります。

検査を受ける労働者について解雇、昇進又は異動に関して直接の権限を持つ監督的地位にある者は、検査の実施の事務に従事してはならない。

(労働安全衛生規則 第五十二条の十第二項)

解雇・昇進・異動に直接の権限を持つ監督的地位にある者は、検査の実施の事務から外れる形です。

区分条文の言葉根拠
実施できる者医師安衛則第五十二条の十第一項第一号
実施できる者保健師同項第二号
実施できる者研修を修了した歯科医師・看護師・精神保健福祉士・公認心理師同項第三号
実施の事務に従事してはならない者解雇、昇進又は異動に関して直接の権限を持つ監督的地位にある者同条第二項

ストレスチェックの結果の通知=66条の10第2項と安衛則52条の12の「遅滞なく」

検査をしたあと、結果が誰に渡るかを決めているのが第二項です。

事業者は、前項の規定により行う検査を受けた労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、当該検査を行つた医師等から当該検査の結果が通知されるようにしなければならない。

この場合において、当該医師等は、あらかじめ当該検査を受けた労働者の同意を得ないで、当該労働者の検査の結果を事業者に提供してはならない。

(労働安全衛生法 第六十六条の十第二項)

前段は、医師等から労働者本人に結果が通知されるようにする義務です。

規則の側は、その時期を切っています。

事業者は、検査を受けた労働者に対し、当該検査を行つた医師等から、遅滞なく、当該検査の結果が通知されるようにしなければならない。

(労働安全衛生規則 第五十二条の十二)

通知の時期は遅滞なくと書かれていて、日数の数字は置かれていません。

ストレスチェックの結果を事業者に渡す同意=66条の10第2項後段と安衛則52条の13

第二項の後段は、医師等に向けた禁止の言葉になっています。

あらかじめ本人の同意を得ないで、医師等は同意なく事業者に渡せないという形です。

同意の取り方は、規則で方法が決まっています。

法第六十六条の十第二項後段の規定による労働者の同意の取得は、書面又は電磁的記録によらなければならない。

(労働安全衛生規則 第五十二条の十三第一項)

書面か電磁的記録のどちらかで、口頭だけという取り方は条文の言葉に合いません。

同意を得て結果の提供を受けたあとの扱いは、第二項が決めています。

事業者は、前項の規定により検査を受けた労働者の同意を得て、当該検査を行つた医師等から当該労働者の検査の結果の提供を受けた場合には、当該検査の結果に基づき、当該検査の結果の記録を作成して、これを五年間保存しなければならない。

(労働安全衛生規則 第五十二条の十三第二項)

事業者が作った結果の記録は、記録の保存は五年間と条文に書かれています。

心身の状態に関する情報そのものの扱いには、法の側にも条文があります。

事業者は、この法律又はこれに基づく命令の規定による措置の実施に関し、労働者の心身の状態に関する情報を収集し、保管し、又は使用するに当たつては、労働者の健康の確保に必要な範囲内で労働者の心身の状態に関する情報を収集し、並びに当該収集の目的の範囲内でこれを保管し、及び使用しなければならない。

ただし、本人の同意がある場合その他正当な事由がある場合は、この限りでない。

(労働安全衛生法 第百四条第一項)

ハラスメントの側の条文を確かめるなら、パワハラの定義が条文のどこにあるのかを確かめた記事が近いところです。↓

ストレスチェックのあとの面接指導=66条の10第3項と安衛則52条の15・52条の16

検査の結果、負担が高かった人がどう扱われるかを決めているのが第三項です。

事業者は、前項の規定による通知を受けた労働者であつて、心理的な負担の程度が労働者の健康の保持を考慮して厚生労働省令で定める要件に該当するものが医師による面接指導を受けることを希望する旨を申し出たときは、当該申出をした労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による面接指導を行わなければならない。

この場合において、事業者は、労働者が当該申出をしたことを理由として、当該労働者に対し、不利益な取扱いをしてはならない。

(労働安全衛生法 第六十六条の十第三項)

義務の引き金は、労働者本人が「希望する旨を申し出たとき」です。

要件の中身は規則にあります。

法第六十六条の十第三項の厚生労働省令で定める要件は、検査の結果、心理的な負担の程度が高い者であつて、同項に規定する面接指導(以下この節において「面接指導」という。)を受ける必要があると当該検査を行つた医師等が認めたものであることとする。

(労働安全衛生規則 第五十二条の十五)

申出の時期と、申出を受けたあとの事業者の動きは、第五十二条の十六が決めています。

法第六十六条の十第三項の規定による申出(以下この条及び次条において「申出」という。)は、前条の要件に該当する労働者が検査の結果の通知を受けた後、遅滞なく行うものとする。

(労働安全衛生規則 第五十二条の十六第一項)

事業者は、前条の要件に該当する労働者から申出があつたときは、遅滞なく、面接指導を行わなければならない。

(労働安全衛生規則 第五十二条の十六第二項)

検査を行つた医師等は、前条の要件に該当する労働者に対して、申出を行うよう勧奨することができる。

(労働安全衛生規則 第五十二条の十六第三項)

段階条文の言葉根拠
申出の時期検査の結果の通知を受けた後、遅滞なく安衛則第五十二条の十六第一項
面接指導の時期申出があつたときは、遅滞なく同条第二項
医師等の勧奨申出を行うよう勧奨することができる同条第三項
面接指導で確認する事項勤務の状況・心理的な負担の状況・心身の状況安衛則第五十二条の十七各号

条文の期間の言葉はどちらも「遅滞なく」で、何日という数字は置かれていません。

面接指導で医師が確認する事項も、号で列挙されています。

当該労働者の勤務の状況

(労働安全衛生規則 第五十二条の十七第一号)

当該労働者の心理的な負担の状況

(労働安全衛生規則 第五十二条の十七第二号)

ストレスチェックの申出で不利益な取扱いをしてはならない=66条の10第3項後段

第三項の後段は、事業者に向けた禁止です。

条文は「不利益な取扱いをしてはならない」と書いていて、申出を理由とする不利益は禁止になります。

禁止の対象は「労働者が当該申出をしたことを理由として」行う取扱いです。

申出をしたこと以外の理由まで条文が触れているわけではありません。

禁止の要素条文の言葉
誰に向けた禁止か事業者は
何を理由とするか労働者が当該申出をしたことを理由として
何をしてはならないか不利益な取扱いをしてはならない

労働条件そのものを下げる話は、労働条件の不利益変更を同意なしにできるのかを条文で確かめた記事で確かめています。↓

ストレスチェックの記録の保存=安衛則52条の11・52条の13第2項・52条の18の線

記録には、検査の結果の記録と面接指導の結果の記録の2本があります。

事業者は、第五十二条の十三第二項に規定する場合を除き、検査を行つた医師等による当該検査の結果の記録の作成の事務及び当該検査の実施の事務に従事した者による当該記録の保存の事務が適切に行われるよう、必要な措置を講じなければならない。

(労働安全衛生規則 第五十二条の十一)

第五十二条の十一は、記録の作成と保存の事務が適切に行われるよう必要な措置を講じる義務です。

面接指導の結果の記録には、年数と記載事項が置かれています。

事業者は、面接指導の結果に基づき、当該面接指導の結果の記録を作成して、これを五年間保存しなければならない。

(労働安全衛生規則 第五十二条の十八第一項)

前項の記録は、前条各号に掲げる事項のほか、次に掲げる事項を記載したものでなければならない。

実施年月日当該労働者の氏名面接指導を行つた医師の氏名法第六十六条の十第五項の規定による医師の意見

(労働安全衛生規則 第五十二条の十八第二項)

記録保存の年数根拠
検査の結果の記録(同意を得て提供を受けた場合)五年間安衛則第五十二条の十三第二項
面接指導の結果の記録五年間安衛則第五十二条の十八第一項
検査の結果の記録の作成・保存の事務年数の定めは置かれず「必要な措置」安衛則第五十二条の十一

条文に出てくる年数は五年間の2か所で、ほかの数字は置かれていません。

面接指導のあと、医師の意見を聴く時期も条文にあります。

面接指導の結果に基づく法第六十六条の十第五項の規定による医師からの意見聴取は、面接指導が行われた後、遅滞なく行わなければならない。

(労働安全衛生規則 第五十二条の十九)

意見聴取も「遅滞なく」で、法の側の根拠は第六十六条の十第五項です。

事業者は、第三項の規定による面接指導の結果に基づき、当該労働者の健康を保持するために必要な措置について、厚生労働省令で定めるところにより、医師の意見を聴かなければならない。

(労働安全衛生法 第六十六条の十第五項)

事業者は、前項の規定による医師の意見を勘案し、その必要があると認めるときは、当該労働者の実情を考慮して、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少等の措置を講ずるほか、当該医師の意見の衛生委員会若しくは安全衛生委員会又は労働時間等設定改善委員会への報告その他の適切な措置を講じなければならない。

(労働安全衛生法 第六十六条の十第六項)

ストレスチェックの集団分析=安衛則52条の14の「努めなければならない」

検査の結果を集団ごとに分析する定めは、義務の形が1段ゆるい書き方です。

事業者は、検査を行つた場合は、当該検査を行つた医師等に、当該検査の結果を当該事業場の当該部署に所属する労働者の集団その他の一定規模の集団ごとに集計させ、その結果について分析させるよう努めなければならない。

(労働安全衛生規則 第五十二条の十四第一項)

事業者は、前項の分析の結果を勘案し、その必要があると認めるときは、当該集団の労働者の実情を考慮して、当該集団の労働者の心理的な負担を軽減するための適切な措置を講ずるよう努めなければならない。

(労働安全衛生規則 第五十二条の十四第二項)

どちらの項も述語は努めなければならないで、第六十六条の十第一項の「行わなければならない」と書き分けられています。

ただし、集団分析をしたかどうかは報告の事項に入っています。

安衛則第五十二条の二十一第一項第八号が「実施の有無」を挙げている形です。

定め述語根拠
検査の実施(第十三条第一項の事業場)行わなければならない第六十六条の十第一項
検査の実施(それ以外の事業場)行うよう努めなければならない附則第四条の読み替え
集団ごとの集計・分析努めなければならない安衛則第五十二条の十四第一項
分析を踏まえた措置努めなければならない同条第二項
監督署長への報告(常時五十人以上)報告しなければならない安衛則第五十二条の二十一第一項

指針の公表についても条文が置かれています。

厚生労働大臣は、前項の規定により事業者が講ずべき措置の適切かつ有効な実施を図るため必要な指針を公表するものとする。

(労働安全衛生法 第六十六条の十第七項)

第二十四条の規定は、法第六十六条の十第七項の規定による指針の公表について準用する。

(労働安全衛生規則 第五十二条の二十)

ストレスチェックの義務に罰則はあるのか──120条の列挙を確かめた

罰則は、違反した条文を列挙する形で書かれています。

第百二十条第一号の列挙を見てみます。

第六十六条第一項から第三項まで、第六十六条の三、第六十六条の六、第六十六条の八の二第一項、第六十六条の八の四第一項

(労働安全衛生法 第百二十条第一号)

この並びに入っているのは第六十六条・第六十六条の三・第六十六条の六・第六十六条の八の二・第六十六条の八の四で、第六十六条の十は入っていません。

条文の列挙で確かめられるのは、第一号の並びに第六十六条の十が無いところまでです。

一方で、同条第五号は報告に関する違反を挙げています。

第百条第一項又は第三項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は出頭しなかつたとき。

(労働安全衛生法 第百二十条第五号)

第百条第一項は、監督署長などが省令の定めにより事業者に報告させることができるという条文です。

厚生労働大臣、都道府県労働局長又は労働基準監督署長は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、厚生労働省令で定めるところにより、事業者、労働者、機械等貸与者、建築物貸与者、通知対象物譲渡者等又はコンサルタントに対し、必要な事項を報告させ、又は出頭を命ずることができる。

(労働安全衛生法 第百条第一項)

国の側の努力義務も、第六十六条の十の最後の項に置かれています。

国は、心理的な負担の程度が労働者の健康の保持に及ぼす影響に関する医師等に対する研修を実施するよう努めるとともに、第二項の規定により通知された検査の結果を利用する労働者に対する健康相談の実施その他の当該労働者の健康の保持増進を図ることを促進するための措置を講ずるよう努めるものとする。

(労働安全衛生法 第六十六条の十第九項)

心の不調で働けなくなったときのお金の条文は、傷病手当金の「3分の2」と通算1年6か月を条文で確かめた記事にまとめています。↓

ストレスチェックについてよくある質問

ストレスチェックは全部の会社に義務ですか?

第六十六条の十第一項は「行わなければならない」と定めていますが、附則第四条が、第十三条第一項の事業場以外については当分の間「行うよう努めなければ」と読み替えています。

第十三条第一項の事業場は、施行令第五条により常時五十人以上の労働者を使用する事業場です。

ストレスチェックの頻度はどれくらいですか?

安衛則第五十二条の九第一項が、常時使用する労働者に対し一年以内ごとに一回、定期に行うことを定めています。

ストレスチェックの質問項目は条文で決まっていますか?

安衛則第五十二条の九第一項は、負担の原因・心身の自覚症状・他の労働者による支援の3つの領域を号で挙げています。

個々の質問の文言は条文に書かれていません。

ストレスチェックの結果は会社に見られますか?

第六十六条の十第二項後段は、医師等があらかじめ労働者の同意を得ないで検査の結果を事業者に提供してはならないと定めています。

同意の取得は、安衛則第五十二条の十三第一項により書面か電磁的記録によります。

ストレスチェックを誰が実施できますか?

安衛則第五十二条の十第一項が、医師・保健師・厚生労働大臣が定める研修を修了した歯科医師・看護師・精神保健福祉士・公認心理師を挙げています。

同条第二項は、解雇・昇進・異動に直接の権限を持つ監督的地位にある者が実施の事務に従事してはならないと定めています。

ストレスチェックのあとの面接指導はいつ受けられますか?

第六十六条の十第三項は、要件に該当する労働者が申し出たときに医師による面接指導を行うことを定めています。

安衛則第五十二条の十六は、申出を通知後遅滞なく行い、申出があったときは遅滞なく面接指導を行うと定めています。

ストレスチェックの面接指導を申し出たら不利に扱われませんか?

第六十六条の十第三項後段は、事業者が、労働者が当該申出をしたことを理由として不利益な取扱いをしてはならないと定めています。

ストレスチェックの記録は何年残りますか?

安衛則第五十二条の十三第二項は検査の結果の記録を五年間、第五十二条の十八第一項は面接指導の結果の記録を五年間保存すると定めています。

ストレスチェックを条文で確かめた結果の一覧

条文で確かめたこと
  • 「ストレスチェック」という語は条文に無く、条文の言葉は「心理的な負担の程度を把握するための検査」(第六十六条の十第一項)
  • 実施義務の述語は「行わなければならない」(第六十六条の十第一項)
  • 附則第四条が、第十三条第一項の事業場以外について当分の間「行うよう努めなければ」と読み替える
  • 第十三条第一項の規模は施行令第五条で「常時五十人以上の労働者を使用する事業場」
  • 頻度は一年以内ごとに一回、項目は負担の原因・自覚症状・周囲の支援の3領域(安衛則第五十二条の九)
  • 実施者は医師・保健師ほか(安衛則第五十二条の十第一項)、権限を持つ監督的地位の者は実施の事務から外れる(同条第二項)
  • 結果の通知は遅滞なく、事業者への提供は本人の同意が要る(第六十六条の十第二項・安衛則第五十二条の十二・第五十二条の十三)
  • 面接指導は本人の申出が引き金で、申出を理由とする不利益な取扱いは禁止(第六十六条の十第三項)
  • 記録の保存は五年間(安衛則第五十二条の十三第二項・第五十二条の十八第一項)
  • 常時五十人以上の事業者は一年以内ごとに一回、監督署長へ報告(安衛則第五十二条の二十一第一項)

自分の勤め先がどちら側かを知るには、まず事業場の常時使用する労働者の数を確かめることになります。

個別の事情への当てはめは、事業場を管轄する労働基準監督署か産業医に相談する領域です。


あわせて読みたい

面接指導が別の形で出てくる制度は、高度プロフェッショナル制度の対象者を条文と省令で確かめた記事で確かめています。↓

残業時間の上限そのものについては、変形労働時間制の3つの型を条文で確かめた記事に並べています。↓


参考文献

この記事で使った一次資料

条文の確認日は2026年10月8日です。

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