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変形労働時間制で残業代はどう数えるのか──労働基準法32条の2と32条の4の3つの型を条文で確かめた

変形労働時間制で残業代はどう数えるのか──労働基準法32条の2と32条の4の3つの型を条文で確かめた
変形労働時間制で残業代はどう数えるのか──労働基準法32条の2と32条の4の3つの型を条文で確かめた

変形労働時間制の会社に転職すると、1日8時間を超えても残業代が付かない日がある、と聞くことがあります。

シフト表の時間が日によって長かったり短かったりするのに、どこからが残業なのかが見えにくい、という相談もよく目にするところです。

この記事は、変形労働時間制の3つの型と残業代の根拠を、労働基準法と施行規則の条文だけで確かめます。

結論から書くと、次のとおりです。

条文が8時間超えを許すのは、定めで特定した週と日の分だけです。

定めで特定した時間を超え、かつ1日8時間・1週40時間(特定した時間がそれより長い日・週はその時間)を超えた時間は、第三十六条第一項の延長になり、第三十七条第一項の割増賃金が当たります。

条文の確認日は2026年10月7日です。

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変形労働時間制の3つの型=第32条の2・第32条の4・第32条の5

変形労働時間制という言葉そのものは、労働基準法の条文には出てきません。

条文にあるのは、第三十二条の上限を一定の条件で動かせる3つの条です。

型条文平均する期間・動かせる範囲
1か月単位第三十二条の二一箇月以内の一定の期間を平均して週40時間
1年単位第三十二条の四一箇月を超え一年以内の対象期間を平均して週40時間
1週間単位(非定型的)第三十二条の五1日について十時間まで

同じ並びの第三十二条の三はフレックスタイム制で、始業と終業の時刻を本人に委ねる別の仕組みです。

この記事で扱うのは、会社が前もって日ごとの時間を決めておく3つの型に絞っています。

3つとも、妊産婦の請求を定める第六十六条第一項に、条番号がまとめて並んでいます。

使用者は、妊産婦が請求した場合においては、第三十二条の二第一項、第三十二条の四第一項及び第三十二条の五第一項の規定にかかわらず、一週間について第三十二条第一項の労働時間、一日について同条第二項の労働時間を超えて労働させてはならない。

(労働基準法 第六十六条第一項)

第六十六条が3つの条を同じ扱いで並べているので、この記事でも3つを1組として見ていきます。

変形労働時間制の出発点=第32条の1週40時間・1日8時間

3つの型はどれも、第三十二条の上限から出発しています。

使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない。

(労働基準法 第三十二条第一項)

使用者は、一週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き一日について八時間を超えて、労働させてはならない。

(労働基準法 第三十二条第二項)

第一項が1週間、第二項が1日の上限です。

変形労働時間制は、この2つの上限を「規定にかかわらず」と外す形で書かれています。

ただし、外し方は型ごとに同じではありません。

1か月単位と1年単位は週と日の両方を動かせますが、1週間単位は1日の上限だけを動かします。

1か月単位の変形労働時間制=第32条の2の「一箇月以内の一定の期間」

1か月単位の型は、第三十二条の二第一項に書かれています。

使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、又は就業規則その他これに準ずるものにより、一箇月以内の一定の期間を平均し一週間当たりの労働時間が前条第一項の労働時間を超えない定めをしたときは、同条の規定にかかわらず、その定めにより、特定された週において同項の労働時間又は特定された日において同条第二項の労働時間を超えて、労働させることができる。

(労働基準法 第三十二条の二第一項)

ポイントは、平均する期間が「一箇月以内」であることです。

その期間を平均して1週間当たり40時間に収まる定めをすれば、特定された週や日に限って40時間・8時間を超えて働かせることができます。

定める手段は書面による協定か、就業規則その他これに準ずるもののどちらかです。

「又は」でつながっているので、労使協定を結ばずに就業規則だけで定める形も、条文の上では並んでいます。

この点は、労使協定が必ず要る1年単位・1週間単位との違いになります。

1か月単位の変形労働時間制の手続=起算日・有効期間・届出

協定で定めた場合は、行政官庁への届出が要ります。

使用者は、厚生労働省令で定めるところにより、前項の協定を行政官庁に届け出なければならない。

(労働基準法 第三十二条の二第二項)

届出の様式と協定の中身は、施行規則が決めています。

法第三十二条の二第一項の協定(労働協約による場合を除き、労使委員会の決議及び労働時間等設定改善委員会の決議を含む。)には、有効期間の定めをするものとする。

(労働基準法施行規則 第十二条の二の二第一項)

法第三十二条の二第二項の規定による届出は、様式第三号の二により、所轄労働基準監督署長にしなければならない。

(労働基準法施行規則 第十二条の二の二第二項)

どの日から期間を数えるかも、はっきりさせる決まりです。

使用者は、法第三十二条の二から第三十二条の四までの規定により労働者に労働させる場合には、就業規則その他これに準ずるもの又は書面による協定(労使委員会の決議及び労働時間等設定改善委員会の決議を含む。)において、法第三十二条の二から第三十二条の四までにおいて規定する期間の起算日を明らかにするものとする。

(労働基準法施行規則 第十二条の二第一項)

決まり中身根拠
届出協定を所轄労働基準監督署長へ(様式第三号の二)第三十二条の二第二項・施行規則第十二条の二の二第二項
有効期間協定に有効期間の定めをする施行規則第十二条の二の二第一項
起算日就業規則や協定で期間の起算日を明らかにする施行規則第十二条の二第一項

常時10人に満たない事業場には、周知についての定めもあります。

常時十人に満たない労働者を使用する使用者は、法第三十二条の二第一項又は法第三十五条第二項による定めをした場合(法第三十二条の二第一項の協定(法第三十八条の四第五項(法第四十一条の二第三項において準用する場合を含む。)に規定する法第三十八条の四第一項の委員会(以下「労使委員会」という。)の決議(以下「労使委員会の決議」という。)及び労働時間等の設定の改善に関する特別措置法(平成四年法律第九十号。以下「労働時間等設定改善法」という。)第七条に規定する労働時間等設定改善委員会の決議(以下「労働時間等設定改善委員会の決議」という。)を含む。)による定めをした場合を除く。)には、これを労働者に周知させるものとする。

(労働基準法施行規則 第十二条)

協定ではなく就業規則その他これに準ずるもので定めた場合は、その中身を労働者に周知させる決まりです。

1年単位の変形労働時間制=第32条の4の対象期間「一箇月を超え一年以内」

1年単位の型は、第三十二条の四第一項です。

使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、次に掲げる事項を定めたときは、第三十二条の規定にかかわらず、その協定で第二号の対象期間として定められた期間を平均し一週間当たりの労働時間が四十時間を超えない範囲内において、当該協定(次項の規定による定めをした場合においては、その定めを含む。)で定めるところにより、特定された週において同条第一項の労働時間又は特定された日において同条第二項の労働時間を超えて、労働させることができる。

(労働基準法 第三十二条の四第一項)

協定で定める事項は、5つの号に並んでいます。

この条の規定による労働時間により労働させることができることとされる労働者の範囲

(労働基準法 第三十二条の四第一項第一号)

対象期間(その期間を平均し一週間当たりの労働時間が四十時間を超えない範囲内において労働させる期間をいい、一箇月を超え一年以内の期間に限るものとする。以下この条及び次条において同じ。)

(労働基準法 第三十二条の四第一項第二号)

特定期間(対象期間中の特に業務が繁忙な期間をいう。第三項において同じ。)

(労働基準法 第三十二条の四第一項第三号)

対象期間における労働日及び当該労働日ごとの労働時間(対象期間を一箇月以上の期間ごとに区分することとした場合においては、当該区分による各期間のうち当該対象期間の初日の属する期間(以下この条において「最初の期間」という。)における労働日及び当該労働日ごとの労働時間並びに当該最初の期間を除く各期間における労働日数及び総労働時間)

(労働基準法 第三十二条の四第一項第四号)

第五号の「厚生労働省令で定める事項」は、施行規則で有効期間の定めとされています。

法第三十二条の四第一項の協定(労働協約による場合を除き、労使委員会の決議及び労働時間等設定改善委員会の決議を含む。)において定める同項第五号の厚生労働省令で定める事項は、有効期間の定めとする。

(労働基準法施行規則 第十二条の四第一項)

1か月単位と違い、1年単位は書面による協定が必須で、就業規則だけでは定められない書き方です。

協定の届出は、第四項が1か月単位の第三十二条の二第二項を準用する形で求めています。

第三十二条の二第二項の規定は、第一項の協定について準用する。

(労働基準法 第三十二条の四第四項)

1年単位の変形労働時間制の上限=1日10時間・1週52時間・連続6日

1年単位の型では、平均さえ合えば何時間でも並べられるわけではありません。

第三項が、厚生労働省令で限度を決める仕組みを置いています。

厚生労働大臣は、労働政策審議会の意見を聴いて、厚生労働省令で、対象期間における労働日数の限度並びに一日及び一週間の労働時間の限度並びに対象期間(第一項の協定で特定期間として定められた期間を除く。)及び同項の協定で特定期間として定められた期間における連続して労働させる日数の限度を定めることができる。

(労働基準法 第三十二条の四第三項)

1日と1週間の限度は、施行規則第十二条の四第四項にあります。

法第三十二条の四第三項の厚生労働省令で定める一日の労働時間の限度は十時間とし、一週間の労働時間の限度は五十二時間とする。

(労働基準法施行規則 第十二条の四第四項)

対象期間が3か月を超えるときは、48時間を超える週の並べ方にも2つの条件が付きます。

対象期間において、その労働時間が四十八時間を超える週が連続する場合の週数が三以下であること。

(労働基準法施行規則 第十二条の四第四項第一号)

対象期間をその初日から三箇月ごとに区分した各期間(三箇月未満の期間を生じたときは、当該期間)において、その労働時間が四十八時間を超える週の初日の数が三以下であること。

(労働基準法施行規則 第十二条の四第四項第二号)

労働日数の限度は、第三項で決まっています。

法第三十二条の四第三項の厚生労働省令で定める労働日数の限度は、同条第一項第二号の対象期間(以下この条において「対象期間」という。)が三箇月を超える場合は対象期間について一年当たり二百八十日とする。

(労働基準法施行規則 第十二条の四第三項)

ただし書により、前の協定より1日の最長時間(9時間未満なら9時間)か1週の最長時間(48時間未満なら48時間)を延ばすときは、前の協定の1年当たり労働日数から1日を減じた日数と二百八十日の少ないほうが限度になります。

連続して働かせる日数の限度は、第五項です。

法第三十二条の四第三項の厚生労働省令で定める対象期間における連続して労働させる日数の限度は六日とし、同条第一項の協定(労使委員会の決議及び労働時間等設定改善委員会の決議を含む。)で特定期間として定められた期間における連続して労働させる日数の限度は一週間に一日の休日が確保できる日数とする。

(労働基準法施行規則 第十二条の四第五項)

限度数字根拠(施行規則第十二条の四)
1日の労働時間十時間第四項
1週間の労働時間五十二時間第四項
48時間を超える週の連続三以下(対象期間が3か月超のとき)第四項第一号
48時間を超える週の初日の数3か月ごとに三以下(対象期間が3か月超のとき)第四項第二号
労働日数原則として一年当たり二百八十日(対象期間が3か月超のとき)第三項
連続して働かせる日数六日(特定期間は1週間に1日の休日が確保できる日数)第五項

シフト表で1日10時間・1週52時間・連続6日を超える並びがあれば、施行規則の限度に当たるかどうかを見る場面です。

1週間単位の非定型的変形労働時間制=小売業・旅館・料理店・飲食店の30人未満

3つ目の型は、第三十二条の五です。

使用者は、日ごとの業務に著しい繁閑の差が生ずることが多く、かつ、これを予測した上で就業規則その他これに準ずるものにより各日の労働時間を特定することが困難であると認められる厚生労働省令で定める事業であつて、常時使用する労働者の数が厚生労働省令で定める数未満のものに従事する労働者については、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定があるときは、第三十二条第二項の規定にかかわらず、一日について十時間まで労働させることができる。

(労働基準法 第三十二条の五第一項)

対象の事業と人数は、施行規則が決めています。

法第三十二条の五第一項の厚生労働省令で定める事業は、小売業、旅館、料理店及び飲食店の事業とする。

(労働基準法施行規則 第十二条の五第一項)

法第三十二条の五第一項の厚生労働省令で定める数は、三十人とする。

(労働基準法施行規則 第十二条の五第二項)

この型が使えるのは、常時30人未満の4業種に限られます。

外しているのは「第三十二条第二項」だけで、1日8時間の上限が1日10時間まで動きます。

1週間40時間を定める第三十二条第一項は、この条では外されていません。

3つの型のうち、週の上限をそのまま残しているのはこの型だけです。

1週間単位の変形労働時間制の通知=その週が始まる前に書面で

1週間単位の型では、各日の労働時間を前もって本人に知らせる義務があります。

使用者は、前項の規定により労働者に労働させる場合においては、厚生労働省令で定めるところにより、当該労働させる一週間の各日の労働時間を、あらかじめ、当該労働者に通知しなければならない。

(労働基準法 第三十二条の五第二項)

通知の時期と方法は、施行規則第十二条の五第三項です。

法第三十二条の五第二項の規定による一週間の各日の労働時間の通知は、少なくとも、当該一週間の開始する前に、書面により行わなければならない。

ただし、緊急でやむを得ない事由がある場合には、使用者は、あらかじめ通知した労働時間を変更しようとする日の前日までに書面により当該労働者に通知することにより、当該あらかじめ通知した労働時間を変更することができる。

(労働基準法施行規則 第十二条の五第三項)

通知は1週間が始まる前に、書面で行う決まりで、変える場合も前日までに書面です。

各日の時間を決めるときの心がけも、条文に入っています。

使用者は、法第三十二条の五の規定により労働者に労働させる場合において、一週間の各日の労働時間を定めるに当たつては、労働者の意思を尊重するよう努めなければならない。

(労働基準法施行規則 第十二条の五第五項)

協定の届出は、第三項が第三十二条の二第二項を準用しています。

第三十二条の二第二項の規定は、第一項の協定について準用する。

(労働基準法 第三十二条の五第三項)

法第三十二条の五第三項において準用する法第三十二条の二第二項の規定による届出は、様式第五号により、所轄労働基準監督署長にしなければならない。

(労働基準法施行規則 第十二条の五第四項)

変形労働時間制で残業代が出る時間=定めを超えた時間と第37条

ここからが題名の問い、残業代の数え方です。

まず、1か月単位の第三十二条の二第一項の結びをもう一度見ます。

その定めにより、特定された週において同項の労働時間又は特定された日において同条第二項の労働時間を超えて、労働させることができる。

(労働基準法 第三十二条の二第一項)

1年単位の第三十二条の四第一項も、同じ形の言葉で結ばれています。

特定された週において同条第一項の労働時間又は特定された日において同条第二項の労働時間を超えて、労働させることができる。

(労働基準法 第三十二条の四第一項)

条文が40時間・8時間を超えてよいとしているのは、定めで特定された週と日です。

定めで特定した時間と8時間・40時間の両方を超えて労働時間を延長するときの根拠は、第三十六条第一項の協定になります。

第三十二条から第三十二条の五まで若しくは第四十条の労働時間(以下この条において「労働時間」という。)又は前条の休日(以下この条において「休日」という。)に関する規定にかかわらず、その協定で定めるところによつて労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる。

(労働基準法 第三十六条第一項)

第三十六条は、外す対象として「第三十二条から第三十二条の五まで」を挙げています。

変形労働時間制の3つの型も、この範囲の中です。

そして、第三十六条第一項で延長した時間には、第三十七条第一項の割増賃金が付きます。

使用者が、第三十三条又は前条第一項の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の二割五分以上五割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。

ただし、当該延長して労働させた時間が一箇月について六十時間を超えた場合においては、その超えた時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の五割以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。

(労働基準法 第三十七条第一項)

時間の種類条文の上の扱い
定めで特定した時間の範囲内で、40時間・8時間を超える時間第三十二条の二・第三十二条の四で働かせることができる時間
定めで特定した時間を超え、かつ8時間・40時間(特定した時間が長い日・週はその時間)を超えた時間第三十六条第一項による延長=第三十七条第一項の割増賃金
午後10時から午前5時の時間第三十七条第四項の深夜の割増賃金

深夜の割増賃金を定める第三十七条第四項は、時間外かどうかとは別の項です。

使用者が、午後十時から午前五時まで(厚生労働大臣が必要であると認める場合においては、その定める地域又は期間については午後十一時から午前六時まで)の間において労働させた場合においては、その時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の二割五分以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。

(労働基準法 第三十七条第四項)

変形労働時間制の3つの条には、第三十七条を外す言葉は入っていません。

割増賃金の率そのものは、割増賃金の率を労働基準法37条と政令で確かめた記事で深夜の率も含めて並べています。↓

1年単位の変形労働時間制の途中入社・途中退職=第32条の4の2の割増賃金

1年単位の型には、対象期間の途中で入った人や辞めた人の精算の条文があります。

使用者が、対象期間中の前条の規定により労働させた期間が当該対象期間より短い労働者について、当該労働させた期間を平均し一週間当たり四十時間を超えて労働させた場合においては、その超えた時間(第三十三条又は第三十六条第一項の規定により延長し、又は休日に労働させた時間を除く。)の労働については、第三十七条の規定の例により割増賃金を支払わなければならない。

(労働基準法 第三十二条の四の二)

働いた期間を平均して週40時間を超えた分には、割増賃金を支払うと条文が定めています。

カッコの中で、第三十六条第一項などで延長した時間は除かれています。

第三十七条ですでに割増賃金を払う時間を、ここで重ねて数えない書き方です。

この精算の条文が置かれているのは1年単位の型だけで、1か月単位と1週間単位には同じ条がありません。

転職で対象期間の途中に入社・退職するときは、この条文の番号を手元に置いておくと話が早くなります。

さかのぼって請求できる期間は、残業代の時効を労働基準法115条で確かめた記事にまとめています。↓

変形労働時間制が当たらない人=満18歳未満と請求した妊産婦

3つの型をまとめて外す条文が、2つあります。

1つ目は年少者の第六十条第一項です。

第三十二条の二から第三十二条の五まで、第三十六条、第四十条及び第四十一条の二の規定は、満十八才に満たない者については、これを適用しない。

(労働基準法 第六十条第一項)

満18歳未満の人には、第三十二条の二から第三十二条の五までが当たりません。

ただし、満15歳以上の人については、満15歳に達した日以後の最初の3月31日までの間を除き、第三項で1か月単位と1年単位の型の例による働かせ方が別に認められています。

一週間について四十八時間以下の範囲内で厚生労働省令で定める時間、一日について八時間を超えない範囲内において、第三十二条の二又は第三十二条の四及び第三十二条の四の二の規定の例により労働させること。

(労働基準法 第六十条第三項第二号)

この例外は1週48時間以下・1日8時間以内という枠の中に限られます。

2つ目は、冒頭で見た妊産婦の第六十六条第一項です。

妊産婦が請求すれば、3つの型のどれであっても、1週40時間・1日8時間を超えて働かせることはできません。

このほか、施行規則には育児や介護を行う人への配慮の定めがあります。

使用者は、法第三十二条の二、第三十二条の四又は第三十二条の五の規定により労働者に労働させる場合には、育児を行う者、老人等の介護を行う者、職業訓練又は教育を受ける者その他特別の配慮を要する者については、これらの者が育児等に必要な時間を確保できるような配慮をしなければならない。

(労働基準法施行規則 第十二条の六)

こちらは「配慮をしなければならない」という書き方で、型そのものを外す条文ではありません。

変形労働時間制の求人で確かめる順番=条文の番号つき

入社前の書面では、労働時間の定め方が手がかりになります。

使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。

この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。

(労働基準法 第十五条第一項)

始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を二組以上に分けて就業させる場合における就業時転換に関する事項

(労働基準法施行規則 第五条第一項第二号)

就業規則の記載事項にも、始業と終業の時刻が入っています。

始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を二組以上に分けて交替に就業させる場合においては就業時転換に関する事項

(労働基準法 第八十九条第一号)

順番確かめること根拠の条文
1どの型か(1か月・1年・1週間)第三十二条の二・第三十二条の四・第三十二条の五
2平均する期間とその起算日第三十二条の四第一項第二号・施行規則第十二条の二第一項
3日ごとの時間がいつ示されるか第三十二条の四第二項・施行規則第十二条の五第三項
41日・1週の最長時間と連続勤務の日数施行規則第十二条の四第三項〜第五項
5時間外労働の協定と割増賃金の扱い第三十六条第一項・第三十七条

1と2は書面の言葉、3と4はシフトの決め方、5は残業代の根拠を見る項目です。

面接では、型の名前と平均する期間の2つを聞いておくと、入社後のシフトが読みやすくなります。

労働条件通知書の記載事項は、労働条件通知書の記載事項を労働基準法15条と施行規則5条で確かめた記事で全項目を並べています。↓

変形労働時間制についてよくある質問

変形労働時間制なら1日10時間働いても残業代は出ませんか?

第三十二条の二と第三十二条の四は、定めで特定された日に限って1日8時間を超えて働かせることができるとしています。

定めで特定した時間を超え、かつ1日8時間・1週40時間(特定した時間がそれより長い日・週はその時間)を超えた時間は、第三十六条第一項による延長になり、第三十七条第一項の割増賃金の条文が当たります。

変形労働時間制の3つの型は何ですか?

1か月単位の第三十二条の二、1年単位の第三十二条の四、1週間単位の非定型的な第三十二条の五です。

1か月単位の変形労働時間制は労使協定がないと使えませんか?

第三十二条の二第一項は、書面による協定と、就業規則その他これに準ずるものを「又は」で並べています。

1年単位の変形労働時間制で1日に働かせられる上限は何時間ですか?

労働基準法施行規則第十二条の四第四項が、1日の限度を十時間、1週間の限度を五十二時間と定めています。

1週間単位の変形労働時間制はどの会社でも使えますか?

施行規則第十二条の五が、小売業、旅館、料理店及び飲食店の事業で、常時使用する労働者の数が三十人未満のものに限っています。

1年単位の変形労働時間制で途中退職したときの残業代はどうなりますか?

第三十二条の四の二が、働いた期間を平均し1週間当たり40時間を超えた時間について、第三十七条の例により割増賃金を支払うよう定めています。

変形労働時間制でも深夜の割増賃金は出ますか?

深夜の割増賃金は第三十七条第四項で、変形労働時間制の3つの条には第三十七条を外す言葉は置かれていません。

妊娠中でも変形労働時間制で長い日の勤務を求められますか?

第六十六条第一項により、妊産婦が請求した場合は、3つの型のどれでも1週40時間・1日8時間を超えて働かせてはならないとされています。

18歳未満のアルバイトに変形労働時間制は当たりますか?

第六十条第一項は、第三十二条の二から第三十二条の五までを満18歳未満の者には適用しないとしています。

満15歳以上については、満15歳に達した日以後の最初の3月31日までの間を除き、第三項第二号で1週48時間以下・1日8時間以内の枠の中に限った例外が置かれています。

変形労働時間制を条文で確かめた結果の一覧

条文で確かめたこと
  • 3つの型=第三十二条の二(1か月以内)・第三十二条の四(1か月超1年以内)・第三十二条の五(1週間・1日十時間まで)
  • 1か月単位は書面の協定か就業規則、1年単位と1週間単位は書面の協定
  • 協定の届出は所轄労働基準監督署長へ、期間の起算日を明らかにする
  • 1年単位の限度=1日十時間・1週五十二時間・連続六日・3か月超なら原則として年二百八十日
  • 1週間単位は小売業・旅館・料理店・飲食店の常時30人未満、その週が始まる前に書面で通知
  • 8時間超えが許されるのは定めで特定された週と日だけ
  • 特定した時間と8時間・40時間の両方を超えた延長は第三十六条第一項、割増賃金は第三十七条第一項
  • 1年単位の途中入社・退職は第三十二条の四の二で割増賃金
  • 満18歳未満と請求した妊産婦には3つの型が当たらない

シフトの長い日に残業代が付いていないと感じたら、その日が定めで特定された日かどうかを、協定や就業規則の言葉で見ることになります。

個別の事情への当てはめは、事業場を管轄する労働基準監督署か弁護士に相談する領域です。


あわせて読みたい

時間外労働の上限そのものは、36協定の限度時間を労働基準法36条で確かめた記事で整理しています。↓

働く時間を本人に任せる別の制度として、裁量労働制を労働基準法38条の3と38条の4で確かめた記事も条文で確かめています。↓


参考文献

この記事で使った一次資料

条文の確認日は2026年10月7日です。

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