
割増賃金の率は、1つの条文にまとまっていません。
法律が置いているのは枠だけで、実際の数字は政令の側にあります。
この記事で確かめるのは、どの率がどこに書いてあるのかだけです。
就業規則も、給与明細も、解説書も見ません。
使うのはe-Gov法令検索の条文だけです。
先に答えを書きます。
時間外は二割五分、休日は三割五分、深夜は二割五分です。
条文の確認日は2026年9月26日。
割増賃金の率を決めている条文が2つに分かれている理由
出発点は第三十七条第一項の本文です。
使用者が、第三十三条又は前条第一項の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の二割五分以上五割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。
ここに出てくるのは「二割五分以上五割以下の範囲内」という幅だけになります。
そして「それぞれ政令で定める率以上の率」と、数字の決定を政令へ預けています。
| どこ | 書いてあること |
|---|---|
| 労働基準法 第三十七条第一項 | 二割五分以上五割以下という範囲と、政令へ預ける指示 |
| 平成六年政令第五号 | 時間外二割五分・休日三割五分という実際の率 |
| 労働基準法 第三十七条第一項ただし書 | 月六十時間を超えた時間外の五割 |
| 労働基準法 第三十七条第四項 | 深夜の二割五分 |
つまり法律だけを読んでも具体的な率は出てこない構造になっています。
第二項が、その政令の決め方まで指定しているのが特徴です。
前項の政令は、労働者の福祉、時間外又は休日の労働の動向その他の事情を考慮して定めるものとする。
考慮する事情まで法律の側で縛る書き方です。
割増賃金の率の実物=政令が定める二割五分と三割五分
数字が入っているのは、平成六年政令第五号のたった1文です。
労働基準法第三十七条第一項の政令で定める率は、同法第三十三条又は第三十六条第一項の規定により延長した労働時間の労働については二割五分とし、これらの規定により労働させた休日の労働については三割五分とする。
この1文だけで、2つの率が決まります。
- 延長した労働時間の労働=二割五分
- 労働させた休日の労働=三割五分
政令の題名にも「最低限度を定める」と入っています。
政令の数字は下限で、上限ではない。
法律の側が「二割五分以上五割以下の範囲内」と枠を切っているので、会社が三割にすることは可能な形です。
下げることだけが、条文の側で止められています。
休日の割増賃金の率が時間外より高い理由=第三十五条の休日
三割五分が適用される「休日」の意味は、第三十五条にあります。
使用者は、労働者に対して、毎週少くとも一回の休日を与えなければならない。
前項の規定は、四週間を通じ四日以上の休日を与える使用者については適用しない。
条文が義務づけているのは、毎週1回、または4週で4日です。
これを法定休日といいます。
週休2日の会社であっても、条文が求めているのは1日だけになります。
| 休日の種類 | 条文の根拠 | 働いたときの割増賃金の率 |
|---|---|---|
| 法定休日 | 第三十五条が与えるよう義務づけた日 | 三割五分(政令) |
| それ以外の休日 | 会社が独自に置いている日 | 三割五分の対象ではない |
土曜に出ても三割五分になるとは限らないのは、この線引きのためです。
どちらを法定休日にするかを条文が指定しているわけでもありません。
月60時間を超えた時間外の割増賃金の率=五割
第三十七条第一項には、ただし書きが付いています。
ただし、当該延長して労働させた時間が一箇月について六十時間を超えた場合においては、その超えた時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の五割以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。
ここだけは政令ではなく、法律が直接「五割以上」と決めています。
対象は「その超えた時間」だけです。
| 1か月の時間外労働 | 率の内訳 |
|---|---|
| 最初の60時間 | 二割五分(政令) |
| 60時間を超えた部分 | 五割以上(第三十七条第一項ただし書) |
60時間を超えた瞬間に、全部が五割になるわけではありません。
条文が「その超えた時間の労働については」と限定しているためです。
数え方も、1か月単位である点が本文に書き込まれています。
割増賃金の率の代わりに休暇を与えられる仕組み=第三十七条第三項
五割の部分だけは、お金ではなく休みに振り替えられます。
使用者が、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、第一項ただし書の規定により割増賃金を支払うべき労働者に対して、当該割増賃金の支払に代えて、通常の労働時間の賃金が支払われる休暇(第三十九条の規定による有給休暇を除く。)を厚生労働省令で定めるところにより与えることを定めた場合において、当該労働者が当該休暇を取得したときは、当該労働者の同項ただし書に規定する時間を超えた時間の労働のうち当該取得した休暇に対応するものとして厚生労働省令で定める時間の労働については、同項ただし書の規定による割増賃金を支払うことを要しない。
かっこ書きに注目したいところです。
与える休暇から第三十九条の規定による有給休暇を除くと明記されています。
年次有給休暇を当てて済ませることは、条文の側で封じられている形です。
- 書面による労使協定があること
- 対象は第一項ただし書の部分(月六十時間超)だけであること
- 与えるのは年次有給休暇とは別の、賃金が支払われる休暇であること
免除されるのは、取得した休暇に対応する時間ぶんに限られます。
深夜の割増賃金の率=午後十時から午前五時までの二割五分
夜の割増は、第四項に独立して置かれています。
使用者が、午後十時から午前五時まで(厚生労働大臣が必要であると認める場合においては、その定める地域又は期間については午後十一時から午前六時まで)の間において労働させた場合においては、その時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の二割五分以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。
時間帯は午後十時から午前五時までです。
率は二割五分以上で、この項は政令に預けていません。
第一項と第四項は、条件を別々に置いています。
| 働いた状況 | 当たる項 | 率の重なり方 |
|---|---|---|
| 平日の日中に残業 | 第一項 | 二割五分 |
| 平日の深夜に残業 | 第一項+第四項 | 二割五分+二割五分 |
| 法定休日の深夜 | 政令の休日+第四項 | 三割五分+二割五分 |
時間外と深夜は別々に発生します。
どちらか一方だけになるという書き方は、条文のどこにもありません。
割増賃金の率を掛ける金額から外れる手当
率が分かっても、掛ける相手が決まらなければ金額は出ません。
第五項が、基礎から外す賃金を定義しています。
第一項及び前項の割増賃金の基礎となる賃金には、家族手当、通勤手当その他厚生労働省令で定める賃金は算入しない。
条文が名前を挙げているのは2つだけです。
- 家族手当
- 通勤手当
残りは「その他厚生労働省令で定める賃金」として省令に預けられています。
役職手当や資格手当は、この条文に名前が出てきません。
外せるものを会社が自由に決められる書き方にはなっていません。
割増賃金の率が発生する前提=第三十三条と第三十六条
第一項の主語には、条件が付いています。
「第三十三条又は前条第一項の規定により」という部分です。
前条第一項とは、第三十六条第一項を指します。
| 条 | 中身 | 割増賃金との関係 |
|---|---|---|
| 第三十三条 | 災害その他避けることのできない事由による臨時の必要 | この条で延長した時間に率がかかる |
| 第三十六条第一項 | 労使協定(36協定)による延長 | この協定で延長した時間に率がかかる |
| 第三十五条 | 毎週1回または4週4日の休日 | この休日の労働に三割五分がかかる |
率の話に入る前に、そもそも延長できる根拠が要る構造です。
この順番は、条文の並びからも読み取れます。
割増賃金の率を掛ける1時間あたりの金額の出し方
率が決まっても、掛ける相手が決まらなければ金額は出せません。
その計算方法は、労働基準法施行規則第十九条にあります。
法第三十七条第一項の規定による通常の労働時間又は通常の労働日の賃金の計算額は、次の各号の金額に法第三十三条若しくは法第三十六条第一項の規定によつて延長した労働時間数若しくは休日の労働時間数又は午後十時から午前五時(厚生労働大臣が必要であると認める場合には、その定める地域又は期間については午後十一時から午前六時)までの労働時間数を乗じた金額とする。
月給の人に当たるのは、第四号になります。
四 月によつて定められた賃金については、その金額を月における所定労働時間数(月によつて所定労働時間数が異る場合には、一年間における一月平均所定労働時間数)で除した金額
月ごとに所定労働時間が変わる場合は、1年間の1か月平均で割ります。
その月の所定労働時間で割る形ではない点が、かっこ書きに書き込まれています。
| 賃金の決め方 | 1時間あたりの出し方 | 根拠の号 |
|---|---|---|
| 時間で定めた賃金 | その金額そのもの | 第一号 |
| 日で定めた賃金 | 1日の所定労働時間数で割る | 第二号 |
| 週で定めた賃金 | 週の所定労働時間数で割る | 第三号 |
| 月で定めた賃金 | 月の所定労働時間数で割る | 第四号 |
| 出来高払制 | 賃金の総額を総労働時間数で割る | 第六号 |
複数の形が混ざっている人は、第七号が合計するよう定めています。
さらに第二項が、抜け道をふさいでいます。
休日手当その他前項各号に含まれない賃金は、前項の計算においては、これを月によつて定められた賃金とみなす。
どこにも当てはまらない手当は、月給として扱う決まりです。
割増賃金の率が適用されない人=第四十一条の3つ
率の話が届かない人も、条文に列挙されています。
この章、第六章及び第六章の二で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次の各号の一に該当する労働者については適用しない。
一 別表第一第六号(林業を除く。)又は第七号に掲げる事業に従事する者
二 事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者
三 監視又は断続的労働に従事する者で、使用者が行政官庁の許可を受けたもの
いわゆる管理監督者は、第二号に入ります。
ここで読みたいのは、適用除外の対象として何が挙がっているかです。
条文が並べているのは労働時間、休憩及び休日の3つになります。
- 労働時間に関する規定
- 休憩に関する規定
- 休日に関する規定
この列挙に「深夜」という語は入っていません。
第三十七条第四項の深夜割増が外れるとは、条文の文言からは読み取れない形です。
また、第二号が求めているのは「監督若しくは管理の地位」という実態です。
役職名で決まるという書き方は、どこにもありません。
割増賃金を払わなかった場合に条文が置いている罰則
払われなかったときにどうなるかも、条文が定めています。
第百十九条第一号です。
次の各号のいずれかに該当する者は、六月以下の拘禁刑又は三十万円以下の罰金に処する。
この号が並べている条文の中に、第三十七条が含まれています。
| 違反した条文 | 第百十九条の扱い | 法定刑 |
|---|---|---|
| 第三十七条(割増賃金) | 第一号に列挙されている | 六月以下の拘禁刑または三十万円以下の罰金 |
| 第三十五条(休日) | 第一号に列挙されている | 同上 |
| 第三十二条(労働時間) | 第一号に列挙されている | 同上 |
割増賃金の不払いは、刑事罰の対象として条文に置かれているということです。
民事の請求とは別に、罰則の側が用意されている構造になります。
災害時に延長した時間にも割増賃金の率がかかる根拠
第三十七条第一項が挙げている第三十三条は、災害時の規定です。
災害その他避けることのできない事由によつて、臨時の必要がある場合においては、使用者は、行政官庁の許可を受けて、その必要の限度において第三十二条から前条まで若しくは第四十条の労働時間を延長し、又は第三十五条の休日に労働させることができる。
ただし、事態急迫のために行政官庁の許可を受ける暇がない場合においては、事後に遅滞なく届け出なければならない。
この条は、36協定が無くても延長できる場面を作っています。
ただし、割増賃金の側は免除されません。
第三十七条第一項が「第三十三条又は前条第一項の規定により」と、両方を並べているためです。
災害時でも率は下がりません。
条文が用意しているのは、延長できる根拠の追加だけになります。
延長そのものに何時間の上限があるかは、別の条文の話になります。
限度時間については、36協定の45時間を条文で確かめた記事で整理しました。↓

あらかじめ定額で払う形が有効かどうかも、同じ第三十七条が関わります。
その条件は、固定残業代の条件を条文で確かめた記事にまとめています。↓

政令が割増賃金の率を決めるときに考慮するもの
率を政令に預けた以上、その政令をどう作るかも決めておく必要があります。
それを担っているのが第三十七条第二項です。
前項の政令は、労働者の福祉、時間外又は休日の労働の動向その他の事情を考慮して定めるものとする。
挙げられているのは3つになります。
- 労働者の福祉
- 時間外又は休日の労働の動向
- その他の事情
会社の負担や景気という言葉は、この項に出てきません。
考慮の軸として最初に置かれているのは労働者の福祉です。
政令の数字が二割五分と三割五分にとどまっている理由までは、条文から読み取れません。
条文が用意しているのは、決め方の枠だけになります。
政令そのものに、率を見直す時期の定めもありません。
平成六年に置かれた数字が、そのまま現在の最低限度として効いている形です。
| 条文 | 決めていること |
|---|---|
| 第三十七条第一項 | 二割五分以上五割以下という範囲と、政令への委任 |
| 第三十七条第二項 | その政令を定めるときに考慮するもの |
| 平成六年政令第五号 | 時間外二割五分・休日三割五分という最低限度 |
割増賃金の率について、条文から確かめられなかったこと
この記事で扱ったのは、法律と政令に書いてあることだけです。
読んでも出てこなかったものを並べます。
- どの曜日を法定休日にするかの決め方
- 家族手当という名前でも実質が違う場合の判断
- 「監督若しくは管理の地位」に当たるかどうかの具体的な線
- 第三十三条の「避けることのできない事由」に何が入るか
- 代替休暇を何時間ぶん与えれば何時間の割増が免除されるかの換算
以上は条文の本体に出てきません。
個別の計算は、労働基準監督署または社会保険労務士の領域になります。
割増賃金の率についてよくある質問
- 割増賃金の率は法律のどこに書いてありますか?
-
範囲は労働基準法第三十七条第一項です。
実際の率は平成六年政令第五号にあり、時間外が二割五分、休日が三割五分と定められています。
- 会社が二割五分より高い率にすることはできますか?
-
できます。
政令の題名が「率の最低限度を定める政令」で、第三十七条第一項も「政令で定める率以上の率」という形を取っています。
- 月60時間を超えたら全部五割になりますか?
-
なりません。
第三十七条第一項ただし書は「その超えた時間の労働については」と限定しています。
最初の六十時間は二割五分のままです。
- 深夜に残業したら率はどうなりますか?
-
第一項の時間外と第四項の深夜は別々の条文です。
どちらか一方だけになるという書き方はありません。
- 土曜に働いたら三割五分ですか?
-
三割五分がかかるのは、第三十五条が与えるよう義務づけた法定休日の労働です。
どの日を法定休日にするかは、条文が指定していません。
- 管理職になると割増賃金の率は関係なくなりますか?
-
第四十一条が適用除外にしているのは、労働時間、休憩及び休日に関する規定です。
この列挙に深夜という語は入っていません。
また第四十一条第二号が求めているのは「監督若しくは管理の地位」という実態で、役職名を基準にする書き方ではありません。
- 1時間あたりいくらに率を掛けるのですか?
-
労働基準法施行規則第十九条が、賃金の決め方ごとに計算方法を置いています。
月給なら、その金額を月における所定労働時間数で割った金額です。
月によって所定労働時間数が異なる場合は、一年間における一月平均所定労働時間数で割ると同条第一項第四号が定めています。
- 家族手当という名前なら必ず割増賃金の計算から外れますか?
-
第三十七条第五項が挙げているのは、家族手当、通勤手当その他厚生労働省令で定める賃金です。
条文は手当の名前ではなく賃金の種類を挙げる形になっています。
名前が同じでも中身が違う場合にどう扱うかまでは、条文からは読み取れません。
- 割増賃金を払わなかった会社に罰則はありますか?
-
労働基準法第百十九条第一号が、第三十七条違反を六月以下の拘禁刑又は三十万円以下の罰金としています。
民事の請求とは別に、罰則の側が用意されている構造です。
- 災害で急に働いた時間にも割増賃金の率はかかりますか?
-
かかります。
第三十七条第一項が「第三十三条又は前条第一項の規定により」と、災害等の第三十三条を並べて書いているためです。
第三十三条は延長できる根拠を足す条文で、割増賃金を免除する条文ではありません。
割増賃金の率を条文で確かめた結果の一覧
条文と政令だけで確かめられたことを並べます。
- 法律が置いているのは「二割五分以上五割以下の範囲内」という枠だけ(第三十七条第一項)
- 実際の率は平成六年政令第五号にあり、時間外二割五分・休日三割五分
- 政令の題名は「率の最低限度を定める政令」=下限であって上限ではない
- 月六十時間を超えた時間外は五割以上(第三十七条第一項ただし書)
- 五割の部分は労使協定で代替休暇に振り替えられる(同条第三項)
- 代替休暇から年次有給休暇は明文で除かれている
- 深夜は午後十時から午前五時までで二割五分以上(同条第四項)
- 基礎となる賃金から家族手当と通勤手当は外す(同条第五項)
- 三割五分の対象は第三十五条の法定休日の労働
読むときの軸は、率そのものよりどの項が根拠になっているかです。
時間外・休日・深夜は、別々の項で別々に発生します。
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払われなかったぶんをいつまで請求できるかは、残業代の時効を条文で確かめた記事が対応します。↓

参考文献
- 労働基準法(e-Gov法令検索・デジタル庁)
- 労働基準法施行規則(e-Gov法令検索・デジタル庁)
- 労働基準法第三十七条第一項の時間外及び休日の割増賃金に係る率の最低限度を定める政令(e-Gov法令検索・デジタル庁)
条文の確認日は2026年9月26日です。

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