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有期労働契約の上限は3年か5年か──労働基準法14条の「三年」と例外2つを条文で確かめた

労働基準法14条が定める有期労働契約の上限(原則三年・高度専門と満六十歳以上は五年)と、労働契約法17条から19条までを条文で確かめた記事のアイキャッチ
労働基準法14条が定める有期労働契約の上限(原則三年・高度専門と満六十歳以上は五年)と、労働契約法17条から19条までを条文で確かめた記事のアイキャッチ

有期労働契約の上限は、3年とも5年とも言われます。

どちらも条文にある数字で、分かれ目も条文に書いてあります。

この記事で確かめるのは、その分かれ目がどこかだけです。

就業規則も、求人票も、解説書も見ません。

使うのはe-Gov法令検索の条文だけです。

先に答えを書きます。

原則は三年で、五年になるのは第十四条第一項が挙げる2つの場合だけです。

条文の確認日は2026年9月26日。

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有期労働契約の上限を決めている条文=労働基準法第十四条

出発点は第十四条第一項の本文です。

労働契約は、期間の定めのないものを除き、一定の事業の完了に必要な期間を定めるもののほかは、三年(次の各号のいずれかに該当する労働契約にあつては、五年)を超える期間について締結してはならない。

原則の数字は三年です。

五年は「次の各号のいずれかに該当する労働契約にあつては」という括弧の中にあります。

つまり五年は例外の側の数字になります。

どこ書いてあること
第十四条第一項 本文原則は三年を超えて締結してはならない
第十四条第一項 括弧書き各号に当たる場合は五年
第十四条第一項 第一号高度の専門的知識等を有する労働者
第十四条第一項 第二号満六十歳以上の労働者

条文が禁じているのは、上限を超える期間で「締結」することです。

更新を繰り返して通算が三年を超えることは、この条が禁じている対象ではありません。

上限は1回の契約の長さにかかるという読み方になります。

有期労働契約の上限が五年になる2つの場合

五年になる場合は、第一号と第二号に列挙されています。

一 専門的な知識、技術又は経験(以下この号及び第四十一条の二第一項第一号において「専門的知識等」という。)であつて高度のものとして厚生労働大臣が定める基準に該当する専門的知識等を有する労働者(当該高度の専門的知識等を必要とする業務に就く者に限る。)との間に締結される労働契約

二 満六十歳以上の労働者との間に締結される労働契約(前号に掲げる労働契約を除く。)

第一号には、さらに条件が付いています。

括弧書きが「当該高度の専門的知識等を必要とする業務に就く者に限る」と絞っています。

資格を持っているだけでは足りず、その知識を必要とする業務に就いていることまで求める形です。

有期労働契約の上限が五年になる条件
  • 厚生労働大臣が定める基準に当たる高度の専門的知識等を有すること
  • その高度の専門的知識等を必要とする業務に就いていること
  • または、満六十歳以上であること

第二号には業務の限定がありません。

年齢だけで五年の枠に入ります。

どの資格が第一号の基準に当たるかは、第十四条の本文には並んでいません。

その中身は厚生労働大臣が定める基準に預けられています。

有期労働契約の上限から外れる「一定の事業の完了に必要な期間」

第十四条第一項には、もう1つ枠の外があります。

本文の「一定の事業の完了に必要な期間を定めるもののほかは」という部分です。

この形の契約は、三年にも五年にも縛られません。

契約の形上限根拠
ふつうの有期労働契約三年第十四条第一項 本文
高度専門・満六十歳以上五年第十四条第一項 各号
一定の事業の完了に必要な期間条文に数字なし第十四条第一項 本文の除外
期間の定めのない労働契約そもそも対象外第十四条第一項 本文の除外

ここで注意したいのは、除外されるのが「一定の事業の完了に必要な期間を定めるもの」という点です。

長い工事だから自由、という書き方にはなっていません。

その事業が完了するまでに必要な期間であることが、条文の要求になります。

有期労働契約の上限を超えて結んだ場合に条文が置く効果

上限を超える期間で契約してしまったときの扱いも、条文にあります。

第十三条です。

この法律で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効とする。

この場合において、無効となつた部分は、この法律で定める基準による。

無効になるのは契約全体ではありません。

条文が無効にすると言っているのは「その部分」だけです。

契約そのものは残り、期間の部分だけが法律の基準に置き換わる構造になります。

置き換わる先は「この法律で定める基準」です。

第十四条第一項の三年または五年が、その基準に当たります。

有期労働契約の上限に違反した場合の罰則

罰則の側も用意されています。

第百二十条第一号の冒頭です。

次の各号のいずれかに該当する者は、三十万円以下の罰金に処する。

この号が並べている条文の先頭に、第十四条が置かれています。

違反した条文第百二十条の扱い法定刑
第十四条(契約期間等)第一号の先頭に列挙三十万円以下の罰金
第十五条第一項(労働条件の明示)第一号に列挙三十万円以下の罰金
第二十三条から第二十七条まで第一号に列挙三十万円以下の罰金

第十四条違反は、民事の無効と刑事の罰金が両方かかる形です。

同じ第百二十条第一号には、労働条件の明示を定める第十五条第一項も入っています。

有期労働契約の途中で辞められる時期=第百三十七条

期間を決めた以上、途中で辞められないのかという問いが残ります。

これに答えているのが第百三十七条です。

期間の定めのある労働契約(一定の事業の完了に必要な期間を定めるものを除き、その期間が一年を超えるものに限る。)を締結した労働者(第十四条第一項各号に規定する労働者を除く。)は、労働基準法の一部を改正する法律(平成十五年法律第百四号)附則第三条に規定する措置が講じられるまでの間、民法第六百二十八条の規定にかかわらず、当該労働契約の期間の初日から一年を経過した日以後においては、その使用者に申し出ることにより、いつでも退職することができる。

条件は括弧書きに詰まっています。

第百三十七条が使える条件
  • 契約期間が一年を超えるものであること
  • 一定の事業の完了に必要な期間を定めるものでないこと
  • 第十四条第一項各号の労働者(高度専門・満六十歳以上)でないこと
  • 契約期間の初日から一年を経過した日以後であること

五年契約ができる人は、この条から外されています。

三年契約の人は、一年たてば申し出だけで退職できる形です。

会社の承諾は条文に出てきません。

有期労働契約の途中解雇を縛る労働契約法第十七条

辞める側の話に対して、解雇する側の話は別の法律にあります。

使用者は、期間の定めのある労働契約(以下この章において「有期労働契約」という。)について、やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない。

求められているのは「やむを得ない事由」です。

期間の定めのない契約の解雇について労働契約法第十六条が求める水準とは、条文の言葉が違います。

元になっている民法の条文も見ておきます。

当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。

この場合において、その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償の責任を負う。

民法は労使のどちらにも同じ言葉を使っています。

労働契約法第十七条第一項は、そのうち使用者の側だけを取り出して禁止の形に置き換えた条文です。

有期労働契約の期間を必要以上に短くしないよう求める条文

期間の短さについても、条文が1つ置かれています。

使用者は、有期労働契約について、その有期労働契約により労働者を使用する目的に照らして、必要以上に短い期間を定めることにより、その有期労働契約を反復して更新することのないよう配慮しなければならない。

語尾は「配慮しなければならない」です。

禁止でも無効でもなく、配慮を求める書き方になっています。

何か月なら必要以上に短いのかという数字は置かれていません。

基準になるのは「労働者を使用する目的に照らして」という比較です。

有期労働契約の上限と通算五年の無期転換は別の条文

五年という数字は、もう1か所に出てきます。

労働契約法第十八条第一項の通算契約期間です。

こちらは1回の契約の長さではなく、積み上げた合計の話になります。

五年の意味どの条文数える対象
契約1回の上限労働基準法 第十四条第一項各号1本の契約の期間
無期転換の起点労働契約法 第十八条第一項二以上の契約を通算した期間

第十四条の五年は、高度専門と満六十歳以上だけに開く枠です。

第十八条の五年は、すべての有期労働契約が対象になります。

同じ数字でも、かかる相手がまるで違います。

通算の数え方については、無期転換ルールの5年を条文で確かめた記事で整理しました。↓

有期労働契約の更新を会社が拒めない場合

上限の範囲で契約しても、期間が来れば満了します。

その満了を会社が自由に使えるかを決めているのが、労働契約法第十九条です。

一 当該有期労働契約が過去に反復して更新されたことがあるものであって、その契約期間の満了時に当該有期労働契約を更新しないことにより当該有期労働契約を終了させることが、期間の定めのない労働契約を締結している労働者に解雇の意思表示をすることにより当該期間の定めのない労働契約を終了させることと社会通念上同視できると認められること。

二 当該労働者において当該有期労働契約の契約期間の満了時に当該有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるものであると認められること。

この2つのどちらかに当たる契約が対象になります。

そのうえで、更新の申込みを拒むことが客観的に合理的な理由を欠くと認められないことが要件です。

この条の中身は、雇止めの線を条文で確かめた記事にまとめています。↓

有期労働契約の期間を明示する義務=第十五条

上限の中で何年にしたのかは、伝えられなければ意味がありません。

それを義務づけているのが第十五条第一項です。

使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。

この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。

明示された内容が事実と違ったときの逃げ道も、同じ条にあります。

前項の規定によつて明示された労働条件が事実と相違する場合においては、労働者は、即時に労働契約を解除することができる。

期間が満了するのを待つ必要はありません。

即時に解除できると条文が書いています。

さらに第三項が、引っ越して就職した人の帰郷旅費を会社の負担としています。

有期労働契約の上限とセットで置かれた第十四条第二項と第三項

第十四条には、上限の数字のあとに2つの項が続きます。

厚生労働大臣は、期間の定めのある労働契約の締結時及び当該労働契約の期間の満了時において労働者と使用者との間に紛争が生ずることを未然に防止するため、使用者が講ずべき労働契約の期間の満了に係る通知に関する事項その他必要な事項についての基準を定めることができる。

想定されているのは、締結のときと満了のときの2つの場面です。

上限の話だけで終わらず、満了の通知まで射程に入っています。

行政官庁は、前項の基準に関し、期間の定めのある労働契約を締結する使用者に対し、必要な助言及び指導を行うことができる。

第三項が用意しているのは助言と指導です。

罰則ではなく、行政の側からの働きかけになります。

項決めていること効き方
第十四条第一項契約期間の上限(三年・五年)違反は無効と罰金
第十四条第二項厚生労働大臣が基準を定められること基準の根拠
第十四条第三項行政官庁の助言及び指導助言と指導

上限の数字だけを取り出すと、この2項が見えなくなります。

第十四条は、期間をめぐる紛争そのものを扱う条になっています。

有期労働契約の上限と、期間の定めがない場合の辞め方の違い

比べる相手として、期間を決めなかった場合も見ておきます。

当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。

この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。

期間を決めていなければ、二週間で終わります。

期間を決めると、この二週間の道が閉じます。

代わりに開くのが、民法第六百二十八条のやむを得ない事由と、労働基準法第百三十七条の一年です。

辞められる時期の条文
  • 期間の定めなし=申入れから二週間(民法第六百二十七条第一項)
  • 期間の定めあり=やむを得ない事由があれば直ちに(民法第六百二十八条)
  • 一年を超える有期=初日から一年経過後はいつでも(労働基準法第百三十七条)

期間を決めることは、辞めにくくなることとセットです。

上限が三年に抑えられている意味も、ここに現れます。

長い期間で縛れるほど、辞められない時間が伸びるためです。

三年は縛れる長さの天井になります。

有期労働契約の上限について条文から確かめられなかったこと

条文だけでは決まらない部分も並べておきます。

条文に書かれていないこと
  • どの資格や経験が第一号の「高度のもの」に当たるかの具体的な一覧
  • 「一定の事業の完了に必要な期間」に当たるかどうかの判断
  • 労働契約法第十七条第二項の「必要以上に短い期間」が何か月からか
  • 第十七条第一項の「やむを得ない事由」に何が入るか
  • 更新の回数そのものに上限があるかどうか

これらは第十四条にも第十七条にも数字が置かれていません。

条文で分かるのはここまでです。

有期労働契約の上限についてよくある質問

有期労働契約の上限は3年ですか5年ですか?

原則は三年です。

労働基準法第十四条第一項の本文が三年を上限とし、五年は各号に当たる場合の例外として括弧書きに置かれています。

5年の契約ができるのはどんな人ですか?

第一号の高度の専門的知識等を有する労働者と、第二号の満六十歳以上の労働者です。

第一号はさらに、その高度の専門的知識等を必要とする業務に就く者に限られます。

更新を重ねて通算3年を超えたら違法ですか?

第十四条第一項が禁じているのは、上限を超える期間で締結することです。

更新の結果として通算が長くなることを禁じる書き方にはなっていません。

3年を超える契約を結んでしまったらどうなりますか?

労働基準法第十三条により、基準に達しない部分が無効になります。

無効になった部分は、この法律で定める基準によると同条が定めています。

有期労働契約の上限を破った会社に罰則はありますか?

あります。

労働基準法第百二十条第一号が第十四条を挙げ、三十万円以下の罰金としています。

有期労働契約は途中で辞められますか?

第百三十七条が、一年を超える契約について契約期間の初日から一年を経過した日以後はいつでも退職できるとしています。

ただし第十四条第一項各号の労働者と、一定の事業の完了に必要な期間を定める契約は除かれます。

会社は有期労働契約を途中で解雇できますか?

労働契約法第十七条第一項が、やむを得ない事由がある場合でなければ解雇できないとしています。

期間の途中であることが、条文上の縛りになっています。

契約期間を1か月にして何度も更新するのは問題ですか?

労働契約法第十七条第二項が、必要以上に短い期間を定めて反復更新することのないよう配慮を求めています。

何か月からが必要以上に短いかは、条文に数字がありません。

上限の5年と無期転換の5年は同じものですか?

違います。

第十四条の五年は1回の契約の長さ、労働契約法第十八条の五年は二以上の契約を通算した期間です。

厚生労働大臣が定める基準は第十四条に書いてありますか?

書いてありません。

第十四条第一項第一号は「厚生労働大臣が定める基準に該当する専門的知識等」とだけ書き、中身をその基準に預けています。

契約が満了するとき会社から通知はありますか?

第十四条第二項が、期間の満了に係る通知に関する事項について厚生労働大臣が基準を定めることができるとしています。

第三項では、行政官庁がその基準に関し必要な助言及び指導を行うことができるとされています。

期間を決めない契約なら、いつ辞められますか?

民法第六百二十七条第一項が、いつでも解約の申入れができるとしています。

雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了すると同項が定めています。

契約期間の途中でも、労働者から直ちに解除できる場合はありますか?

民法第六百二十八条が、やむを得ない事由があるときは各当事者が直ちに契約の解除をすることができるとしています。

その事由が一方の過失によって生じたときは、相手方に対して損害賠償の責任を負うとも書かれている条文です。

契約期間は書面で示してもらえますか?

労働基準法第十五条第一項が労働条件の明示を義務づけています。

厚生労働省令で定める事項は、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならないと同項が定めています。

有期労働契約の上限を条文で確かめた結果の一覧

条文だけで確かめられたことを並べます。

条文で確かめた結果
  • 原則の上限は三年(労働基準法第十四条第一項 本文)
  • 五年になるのは高度専門と満六十歳以上の2つだけ(同項各号)
  • 一定の事業の完了に必要な期間を定めるものは上限の枠の外
  • 上限を超えた部分は無効になり、法律の基準に置き換わる(第十三条)
  • 第十四条違反には三十万円以下の罰金(第百二十条第一号)
  • 一年を超える契約は一年経過後に申し出だけで退職できる(第百三十七条)
  • 会社側の途中解雇には「やむを得ない事由」が要る(労働契約法第十七条第一項)

数字が出てくるのは、三年と五年と一年と三十万円の4つだけでした。

この4つは、それぞれ違う条文に置かれています。

数字置かれている条文何の数字か
三年労働基準法 第十四条第一項 本文原則の契約期間の上限
五年労働基準法 第十四条第一項 各号例外にあたる場合の上限
一年労働基準法 第百三十七条申し出て退職できるようになる時点
三十万円労働基準法 第百二十条第十四条違反の罰金の上限

三年と五年は契約を結ぶときの話です。

一年と三十万円は、結んだあとの話になります。

同じ第十四条の周りでも、効く場面が分かれている形です。


あわせて読みたい

期間の定めがない契約をいつまでに辞めると言えばよいかは、退職の引き止めを条文で確かめた記事が対応します。↓

参考文献

この記事で使った一次資料

条文の確認日は2026年9月26日です。

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