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無期転換ルールで「5年」はどこから数えるのか──労働契約法18条と厚生労働省令で確かめた

「同じ会社で5年働けば、正社員になれる」。

契約社員や派遣で働いている人の周りでは、この一言がかなりの頻度で流れてきます。

この記事は、その話が労働契約法の条文の上でどこまで成り立つのかを確かめます。

体験談も、伝聞も、転職サイトのまとめも使いません。

使うのは、e-Gov法令検索に載っている条文と、厚生労働省が公開しているサイトだけです。

先に結論を書きます。

通算5年を超えたときに労働者が申し込めるのは「期間の定めのない労働契約」であって、条文のどこにも「正社員」とは書かれていません。

根拠は労働契約法第18条第1項です。

条文と厚生労働省ページの確認日は2026年9月16日です。

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無期転換ルールは、通算5年を超えた有期契約を無期に変える仕組みです

まず、無期転換ルールが条文で何と書かれているかを押さえます。

労働契約法第18条第1項がルールの本体です

同一の使用者との間で締結された二以上の有期労働契約(契約期間の始期の到来前のものを除く。以下この条において同じ。)の契約期間を通算した期間(次項において「通算契約期間」という。)が五年を超える労働者が、当該使用者に対し、現に締結している有期労働契約の契約期間が満了する日までの間に、当該満了する日の翌日から労務が提供される期間の定めのない労働契約の締結の申込みをしたときは、使用者は当該申込みを承諾したものとみなす。

(出典:労働契約法 第十八条(有期労働契約の期間の定めのない労働契約への転換))

読みどころは4つです。

1つ目は、条件が「同一の使用者」との契約に限られていることです。

2つ目は、数え方が「二以上の有期労働契約」の期間を通算する形だということです。

3つ目は、動くのが「五年を超える」ときであって、ちょうど5年ではないことです。

4つ目は、会社が転換するのではなく、労働者が申し込んだときに効果が生じる形だということです。

条文は「使用者は当該申込みを承諾したものとみなす」と書いています。

申し込まないかぎり、5年を超えても契約はそのままです。

無期転換ルールの「5年」は、契約期間を足し合わせて数えます

条文が数えているのは勤続年数ではなく、契約期間の合計です。

第18条第1項は、この合計を「通算契約期間」と呼んでいます。

  • 1年契約を5回更新した場合は、通算6年で「五年を超える」に届きます
  • 3年契約を1回更新した場合は、2回目の契約の途中で「五年を超える」に届きます
  • 契約期間の始期がまだ来ていないものは、条文の括弧書きで通算から外れます

申込みができるのは「現に締結している有期労働契約の契約期間が満了する日までの間」です。

つまり、5年を超えた時点ではなく、その契約が終わるまでの間が申込みの窓になります。

無期転換ルールの通算は、空白期間が一定以上あるとリセットされます

ここが、5年働いたはずなのに届かない、という話の出どころです。

労働契約法第18条第2項が空白期間を定めています

当該空白期間が六月(当該空白期間の直前に満了した一の有期労働契約の契約期間(当該一の有期労働契約を含む二以上の有期労働契約の契約期間の間に空白期間がないときは、当該二以上の有期労働契約の契約期間を通算した期間。以下この項において同じ。)が一年に満たない場合にあっては、当該一の有期労働契約の契約期間に二分の一を乗じて得た期間を基礎として厚生労働省令で定める期間)以上であるときは、当該空白期間前に満了した有期労働契約の契約期間は、通算契約期間に算入しない。

(出典:労働契約法 第十八条第二項)

契約と契約のあいだが6か月以上あくと、それより前の契約期間は通算から落ちます。

直前の契約が1年に満たない場合は、6か月ではなく厚生労働省令が定める短い期間になります。

1年未満のときの基準は厚生労働省令に書かれています

第一無契約期間の期間が、第一無契約期間の前にある有期労働契約の契約期間(二以上の有期労働契約がある場合は、その全ての契約期間を通算した期間)に二分の一を乗じて得た期間(六月を超えるときは六月とし、一月に満たない端数を生じたときはこれを一月として計算した期間とする。)未満であること。

(出典:労働契約法第十八条第一項の通算契約期間に関する基準を定める省令 第一条)

端数の扱いも、同じ省令の第1条第2項に書かれています。

前項の規定により通算の対象となるそれぞれの有期労働契約の契約期間に一月に満たない端数がある場合は、これらの端数の合算については、三十日をもって一月とする。

(出典:労働契約法第十八条第一項の通算契約期間に関する基準を定める省令 第一条第二項)

無期転換ルールで変わるのは期間の定めだけで、ほかの労働条件は原則そのままです

「正社員になれる」という言い方が条文とずれるのは、ここです。

この場合において、当該申込みに係る期間の定めのない労働契約の内容である労働条件は、現に締結している有期労働契約の内容である労働条件(契約期間を除く。)と同一の労働条件(当該労働条件(契約期間を除く。)について別段の定めがある部分を除く。)とする。

(出典:労働契約法 第十八条第一項)

条文が動かすのは契約期間だけです。

賃金も、職務も、勤務地も、条文の上では「同一の労働条件」のまま引き継がれます。

ただし括弧書きに「別段の定めがある部分を除く」とあるので、就業規則などで別に定めがあればそちらが動きます。

正社員と同じ待遇になるかどうかは、条文ではなく、その会社の定め次第です。

無期転換ルールの申込みを、会社は断ることができません

第18条第1項の最後は「使用者は当該申込みを承諾したものとみなす」で終わっています。

承諾するかどうかを会社が選ぶ形ではなく、承諾したものとして扱う形です。

会社の合意も、書面も、条文は要件にしていません。

一方で、申込みを「した」ことをあとから示せるかどうかは、条文の外の話になります。

条文に書かれていない以上、証拠の残し方はこの記事では判断しません。

無期転換ルールと雇止め法理は、別の条文です

5年を超える前に契約を更新してもらえなかった場合は、第18条ではなく第19条の話になります。

有期労働契約であって次の各号のいずれかに該当するものの契約期間が満了する日までの間に労働者が当該有期労働契約の更新の申込みをした場合又は当該契約期間の満了後遅滞なく有期労働契約の締結の申込みをした場合であって、使用者が当該申込みを拒絶することが、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、使用者は、従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件で当該申込みを承諾したものとみなす。

(出典:労働契約法 第十九条(有期労働契約の更新等))

第19条は「5年」を条件にしていません。

判断の軸は、更新を期待することに合理的な理由があったかどうかなどです。

また、契約期間を短く区切って更新を繰り返す形については、第17条第2項が会社に配慮を求めています。

使用者は、有期労働契約について、その有期労働契約により労働者を使用する目的に照らして、必要以上に短い期間を定めることにより、その有期労働契約を反復して更新することのないよう配慮しなければならない。

(出典:労働契約法 第十七条第二項)

条文は「配慮しなければならない」と書いているだけで、違反したときの効果は書いていません。

無期転換ルールの5年が動く人が、特別措置法の中にいます

第18条の「五年」は、すべての人に同じように当たるわけではありません。

専門的知識等を有する有期雇用労働者等に関する特別措置法が、2つの特例を置いています。

第二種認定事業主と当該第二種認定事業主が雇用する計画対象第二種特定有期雇用労働者との間の有期労働契約に係る労働契約法第十八条第一項の規定の適用については、定年後引き続いて当該第二種認定事業主に雇用されている期間は、同項に規定する通算契約期間に算入しない。

(出典:専門的知識等を有する有期雇用労働者等に関する特別措置法 第八条(労働契約法の特例))

同条第1項は、専門的知識等を持つ人が特定有期業務に就く場合に「五年」を最長10年まで読み替える形を定めています。

どちらも、会社が計画の認定を受けていることが前提です。

認定を受けていない会社では、この特例は働きません。

無期転換ルールについて言われている話を、条文と突き合わせます

よく流れてくる言い方を、ここまでの条文に当てて並べます。

  • 「5年で自動的に無期になる」=条文とずれます。第18条第1項は労働者の申込みを要件にしています
  • 「ちょうど5年で届く」=条文とずれます。書かれているのは「五年を超える」です
  • 「無期になれば正社員」=条文に書かれていません。変わるのは期間の定めで、労働条件は原則そのままです
  • 「会社が断れば終わり」=条文とずれます。第18条第1項は承諾したものとみなすと書いています
  • 「途中で辞めても通算は続く」=条件つきです。空白期間が基準以上なら、それより前は通算から落ちます

5つのうち4つは、条文の書き方とずれています。

契約の中身が募集時の話と違っていたときの扱いは、同じサイトの求人票と労働条件が違うときに何が根拠になるかの記事で条文から確かめています。

無期転換ルールについて、この記事で確かめたこと

この記事で条文から確かめられたのは、次の点です。

  • 本体は労働契約法第18条第1項で、通算契約期間が五年を超える労働者の申込みが要件です
  • 申込みは、現に締結している有期労働契約の契約期間が満了する日までの間にします
  • 会社は承諾したものとみなされます
  • 変わるのは契約期間で、ほかの労働条件は別段の定めがなければ同一です
  • 空白期間が基準以上あると、それより前の契約期間は通算に算入されません
  • 認定を受けた事業主のもとでは、特別措置法第8条で「五年」の当たり方が変わります

逆に、条文から確かめられなかったのは「無期転換したあとの待遇がどうなるか」です。

そこは各社の就業規則の領域で、条文は答えを持っていません。

個別の事情に当てはめた判断は、労働基準監督署の総合労働相談コーナーまたは弁護士の領域です。


この記事で使った一次資料

条文と厚生労働省ページの確認日は2026年9月16日です。

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