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副業は就業規則で禁止できるのか──労働基準法と労働契約法の条文だけで確かめた

「うちは副業禁止だから」。

転職や収入の話をしていると、この一言はかなりの頻度で流れてきます。

この記事は、その禁止が労働基準法と労働契約法の条文の上でどこに立っているのかを確かめます。

体験談も、伝聞も、転職サイトのまとめも使いません。

使うのは、e-Gov法令検索に載っている条文と、厚生労働省が公開しているページだけです。

先に結論を書きます。

副業を禁止する条文は、労働基準法の中に1つもありません。禁止の根拠になっているのは、法律ではなく各社の就業規則です。

条文と厚生労働省ページの確認日は2026年9月16日です。

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副業を正面から禁止する条文は、労働基準法の中にありません

まず、法律が副業について何を書いているかを押さえます。

労働基準法が定めているのは、労働時間、賃金、休日、就業規則の作り方などです。

労働者が勤務時間外に別の仕事をすることを禁じる条文は、この法律に置かれていません。

したがって「法律で副業が禁止されている」という言い方は、条文の上では成り立ちません。

ただし、公務員は国家公務員法や地方公務員法という別の法律の対象なので、この記事の範囲外です。

副業の定めを就業規則に置く根拠は、労働基準法第89条第10号です

会社が副業について社内ルールを作れるのは、就業規則の条文が受け皿を持っているからです。

就業規則の作成と届出は第89条が定めています

常時十人以上の労働者を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。

(出典:労働基準法 第八十九条(作成及び届出の義務))

この条文が並べている10個の号のうち、副業が入ってくるのは最後の第10号です。

前各号に掲げるもののほか、当該事業場の労働者のすべてに適用される定めをする場合においては、これに関する事項

(出典:労働基準法 第八十九条第十号)

副業の可否は第1号から第9号のどれにも当たらないので、この受け皿の号に入ります。

作るときの手続きは、第90条が定めています。

使用者は、就業規則の作成又は変更について、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者の意見を聴かなければならない。

(出典:労働基準法 第九十条(作成の手続))

条文が求めているのは「意見を聴く」ことで、同意を得ることではありません。

副業の労働時間は、労働基準法第38条第1項で通算されます

会社が副業を気にする理由のうち、条文にはっきり書かれているものが1つあります。

労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する。

(出典:労働基準法 第三十八条(時間計算))

「事業場を異にする場合においても」と書かれているので、別会社での労働時間も通算の対象に入ります。

通算した時間が当たる上限は、第32条です。

使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない。

(出典:労働基準法 第三十二条(労働時間))

同条第2項は、1日について八時間の上限も定めています。

つまり副業は、本人の自由時間の使い方であると同時に、会社にとっては労働時間管理の問題になります。

副業で上限を超えた時間には、割増賃金の条文が当たります

通算した結果として法定の労働時間を超えたときは、第37条が動きます。

使用者が、第三十三条又は前条第一項の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の二割五分以上五割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。

(出典:労働基準法 第三十七条(時間外、休日及び深夜の割増賃金))

同条第4項は、午後十時から午前五時までの労働にも割増を求めています。

夜に副業をする形だと、この深夜の割増も関係してきます。

どちらの会社が割増を負担するのかについては、条文そのものは書き分けていません。

条文に書かれていない以上、この記事では負担の配分を断定しません。

厚生労働省は、副業・兼業についての考え方をまとめたページを公開しています。

副業を理由にした制裁は、就業規則に書いていなければ始まりません

制裁については、第89条が別の号を用意しています。

表彰及び制裁の定めをする場合においては、その種類及び程度に関する事項

(出典:労働基準法 第八十九条第九号)

条文は「定めをする場合においては」と書いているので、種類と程度が就業規則にあることが前提になります。

そして、定めがあれば必ず通るわけでもありません。

使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする。

(出典:労働契約法 第十五条(懲戒))

副業をしたという事実だけで結論が決まる書き方には、条文はなっていません。

副業の規定は、周知されていなければ労働契約の中身になりません

就業規則がその人の労働条件になるための条件は、労働契約法第7条に書かれています。

労働者及び使用者が労働契約を締結する場合において、使用者が合理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に周知させていた場合には、労働契約の内容は、その就業規則で定める労働条件によるものとする。

(出典:労働契約法 第七条)

条文が並べている要件は2つです。合理的な労働条件が定められていることと、周知されていることです。

周知のやり方は、労働基準法第106条第1項が定めています。

常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、又は備え付けること、書面を交付することその他の厚生労働省令で定める方法によつて、労働者に周知させなければならない。

(出典:労働基準法 第百六条(法令等の周知義務))

見たことがない規則でも、掲示や備え付けがされていれば周知の方法としては条文に載っています。

副業と競業避止義務は、別の問題として整理されています

副業の話と、同業他社で働くことの話は、根拠が違います。

前者は就業規則の定め、後者は契約や誓約書に基づく競業避止の話です。

競業避止義務そのものについては、同じサイトの競業避止義務がどこまで有効かを条文と一次資料で確かめた記事で扱っています。

この記事では、副業の可否だけを条文から見ています。

副業について言われている話を、条文と突き合わせます

よく流れてくる言い方を、ここまでの条文に当てて並べます。

  • 「法律で副業は禁止されている」=労働基準法に、これを禁じる条文はありません
  • 「就業規則に書いてあれば何でも通る」=条文とずれます。労働契約法第15条が懲戒の効力を絞っています
  • 「勤務時間外は会社に関係ない」=一部ずれます。労働基準法第38条第1項は事業場が違っても時間を通算します
  • 「見たことがない規則は効かない」=条件つきです。掲示や備え付けも第106条第1項の周知の方法です
  • 「副業と競業避止は同じ話」=根拠が違います

5つのうち4つは、条文の書き方とずれています。

副業について、この記事で確かめたこと

この記事で条文から確かめられたのは、次の点です。

  • 労働基準法には、副業を禁止する条文がありません
  • 会社が定めを置く受け皿は、第89条第10号です
  • 就業規則の作成・変更では、第90条が過半数代表の意見聴取を求めています
  • 労働時間は第38条第1項で、事業場が違っても通算されます
  • 制裁は第89条第9号で就業規則に種類と程度を置くことが前提になり、効力は労働契約法第15条で絞られます
  • 就業規則が労働契約の内容になるには、労働契約法第7条の周知が要ります

逆に、条文から確かめられなかったのは「割増賃金をどちらの会社が負担するか」です。

個別の事情に当てはめた判断は、労働基準監督署の総合労働相談コーナーまたは弁護士の領域です。


この記事で使った一次資料

条文と厚生労働省ページの確認日は2026年9月16日です。

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