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安全配慮義務はどこに書いてあるのか──労働契約法5条の一文と労働安全衛生法の義務を条文で確かめた

安全配慮義務はどこに書いてあるのか──労働契約法5条の一文と労働安全衛生法の義務を条文で確かめた
安全配慮義務はどこに書いてあるのか──労働契約法5条の一文と労働安全衛生法の義務を条文で確かめた

安全配慮義務という言葉を、就業規則の説明や面談の場で聞いたことはありませんか。

会社が安全に配慮する義務、という意味で使われますが、ではその義務がどの法律のどの条に書かれているのかまで示されることは少ないところです。

この記事は、安全配慮義務と呼ばれているものが条文ではどう書かれているのかを、労働契約法と労働安全衛生法の言葉だけで確かめます。

結論から書くと、配慮そのものを定めた一文は労働契約法第五条にあり、具体的に何をするかは労働安全衛生法と安衛則の各条に分かれて並んでいます。

そして「安全配慮義務」という5文字の語自体は、条文の中に1件も無いというのが、全文を数えた結果です。

条文の確認日は2026年10月8日です。

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安全配慮義務という語は条文に無い=労働基準法を全文で見た結果

最初に押さえておきたいのは、「安全配慮義務」という言葉そのものが法律の条文に出てこないことです。

e-Gov法令検索の法令データ全文を文字列で数えると、労働基準法・労働契約法・労働安全衛生法・労働安全衛生規則のいずれにも、この5文字の並びは0件でした。

条文に置かれているのは「安全」「衛生」「配慮」「措置」といったばらばらの言葉で、それを1語にまとめた見出し語は条文の外にあります。

法令「安全配慮義務」の語「配慮」の語が置かれている条
労働基準法0件第三十六条ほか(経過措置を含む)
労働契約法0件第三条・第五条・第十七条
労働安全衛生法0件第三条第三項・第六十六条の九ほか
労働安全衛生規則0件第五十二条の二関係ほか

労働基準法には「安全配慮義務」の語が無いだけでなく、安全そのものを正面から定める章も置かれていません。

そのかわりに、安全と衛生を別の法律へ送る一文が第四十二条に用意されています(この条はあとで引用します)。

条文に語が無い言葉をどう扱うかという同じ型の確かめ方は、パワハラの定義を労働施策総合推進法30条の2で確かめた記事でも使っています。↓

呼び名だけが広まっている義務の例としては、競業避止義務を3つの法律の全文検索で確かめた記事も並べて読めます。↓

安全配慮義務の根拠として挙がる一文=労働契約法第五条

配慮そのものを使用者の側に向けて定めている条文は、労働契約法の第五条です。

見出しは「労働者の安全への配慮」で、本文は一文しかありません。

使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。

(労働契約法 第五条)

この一文が、安全配慮義務と呼ばれているものの条文上の置き場所になります。

言葉を分けて読むと、誰が・いつ・何のために・何をするのか、の4つが入っています。

条文の言葉何を指しているか
使用者は義務を負う側
労働契約に伴い義務が生じる場面
労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう配慮が向かう目的
必要な配慮をするものとする求められている行為

条文の言葉は「必要な配慮」までで、具体的に何をすれば足りるかという基準はこの条には置かれていません。

文末も「しなければならない」ではなく「するものとする」という言い方になっています。

安全配慮義務の中身を知るには、この一文の外にある条文を見にいく必要がある、という構造です。

安全配慮義務が結びつく「労働契約」の定め=労働契約法第六条と第三条第四項

第五条は「労働契約に伴い」と書いているので、まず労働契約そのものの定めを見ておきます。

労働契約が成立する場面は、第六条に置かれています。

労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者及び使用者が合意することによって成立する。

(労働契約法 第六条)

使用されて労働し、これに対して賃金を支払うことについて合意すれば、そこで労働契約は成立します。

つまり第五条の配慮は、書面に安全の条項があるかどうかとは別に、労働契約があれば伴うものとして置かれているわけです。

契約書に安全の約束が書かれていなくても、第五条の言葉は労働契約そのものに付いているという読み方になります。

労働契約を守るときの一般的な態度は、第三条第四項が定めています。

労働者及び使用者は、労働契約を遵守するとともに、信義に従い誠実に、権利を行使し、及び義務を履行しなければならない。

(労働契約法 第三条第四項)

第三条第三項には、仕事と生活の調和への配慮も置かれています。

労働契約は、労働者及び使用者が仕事と生活の調和にも配慮しつつ締結し、又は変更すべきものとする。

(労働契約法 第三条第三項)

契約の内容を書面で確かめることについては、第四条第二項が定めています。

労働者及び使用者は、労働契約の内容(期間の定めのある労働契約に関する事項を含む。)について、できる限り書面により確認するものとする。

(労働契約法 第四条第二項)

労働契約法の条見出し安全配慮義務との関係
第三条第三項労働契約の原則仕事と生活の調和への配慮
第三条第四項労働契約の原則信義に従い誠実に義務を履行
第四条第二項労働契約の内容の理解の促進できる限り書面により確認
第五条労働者の安全への配慮生命・身体等の安全への必要な配慮
第六条労働契約の成立合意によって成立する

安全配慮義務と労働基準法の関係=第四十二条が安全と衛生を送る先

労働基準法には労働時間や賃金の定めが並んでいますが、安全と衛生については別の法律を指す一文だけが置かれています。

労働者の安全及び衛生に関しては、労働安全衛生法(昭和四十七年法律第五十七号)の定めるところによる。

(労働基準法 第四十二条)

安全配慮義務の具体的な中身を条文で追うときは、この第四十二条を通って労働安全衛生法へ移ることになります。

送り先である労働安全衛生法の目的は、第一条に書かれています。

この法律は、労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)と相まつて、労働災害の防止のための危害防止基準の確立、責任体制の明確化及び自主的活動の促進の措置を講ずる等その防止に関する総合的計画的な対策を推進することにより職場における労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な職場環境の形成を促進することを目的とする。

(労働安全衛生法 第一条)

第一条の言葉にも「労働基準法と相まつて」という表現が入っており、2つの法律が組になっていることが条文の上で示されています。

目的として挙げられているのは、労働災害の防止と、職場における労働者の安全と健康の確保、それに快適な職場環境の形成の3つです。

安全配慮義務を負うのは誰か=労働安全衛生法が使う「事業者」の語

労働契約法第五条の主語は「使用者」ですが、労働安全衛生法が義務の主語に置いているのは「事業者」です。

その意味は、第二条の定義に書かれています。

事業を行う者で、労働者を使用するものをいう。

(労働安全衛生法 第二条第三号)

そして事業者の責務を正面から定めているのが、第三条第一項です。

事業者は、単にこの法律で定める労働災害の防止のための最低基準を守るだけでなく、快適な職場環境の実現と労働条件の改善を通じて職場における労働者の安全と健康を確保するようにしなければならない。

また、事業者は、国が実施する労働災害の防止に関する施策に協力するようにしなければならない。

(労働安全衛生法 第三条第一項)

条文は、法律の最低基準を守るだけでなく職場における労働者の安全と健康を確保するようにという言葉を置いています。

仕事を他人に請け負わせる側への配慮の定めは、第三条第三項に置かれています。

建設工事の注文者その他の仕事を他人に請け負わせる者は、施工方法、作業方法、工期、納期等について、安全で衛生的な作業の遂行を損なうおそれのある条件を付さないように配慮しなければならない。

(労働安全衛生法 第三条第三項)

工期や納期について安全で衛生的な作業の遂行を損なうおそれのある条件を付さないように、という言い方です。

発注する立場の人にも条文が向いている箇所になります。

法令と条義務の主語文末の言い方
労働契約法第五条使用者必要な配慮をするものとする
労働安全衛生法第三条第一項事業者確保するようにしなければならない
労働安全衛生法第三条第三項仕事を他人に請け負わせる者配慮しなければならない
労働安全衛生法第二十条事業者必要な措置を講じなければならない

安全配慮義務の中身を具体にした労働安全衛生法第二十条から第二十五条

「必要な配慮」が具体的に何を指すのかに最も近い条文が、第四章の「事業者の講ずべき措置等」です。

まず第二十条の柱書と各号を並べます。

事業者は、次の危険を防止するため必要な措置を講じなければならない。

(労働安全衛生法 第二十条)

機械、器具その他の設備(以下「機械等」という。)による危険

(労働安全衛生法 第二十条第一号)

爆発性の物、発火性の物、引火性の物等による危険

(労働安全衛生法 第二十条第二号)

電気、熱その他のエネルギーによる危険

(労働安全衛生法 第二十条第三号)

ここから第二十五条までの文末は、どれも必要な措置を講じなければという形でそろっています。

作業方法から生ずる危険と、墜落・崩壊のおそれのある場所の危険は、第二十一条が分けて定めています。

事業者は、掘削、採石、荷役、伐木等の業務における作業方法から生ずる危険を防止するため必要な措置を講じなければならない。

(労働安全衛生法 第二十一条第一項)

事業者は、労働者が墜落するおそれのある場所、土砂等が崩壊するおそれのある場所等に係る危険を防止するため必要な措置を講じなければならない。

(労働安全衛生法 第二十一条第二項)

健康障害の防止については、第二十二条が4つの号を置いています。

事業者は、次の健康障害を防止するため必要な措置を講じなければならない。

(労働安全衛生法 第二十二条)

原材料、ガス、蒸気、粉じん、酸素欠乏空気、病原体等による健康障害

(労働安全衛生法 第二十二条第一号)

放射線、高温、低温、超音波、騒音、振動、異常気圧等による健康障害

(労働安全衛生法 第二十二条第二号)

計器監視、精密工作等の作業による健康障害

(労働安全衛生法 第二十二条第三号)

排気、排液又は残さい物による健康障害

(労働安全衛生法 第二十二条第四号)

作業場そのものの環境は、第二十三条にまとめられています。

事業者は、労働者を就業させる建設物その他の作業場について、通路、床面、階段等の保全並びに換気、採光、照明、保温、防湿、休養、避難及び清潔に必要な措置その他労働者の健康、風紀及び生命の保持のため必要な措置を講じなければならない。

(労働安全衛生法 第二十三条)

通路や床面の保全から換気・採光・休養・清潔まで、働く場所の状態が並んでいます。

人の動き方から生ずる災害は、第二十四条の対象です。

事業者は、労働者の作業行動から生ずる労働災害を防止するため必要な措置を講じなければならない。

(労働安全衛生法 第二十四条)

危険が差し迫ったときの行動は、第二十五条が定めています。

事業者は、労働災害発生の急迫した危険があるときは、直ちに作業を中止し、労働者を作業場から退避させる等必要な措置を講じなければならない。

(労働安全衛生法 第二十五条)

条防ぐ対象条文の言葉の例
第二十条機械等・爆発性の物・電気や熱による危険必要な措置を講じなければならない
第二十一条作業方法から生ずる危険、墜落や崩壊のおそれのある場所必要な措置を講じなければならない
第二十二条原材料やガス、放射線や騒音、計器監視、排気や排液による健康障害必要な措置を講じなければならない
第二十三条通路・床面・階段の保全、換気・採光・照明・休養・清潔必要な措置を講じなければならない
第二十四条労働者の作業行動から生ずる労働災害必要な措置を講じなければならない
第二十五条労働災害発生の急迫した危険直ちに作業を中止し、労働者を作業場から退避させる等

第二十五条だけは、措置の内容として「直ちに作業を中止し」「退避させる」という具体的な行動が条文に書き込まれています。

安全配慮義務に対応する労働者側の定め=労働安全衛生法第四条と第二十六条

労働安全衛生法は、事業者だけに義務を向けているわけではありません。

働く側の責務は、第四条に置かれています。

労働者及び労働者以外の者で労働者と同一の場所において仕事の作業に従事するものは、労働災害を防止するため必要な事項を守るほか、事業者その他の関係者が実施する労働災害の防止に関する措置に協力するように努めなければならない。

(労働安全衛生法 第四条)

第二十条から第二十五条までの措置に対応する遵守の定めは、第二十六条です。

労働者及び労働者と同一の場所において仕事の作業に従事する労働者以外の作業従事者は、事業者が第二十条から第二十五条まで及び前条第一項の規定に基づき講ずる措置に応じて、必要な事項を守らなければならない。

(労働安全衛生法 第二十六条)

事業者が措置を講じ、労働者がそれに応じて必要な事項を守る、という二方向の書き方になっています。

健康の保持増進について、事業者の努力義務と労働者の努力を並べているのが第六十九条です。

事業者は、労働者に対する健康教育及び健康相談その他労働者の健康の保持増進を図るため必要な措置を継続的かつ計画的に講ずるように努めなければならない。

(労働安全衛生法 第六十九条第一項)

労働者は、前項の事業者が講ずる措置を利用して、その健康の保持増進に努めるものとする。

(労働安全衛生法 第六十九条第二項)

第一項の文末は「講ずるように努めなければならない」、第二項は「努めるものとする」という言い方で、第二十条以下の「講じなければならない」とは強さが分かれています。

安全配慮義務と長時間労働=労働安全衛生法第六十六条の八の面接指導

長時間働いた人の健康について、条文が事業者に行わせているのは医師による面接指導です。

根拠は第六十六条の八で、第一項が対象と行為を定めています。

事業者は、その労働時間の状況その他の事項が労働者の健康の保持を考慮して厚生労働省令で定める要件に該当する労働者(次条第一項に規定する者及び第六十六条の八の四第一項に規定する者を除く。以下この条において同じ。)に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による面接指導(問診その他の方法により心身の状況を把握し、これに応じて面接により必要な指導を行うことをいう。以下同じ。)を行わなければならない。

(労働安全衛生法 第六十六条の八第一項)

要件そのものは「厚生労働省令で定める要件」とされており、数字は条文の外(安衛則)に置かれています。

面接指導を受ける側の定めは、第二項です。

労働者は、前項の規定により事業者が行う面接指導を受けなければならない。

ただし、事業者の指定した医師が行う面接指導を受けることを希望しない場合において、他の医師の行う同項の規定による面接指導に相当する面接指導を受け、その結果を証明する書面を事業者に提出したときは、この限りでない。

(労働安全衛生法 第六十六条の八第二項)

面接指導の結果は、第三項で記録しておく対象になっています。

事業者は、厚生労働省令で定めるところにより、第一項及び前項ただし書の規定による面接指導の結果を記録しておかなければならない。

(労働安全衛生法 第六十六条の八第三項)

結果を受けて医師の意見を聴くところまでが、第四項の定めです。

事業者は、第一項又は第二項ただし書の規定による面接指導の結果に基づき、当該労働者の健康を保持するために必要な措置について、厚生労働省令で定めるところにより、医師の意見を聴かなければならない。

(労働安全衛生法 第六十六条の八第四項)

そして意見をふまえて何をするかを並べているのが、第五項です。

事業者は、前項の規定による医師の意見を勘案し、その必要があると認めるときは、当該労働者の実情を考慮して、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少等の措置を講ずるほか、当該医師の意見の衛生委員会若しくは安全衛生委員会又は労働時間等設定改善委員会への報告その他の適切な措置を講じなければならない。

(労働安全衛生法 第六十六条の八第五項)

就業場所の変更・作業の転換・労働時間の短縮・深夜業の回数の減少という、具体的な措置の名前が条文に書かれています。

面接指導を実施するための前提として、労働時間の状況を把握する定めが第六十六条の八の三に置かれています。

事業者は、第六十六条の八第一項又は前条第一項の規定による面接指導を実施するため、厚生労働省令で定める方法により、労働者(次条第一項に規定する者を除く。)の労働時間の状況を把握しなければならない。

(労働安全衛生法 第六十六条の八の三)

面接指導の対象から外れる人への定めは、第六十六条の九です。

事業者は、第六十六条の八第一項、第六十六条の八の二第一項又は前条第一項の規定により面接指導を行う労働者以外の労働者であつて健康への配慮が必要なものについては、厚生労働省令で定めるところにより、必要な措置を講ずるように努めなければならない。

(労働安全衛生法 第六十六条の九)

時間外労働そのものの上限については、36協定の限度時間45時間と特別条項の4つの線を条文で確かめた記事で数字を並べています。↓

安全配慮義務の面接指導が始まる線=安衛則第五十二条の二の「八十時間」

第六十六条の八第一項が省令に預けた要件は、安衛則第五十二条の二にあります。

法第六十六条の八第一項の厚生労働省令で定める要件は、休憩時間を除き一週間当たり四十時間を超えて労働させた場合におけるその超えた時間が一月当たり八十時間を超え、かつ、疲労の蓄積が認められる者であることとする。

(労働安全衛生規則 第五十二条の二第一項)

条文が置いている数字は一月当たり八十時間で、これに疲労の蓄積が認められることが重なります。

超えた時間を数える頻度は、第二項が決めています。

前項の超えた時間の算定は、毎月一回以上、一定の期日を定めて行わなければならない。

(労働安全衛生規則 第五十二条の二第二項)

八十時間を超えた人への通知は、第三項の定めです。

事業者は、第一項の超えた時間の算定を行つたときは、速やかに、同項の超えた時間が一月当たり八十時間を超えた労働者に対し、当該労働者に係る当該超えた時間に関する情報を通知しなければならない。

(労働安全衛生規則 第五十二条の二第三項)

面接指導が実際に動き出すきっかけは、第五十二条の三第一項に書かれています。

法第六十六条の八の面接指導は、前条第一項の要件に該当する労働者の申出により行うものとする。

(労働安全衛生規則 第五十二条の三第一項)

申出があったときの事業者の行為は、第三項です。

事業者は、労働者から第一項の申出があつたときは、遅滞なく、法第六十六条の八の面接指導を行わなければならない。

(労働安全衛生規則 第五十二条の三第三項)

申出を勧めることについては、第四項が産業医にできることとして置いています。

産業医は、前条第一項の要件に該当する労働者に対して、第一項の申出を行うよう勧奨することができる。

(労働安全衛生規則 第五十二条の三第四項)

段階条文条文の言葉
要件に当たる安衛則第五十二条の二第一項一月当たり八十時間を超え、かつ、疲労の蓄積が認められる者
時間を数える安衛則第五十二条の二第二項毎月一回以上、一定の期日を定めて行わなければならない
本人に知らせる安衛則第五十二条の二第三項速やかに、…情報を通知しなければならない
申出をする安衛則第五十二条の三第一項労働者の申出により行うものとする
面接指導を行う安衛則第五十二条の三第三項遅滞なく、…面接指導を行わなければならない
産業医が勧める安衛則第五十二条の三第四項申出を行うよう勧奨することができる

八十時間を超えていても、面接指導が始まる形は本人の申出だと条文に書かれている点が読みどころです。

安全配慮義務と健康診断=労働安全衛生法第六十六条・第六十六条の四

長時間労働とは別に、全員を対象とする健康診断の定めがあります。

第六十六条第一項が、その出発点です。

事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による健康診断(第六十六条の十第一項に規定する検査を除く。以下この条及び次条において同じ。)を行わなければならない。

(労働安全衛生法 第六十六条第一項)

受ける側の定めは、第五項に置かれています。

労働者は、前各項の規定により事業者が行なう健康診断を受けなければならない。

ただし、事業者の指定した医師又は歯科医師が行なう健康診断を受けることを希望しない場合において、他の医師又は歯科医師の行なうこれらの規定による健康診断に相当する健康診断を受け、その結果を証明する書面を事業者に提出したときは、この限りでない。

(労働安全衛生法 第六十六条第五項)

結果に異常の所見があったときの意見聴取は、第六十六条の四の定めです。

事業者は、第六十六条第一項から第四項まで若しくは第五項ただし書又は第六十六条の二の規定による健康診断の結果(当該健康診断の項目に異常の所見があると診断された労働者に係るものに限る。)に基づき、当該労働者の健康を保持するために必要な措置について、厚生労働省令で定めるところにより、医師又は歯科医師の意見を聴かなければならない。

(労働安全衛生法 第六十六条の四)

健康診断の側にも、意見を聴いてから措置へ進む流れが条文で用意されています。

健康教育や健康相談を続けることについては、さきに引用した第六十九条第一項が努力義務として置かれています。

安全配慮義務と病気の労働者=労働安全衛生法第六十八条と安衛則第六十一条

働かせないことを義務にしている条文も、労働安全衛生法にはあります。

第六十八条です。

事業者は、伝染性の疾病その他の疾病で、厚生労働省令で定めるものにかかつた労働者については、厚生労働省令で定めるところにより、その就業を禁止しなければならない。

(労働安全衛生法 第六十八条)

対象となる疾病と手続は、安衛則第六十一条に置かれています。

事業者は、次の各号のいずれかに該当する者については、その就業を禁止しなければならない。

(労働安全衛生規則 第六十一条第一項)

病毒伝ぱのおそれのある伝染性の疾病にかかつた者

(労働安全衛生規則 第六十一条第一項第一号)

心臓、腎臓、肺等の疾病で労働のため病勢が著しく増悪するおそれのあるものにかかつた者

(労働安全衛生規則 第六十一条第一項第二号)

前各号に準ずる疾病で厚生労働大臣が定めるものにかかつた者

(労働安全衛生規則 第六十一条第一項第三号)

第一号については、ただし書が例外を置いています。

ただし、第一号に掲げる者について伝染予防の措置をした場合は、この限りでない。

(労働安全衛生規則 第六十一条第一項)

就業を禁止する前の手順は、第二項の定めです。

事業者は、前項の規定により、就業を禁止しようとするときは、あらかじめ、産業医その他専門の医師の意見をきかなければならない。

(労働安全衛生規則 第六十一条第二項)

号条文の言葉手順
第一号病毒伝ぱのおそれのある伝染性の疾病にかかつた者伝染予防の措置をした場合は禁止しない(ただし書)
第二号心臓、腎臓、肺等の疾病で労働のため病勢が著しく増悪するおそれのあるものにかかつた者あらかじめ産業医その他専門の医師の意見をきく
第三号前各号に準ずる疾病で厚生労働大臣が定めるものにかかつた者あらかじめ産業医その他専門の医師の意見をきく

条文は、医師の意見を聴くことを禁止より前の手順として置いています。

安全配慮義務の前段にある調査と教育=労働安全衛生法第二十八条の二・第五十九条

措置を講じる前に、何が危ないかを調べる定めも置かれています。

第二十八条の二第一項です。

事業者は、厚生労働省令で定めるところにより、建設物、設備、原材料、ガス、蒸気、粉じん等による、又は作業行動その他業務に起因する危険性又は有害性等(第五十七条第一項の政令で定める物及び第五十七条の二第一項に規定する通知対象物による危険性又は有害性等を除く。)を調査し、その結果に基づいて、この法律又はこれに基づく命令の規定による措置を講ずるほか、労働者の危険又は健康障害を防止するため必要な措置を講ずるように努めなければならない。

ただし、当該調査のうち、化学物質、化学物質を含有する製剤その他の物で労働者の危険又は健康障害を生ずるおそれのあるものに係るもの以外のものについては、製造業その他厚生労働省令で定める業種に属する事業者に限る。

(労働安全衛生法 第二十八条の二第一項)

文末は「講ずるように努めなければならない」で、第二十条以下とは言い方が分かれています。

雇い入れたときの教育は、第五十九条が3つの項に分けて定めています。

事業者は、労働者を雇い入れたときは、当該労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、その従事する業務に関する安全又は衛生のための教育を行なわなければならない。

(労働安全衛生法 第五十九条第一項)

前項の規定は、労働者の作業内容を変更したときについて準用する。

(労働安全衛生法 第五十九条第二項)

事業者は、危険又は有害な業務で、厚生労働省令で定めるものに労働者をつかせるときは、厚生労働省令で定めるところにより、当該業務に関する安全又は衛生のための特別の教育を行なわなければならない。

(労働安全衛生法 第五十九条第三項)

教育の中身は、安衛則第三十五条第一項の各号に並んでいます。

事業者は、労働者を雇い入れ、又は労働者の作業内容を変更したときは、当該労働者に対し、遅滞なく、次の事項のうち当該労働者が従事する業務に関する安全又は衛生のため必要な事項について、教育を行なわなければならない。

(労働安全衛生規則 第三十五条第一項)

作業手順に関すること。

(労働安全衛生規則 第三十五条第一項第三号)

当該業務に関して発生するおそれのある疾病の原因及び予防に関すること。

(労働安全衛生規則 第三十五条第一項第五号)

事故時等における応急措置及び退避に関すること。

(労働安全衛生規則 第三十五条第一項第七号)

作業手順・疾病の予防・事故時の応急措置という、入社した日から関わる項目が省令に並んでいます。

すでに十分な知識と技能があると認められる労働者については、第二項が教育の省略を認めています。

事業者は、前項各号に掲げる事項の全部又は一部に関し十分な知識及び技能を有していると認められる労働者については、当該事項についての教育を省略することができる。

(労働安全衛生規則 第三十五条第二項)

安全配慮義務と快適な職場環境=労働安全衛生法第七十一条の二

第一条が目的に挙げていた「快適な職場環境の形成」は、第七十一条の二に具体化されています。

事業者は、事業場における安全衛生の水準の向上を図るため、次の措置を継続的かつ計画的に講ずることにより、快適な職場環境を形成するように努めなければならない。

(労働安全衛生法 第七十一条の二)

作業環境を快適な状態に維持管理するための措置

(労働安全衛生法 第七十一条の二第一号)

労働者の従事する作業について、その方法を改善するための措置

(労働安全衛生法 第七十一条の二第二号)

作業に従事することによる労働者の疲労を回復するための施設又は設備の設置又は整備

(労働安全衛生法 第七十一条の二第三号)

前三号に掲げるもののほか、快適な職場環境を形成するため必要な措置

(労働安全衛生法 第七十一条の二第四号)

この条の文末も「努めなければならない」で、努力義務の形です。

疲労を回復するための施設や設備という言葉が、第三号に置かれています。

条文の強さ条の例文末の言葉
義務第二十条から第二十五条、第六十六条第一項、第六十六条の八第一項、第六十八条しなければならない
努力義務第二十八条の二第一項、第六十九条第一項、第七十一条の二努めなければならない
方針を示す形労働契約法第五条、第三条各項するものとする・すべきものとする

同じ安全配慮義務の話でも、条文ごとに文末の強さが違うところが読み分けの要点になります。

安全配慮義務の違反に罰則があるのはどの条文か=労働安全衛生法第百十九条

罰則の有無も、条文を見れば分かります。

第百十九条の柱書は、次のとおりです。

次の各号のいずれかに該当する場合には、当該違反行為をした者は、六月以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。

(労働安全衛生法 第百十九条)

第一号の列挙の中に、「第二十条から第二十五条まで」と「第六十八条」が入っています。

一方で、労働契約法第五条はこの列挙に出てきません。

労働契約法第五条には罰則の列挙に無いという違いがあります。

条文第百十九条第一号の列挙文末の言い方
労働安全衛生法第二十条から第二十五条入っている講じなければならない
労働安全衛生法第六十八条入っている禁止しなければならない
労働安全衛生法第六十五条の三第一項入っている行わなければならない
労働契約法第五条入っていないするものとする

罰則の列挙に入っていないことは、義務が無いという意味ではなく、刑罰という形の裏づけが置かれていないという意味です。

労働契約法には、第百十九条のような罰則の章がそもそもありません。

安全配慮義務が守られていないときの申告=労働安全衛生法第九十七条

条文に違反する事実があるときに、働く側が動ける道も置かれています。

第九十七条第一項です。

作業従事者は、事業場にこの法律又はこれに基づく命令の規定に違反する事実があるときは、その事実を都道府県労働局長、労働基準監督署長又は労働基準監督官に申告して是正のため適当な措置をとるように求めることができる。

(労働安全衛生法 第九十七条第一項)

申告したことを理由とする取扱いについては、第二項が定めています。

事業者は、前項の申告をしたことを理由として、労働者に対し、解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。

(労働安全衛生法 第九十七条第二項)

申告の相手として条文が挙げているのは、都道府県労働局長・労働基準監督署長・労働基準監督官の3つです。

取引の相手方に向けた同じ趣旨の定めは、第三項に置かれています。

注文者、機械等貸与者その他第一項の作業従事者に係る事業を行う者の契約の相手方は、同項の申告をしたことを理由として、当該事業を行う者に対し、取引の停止その他の不利益な取扱いをしてはならない。

(労働安全衛生法 第九十七条第三項)

労働基準監督署がどこまで動けるのかは、労働基準監督署の権限を労働基準法97条から105条で確かめた記事で条文ごとに並べています。↓

安全配慮義務についてよくある質問

安全配慮義務はどの法律の何条ですか?

配慮を定めている一文は労働契約法第五条で、見出しは「労働者の安全への配慮」です。

本文は「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。」の一文です。

労働基準法に安全配慮義務は書かれていますか?

労働基準法の法令全文に「安全配慮義務」という語は0件でした。

第四十二条が「労働者の安全及び衛生に関しては、労働安全衛生法の定めるところによる。」と定めています。

安全配慮義務を負うのは会社ですか社長ですか?

労働契約法第五条の主語は「使用者」です。

労働安全衛生法が義務の主語に置いているのは「事業者」で、第二条第三号で「事業を行う者で、労働者を使用するものをいう。」と定義されています。

安全配慮義務として具体的に何をすることが条文に書かれていますか?

労働安全衛生法第二十条から第二十五条が、機械等による危険、作業方法から生ずる危険、健康障害、作業場の状態、作業行動、急迫した危険について「必要な措置を講じなければならない」と定めています。

第二十五条は「直ちに作業を中止し、労働者を作業場から退避させる等必要な措置」と定めています。

長時間労働のときに会社がすることは条文にありますか?

労働安全衛生法第六十六条の八第一項が、省令で定める要件に該当する労働者に対する医師による面接指導を定めています。

要件は安衛則第五十二条の二第一項で、一週間当たり四十時間を超えた時間が一月当たり八十時間を超え、かつ疲労の蓄積が認められる者です。

面接指導は会社から声がかかりますか?

安衛則第五十二条の三第一項は「前条第一項の要件に該当する労働者の申出により行うものとする」と定めています。

同条第四項で、産業医が申出を行うよう勧奨することができるとされています。

安全配慮義務の違反に罰則はありますか?

労働安全衛生法第百十九条第一号の列挙に、第二十条から第二十五条までと第六十八条が入っています。

労働契約法第五条は、この列挙には出てきません。

病気のときに働かせない定めはどこですか?

労働安全衛生法第六十八条が、省令で定める疾病にかかった労働者について就業を禁止しなければならないと定めています。

対象は安衛則第六十一条第一項の3つの号で、禁止しようとするときは産業医その他専門の医師の意見をきくことが第二項に置かれています。

安全配慮義務を条文で確かめた結果の一覧

条文で確かめたこと
  • 「安全配慮義務」という語は、労働基準法・労働契約法・労働安全衛生法・安衛則の全文で0件
  • 配慮そのものの一文は労働契約法第五条(見出し=労働者の安全への配慮)
  • 労働基準法第四十二条が、安全及び衛生を労働安全衛生法へ送っている
  • 義務の主語は労働契約法が「使用者」、労働安全衛生法が「事業者」(第二条第三号)
  • 具体的な措置は労働安全衛生法第二十条から第二十五条(文末は講じなければならない)
  • 長時間労働は第六十六条の八の面接指導、線は安衛則第五十二条の二の「一月当たり八十時間」
  • 面接指導は安衛則第五十二条の三第一項により労働者の申出で行う
  • 病気の人の就業禁止は第六十八条と安衛則第六十一条(意見聴取が前提)
  • 罰則の列挙(第百十九条第一号)に入るのは第二十条から第二十五条・第六十八条など
  • 違反の事実があるときの申告は第九十七条第一項

安全配慮義務という言葉を向けられたときは、どの条文の話なのかを分けて読むと中身がはっきりします。

配慮の一文なら労働契約法第五条、講ずべき措置なら労働安全衛生法第二十条から第二十五条、長時間労働なら第六十六条の八と安衛則第五十二条の二という並びです。

個別の事情への当てはめは、事業場を管轄する労働基準監督署か弁護士に相談する領域になります。


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参考文献

この記事で使った一次資料

条文の確認日は2026年10月8日です。

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