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フレックスタイム制の清算期間は何か月までか──労働基準法32条の3の「三箇月」と労使協定を条文で確かめた

フレックスタイム制の清算期間は何か月までか──労働基準法32条の3の「三箇月」と労使協定を条文で確かめた
フレックスタイム制の清算期間は何か月までか──労働基準法32条の3の「三箇月」と労使協定を条文で確かめた

フレックスタイム制は、始業と終業の時刻を働く本人が決める仕組みです。

転職先の求人票に「フレックスタイム制あり」と書かれていると、自由に働けそうに見えます。

ただ、何時間働けば足りるのか、残業はどこから数えるのかは、制度の名前だけでは分からないはずです。

この記事は、労働基準法第三十二条の三と施行規則の条文だけで、その線を確かめます。

結論から書くと、次のとおりです。

清算期間の上限は3か月以内で、1か月を超えるときは月ごとに週50時間の上限がかかります。

条文の確認日は2026年10月7日です。

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フレックスタイム制の定義=始業と終業の時刻を本人に委ねること

条文の書き出しが、そのまま定義になっています。

使用者は、就業規則その他これに準ずるものにより、その労働者に係る始業及び終業の時刻をその労働者の決定に委ねることとした労働者については

(労働基準法 第三十二条の三第一項)

委ねるのは「始業及び終業の時刻」の両方です。

始業だけ、終業だけを本人に任せる形は、この書き出しの言葉とは合いません。

そして、その委ねることを就業規則などで定めるのが第一の条件になります。

フレックスタイム制の導入に要る2つ=就業規則と書面の労使協定

就業規則だけでは足りません。

同じ項の続きに、労使協定が出てきます。

当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、次に掲げる事項を定めたときは

(労働基準法 第三十二条の三第一項)

フレックスタイム制が動くための2つの条件
  • 就業規則その他これに準ずるもので、始業・終業の時刻を本人に委ねると定める
  • 過半数組合または過半数代表者との書面による協定で、決められた事項を定める

協定の相手は、過半数で組織する労働組合があればその組合です。

なければ、労働者の過半数を代表する者になります。

フレックスタイム制の労使協定で定める4項目

協定で決める事項は、号として4つ並んでいます。

この項の規定による労働時間により労働させることができることとされる労働者の範囲

(労働基準法 第三十二条の三第一項第一号)

清算期間における総労働時間

(労働基準法 第三十二条の三第一項第三号)

その他厚生労働省令で定める事項

(労働基準法 第三十二条の三第一項第四号)

第二号の清算期間は、次の見出しで別に見ます。

第四号の「厚生労働省令で定める事項」は、施行規則に4つ書かれています。

法第三十二条の三第一項(同条第二項及び第三項の規定により読み替えて適用する場合を含む。以下この条において同じ。)第四号の厚生労働省令で定める事項は、次に掲げるものとする。

(労働基準法施行規則 第十二条の三第一項)

施行規則第十二条の三第一項条文の中身よく使われる呼び名
第一号標準となる一日の労働時間―
第二号労働しなければならない時間帯を定める場合の開始・終了の時刻コアタイム
第三号選択により労働できる時間帯に制限を設ける場合の開始・終了の時刻フレキシブルタイム
第四号清算期間が1か月を超える場合の協定の有効期間―

コアタイムとフレキシブルタイムは、どちらも「定める場合には」という書き方です。

コアタイムを置くかどうかは協定しだいで、条文が必ず置けと命じているわけではありません。

フレックスタイム制の清算期間=3か月以内

この記事の題名の答えは、第二号にあります。

清算期間(その期間を平均し一週間当たりの労働時間が第三十二条第一項の労働時間を超えない範囲内において労働させる期間をいい、三箇月以内の期間に限るものとする。以下この条及び次条において同じ。)

(労働基準法 第三十二条の三第一項第二号)

カッコの中の「三箇月以内の期間に限るものとする」が上限です。

清算期間は、その期間を平均して1週間当たりの労働時間が第三十二条第一項の時間を超えない範囲で働かせる期間、と定義されています。

第三十二条第一項の時間とは、次の数字です。

使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない。

(労働基準法 第三十二条第一項)

清算期間条文上の扱い
1か月以内平均して週40時間以内に収める
1か月を超え3か月以内平均して週40時間以内に加えて、1か月ごとに週50時間以内(第二項)
3か月を超える第二号の「三箇月以内の期間に限る」に合わない

フレックスタイム制の総枠=週40時間×清算期間の暦日数÷7

「平均し一週間当たり四十時間」を清算期間全体の時間に直すと、40時間に清算期間の暦日数を掛けて7で割った時間になります。

この時間を超えない範囲なら、第三十二条の上限を超えて働かせても条文の範囲内、という計算です。

清算期間の暦日数平均週40時間に当たる総時間(小数第2位以下切り捨て)
28日160.0時間
29日165.7時間
30日171.4時間
31日177.1時間
59日(2か月)337.1時間
60日(2か月)342.8時間
61日(2か月)348.5時間
62日(2か月)354.2時間
89日(3か月)508.5時間
90日(3か月)514.2時間
91日(3か月)520.0時間
92日(3か月)525.7時間

表の数字は、条文の「四十時間」と暦日数から出した算術の結果です。

協定で決める第三号の「総労働時間」は、この枠の中で定めるのが、第一項の「超えない範囲内」と合う形です。

清算期間が1か月を超えるときは、この表の数字に加えて、次の第二項の上限も守る必要があります。

フレックスタイム制で1か月を超える清算期間=1か月ごとに週50時間の上限

清算期間を2か月や3か月にした場合には、もう1つの線が加わります。

清算期間が一箇月を超えるものである場合における前項の規定の適用については、同項各号列記以外の部分中「労働時間を超えない」とあるのは「労働時間を超えず、かつ、当該清算期間をその開始の日以後一箇月ごとに区分した各期間(最後に一箇月未満の期間を生じたときは、当該期間。以下この項において同じ。)ごとに当該各期間を平均し一週間当たりの労働時間が五十時間を超えない」と、「同項」とあるのは「同条第一項」とする。

(労働基準法 第三十二条の三第二項)

読み替えの形で書かれているので、少し読みにくい条文です。

言っていることは、清算期間を1か月ごとに区切り、その区切りごとにも平均の上限をかける、ということになります。

区切りごとの上限は週50時間です。

3か月の清算期間で、最初の1か月にまとめて長く働き、残りの2か月で短くする形には、この線がかかります。

フレックスタイム制の届出=清算期間が1か月を超えるときだけ

協定を労働基準監督署に届け出るかどうかも、清算期間の長さで分かれます。

前条第二項の規定は、第一項各号に掲げる事項を定めた協定について準用する。

ただし、清算期間が一箇月以内のものであるときは、この限りでない。

(労働基準法 第三十二条の三第四項)

準用されている第三十二条の二第二項は、次の1文です。

使用者は、厚生労働省令で定めるところにより、前項の協定を行政官庁に届け出なければならない。

(労働基準法 第三十二条の二第二項)

ただし書があるので、清算期間が1か月以内なら届出は要りません。

1か月を超えるときに、届出の義務が生じます。

届出の様式も施行規則で決まっています。

法第三十二条の三第四項において準用する法第三十二条の二第二項の規定による届出は、様式第三号の三により、所轄労働基準監督署長にしなければならない。

(労働基準法施行規則 第十二条の三第二項)

フレックスタイム制の時間外労働=清算期間の平均で枠を超えた時間

フレックスタイム制では、ある1日に8時間を超えて働いても、それだけで時間外労働になるわけではありません。

第一項の言葉は、1週間や1日の上限を超えて「労働させることができる」です。

その協定で第二号の清算期間として定められた期間を平均し一週間当たりの労働時間が第三十二条第一項の労働時間を超えない範囲内において、同条の規定にかかわらず、一週間において同項の労働時間又は一日において同条第二項の労働時間を超えて、労働させることができる。

(労働基準法 第三十二条の三第一項)

超えてよいのは「平均し一週間当たりの労働時間が第三十二条第一項の労働時間を超えない範囲内」に限られます。

その範囲を超えた時間は、この条文が許す範囲の外です。

範囲の外で働かせるには、第三十六条の協定と第三十七条の割増賃金の話に戻ります。

時間外労働の協定については、36協定の限度時間を労働基準法36条で確かめた記事で上限の数字を並べています。↓

フレックスタイム制の途中入社・途中退職=第32条の3の2の精算

転職する人にとって大事なのが、この条文です。

清算期間の途中で入社したり退職したりすると、清算期間をまるごと働かないことになります。

使用者が、清算期間が一箇月を超えるものであるときの当該清算期間中の前条第一項の規定により労働させた期間が当該清算期間より短い労働者について、当該労働させた期間を平均し一週間当たり四十時間を超えて労働させた場合においては、その超えた時間(第三十三条又は第三十六条第一項の規定により延長し、又は休日に労働させた時間を除く。)の労働については、第三十七条の規定の例により割増賃金を支払わなければならない。

(労働基準法 第三十二条の三の二)

条件は2つあります。

第三十二条の三の二が当てはまる場面
  • 清算期間が1か月を超えている
  • その人が実際に働いた期間が清算期間より短い(途中入社・途中退職など)

そのうえで、働いた期間を平均して週40時間を超えた時間(第三十三条や第三十六条第一項で延長・休日労働させた時間を除く)には、第三十七条の例による割増賃金を払うことになります。

3か月の清算期間の会社に月の途中から入るときは、働いた期間だけで精算する、という形です。

フレックスタイム制で週5日勤務の人の特例=第三項の読み替え

第三項は、1週間の所定労働日数が5日の人についての読み替えです。

一週間の所定労働日数が五日の労働者について第一項の規定により労働させる場合における同項の規定の適用については

(労働基準法 第三十二条の三第三項)

協定で定めれば、清算期間の所定労働日数に第三十二条第二項の8時間を掛けた時間を、労働時間の限度にできる、という内容です。

労働時間の限度について、当該清算期間における所定労働日数を同条第二項の労働時間に乗じて得た時間とする旨を定めたときは

(労働基準法 第三十二条の三第三項)

曜日の並びによって、月の暦日数から出す週40時間の総枠が、所定労働日数×8時間より少なくなる月があります。

その差を協定で埋められるようにした条文、と読めます。

フレックスタイム制でも残る規定=休憩・休日・深夜の割増賃金

第三十二条の三が「同条の規定にかかわらず」と外しているのは、第三十二条の1週40時間・1日8時間の上限です。

休憩・休日・深夜の割増賃金の条文には、フレックスタイム制を除く言葉は置かれていません。

使用者は、労働時間が六時間を超える場合においては少くとも四十五分、八時間を超える場合においては少くとも一時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない。

(労働基準法 第三十四条第一項)

休憩の一斉付与の原則も、同じ条の第二項にあります。

前項の休憩時間は、一斉に与えなければならない。

ただし、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定があるときは、この限りでない。

(労働基準法 第三十四条第二項)

出社の時刻が人によって違うフレックスタイム制では、一斉に休憩を与える形と合わない場面が出てきます。

第二項のただし書は、書面による協定があれば一斉でなくてよいとしています。

使用者は、労働者に対して、毎週少くとも一回の休日を与えなければならない。

(労働基準法 第三十五条第一項)

使用者が、午後十時から午前五時まで(厚生労働大臣が必要であると認める場合においては、その定める地域又は期間については午後十一時から午前六時まで)の間において労働させた場合においては、その時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の二割五分以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。

(労働基準法 第三十七条第四項)

夜10時から朝5時まで(大臣が定める地域・期間は夜11時から朝6時まで)に働いた時間には、フレックスタイム制でも深夜の割増賃金の条文がそのまま当たる形です。

フレックスタイム制が使えない人=満18歳未満

年少者については、第六十条が別に定めています。

第三十二条の二から第三十二条の五まで、第三十六条、第四十条及び第四十一条の二の規定は、満十八才に満たない者については、これを適用しない。

(労働基準法 第六十条第一項)

並んでいる「第三十二条の二から第三十二条の五まで」の中に、フレックスタイム制の第三十二条の三が入っています。

満18歳に満たない人には、フレックスタイム制の規定は適用されません。

一方、妊産婦の請求について定める第六十六条第一項が挙げているのは、第三十二条の二・第三十二条の四・第三十二条の五の3つでした。

使用者は、妊産婦が請求した場合においては、第三十二条の二第一項、第三十二条の四第一項及び第三十二条の五第一項の規定にかかわらず、一週間について第三十二条第一項の労働時間、一日について同条第二項の労働時間を超えて労働させてはならない。

(労働基準法 第六十六条第一項)

ここに第三十二条の三は入っていません。

妊産婦が請求したときに1週40時間・1日8時間を超えさせない対象として、フレックスタイム制は挙げられていない並びです。

フレックスタイム制の明示=労働条件通知書の「始業及び終業の時刻」

転職のときに、フレックスタイム制かどうかを書面で確かめる手がかりが第十五条です。

使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。

この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。

(労働基準法 第十五条第一項)

書面で明示する事項の中に、始業と終業の時刻が入っています。

始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を二組以上に分けて就業させる場合における就業時転換に関する事項

(労働基準法施行規則 第五条第一項第二号)

フレックスタイム制で働く人について、この欄にフレックスタイム制と書かれているかが、確かめる手がかりになります。

労働条件通知書に何を書くべきかは、労働条件通知書の記載事項を労働基準法15条と施行規則5条で確かめた記事で全項目を並べています。↓

フレックスタイム制の求人で確かめる順番=条文の番号つき

ここまでの条文を、転職先に確かめる順番に並べ直します。

順番確かめること根拠の条文
1始業と終業の両方を本人に委ねているか労働基準法第三十二条の三第一項
2清算期間は何か月か(3か月以内)同項第二号
3清算期間の総労働時間は何時間か同項第三号
4コアタイム・フレキシブルタイムはあるか、何時から何時か施行規則第十二条の三第一項第二号・第三号
5清算期間が1か月を超えるなら、1か月ごとの週50時間の線をどう管理しているか第三十二条の三第二項
6途中入社の月の精算方法第三十二条の三の二

1は就業規則に、2と3は協定に、4は協定と施行規則に、5と6は法律の本文に根拠がある、という分かれ方です。

協定や就業規則は会社ごとに違うので、1から4は会社に聞かないと分からない項目です。

面接で聞きにくいと感じたら、内定後に労働条件通知書と就業規則で確かめる方法もあります。

内定後なら、労働条件通知書の始業・終業の時刻の欄がいちばん確かな手がかりです。

入社前に清算期間と総労働時間の2つが分かれば、月の働き方はほぼ見通せます。

フレックスタイム制についてよくある質問

フレックスタイム制なら、1日10時間働いても残業代は出ませんか?

第三十二条の三第一項は、清算期間を平均して週40時間を超えない範囲内なら、1日8時間を超えて働かせることができると定めています。

その範囲を超えた時間は、この条文が許す範囲の外になります。

コアタイムは必ずありますか?

施行規則第十二条の三第一項第二号の言葉は「時間帯を定める場合には」です。

置くかどうかは協定で決める形です。

清算期間を6か月にできますか?

第三十二条の三第一項第二号は、清算期間を三箇月以内の期間に限っています。

3か月の清算期間の途中で退職したら、どう精算されますか?

第三十二条の三の二が、働いた期間を平均して週40時間を超えた時間(第三十三条や第三十六条第一項で延長・休日労働させた時間を除く)について、第三十七条の例による割増賃金を払うよう定めています。

フレックスタイム制でも深夜手当は出ますか?

第三十七条第四項の深夜の割増賃金の条文には、フレックスタイム制を除く言葉はありません。

第三十二条の三が外しているのは、第三十二条の1週40時間・1日8時間の上限です。

高校生のアルバイトにフレックスタイム制は使えますか?

第六十条第一項が、第三十二条の二から第三十二条の五までの規定は満十八才に満たない者には適用しないと定めています。

フレックスタイム制の協定は届け出が必要ですか?

第三十二条の三第四項が第三十二条の二第二項を準用し、清算期間が1か月以内のものは除くとしています。

1か月を超える清算期間のときに届出が必要になります。

フレックスタイム制を条文で確かめた結果の一覧

条文で確かめたこと
  • 定義=始業と終業の時刻を本人の決定に委ねる(第三十二条の三第一項)
  • 条件=就業規則などの定め+過半数組合・過半数代表者との書面による協定
  • 協定の4項目=対象者の範囲・清算期間・総労働時間・省令の事項
  • 省令の事項=標準となる1日の労働時間・コアタイム・フレキシブルタイム・有効期間
  • 清算期間=3か月以内
  • 1か月を超える清算期間=1か月ごとに週50時間以内(第二項)
  • 届出=清算期間が1か月を超えるときだけ(第四項)
  • 途中入社・途中退職=働いた期間の平均で週40時間を超えた分を割増賃金で精算(第三十二条の三の二)

求人票の「フレックスタイム制あり」を読むときは、清算期間が何か月か、コアタイムがあるかの2点を面接で聞くと、働き方の輪郭がつかめます。

個別の事情への当てはめは、事業場を管轄する労働基準監督署か弁護士に相談する領域です。


あわせて読みたい

割増賃金の率については、割増賃金の率を労働基準法37条と政令で確かめた記事にまとめています。↓

働く時間を本人に任せる別の制度として、裁量労働制を労働基準法38条の3と38条の4で確かめた記事も条文で確かめています。↓


参考文献

この記事で使った一次資料

条文の確認日は2026年10月7日です。

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