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産業医は何人から必要か──労働安全衛生法13条と施行令5条の「常時五十人以上」を条文で確かめた

産業医は何人から必要か──労働安全衛生法13条と施行令5条の「常時五十人以上」を条文で確かめた
産業医は何人から必要か──労働安全衛生法13条と施行令5条の「常時五十人以上」を条文で確かめた

今の職場、あるいは転職先に産業医がいるのかどうか、気になったことはありませんか。

「うちは小さいからいない」「本社にはいるけれど支店にはいない」と、説明は会社によってまちまちです。

この記事は、産業医が何人の職場から必要になるのかを、労働安全衛生法と施行令・規則の言葉だけで確かめます。

先に結論を置いておきます。

条文の線は常時五十人以上の事業場で、数える単位は会社ではなく事業場です。

健康診断とストレスチェックの中身は別の記事で扱っているので、ここでは選任・人数・資格・職務・権限に絞ります。

条文の確認日は2026年10月17日です。

TOC

産業医は何人から必要か=施行令5条の「常時五十人以上の労働者を使用する事業場」

産業医の選任を義務にしているのは、労働安全衛生法第十三条第一項です。

ただ、この項は人数を書かず、「政令で定める規模の事業場」と政令に預けています。

事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、厚生労働省令で定めるところにより、医師のうちから産業医を選任し、その者に労働者の健康管理その他の厚生労働省令で定める事項(以下「労働者の健康管理等」という。)を行わせなければならない。

(労働安全衛生法 第十三条第一項)

預けられた先が、労働安全衛生法施行令第五条になります。

法第十三条第一項の政令で定める規模の事業場は、常時五十人以上の労働者を使用する事業場とする。

(労働安全衛生法施行令 第五条)

人数の線は常時五十人以上の労働者を使用する事業場の1本だけです。

見出しも「産業医を選任すべき事業場」となっていて、会社全体の人数ではなく事業場ごとの人数で読む形をとっています。

事業場の規模産業医について条文が求めること根拠
常時50人未満医師等に健康管理等を行わせるよう努める労働安全衛生法第十三条の二第一項
常時50人以上産業医を選任する労働安全衛生法第十三条第一項・施行令第五条
常時500人以上(規則第十三条第一項第三号の業務)専属の産業医を選任する労働安全衛生規則第十三条第一項第三号
常時1000人以上専属の産業医を選任する労働安全衛生規則第十三条第一項第三号
常時3000人をこえる二人以上の産業医を選任する労働安全衛生規則第十三条第一項第四号

1行目の50人未満の事業場は義務ではなく努力の定めで、これは後の章で条文を並べます。

産業医の選任は「事業場ごと」=労働安全衛生法13条1項の書き方

第十三条第一項の主語は事業者で、選任の単位は「事業場ごとに」とされています。

事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、厚生労働省令で定めるところにより、医師のうちから産業医を選任し

(労働安全衛生法 第十三条第一項)

本社が常時五十人以上でも、支店ごとに数え直すのが、この「事業場ごとに」という言葉の読み方になります。

逆に、会社全体で数百人いても、ある支店が常時五十人に届かなければ、その支店は第十三条第一項の事業場に当たりません。

その支店は、第十三条の二の努力の定めの側に入ります。

同じ「政令で定める規模の事業場ごとに」という書き方は、衛生管理者の第十二条第一項にもあります。

法第十二条第一項の政令で定める規模の事業場は、常時五十人以上の労働者を使用する事業場とする。

(労働安全衛生法施行令 第四条)

衛生管理者の線も施行令第四条で常時五十人以上とされ、産業医の施行令第五条と同じ数字です。

選任するもの法律の条人数の線を置く政令の条政令の数字
衛生管理者労働安全衛生法第十二条第一項施行令第四条常時五十人以上
産業医労働安全衛生法第十三条第一項施行令第五条常時五十人以上

産業医を選ぶ期限=労働安全衛生規則13条1項1号の「十四日以内」

第十三条第一項は「厚生労働省令で定めるところにより」選任するとしていて、その中身は労働安全衛生規則第十三条です。

法第十三条第一項の規定による産業医の選任は、次に定めるところにより行わなければならない。

(労働安全衛生規則 第十三条第一項)

産業医を選任すべき事由が発生した日から十四日以内に選任すること。

(労働安全衛生規則 第十三条第一項第一号)

期限は事由の発生から14日以内と、日数で切られています。

数え始めは「選任すべき事由が発生した日」で、会社が選任に動き出した日ではありません。

選任したあとの届け出は、同じ条の第二項が決めています。

事業者は、法第十三条第一項の規定により産業医を選任したときは、遅滞なく、電子情報処理組織を使用して、次に掲げる事項を、第十四条第二項各号に掲げる者であることにつき証明することができる電磁的記録等必要な電磁的記録を添えて、所轄労働基準監督署長に報告しなければならない。

(労働安全衛生規則 第十三条第二項)

報告する事項には、産業医の氏名・生年月日・選任年月日や、専属かどうかの別が並びます。

専属であるか否かの別及び他の事業場に勤務している場合はその事業場の名称

(労働安全衛生規則 第十三条第二項第六号)

辞任や解任があったときも、第五項で所轄労働基準監督署長への報告が求められています。

事業者は、法第十三条第一項の規定により選任した産業医の辞任等があつたときは、遅滞なく、電子情報処理組織を使用して、次に掲げる事項を、所轄労働基準監督署長に報告しなければならない。

(労働安全衛生規則 第十三条第五項)

労働基準監督署がどこまで動けるのかは、労働基準監督署の権限を労働基準法97条から105条で確かめた記事で並べています。↓

産業医になれない人=労働安全衛生規則13条1項2号の「法人の代表者」など

規則第十三条第一項第二号は、産業医に選んではならない人を挙げています。

次に掲げる者(イ及びロにあつては、事業場の運営について利害関係を有しない者を除く。)以外の者のうちから選任すること。

(労働安全衛生規則 第十三条第一項第二号)

列挙は3つで、条文の文字はそのまま次のとおりです。

事業者が法人の場合にあつては当該法人の代表者

(労働安全衛生規則 第十三条第一項第二号)

事業者が法人でない場合にあつては事業を営む個人

(労働安全衛生規則 第十三条第一項第二号)

事業場においてその事業の実施を統括管理する者

(労働安全衛生規則 第十三条第一項第二号)

社長や事業場のトップが医師でも、自分の事業場の産業医を兼ねる形はこの号で外されています。

カッコの中は、イ・ロに当たる法人の代表者と個人事業者のうち「事業場の運営について利害関係を有しない者」を除外の外に置くものです。

ハの事業の実施を統括管理する者には、このカッコが付いていません。

列挙産業医に選べない人カッコ(利害関係を有しない者)の適用
イ事業者が法人の場合の当該法人の代表者あり
ロ事業者が法人でない場合の事業を営む個人あり
ハ事業場においてその事業の実施を統括管理する者なし

産業医の人数が増える線=規則13条1項3号の専属と4号の「二人以上」

人数の線は常時五十人の1本だけではなく、規則の第三号と第四号に上の段があります。

常時千人以上の労働者を使用する事業場又は次に掲げる業務に常時五百人以上の労働者を従事させる事業場にあつては、その事業場に専属の者を選任すること。

(労働安全衛生規則 第十三条第一項第三号)

常時千人以上、または特定の業務に常時五百人以上で、その事業場に専属の産業医が要る形です。

第三号の「次に掲げる業務」は、条文の中に次の14が並んでいます。

第三号に並ぶ業務(条文の文字のまま)
多量の高熱物体を取り扱う業務及び著しく暑熱な場所における業務
多量の低温物体を取り扱う業務及び著しく寒冷な場所における業務
ラジウム放射線、エツクス線その他の有害放射線にさらされる業務
土石、獣毛等のじんあい又は粉末を著しく飛散する場所における業務
異常気圧下における業務
さく岩機、鋲打機等の使用によつて、身体に著しい振動を与える業務
重量物の取扱い等重激な業務
ボイラー製造等強烈な騒音を発する場所における業務
坑内における業務
深夜業を含む業務
水銀、砒素、黄りん、弗化水素酸、塩酸、硝酸、硫酸、青酸、か性アルカリ、石炭酸その他これらに準ずる有害物を取り扱う業務
鉛、水銀、クロム、砒素、黄りん、弗化水素、塩素、塩酸、硝酸、亜硫酸、硫酸、一酸化炭素、二硫化炭素、青酸、ベンゼン、アニリンその他これらに準ずる有害物のガス、蒸気又は粉じんを発散する場所における業務
病原体によつて汚染のおそれが著しい業務
その他厚生労働大臣が定める業務

10行目の「深夜業を含む業務」が入っているため、夜勤のある職場では五百人の線が関わってきます。

常時三千人をこえる労働者を使用する事業場にあつては、二人以上の産業医を選任すること。

(労働安全衛生規則 第十三条第一項第四号)

常時三千人をこえると、産業医は二人以上になります。

第四号の言葉は「三千人をこえる」で、三千人ちょうどは含まない書き方です。

第三号の「千人以上」「五百人以上」とは、以上とこえるの使い分けが違っています。

産業医の資格=労働安全衛生法13条2項と規則14条2項の5つの要件

産業医は医師であれば誰でもよいわけではありません。

産業医は、労働者の健康管理等を行うのに必要な医学に関する知識について厚生労働省令で定める要件を備えた者でなければならない。

(労働安全衛生法 第十三条第二項)

「厚生労働省令で定める要件」の中身は、規則第十四条第二項に並んでいます。

法第十三条第二項の厚生労働省令で定める要件を備えた者は、次のとおりとする。

(労働安全衛生規則 第十四条第二項)

法第十三条第一項に規定する労働者の健康管理等(以下「労働者の健康管理等」という。)を行うのに必要な医学に関する知識についての研修であつて厚生労働大臣の指定する者(法人に限る。)が行うものを修了した者

(労働安全衛生規則 第十四条第二項第一号)

労働衛生コンサルタント試験に合格した者で、その試験の区分が保健衛生であるもの

(労働安全衛生規則 第十四条第二項第三号)

規則第十四条第二項要件の中身
第一号厚生労働大臣の指定する者(法人に限る)が行う研修を修了した者
第二号厚生労働大臣が指定する大学で産業医の養成課程を修めて卒業し、その大学の実習を履修した者
第三号労働衛生コンサルタント試験に合格した者で、試験の区分が保健衛生であるもの
第四号大学で労働衛生に関する科目を担当する教授・准教授・講師(常時勤務する者)の職にあり、又はあつた者
第五号前各号のほか、厚生労働大臣が定める者

医師免許に加えて、この5つのどれかに当たることが産業医の条件です。

第十三条第三項は、選ばれた後の職務の姿勢を定めています。

産業医は、労働者の健康管理等を行うのに必要な医学に関する知識に基づいて、誠実にその職務を行わなければならない。

(労働安全衛生法 第十三条第三項)

産業医は、労働者の健康管理等を行うために必要な医学に関する知識及び能力の維持向上に努めなければならない。

(労働安全衛生規則 第十四条第七項)

「誠実に」と「維持向上に努めなければならない」の2つが、産業医の側に向けられた言葉になっています。

産業医の職務=労働安全衛生規則14条1項の9つの号

第十三条第一項の「労働者の健康管理その他の厚生労働省令で定める事項」は、規則第十四条第一項が中身です。

法第十三条第一項の厚生労働省令で定める事項は、次に掲げる事項で医学に関する専門的知識を必要とするものとする。

(労働安全衛生規則 第十四条第一項)

柱書の「医学に関する専門的知識を必要とするもの」という絞りが、9つの号すべてにかかっています。

規則第十四条第一項産業医の職務
第一号健康診断の実施とその結果に基づく措置
第二号法第六十六条の八などの面接指導、法第六十六条の九の措置とその結果に基づく措置
第三号心理的な負担の程度を把握するための検査と、その面接指導・措置
第四号作業環境の維持管理
第五号作業の管理
第六号前各号のほかの労働者の健康管理
第七号健康教育、健康相談その他の健康の保持増進の措置
第八号衛生教育
第九号健康障害の原因の調査と再発防止の措置

法第六十六条の八第一項、第六十六条の八の二第一項及び第六十六条の八の四第一項に規定する面接指導並びに法第六十六条の九に規定する必要な措置の実施並びにこれらの結果に基づく労働者の健康を保持するための措置に関すること。

(労働安全衛生規則 第十四条第一項第二号)

第二号が挙げる面接指導の一つは、労働安全衛生法第六十六条の八第一項に置かれています。

医師による面接指導(問診その他の方法により心身の状況を把握し、これに応じて面接により必要な指導を行うことをいう。以下同じ。)を行わなければならない。

(労働安全衛生法 第六十六条の八第一項)

面接指導のあとに事業者が聴く医師の意見も、同じ条の第四項にあります。

事業者は、第一項又は第二項ただし書の規定による面接指導の結果に基づき、当該労働者の健康を保持するために必要な措置について、厚生労働省令で定めるところにより、医師の意見を聴かなければならない。

(労働安全衛生法 第六十六条の八第四項)

第一号の健康診断の項目と受診の義務は、会社の健康診断を労働安全衛生法66条と規則44条で確かめた記事で確かめています。↓

第三号の検査の対象と五十人の線は、ストレスチェックは義務なのかを労働安全衛生法66条の10で確かめた記事にまとめています。↓

産業医の勧告=労働安全衛生法13条5項の「尊重しなければならない」

産業医が事業者にものを言う手段として、法律そのものに勧告の定めがあります。

産業医は、労働者の健康を確保するため必要があると認めるときは、事業者に対し、労働者の健康管理等について必要な勧告をすることができる。

この場合において、事業者は、当該勧告を尊重しなければならない。

(労働安全衛生法 第十三条第五項)

勧告を受けた事業者は勧告を尊重する義務を負います。

勧告の手順は規則第十四条の三が決めていて、まず事業者の意見を求めるところから始まります。

産業医は、法第十三条第五項の勧告をしようとするときは、あらかじめ、当該勧告の内容について、事業者の意見を求めるものとする。

(労働安全衛生規則 第十四条の三第一項)

事業者は、法第十三条第五項の勧告を受けたときは、次に掲げる事項を記録し、これを三年間保存しなければならない。

(労働安全衛生規則 第十四条の三第二項)

記録するのは勧告の内容と、それを踏まえて講じた措置の内容で、措置を講じないならその旨と理由も残します。

事業者は、前項の勧告を受けたときは、厚生労働省令で定めるところにより、当該勧告の内容その他の厚生労働省令で定める事項を衛生委員会又は安全衛生委員会に報告しなければならない。

(労働安全衛生法 第十三条第六項)

衛生委員会又は安全衛生委員会への報告は、規則第十四条の三第三項で「勧告を受けた後遅滞なく」とされています。

勧告の段階誰が何をするか根拠
勧告の前産業医が勧告の内容について事業者の意見を求める規則第十四条の三第一項
勧告産業医が事業者に必要な勧告をする法第十三条第五項
勧告の後事業者が勧告を尊重する法第十三条第五項
勧告の後事業者が内容と措置を記録し三年間保存する規則第十四条の三第二項
勧告の後事業者が衛生委員会又は安全衛生委員会に遅滞なく報告する法第十三条第六項・規則第十四条の三第三項

産業医の権限と身分=規則14条の4の3つの権限と14条4項の不利益取扱い

勧告のほかに、事業者は産業医に権限を与えなければならないとされています。

事業者は、産業医に対し、第十四条第一項各号に掲げる事項をなし得る権限を与えなければならない。

(労働安全衛生規則 第十四条の四第一項)

前項の権限には、第十四条第一項各号に掲げる事項に係る次に掲げる事項に関する権限が含まれるものとする。

(労働安全衛生規則 第十四条の四第二項)

第十四条第一項各号に掲げる事項を実施するために必要な情報を労働者から収集すること。

(労働安全衛生規則 第十四条の四第二項第二号)

労働者の健康を確保するため緊急の必要がある場合において、労働者に対して必要な措置をとるべきことを指示すること。

(労働安全衛生規則 第十四条の四第二項第三号)

規則第十四条の四第二項産業医の権限
第一号事業者又は総括安全衛生管理者に対して意見を述べること
第二号職務の実施に必要な情報を労働者から収集すること
第三号緊急の必要がある場合に、労働者に必要な措置をとるべきことを指示すること

第三号の指示は、相手が事業者ではなく労働者である点が他の2つと違います。

総括安全衛生管理者や衛生管理者に向けた勧告・指導・助言も、規則第十四条第三項に置かれています。

産業医は、第一項各号に掲げる事項について、総括安全衛生管理者に対して勧告し、又は衛生管理者に対して指導し、若しくは助言することができる。

(労働安全衛生規則 第十四条第三項)

勧告したことを理由に職を外されるのを防ぐ定めが、同じ条の第四項です。

事業者は、産業医が法第十三条第五項の規定による勧告をしたこと又は前項の規定による勧告、指導若しくは助言をしたことを理由として、産業医に対し、解任その他不利益な取扱いをしないようにしなければならない。

(労働安全衛生規則 第十四条第四項)

勧告や助言を理由にした解任その他不利益な取扱いをしないよう、事業者に向けて定めています。

産業医が辞任したとき、又は解任したときは、規則第十三条第四項で理由も添えて委員会に報告することになっています。

事業者は、産業医が辞任したとき又は産業医を解任したときは、遅滞なく、その旨及びその理由を衛生委員会又は安全衛生委員会に報告しなければならない。

(労働安全衛生規則 第十三条第四項)

産業医への情報提供=労働安全衛生法13条4項と規則14条の2の「八十時間」

勧告や面接指導の前提になるのが、事業者から産業医への情報の受け渡しです。

産業医を選任した事業者は、産業医に対し、厚生労働省令で定めるところにより、労働者の労働時間に関する情報その他の産業医が労働者の健康管理等を適切に行うために必要な情報として厚生労働省令で定めるものを提供しなければならない。

(労働安全衛生法 第十三条第四項)

提供する情報は、規則第十四条の二第一項に3つの号で並んでいます。

第五十二条の二第一項、第五十二条の七の二第一項又は第五十二条の七の四第一項の超えた時間が一月当たり八十時間を超えた労働者の氏名及び当該労働者に係る当該超えた時間に関する情報

(労働安全衛生規則 第十四条の二第一項第二号)

号の数字は一月当たり八十時間を超えた労働者の氏名と時間で、名前まで渡す形です。

前二号に掲げるもののほか、労働者の業務に関する情報であつて産業医が労働者の健康管理等を適切に行うために必要と認めるもの

(労働安全衛生規則 第十四条の二第一項第三号)

第三号は、産業医が必要と認めるものという書き方で、産業医の側から求められる情報を受け皿にしています。

規則第十四条の二提供する情報いつまでに(第二項)
第一項第一号健康診断・面接指導・検査の結果に基づき講じた措置又は講じようとする措置の内容(講じないならその旨と理由)医師又は歯科医師からの意見聴取の後、遅滞なく
第一項第二号超えた時間が一月当たり八十時間を超えた労働者の氏名と、その超えた時間超えた時間の算定の後、速やかに
第一項第三号産業医が健康管理等を適切に行うために必要と認める業務に関する情報産業医から求められた後、速やかに

時間外労働の上限そのものの数字は、36協定の限度時間を労働基準法36条で確かめた記事で確かめています。↓

産業医の定期巡視=規則15条の「毎月一回」と「二月に一回」

産業医は書類を見るだけでなく、作業場を回ることも求められています。

産業医は、少なくとも毎月一回(産業医が、事業者から、毎月一回以上、次に掲げる情報の提供を受けている場合であつて、事業者の同意を得ているときは、少なくとも二月に一回)作業場等を巡視し、作業方法又は衛生状態に有害のおそれがあるときは、直ちに、労働者の健康障害を防止するため必要な措置を講じなければならない。

(労働安全衛生規則 第十五条)

原則は少なくとも毎月一回で、条件がそろうと少なくとも二月に一回になります。

二月に一回に広げる条件は、情報の提供を毎月一回以上受けていることと、事業者の同意の2つです。

第十一条第一項の規定により衛生管理者が行う巡視の結果

(労働安全衛生規則 第十五条第一号)

前号に掲げるもののほか、労働者の健康障害を防止し、又は労働者の健康を保持するために必要な情報であつて、衛生委員会又は安全衛生委員会における調査審議を経て事業者が産業医に提供することとしたもの

(労働安全衛生規則 第十五条第二号)

巡視の頻度条件根拠
少なくとも毎月一回原則規則第十五条第一項
少なくとも二月に一回第一号又は第二号の情報の提供を毎月一回以上受け、かつ事業者の同意を得ているとき規則第十五条第一項カッコ内

産業医と衛生委員会=労働安全衛生法18条2項3号と規則23条5項

常時五十人以上の事業場では、衛生委員会の委員にも産業医が入ります。

衛生委員会の委員は、次の者をもつて構成する。

(労働安全衛生法 第十八条第二項)

産業医のうちから事業者が指名した者

(労働安全衛生法 第十八条第二項第三号)

委員会の側に調べてほしいことがあるときは、産業医から求めることもできます。

産業医は、衛生委員会又は安全衛生委員会に対して労働者の健康を確保する観点から必要な調査審議を求めることができる。

(労働安全衛生規則 第二十三条第五項)

産業医は委員の一人であると同時に、調査審議を求められる立場でもあります。

委員会は規則第二十三条第一項で毎月一回以上開くよう定められているので、産業医の勧告や辞任の報告もこの場に上がる流れです。

産業医がいない五十人未満の事業場=労働安全衛生法13条の2と規則15条の2

常時五十人に届かない事業場について、法律は義務ではなく努力の形で定めています。

事業者は、前条第一項の事業場以外の事業場については、労働者の健康管理等を行うのに必要な医学に関する知識を有する医師その他厚生労働省令で定める者に労働者の健康管理等の全部又は一部を行わせるように努めなければならない。

(労働安全衛生法 第十三条の二第一項)

「その他厚生労働省令で定める者」の中身は、規則第十五条の二第一項です。

法第十三条の二第一項の厚生労働省令で定める者は、労働者の健康管理等を行うのに必要な知識を有する保健師とする。

(労働安全衛生規則 第十五条の二第一項)

五十人未満の事業場では、医師か保健師に健康管理等を行わせるよう努める形になります。

情報提供の第十三条第四項も、第十三条の二第二項で準用されています。

この場合において、同条第四項中「提供しなければ」とあるのは、「提供するように努めなければ」と読み替えるものとする。

(労働安全衛生法 第十三条の二第二項)

読み替えのとおり、五十人未満では情報の提供も努力の定めに下がります。

項目常時50人以上常時50人未満
健康管理等を行う人産業医(選任の義務)医師又は保健師(努力)
情報の提供提供しなければならない提供するように努めなければならない
業務の内容の周知周知させなければならない周知させるように努めなければならない
根拠法第十三条・第百一条第二項法第十三条の二・第百一条第三項

産業医の業務の周知=労働安全衛生法101条2項と規則98条の2の3つの事項

働く側が産業医にたどり着けるように、会社には知らせる義務があります。

産業医を選任した事業者は、その事業場における産業医の業務の内容その他の産業医の業務に関する事項で厚生労働省令で定めるものを、常時各作業場の見やすい場所に掲示し、又は備え付けることその他の厚生労働省令で定める方法により、労働者に周知させなければならない。

(労働安全衛生法 第百一条第二項)

周知させる事項は、規則第九十八条の二第二項の3つです。

産業医に対する健康相談の申出の方法

(労働安全衛生規則 第九十八条の二第二項第二号)

産業医による労働者の心身の状態に関する情報の取扱いの方法

(労働安全衛生規則 第九十八条の二第二項第三号)

知らせる中身は業務の内容・健康相談の申出の方法・情報の取扱いの3つです。

周知の方法は、同じ条の第一項で、規則第二十三条第三項の各号の方法によるとされています。

掲示・備え付け、書面の交付、電子計算機のファイルに記録して常時確認できる機器を置くこと、のいずれかです。

事業者は、産業医又は前条第一項に規定する者による労働者の健康管理等の適切な実施を図るため、産業医又は同項に規定する者が労働者からの健康相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の必要な措置を講ずるように努めなければならない。

(労働安全衛生法 第十三条の三)

健康相談に応じる体制の整備は、第十三条の三で努力の定めとして置かれています。

産業医を選任しないときの罰則=労働安全衛生法120条1号の第13条第1項

選任の義務を定めた第十三条第一項は、罰則の条に名前が挙がっています。

次の各号のいずれかに該当する場合には、当該違反行為をした者は、五十万円以下の罰金に処する。

(労働安全衛生法 第百二十条)

第十二条第一項、第十三条第一項

(労働安全衛生法 第百二十条第一号)

産業医の選任義務違反は罰金が置かれた条の違反という位置づけです。

第一号の列挙には、衛生管理者の第十二条第一項や衛生委員会の第十八条第一項も同じく並びます。

ここでは、条文に名前が挙がっているかどうかだけを確かめ、個別の当てはめには踏み込みません。

産業医についてよくある質問

産業医は何人の職場から必要ですか?

労働安全衛生法施行令第五条は、常時五十人以上の労働者を使用する事業場と定めています。

数える単位は労働安全衛生法第十三条第一項の「事業場ごとに」です。

産業医はいつまでに選任しなければなりませんか?

労働安全衛生規則第十三条第一項第一号は、選任すべき事由が発生した日から十四日以内と定めています。

選任したときは、第二項により遅滞なく所轄労働基準監督署長に報告します。

専属の産業医が必要になるのは何人からですか?

規則第十三条第一項第三号は、常時千人以上の事業場、又は同号に並ぶ業務に常時五百人以上を従事させる事業場について専属の者を選任するとしています。

産業医が二人以上必要になるのは何人からですか?

規則第十三条第一項第四号は、常時三千人をこえる労働者を使用する事業場について二人以上の産業医を選任すると定めています。

社長が医師なら自分で産業医を兼ねられますか?

規則第十三条第一項第二号は、法人の代表者、個人事業者、事業場においてその事業の実施を統括管理する者以外から選任するとしています。

法人の代表者と個人事業者については、事業場の運営について利害関係を有しない者が除外の外に置かれています。

産業医の勧告に会社は従わなければなりませんか?

労働安全衛生法第十三条第五項は、事業者は当該勧告を尊重しなければならないと定めています。

勧告の内容と講じた措置は、規則第十四条の三第二項で記録し三年間保存するとされています。

産業医はどのくらいの頻度で職場を見に来ますか?

規則第十五条第一項は、少なくとも毎月一回作業場等を巡視すると定めています。

所定の情報の提供を毎月一回以上受け、事業者の同意を得ているときは、少なくとも二月に一回です。

五十人未満の職場には産業医はいないのですか?

労働安全衛生法第十三条の二第一項は、医師その他厚生労働省令で定める者に健康管理等を行わせるよう努めなければならないとしています。

厚生労働省令で定める者は、規則第十五条の二第一項で労働者の健康管理等を行うのに必要な知識を有する保健師とされています。

産業医を条文で確かめた結果の一覧

条文で確かめたこと
  • 選任の義務は労働安全衛生法第十三条第一項、人数の線は施行令第五条の常時五十人以上
  • 数える単位は会社ではなく「事業場ごと」
  • 選任は事由の発生から十四日以内、選任後は所轄労働基準監督署長に報告(規則第十三条第一項第一号・第二項)
  • 法人の代表者・個人事業者・事業場の統括管理者は産業医に選べない(規則第十三条第一項第二号)
  • 常時千人以上、又は第三号の業務に常時五百人以上で専属、常時三千人をこえると二人以上(規則第十三条第一項第三号・第四号)
  • 資格は規則第十四条第二項の5つの要件のどれか
  • 職務は規則第十四条第一項の9つの号、権限は規則第十四条の四の3つ
  • 勧告は事業者が尊重し、記録を三年間保存し、委員会に報告(法第十三条第五項・第六項、規則第十四条の三)
  • 巡視は少なくとも毎月一回、条件がそろえば少なくとも二月に一回(規則第十五条第一項)
  • 五十人未満は医師又は保健師に健康管理等を行わせる努力の定め(法第十三条の二、規則第十五条の二)

自分の職場に当てはめるときは、会社全体ではなく、働いている事業場の常時の人数から数えてみてください。

産業医の氏名や健康相談の申出の方法は、法第百一条第二項により職場に周知されているはずの事項です。

個別の事情への当てはめは、事業場を管轄する労働基準監督署か弁護士に相談する領域になります。


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参考文献

この記事で使った一次資料

条文の確認日は2026年10月17日です。

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