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通勤災害はどこまで通勤なのか──労働者災害補償保険法7条2項の「合理的な経路及び方法」を条文で確かめた

通勤災害はどこまで通勤なのか──労働者災害補償保険法7条2項の「合理的な経路及び方法」を条文で確かめた
通勤災害はどこまで通勤なのか──労働者災害補償保険法7条2項の「合理的な経路及び方法」を条文で確かめた

通勤災害という言葉は聞いたことがあっても、どこまでが「通勤」なのかは手元に条文がないと分かりません。

寄り道をしたら外れるのか、単身赴任先から実家へ戻る日はどうなるのか、二社で働いている人の移動はどうか。

この記事は、労働者災害補償保険法と施行規則の言葉だけで、その線を1本ずつ確かめます。

条文の確認日は2026年10月9日です。

先に結論を書くと、条文が置いている線は合理的な経路及び方法という一語に集まります。

この言葉の中身を、条文の並びどおりに追っていきます。

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通勤災害という言葉がある場所=労働者災害補償保険法7条1項3号

まず「通勤災害」という言葉そのものが、どの条文で決められているかを押さえます。

この語は第七条第一項が保険給付の種類を並べる中で、第三号のカッコの中に置かれています。

この法律による保険給付は、次に掲げる保険給付とする。

(労働者災害補償保険法 第七条第一項)

労働者の通勤による負傷、疾病、障害又は死亡(以下「通勤災害」という。)に関する保険給付

(労働者災害補償保険法 第七条第一項第三号)

条文の言葉は「労働者の通勤による負傷、疾病、障害又は死亡」で、それをカッコで「通勤災害」と呼んでいます。

つまり通勤災害は、通勤という原因と、負傷・疾病・障害・死亡という結果の組み合わせで決まる言葉だ。

同じ第一項の第一号には、業務上の負傷などを指す「業務災害」が置かれています。

労働者の業務上の負傷、疾病、障害又は死亡(以下「業務災害」という。)に関する保険給付

(労働者災害補償保険法 第七条第一項第一号)

第二号は、二以上の事業の業務を要因とするものを「複数業務要因災害」と呼ぶ号です。

複数事業労働者(これに類する者として厚生労働省令で定めるものを含む。以下同じ。)の二以上の事業の業務を要因とする負傷、疾病、障害又は死亡(以下「複数業務要因災害」という。)に関する保険給付(前号に掲げるものを除く。以下同じ。)

(労働者災害補償保険法 第七条第一項第二号)

この法律は、同じ第七条の中で業務災害・複数業務要因災害・通勤災害の3つを別の言葉として立てています。

法律全体の目的を書いた第一条にも、「通勤による」という言葉が独立して並んでいます。

労働者災害補償保険は、業務上の事由、事業主が同一人でない二以上の事業に使用される労働者(以下「複数事業労働者」という。)の二以上の事業の業務を要因とする事由又は通勤による労働者の負傷、疾病、障害、死亡等に対して迅速かつ公正な保護をするため、必要な保険給付を行い、あわせて、業務上の事由、複数事業労働者の二以上の事業の業務を要因とする事由又は通勤により負傷し、又は疾病にかかつた労働者の社会復帰の促進、当該労働者及びその遺族の援護、労働者の安全及び衛生の確保等を図り、もつて労働者の福祉の増進に寄与することを目的とする。

(労働者災害補償保険法 第一条)

目的の条文で業務上の事由と通勤が並べられている形は、通勤災害が後から足された枠であることを示す並びになります。

通勤災害の「通勤」の定義=7条2項の「合理的な経路及び方法」

通勤災害の中身を決めているのは、第七条第二項です。

ここが、この記事でいちばん大事な一文になります。

前項第三号の通勤とは、労働者が、就業に関し、次に掲げる移動を、合理的な経路及び方法により行うことをいい、業務の性質を有するものを除くものとする。

(労働者災害補償保険法 第七条第二項)

条件は4つに割れていて、就業に関しという言葉が最初に来ます。

次に「次に掲げる移動」で移動の型が限られ、さらに「合理的な経路及び方法により行うこと」という条件が重なります。

最後に「業務の性質を有するものを除く」で、業務災害の側に入るものがここから抜かれる形です。

第七条第二項の言葉その言葉が決めていること
就業に関し移動が就業と結び付いていること
次に掲げる移動第一号から第三号までの3つの型に限られること
合理的な経路及び方法により行うこと経路と方法の両方が合理的であること
業務の性質を有するものを除く業務の性質を持つ移動はこの通勤に入らないこと

条文は「経路」だけでなく「方法」も並べているので、どの道を通ったかと、何で移動したかの両方が見られる書き方です。

「業務の性質を有するもの」が外れる書き方は、同じ移動中の事故でも通勤災害ではなく業務災害の側に入る場合があることを意味します。

業務災害の側で出る給付の中身は、労災保険の療養補償給付はどこまで出るのかを条文で確かめた記事で確かめています。↓

通勤災害に当たる3つの移動=7条2項1号から3号

第七条第二項が挙げる移動は、第一号から第三号までの3つです。

まず第一号が、いちばん普通の行き帰りになります。

住居と就業の場所との間の往復

(労働者災害補償保険法 第七条第二項第一号)

「住居と就業の場所との間の往復」という短い言葉で、行きも帰りも入ります。

第二号は、就業の場所から別の就業の場所へ移る移動です。

厚生労働省令で定める就業の場所から他の就業の場所への移動

(労働者災害補償保険法 第七条第二項第二号)

二社で働く人が一方の勤務先から他方の勤務先へ移る時間は、この号の言葉に当たります。

第三号は、第一号の往復に先行したり後続したりする、住居と住居の間の移動です。

第一号に掲げる往復に先行し、又は後続する住居間の移動(厚生労働省令で定める要件に該当するものに限る。)

(労働者災害補償保険法 第七条第二項第三号)

号条文が挙げる移動よくある場面
第一号住居と就業の場所との間の往復自宅から勤務先への行き帰り
第二号厚生労働省令で定める就業の場所から他の就業の場所への移動複数の勤務先を回る移動
第三号第一号の往復に先行し、又は後続する住居間の移動(省令の要件に該当するものに限る)単身赴任先と帰省先の住居の間の移動

第二号には「厚生労働省令で定める就業の場所」、第三号には「厚生労働省令で定める要件」というカッコが付いています。

どちらも中身は施行規則に置かれているので、次に規則の側を見ます。

通勤災害でいう就業の場所の中身=施行規則6条の3つの号

第七条第二項第二号の「就業の場所」は、施行規則第六条が決めています。

法第七条第二項第二号の厚生労働省令で定める就業の場所は、次のとおりとする。

(労働者災害補償保険法施行規則 第六条)

法第三条第一項の適用事業及び整備法第五条第一項の規定により労災保険に係る保険関係が成立している同項の労災保険暫定任意適用事業に係る就業の場所

(労働者災害補償保険法施行規則 第六条第一号)

第一号が挙げるのは、労災保険の保険関係が成立している事業に係る就業の場所です。

法第三十四条第一項第一号、第三十五条第一項第三号又は第三十六条第一項第一号の規定により労働者とみなされる者(第四十六条の二十二の二に規定する者を除く。)に係る就業の場所

(労働者災害補償保険法施行規則 第六条第二号)

第二号は、特別加入などで労働者とみなされる者に係る就業の場所を入れています。

その他前二号に類する就業の場所

(労働者災害補償保険法施行規則 第六条第三号)

第三号は「その他前二号に類する就業の場所」という受け皿の号になります。

法第三条第一項は、この法律の適用事業を一文で決めている条文です。

この法律においては、労働者を使用する事業を適用事業とする。

(労働者災害補償保険法 第三条第一項)

労働者を使用する事業であれば規模や業種を問わず適用事業という並びです。

海外で働くときに自分で入る形は、海外赴任の労災保険に特別加入する手順を条文で確かめた記事にまとめています。↓

通勤災害になる住居間の移動=施行規則7条の単身赴任の要件

第七条第二項第三号の「厚生労働省令で定める要件」は、施行規則第七条に置かれています。

法第七条第二項第三号の厚生労働省令で定める要件は、同号に規定する移動が、次の各号のいずれかに該当する労働者により行われるものであることとする。

(労働者災害補償保険法施行規則 第七条)

各号は、どういう労働者の移動なら第三号に当たるかという形で並びます。

第一号は、配偶者と別居することになった人です。

転任に伴い、当該転任の直前の住居と就業の場所との間を日々往復することが当該往復の距離等を考慮して困難となつたため住居を移転した労働者であつて、次のいずれかに掲げるやむを得ない事情により、当該転任の直前の住居に居住している配偶者(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。以下同じ。)と別居することとなつたもの

(労働者災害補償保険法施行規則 第七条第一号)

出発点は転任に伴い住居を移転したという事実で、自分の都合での引っ越しは言葉が合いません。

第二号は配偶者がいない人で子と別居した場合、第三号は配偶者も子もいない人で要介護状態の父母や親族と別居した場合です。

その他前三号に類する労働者

(労働者災害補償保険法施行規則 第七条第四号)

第四号は「その他前三号に類する労働者」という受け皿になります。

同じ第七条の第一号イには、要介護状態という言葉の定義も置かれています。

施行規則第七条別居することになった相手条文が付けている限定
第一号配偶者イからホまでのやむを得ない事情のいずれかに当たること
第二号子配偶者がないものに限る
第三号父母又は親族要介護状態にあり、配偶者及び子がないものに限る
第四号前三号に類する労働者限定の文言は置かれていない

条文が見ているのは転任・住居の移転・別居の事情の3点セットです。

通勤災害が切れるとき=7条3項の「逸脱」と「中断」

寄り道をしたときの扱いを決めているのが、第七条第三項です。

ここで出てくる言葉が「逸脱」と「中断」になります。

労働者が、前項各号に掲げる移動の経路を逸脱し、又は同項各号に掲げる移動を中断した場合においては、当該逸脱又は中断の間及びその後の同項各号に掲げる移動は、第一項第三号の通勤としない。

(労働者災害補償保険法 第七条第三項)

注意したいのは、通勤から外れるのが逸脱又は中断の間及びその後の両方だという点です。

経路から外れた時間だけでなく、そこから先の移動も原則として通勤ではなくなる書き方になります。

ただし書が、この原則を戻す場合を置いています。

ただし、当該逸脱又は中断が、日常生活上必要な行為であつて厚生労働省令で定めるものをやむを得ない事由により行うための最小限度のものである場合は、当該逸脱又は中断の間を除き、この限りでない。

(労働者災害補償保険法 第七条第三項)

ただし書が通勤に戻すのは「当該逸脱又は中断の間を除き」なので、寄り道そのものの時間は戻りません。

場面第七条第三項の扱い根拠
経路を逸脱・移動を中断した時間通勤としない第三項本文
逸脱・中断より後の移動(原則)通勤としない第三項本文
省令の行為をやむを得ない事由により最小限度で行った場合のその後の移動通勤に戻る第三項ただし書
省令の行為に当たる場合でも、その行為をしていた時間通勤としないただし書の「当該逸脱又は中断の間を除き」

条文が3つ重ねている条件は省令の行為・やむを得ない事由・最小限度です。

3つのどれか1つでも欠けると、ただし書の言葉には当たらないことになります。

通勤災害が切れない寄り道=施行規則8条の日常生活上必要な行為

第七条第三項ただし書の「厚生労働省令で定めるもの」は、施行規則第八条が5つ並べています。

法第七条第三項の厚生労働省令で定める行為は、次のとおりとする。

(労働者災害補償保険法施行規則 第八条)

日用品の購入その他これに準ずる行為

(労働者災害補償保険法施行規則 第八条第一号)

第一号が「日用品の購入その他これに準ずる行為」です。

第二号は、職業能力の開発向上に資する教育訓練を受ける行為になります。

職業訓練、学校教育法第一条に規定する学校において行われる教育その他これらに準ずる教育訓練であつて職業能力の開発向上に資するものを受ける行為

(労働者災害補償保険法施行規則 第八条第二号)

選挙権の行使その他これに準ずる行為

(労働者災害補償保険法施行規則 第八条第三号)

第三号の「選挙権の行使その他これに準ずる行為」は、投票のための寄り道を指す言葉です。

病院又は診療所において診察又は治療を受けることその他これに準ずる行為

(労働者災害補償保険法施行規則 第八条第四号)

第四号は、病院又は診療所で診察や治療を受けることです。

要介護状態にある配偶者、子、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹並びに配偶者の父母の介護(継続的に又は反復して行われるものに限る。)

(労働者災害補償保険法施行規則 第八条第五号)

施行規則第八条条文が挙げる行為
第一号日用品の購入その他これに準ずる行為
第二号職業訓練・学校教育法第一条の学校の教育その他これらに準ずる教育訓練であって職業能力の開発向上に資するものを受ける行為
第三号選挙権の行使その他これに準ずる行為
第四号病院又は診療所において診察又は治療を受けることその他これに準ずる行為
第五号要介護状態にある配偶者・子・父母・孫・祖父母・兄弟姉妹・配偶者の父母の介護(継続的に又は反復して行われるものに限る)

第五号だけに継続的に又は反復して行われるものに限るというカッコが付いています。

列挙はこの5つで、ここに並んでいない行為は条文の言葉の外にあります。

通勤災害で出る保険給付の種類=21条の7つ

通勤災害に当たるとき、どの給付が出るかを並べているのが第二十一条です。

第七条第一項第三号の通勤災害に関する保険給付は、次に掲げる保険給付とする。

(労働者災害補償保険法 第二十一条)

療養給付

(労働者災害補償保険法 第二十一条第一号)

休業給付

(労働者災害補償保険法 第二十一条第二号)

第一号が療養給付、第二号が休業給付で、以下に障害給付・遺族給付・葬祭給付・傷病年金・介護給付が並びます。

業務災害の側の名前は、第十二条の八第一項に並んでいます。

第七条第一項第一号の業務災害に関する保険給付は、次に掲げる保険給付とする。

(労働者災害補償保険法 第十二条の八第一項)

通勤災害(第二十一条)業務災害(第十二条の八第一項)
療養給付療養補償給付
休業給付休業補償給付
障害給付障害補償給付
遺族給付遺族補償給付
葬祭給付葬祭料
傷病年金傷病補償年金
介護給付介護補償給付

給付の数はどちらも7つで、違うのは名前から「補償」の2文字が外れているところです。

社会復帰促進等事業を置いた第二条の二も、業務上の事由と通勤を並べて書いています。

労働者災害補償保険は、第一条の目的を達成するため、業務上の事由、複数事業労働者の二以上の事業の業務を要因とする事由又は通勤による労働者の負傷、疾病、障害、死亡等に関して保険給付を行うほか、社会復帰促進等事業を行うことができる。

(労働者災害補償保険法 第二条の二)

通勤災害の側も、保険給付のほかに社会復帰促進等事業の対象として書かれている形になります。

通勤災害の療養給付=22条と施行規則18条の4の疾病の範囲

通勤災害で最初に使うことになるのが、療養給付です。

療養給付は、労働者が通勤(第七条第一項第三号の通勤をいう。以下同じ。)により負傷し、又は疾病(厚生労働省令で定めるものに限る。以下この節において同じ。)にかかつた場合に、当該労働者に対し、その請求に基づいて行う。

(労働者災害補償保険法 第二十二条第一項)

第一項のカッコが「第七条第一項第三号の通勤をいう」と書いているので、ここでも第七条の定義がそのまま効きます。

「厚生労働省令で定めるもの」とされた疾病の範囲は、施行規則第十八条の四にあります。

法第二十二条第一項の厚生労働省令で定める疾病は、通勤による負傷に起因する疾病その他通勤に起因することの明らかな疾病とする。

(労働者災害補償保険法施行規則 第十八条の四)

通勤による負傷に起因する疾病と、通勤に起因することの明らかな疾病の2つです。

第二項は、療養補償給付の内容を決めた第十三条を準用する一文になります。

第十三条の規定は、療養給付について準用する。

(労働者災害補償保険法 第二十二条第二項)

障害が残ったときは第二十二条の三、死亡したときは第二十二条の四と第二十二条の五が受け持ちます。

障害給付は、労働者が通勤により負傷し、又は疾病にかかり、なおつたとき身体に障害が存する場合に、当該労働者に対し、その請求に基づいて行なう。

(労働者災害補償保険法 第二十二条の三第一項)

遺族給付は、労働者が通勤により死亡した場合に、当該労働者の遺族に対し、その請求に基づいて行なう。

(労働者災害補償保険法 第二十二条の四第一項)

葬祭給付は、労働者が通勤により死亡した場合に、葬祭を行なう者に対し、その請求に基づいて行なう。

(労働者災害補償保険法 第二十二条の五第一項)

どの条文もその請求に基づいて行なうと書いていて、請求が出発点になっています。

療養の開始後一年六箇月を経過した日の扱いは、第二十三条第一項が置いています。

傷病年金は、通勤により負傷し、又は疾病にかかつた労働者が、当該負傷又は疾病に係る療養の開始後一年六箇月を経過した日において次の各号のいずれにも該当するとき、又は同日後次の各号のいずれにも該当することとなつたときに、その状態が継続している間、当該労働者に対して支給する。

(労働者災害補償保険法 第二十三条第一項)

介護給付の条文は第二十四条で、障害年金か傷病年金を受ける権利を持つ人が対象です。

通勤災害の休業給付=22条の2と準用される14条の「百分の六十」

働けない日の所得をうめるのが休業給付です。

休業給付は、労働者が通勤による負傷又は疾病に係る療養のため労働することができないために賃金を受けない場合に、当該労働者に対し、その請求に基づいて行なう。

(労働者災害補償保険法 第二十二条の二第一項)

条件は療養のため労働することができないために賃金を受けないことで、3つが重なっています。

金額と支給の始まりは、第二項が準用する第十四条の言葉で決まります。

休業補償給付は、労働者が業務上の負傷又は疾病による療養のため労働することができないために賃金を受けない日の第四日目から支給するものとし、その額は、一日につき給付基礎日額の百分の六十に相当する額とする。

(労働者災害補償保険法 第十四条第一項)

条文の数字は第四日目から・百分の六十で、これが準用によって休業給付にも当たります。

第十四条及び第十四条の二の規定は、休業給付について準用する。

この場合において、第十四条第一項中「業務上の」とあるのは「通勤による」と、同条第二項中「別表第一第一号から第三号までに規定する場合に応じ、それぞれ同表第一号から第三号までの政令で定める率のうち傷病補償年金について定める率」とあるのは「第二十三条第二項において準用する別表第一第一号から第三号までに規定する場合に応じ、それぞれ同表第一号から第三号までの政令で定める率のうち傷病年金について定める率」と読み替えるものとする。

(労働者災害補償保険法 第二十二条の二第二項)

第二項の読替えは、第十四条の「業務上の」を「通勤による」に置き替える形です。

第三項は、最初に支給する休業給付だけ金額を減らす定めになります。

療養給付を受ける労働者(第三十一条第二項の厚生労働省令で定める者を除く。)に支給する休業給付であつて最初に支給すべき事由の生じた日に係るものの額は、前項において準用する第十四条第一項の規定にかかわらず、同項の額から第三十一条第二項の厚生労働省令で定める額に相当する額を減じた額とする。

(労働者災害補償保険法 第二十二条の二第三項)

減らす額は第三十一条第二項の厚生労働省令で定める額で、次の見出しの一部負担金と同じ額です。

業務でも通勤でもない私傷病で休むときの手当は、傷病手当金はいくらもらえるのかを健康保険法99条で確かめた記事で確かめています。↓

通勤災害だけにある一部負担金=31条2項と施行規則44条の2の「二百円」

通勤災害と業務災害で、はっきり違う扱いが1つあります。

政府は、療養給付を受ける労働者(厚生労働省令で定める者を除く。)から、二百円を超えない範囲内で厚生労働省令で定める額を一部負担金として徴収する。

ただし、第二十二条の二第三項の規定により減額した休業給付の支給を受けた労働者については、この限りでない。

(労働者災害補償保険法 第三十一条第二項)

療養給付を受ける労働者からは二百円を超えない範囲内の一部負担金が徴収されます。

業務災害の療養補償給付に、これと同じ条文はありません。

額そのものは、施行規則第四十四条の二第二項が決めています。

法第三十一条第二項の一部負担金の額は、二百円(健康保険法(大正十一年法律第七十号)第三条第二項に規定する日雇特例被保険者である労働者については、百円)とする。

ただし、現に療養に要した費用の総額がこの額に満たない場合には、当該現に療養に要した費用の総額に相当する額とする。

(労働者災害補償保険法施行規則 第四十四条の二第二項)

本体は二百円で、日雇特例被保険者である労働者は百円です。

徴収されない人は、第一項が3つ挙げています。

法第三十一条第二項の厚生労働省令で定める者は、次の各号に掲げる者とする。

(労働者災害補償保険法施行規則 第四十四条の二第一項)

第三者の行為によつて生じた事故により療養給付を受ける者

(労働者災害補償保険法施行規則 第四十四条の二第一項第一号)

療養の開始後三日以内に死亡した者その他休業給付を受けない者

(労働者災害補償保険法施行規則 第四十四条の二第一項第二号)

同一の通勤災害に係る療養給付について既に一部負担金を納付した者

(労働者災害補償保険法施行規則 第四十四条の二第一項第三号)

施行規則第四十四条の二第一項一部負担金を徴収されない者
第一号第三者の行為によつて生じた事故により療養給付を受ける者
第二号療養の開始後三日以内に死亡した者その他休業給付を受けない者
第三号同一の通勤災害に係る療養給付について既に一部負担金を納付した者

第一項第一号に出てくる第三者の行為は、第十二条の四が別に扱っている場面です。

政府は、保険給付の原因である事故が第三者の行為によつて生じた場合において、保険給付をしたときは、その給付の価額の限度で、保険給付を受けた者が第三者に対して有する損害賠償の請求権を取得する。

(労働者災害補償保険法 第十二条の四第一項)

政府が第三者に対して有する損害賠償の請求権を取得するという仕組みになっています。

控除のやり方は、第三十一条第三項と施行規則第四十四条の二第三項が置いています。

政府は、前項の労働者から徴収する同項の一部負担金に充てるため、厚生労働省令で定めるところにより、当該労働者に支払うべき保険給付の額から当該一部負担金の額に相当する額を控除することができる。

(労働者災害補償保険法 第三十一条第三項)

通勤災害に会社の災害補償義務があるか=労働基準法75条の言葉

労働基準法の災害補償は、どこまでを対象にしているかを確かめます。

労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかつた場合においては、使用者は、その費用で必要な療養を行い、又は必要な療養の費用を負担しなければならない。

(労働基準法 第七十五条第一項)

主語は使用者ですが、条件は業務上負傷し、又は疾病にかかつた場合に限られています。

この条文に通勤という言葉はありません。

労災保険法の側で費用徴収を定めた第三十一条第一項も、災害補償の価額を限度として書いています。

政府は、次の各号のいずれかに該当する事故について保険給付を行つたときは、厚生労働省令で定めるところにより、

(労働者災害補償保険法 第三十一条第一項)

第一項第三号が挙げているのも「業務災害の原因である事故」です。

事業主が故意又は重大な過失により生じさせた業務災害の原因である事故

(労働者災害補償保険法 第三十一条第一項第三号)

故意又は重大な過失による事故として第三号が名指ししているのは業務災害の方になります。

会社が働く人の安全に負う義務そのものは、安全配慮義務はどこに書いてあるのかを労働契約法5条で確かめた記事で整理しています。↓

通勤災害の請求書に書くこと=施行規則18条の5の各号

通勤災害で療養の給付を受けるときの請求書は、施行規則第十八条の五が決めています。

療養給付たる療養の給付を受けようとする者は、第十二条第一項各号に掲げる事項及び次に掲げる事項を記載した請求書を、当該療養の給付を受けようとする指定病院等を経由して所轄労働基準監督署長に提出しなければならない。

(労働者災害補償保険法施行規則 第十八条の五第一項)

災害の発生の時刻及び場所

(労働者災害補償保険法施行規則 第十八条の五第一項第一号)

第一号は災害の発生の時刻及び場所です。

第三号と第四号が、通勤災害に特有の記載事項になります。

通常の通勤の経路及び方法

(労働者災害補償保険法施行規則 第十八条の五第一項第三号)

住居又は就業の場所から災害の発生の場所に至つた経路、方法、所要時間その他の状況

(労働者災害補償保険法施行規則 第十八条の五第一項第四号)

第三号が通常の通勤の経路及び方法、第四号がその日に実際に通った経路を書かせる並びです。

施行規則第十八条の五第一項記載する事項
第一号災害の発生の時刻及び場所
第二号往路・復路・就業の場所間の移動・住居間の移動の区分に応じた就業の場所や時刻
第三号通常の通勤の経路及び方法
第四号住居又は就業の場所から災害の発生の場所に至つた経路、方法、所要時間その他の状況

第七条第二項の「合理的な経路及び方法」を見るための材料が、そのまま請求書の記載事項になっている形です。

事業主の証明が必要な事項は、第二項が決めています。

通勤災害で記録を残すなら、いつも使っている経路と、その日の経路の2つを分けて書いておくことになります。

通勤災害で保険給付が行われない場合=12条の2の2の「故意」

通勤災害に当たっても、給付が行われない場合が条文に置かれています。

労働者が、故意に負傷、疾病、障害若しくは死亡又はその直接の原因となつた事故を生じさせたときは、政府は、保険給付を行わない。

(労働者災害補償保険法 第十二条の二の二第一項)

第一項は故意の場合で、政府は保険給付を行いません。

第二項は、全部または一部を行わないことができる場合です。

労働者が故意の犯罪行為若しくは重大な過失により、又は正当な理由がなくて療養に関する指示に従わないことにより、負傷、疾病、障害若しくは死亡若しくはこれらの原因となつた事故を生じさせ、又は負傷、疾病若しくは障害の程度を増進させ、若しくはその回復を妨げたときは、政府は、保険給付の全部又は一部を行わないことができる。

(労働者災害補償保険法 第十二条の二の二第二項)

故意の犯罪行為、重大な過失、正当な理由のない療養指示違反の3つが並んでいます。

第一項が「行わない」、第二項が「行わないことができる」で、言葉の強さが違います。

条文対象になる行い政府の扱い
第十二条の二の二第一項故意に負傷・疾病・障害・死亡又はその直接の原因となつた事故を生じさせたとき保険給付を行わない
第十二条の二の二第二項故意の犯罪行為若しくは重大な過失によるとき保険給付の全部又は一部を行わないことができる
第十二条の二の二第二項正当な理由がなくて療養に関する指示に従わないとき保険給付の全部又は一部を行わないことができる

条文に並んでいるのは故意・故意の犯罪行為・重大な過失・指示違反の4つだけです。

通勤災害の請求権の時効=42条の「二年」と「五年」

通勤災害の給付を請求できる期間も、条文で切られています。

療養補償給付、休業補償給付、葬祭料、介護補償給付、複数事業労働者療養給付、複数事業労働者休業給付、複数事業労働者葬祭給付、複数事業労働者介護給付、療養給付、休業給付、葬祭給付、介護給付及び二次健康診断等給付を受ける権利は、これらを行使することができる時から二年を経過したとき、障害補償給付、遺族補償給付、複数事業労働者障害給付、複数事業労働者遺族給付、障害給付及び遺族給付を受ける権利は、これらを行使することができる時から五年を経過したときは、時効によつて消滅する。

(労働者災害補償保険法 第四十二条第一項)

療養給付・休業給付・葬祭給付・介護給付は二年、障害給付と遺族給付は五年です。

起算点は、どちらも「これらを行使することができる時から」です。

給付(通勤災害の側)第四十二条第一項の期間
療養給付二年
休業給付二年
葬祭給付二年
介護給付二年
障害給付五年
遺族給付五年

傷病年金は第四十二条第一項の列挙に名前が無く、請求ではなく政府が支給を決める給付として第二十三条に置かれます。

休業給付のように毎日発生する給付は、日ごとに行使できる時が来る書き方になります。

通勤災害についてよくある質問

通勤災害の「通勤」はどう定義されていますか?

第七条第二項が、就業に関し、同項各号の移動を合理的な経路及び方法により行うことと定めています。

業務の性質を有するものは、この通勤から除かれます。

寄り道をしたら通勤災害にならないのですか?

第七条第三項は、逸脱又は中断の間及びその後の移動を通勤としないと定めています。

ただし書は、施行規則第八条の行為をやむを得ない事由により最小限度で行った場合に、逸脱又は中断の間を除いて通勤に戻します。

買い物に寄るのは施行規則8条のどの号ですか?

第一号の「日用品の購入その他これに準ずる行為」です。

第二号は教育訓練、第三号は選挙権の行使、第四号は診察又は治療、第五号は要介護状態の親族の介護が並んでいます。

単身赴任先と自宅の間の移動は通勤災害ですか?

第七条第二項第三号が、第一号の往復に先行し、又は後続する住居間の移動を挙げています。

その要件は施行規則第七条で、転任に伴い住居を移転したことなどが並びます。

二社で働いている人の勤務先から勤務先への移動はどうなりますか?

第七条第二項第二号が、厚生労働省令で定める就業の場所から他の就業の場所への移動を挙げています。

その就業の場所の中身は、施行規則第六条の3つの号に置かれています。

通勤災害では何の給付が出ますか?

第二十一条が、療養給付・休業給付・障害給付・遺族給付・葬祭給付・傷病年金・介護給付の7つを挙げています。

通勤災害の治療費は全額無料ですか?

第三十一条第二項が、療養給付を受ける労働者から二百円を超えない範囲内の一部負担金を徴収すると定めています。

額は施行規則第四十四条の二第二項で二百円(日雇特例被保険者である労働者は百円)です。

通勤災害の請求はいつまでにすればよいですか?

第四十二条第一項は、療養給付・休業給付・葬祭給付・介護給付を二年、障害給付・遺族給付を五年で時効によって消滅すると定めています。

通勤災害を条文で確かめた結果の一覧

条文で確かめたこと
  • 「通勤災害」の語は第七条第一項第三号のカッコの中にある
  • 通勤の定義は第七条第二項=就業に関し・各号の移動・合理的な経路及び方法・業務の性質を有するものを除く
  • 移動の型は3つ(住居と就業の場所の往復/就業の場所から他の就業の場所/住居間の移動)
  • 就業の場所の中身は施行規則第六条、住居間の移動の要件は施行規則第七条
  • 逸脱・中断の間とその後は通勤としない(第七条第三項本文)
  • 施行規則第八条の5つの行為をやむを得ない事由により最小限度で行った場合は、その間を除いて戻る
  • 給付は第二十一条の7つで、業務災害の名前から「補償」が外れた形
  • 療養給付には一部負担金がある(第三十一条第二項・施行規則第四十四条の二=二百円)
  • 時効は第四十二条第一項で二年と五年

通勤災害で条文を当てはめるときに材料になるのは、いつもの経路と、その日の経路の2つです。

施行規則第十八条の五第一項が請求書に両方を書かせているのは、その2つを見比べるための並びになります。

個別の事情への当てはめは、事業場を管轄する労働基準監督署に相談する領域です。


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会社の都合で休んだ日の賃金は、休業手当はいくら払われるのかを労働基準法26条で確かめた記事で確かめています。↓

療養の給付そのものの中身は、労災保険の療養補償給付はどこまで出るのかを条文で確かめた記事で確かめています。↓


参考文献

この記事で使った一次資料

条文の確認日は2026年10月9日です。

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