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雇用保険被保険者証はどこにあるのか──雇用保険法施行規則第10条と転職先に出すまでの扱いを条文で確かめる

「雇用保険被保険者証を持ってきてください」。

転職先の入社手続きの案内に、この一行が入っていることがあります。

ところが自宅を探しても見つからず、そもそも受け取った記憶がないという話が続きます。

この記事は、雇用保険被保険者証が誰から誰へ渡る書類なのかを、条文の上で確かめます。

体験談も、伝聞も、転職サイトのまとめも使いません。

使うのは、e-Gov法令検索に載っている雇用保険法と雇用保険法施行規則の条文だけです。

先に結論を書きます。

雇用保険被保険者証を交付するのは公共職業安定所長で、条文はその交付を「事業主を通じて行うことができる」と認めています。だから手元に無いまま会社に置かれている形が、条文どおりに起こります。

条文の確認日は2026年9月17日です。

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雇用保険被保険者証は、ハローワークが交付して会社を通って渡る書類です

探す場所の答えを先に置きます。

この書類を作って渡す側は、会社ではありません。

条文が交付する主体として名前を出しているのは、公共職業安定所長です。

そして条文は、その交付を会社経由でやってよいと書いています。

つまり「ハローワークが作り、会社が受け取り、会社が本人に渡すか会社で保管する」という経路が、条文の想定の中にあります。

本人の手元に無いことが、それだけで違法を意味するわけではありません。

以下、その根拠になっている条文を順番に出します。

雇用保険被保険者証を交付する根拠は、雇用保険法施行規則第10条第1項です

交付そのものを定めている条文は1つです。

公共職業安定所長は、法第九条の規定により被保険者となつたことの確認をしたときは、その確認に係る者に雇用保険被保険者証(様式第七号)を交付しなければならない。

(出典:雇用保険法施行規則 第十条第一項(被保険者証の交付))

ここで読み取れることが3つあります。

1つ目は、交付する側が公共職業安定所長だということです。

2つ目は、交付の引き金が「被保険者となつたことの確認」だということです。

3つ目は、この書類に様式番号が振られていることです。

条文は雇用保険被保険者証を「様式第七号」と呼んでいます。

引き金になっている「確認」は、雇用保険法第9条です

施行規則が指している「法第九条」は、次の条文です。

厚生労働大臣は、第七条の規定による届出若しくは前条の規定による請求により、又は職権で、労働者が被保険者となつたこと又は被保険者でなくなつたことの確認を行うものとする。

(出典:雇用保険法 第九条第一項(確認))

確認のきっかけは3つ並んでいます。

会社からの届出、本人からの請求、そして行政の職権です。

交付は確認の後に来るので、会社が届出をしていなければ、そもそも雇用保険被保険者証は発生しません。

雇用保険被保険者証が会社に留まるのは、施行規則第10条第2項が事業主経由を認めているからです

手元に無い理由の条文上の根拠は、同じ第10条の次の項にあります。

前項の規定による被保険者証の交付は、当該被保険者を雇用する事業主を通じて行うことができる。

(出典:雇用保険法施行規則 第十条第二項)

書かれているのは「行うことができる」です。

義務ではなく、選べる形になっています。

そして、事業主を通じた交付が「本人に手渡すところまで」を含むのかどうかは、この条文には書かれていません。

条文に書かれていないので、この記事では会社が保管し続けることの適否を断定しません。

言えるのは、入社時に受け取った記憶がないという状態が、条文の経路の中で起こりうるということです。

雇用保険被保険者証に載る被保険者番号は、施行規則第6条第1項の記載事項です

転職先がこの書類を欲しがる理由も、条文から追えます。

会社が入社時に出す届出は、資格取得届です。

被保険者番号(直近に交付された第十条第一項の雇用保険被保険者証(同項を除き、以下「被保険者証」という。)に記載されている被保険者番号をいう。以下同じ。)(過去に被保険者となつたことがある者に限る。)

(出典:雇用保険法施行規則 第六条第一項(被保険者となつたことの届出))

条文は被保険者番号を、雇用保険被保険者証に記載されている番号だと定義しています。

つまり転職先が求めているのは紙そのものではなく、その紙に印字された被保険者番号です。

そしてこの記載が求められるのは、括弧の中にあるとおり「過去に被保険者となつたことがある者に限る」場合です。

初めて就職する人には、この番号も、この書類もまだ存在しません。

雇用保険被保険者証を転職先に出す義務は、施行規則第6条第7項が定めています

「持ってきてください」の根拠になる条文も、同じ第6条の中にあります。

被保険者証の交付を受けた者は、被保険者となつたときは、速やかに、その被保険者証をその者を雇用する事業主に提示しなければならない。

(出典:雇用保険法施行規則 第六条第七項)

この条文は3つの点で読み方を絞っています。

1つ目は、義務を負うのが「被保険者証の交付を受けた者」だということです。

交付を受けていない人は、この条文の主語に入りません。

2つ目は、求められている行為が「提示」だということです。

条文の言葉は提出でも預託でもなく、提示です。

3つ目は、時期が「速やかに」と書かれていることです。

何日以内という数字は、この項には置かれていません。

雇用保険被保険者証をなくしたときの再交付は、施行規則第10条第3項に手順があります

見つからない場合の出口も、条文に用意されています。

被保険者証の交付を受けた者は、当該被保険者証を滅失し、又は損傷したときは、雇用保険被保険者証再交付申請書(様式第八号)に運転免許証、健康保険法(大正十一年法律第七十号)第五十一条の三第一項に規定する書面その他の被保険者証の再交付の申請をしようとする者が本人であることを証明することができる書類を添えて公共職業安定所長に提出し、被保険者証の再交付を受けなければならない。

(出典:雇用保険法施行規則 第十条第三項)

この項が名前を出しているものは3つです。

雇用保険被保険者証再交付申請書という様式第八号の書類、本人であることを証明する書類、そして提出先としての公共職業安定所長です。

条文は再交付の相手も公共職業安定所長にしているので、この手続きの窓口は会社ではありません。

また、条文が挙げている本人確認書類の例は運転免許証と健康保険法の書面で、そこから先は「その他」で受けています。

どの書類が「その他」に入るかを列挙した条文は、ここには置かれていません。

雇用保険被保険者証と一緒に届く書類は、施行規則第9条の確認通知書です

入社時と退職時に会社から渡される紙は、1種類ではありません。

公共職業安定所長は、法第九条第一項の規定による労働者が被保険者となつたこと又は被保険者でなくなつたことの確認をしたときは、それぞれ、雇用保険被保険者資格取得確認通知書(様式第六号の二)又は雇用保険被保険者資格喪失確認通知書(様式第六号の三)により、その旨を当該確認に係る者及びその者を雇用し、又は雇用していた事業主に通知しなければならない。

(出典:雇用保険法施行規則 第九条第一項(確認の通知))

ここには別の様式番号が2つ出てきます。

資格取得確認通知書は様式第六号の二、資格喪失確認通知書は様式第六号の三で、どちらも雇用保険被保険者証(様式第七号)とは別の紙です。

会社から受け取った紙を「雇用保険被保険者証だと思っていた」という取り違えは、様式が隣同士なので起こりやすい形です。

条文に出てくる様式番号を、そのまま並べます。

書類の名前(条文の表記)様式根拠の条文
雇用保険被保険者証様式第七号施行規則 第十条第一項
雇用保険被保険者証再交付申請書様式第八号施行規則 第十条第三項
雇用保険被保険者資格取得確認通知書様式第六号の二施行規則 第九条第一項
雇用保険被保険者資格喪失確認通知書様式第六号の三施行規則 第九条第一項
雇用保険被保険者離職証明書様式第五号施行規則 第七条第一項
雇用保険被保険者離職票様式第六号施行規則 第七条第三項

6種類のうち、転職先への提示が条文で求められているのは雇用保険被保険者証だけです。

雇用保険被保険者証と離職票は、別の条文で別の様式になっています

退職時の書類と混同されやすいので、そこも条文で切り分けます。

離職票について書いているのは、第10条ではなく第7条です。

事業主は、第一項の規定により当該資格喪失届を提出する際に当該被保険者が雇用保険被保険者離職票(様式第六号。以下「離職票」という。)の交付を希望しないときは、同項後段の規定にかかわらず、離職証明書を添えないことができる。ただし、離職の日において五十九歳以上である被保険者については、この限りでない。

(出典:雇用保険法施行規則 第七条第三項(被保険者でなくなつたことの届出))

離職票は失業給付の手続きで使う紙で、様式第六号です。

雇用保険被保険者証は様式第七号で、転職先での資格取得の側に使います。用途も様式も別です。

この項には、条文が数字で切っている線が1つあります。

離職の日において五十九歳以上の被保険者については、希望しない場合の例外が使えないと書かれています。

雇用保険被保険者証が無くても、本人から確認を請求する条文があります

会社が届出をしていたのかどうか自体を疑うときの条文も、法律の側に置かれています。

被保険者又は被保険者であつた者は、いつでも、次条の規定による確認を請求することができる。

(出典:雇用保険法 第八条(確認の請求))

条文は「いつでも」と書いていて、期限を置いていません。

請求の方法は、施行規則の側にあります。

法第八条の規定による被保険者となつたこと又は被保険者でなくなつたことの確認の請求は、文書又は口頭で行うものとする。

(出典:雇用保険法施行規則 第八条第一項(確認の請求))

文書だけでなく、口頭でもよいと書かれています。

そして同じ条には、雇用保険被保険者証を持っている場合の扱いも置かれています。

第二項、第三項、第五項及び第七項の場合において、被保険者となつたことの確認の請求をしようとする者が、被保険者証の交付を受けた者であるときは、その被保険者証を提出しなければならない。

(出典:雇用保険法施行規則 第八条第十項)

ここでの言葉は「提出」で、第6条第7項の「提示」とは別の語が使われています。

雇用保険被保険者証の出発点は、会社が翌月10日までに出す資格取得届です

交付までの流れをさかのぼると、いちばん手前にあるのは会社の届出です。

その期限は、施行規則が日付で切っています。

事業主は、法第七条の規定により、その雇用する労働者が当該事業主の行う適用事業に係る被保険者となつたことについて、当該事実のあつた日の属する月の翌月十日までに、雇用保険被保険者資格取得届

(出典:雇用保険法施行規則 第六条第一項)

条文が置いている期限は「当該事実のあつた日の属する月の翌月十日まで」です。

入社日から数えた日数ではなく、月をまたいで翌月の10日という切り方になっています。

この届出が出て、法第九条の確認がされて、はじめて雇用保険被保険者証の交付にたどり着きます。

入社した月のうちに手元に来ないことは、この期限の書き方から素直に起こります。

提出先は、その事業所の所在地を管轄する公共職業安定所の長です。

なお同条第二項は、この資格取得届を年金事務所を経由して提出できるとしています。

同条第三項は、一定の様式に限って労働基準監督署長を経由する道も認めています。

経由先が複数あるので、会社の手続きが遅れているのか行政側で止まっているのかを、本人が外から見分けることはできません。

雇用保険被保険者証が届かないとき、通知が「あつたものとみなす」条文があります

本人にも会社にも通知が届かない場合の扱いも、施行規則第9条が用意しています。

同条第二項は、所在が明らかでないために通知ができないとき、公共職業安定所が公示の措置を講じなければならないと定めています。

その公示に続く効果が、次の項に書かれています。

前項の規定による措置を開始した日の翌日から起算して七日を経過したときは、第一項の規定による通知があつたものとみなす。

(出典:雇用保険法施行規則 第九条第三項)

条文が置いている日数は「翌日から起算して七日」です。

紙が手元に来ていなくても、条文の上では通知が済んだことになる場合があるという書き方です。

ただしこれは第9条の確認通知の話で、雇用保険被保険者証そのものの交付にみなし規定を置いた条文は、この記事では見当たりませんでした。

公示の方法として条文が挙げているのは、庁内の掲示場への掲示と、電子計算機の映像面への表示、そしてインターネットに接続された自動公衆送信装置の使用です。

住所や連絡先が古いままだと、この経路に乗る可能性があります。

雇用保険被保険者証について、条文では確かめられなかったこと

この記事で読んだ条文の中に、答えが書かれていなかった論点を並べます。

  • 会社が雇用保険被保険者証を本人に渡さず保管し続けることの適否=第10条第2項は「事業主を通じて行うことができる」までしか書いていません
  • 第6条第7項の「速やかに」が何日を指すか=日数の定めはこの項にありません
  • 再交付の本人確認書類として「その他」に何が入るか=条文は列挙していません
  • 再交付にかかる日数=第10条第3項に期間の定めはありません
  • 提示ができなかった場合の本人への制裁=この規則の条文に見当たりませんでした

条文に書かれていない5点について、この記事は答えを断定しません。

雇用保険被保険者証について言われている話を、条文と突き合わせます

よく流れてくる言い方を、ここまでの条文に当てて並べます。

  • 「会社が発行する書類」=ずれます。交付するのは公共職業安定所長です(施行規則第十条第一項)
  • 「入社時に必ず本人に渡される」=条文はそう書いていません。交付は事業主を通じて行うことができる形です(同条第二項)
  • 「無くしたら会社に言う」=窓口が違います。再交付申請書の提出先は公共職業安定所長です(同条第三項)
  • 「離職票と同じもの」=別物です。離職票は様式第六号、雇用保険被保険者証は様式第七号です
  • 「転職先に出すのは任意」=条文上は義務の形です。第六条第七項が「提示しなければならない」と書いています
  • 「初めての就職でも用意する」=当たりません。被保険者番号の記載は過去に被保険者となつたことがある者に限られます(第六条第一項)

6つのうち5つは、条文の書き方とずれています。

雇用保険被保険者証について、この記事で確かめたこと

条文から確かめられたのは、次の点です。

  • 交付するのは公共職業安定所長で、様式は第七号です(施行規則第十条第一項)
  • 交付は事業主を通じて行うことができます(同条第二項)
  • 交付の引き金は、雇用保険法第九条の確認です
  • 転職先への提示は、施行規則第六条第七項が「速やかに」と定めています
  • 転職先が必要としているのは、この紙に記載された被保険者番号です(同条第一項)
  • 滅失・損傷のときは、様式第八号の再交付申請書を公共職業安定所長に出します(第十条第三項)
  • 会社の届出の有無そのものは、雇用保険法第八条により本人がいつでも確認を請求できます

逆に、条文から確かめられなかったのは「会社が保管し続けてよいか」と「速やかにの日数」です。

個別の事情に当てはめた判断は、住所地を管轄する公共職業安定所または都道府県労働局の領域です。


この記事で使った一次資料

条文の確認日は2026年9月17日です。

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