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退職の有給消化は拒否できる?労働基準法39条と厚生労働省の一次資料で確かめる

「退職するときの有給消化は、会社が認めてくれたら取れる」。

退職の相談になると、ほぼ必ずこの言い方が出てきます。

この記事は、その言い方が今の法律と公的資料の上でどこまで成り立つのかを確かめます。

体験談も、伝聞も、転職サイトのまとめも使いません。

使うのは、e-Gov法令検索に載っている労働基準法・同施行規則・民法の条文と、厚生労働省および都道府県労働局が公表している資料と統計だけです。

先に結論を書きます。

退職時の有給消化は、会社の承認を要件とする条文がそもそも存在しません。

会社が持っている唯一の対抗手段は「他の時季に振り替える権利」ですが、退職が決まっている人には振り替える先が無いので、その手段が使えなくなります。

条文と資料の確認日は2026年9月12日です。

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退職時の有給消化は、労働者が日を決めて会社が従う、という順番で動きます

いちばん誤解が多いところから置きます。

条文が定めている順番

労働基準法第39条第5項は、次のように書いています。

使用者は、前各項の規定による有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない。

(出典:労働基準法 第三十九条第五項(e-Gov法令検索))

主語は「使用者」で、述語は「与えなければならない」です。

そして、日を決めるのは「労働者の請求する時季」と書かれています。

⇒ 労働者が日を決め、会社がそれに従う、という順番です。

条文のどこにも「使用者の承認を得たとき」「業務の引き継ぎが終わったとき」という条件は書かれていません。

厚生労働省も同じ説明をしています

厚生労働省のよくある質問のページは、次のように書いています。

年次有給休暇は、労働者が請求する時季に与えなければならないと労働基準法で定められています。使用者は、労働者が請求した時季に年次有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合にのみ、他の時季に年次有給休暇を与えることができますが、年次有給休暇を付与しないとすることはできません。

(出典:年次有給休暇とはどのような制度ですか。パートタイム労働者でも有休があると聞きましたが、本当ですか。|厚生労働省)

読みどころは「付与しないとすることはできません」の一文です。

会社にできるのは「他の時季に与える」ことだけで、「与えない」という選択肢は用意されていません。

この構造が、退職時の有給消化を考えるときの土台になります。

この記事が何を根拠にしているか

先に、この記事の作り方を書いておきます。

条文はe-Gov法令検索で本文を開いて確認したものだけを引用しています。

統計の数字は、厚生労働省が公表しているPDFを開いて、そこに載っている値だけを書いています。

退職時に有給消化できる日数は、労働基準法39条の表で決まっています

何日消化できるかは、会社の裁量ではなく条文の表で決まります。

最初の10日が発生する条件

使用者は、その雇入れの日から起算して六箇月間継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した十労働日の有給休暇を与えなければならない。

(出典:労働基準法 第三十九条第一項(e-Gov法令検索))

条件は2つだけです。

1つ目は、雇入れの日から6か月間の継続勤務です。

2つ目は、その期間の全労働日の8割以上の出勤です。

⇒ 正社員かどうか、雇用契約に期間があるかどうかは、この2つの条件のどちらにも入っていません。

6か月を過ぎたあとの加算

第39条第2項は、6か月を超えて働いた場合の加算日数を、条文の中の表で定めています。

使用者は、一年六箇月以上継続勤務した労働者に対しては、雇入れの日から起算して六箇月を超えて継続勤務する日(以下「六箇月経過日」という。)から起算した継続勤務年数一年ごとに、前項の日数に、次の表の上欄に掲げる六箇月経過日から起算した継続勤務年数の区分に応じ同表の下欄に掲げる労働日を加算した有給休暇を与えなければならない。

(出典:労働基準法 第三十九条第二項(e-Gov法令検索))

条文が持っている加算の表は、次の内容です。

六箇月経過日から起算した継続勤務年数加算される労働日合計の付与日数
(6か月時点=第1項の日数)―10労働日
一年一労働日11労働日
二年二労働日12労働日
三年四労働日14労働日
四年六労働日16労働日
五年八労働日18労働日
六年以上十労働日20労働日

左の2列は労働基準法第39条第2項の条文中の表そのままです。

右の「合計の付与日数」は、第1項の10労働日に加算分を足した数です。

厚生労働省のよくある質問のページも、同じ数字を「6か月=10労働日、1年6か月=11労働日、2年6か月=12労働日、3年6か月=14労働日、4年6か月=16労働日、5年6か月=18労働日、6年6か月以上=20労働日」と表で公開しています。

上限は20労働日で止まる

条文の表は「六年以上」で十労働日の加算に止まっており、それより上の区分がありません。

⇒ 勤続20年でも30年でも、1年あたりに新しく発生する日数は20労働日が上限です。

ただし、次の見出しで見るとおり、使わなかった分は一定期間だけ繰り越されます。

そのため、退職時に手元に残っている日数は20日を超えることがあります。

パート・アルバイトの退職でも有給消化はできて、日数は比例付与の表で決まります

週の勤務日数が少なくても、有給休暇そのものが無くなるわけではありません。

条文は「比率を考慮して省令で定める」と書いている

労働基準法第39条第3項は、所定労働日数が少ない労働者について、日数を省令に委ねています。

受け皿になっているのが労働基準法施行規則第24条の3です。

法第三十九条第三項の厚生労働省令で定める時間は、三十時間とする。

(出典:労働基準法施行規則 第二十四条の三第一項(e-Gov法令検索))

⇒ 週の所定労働時間が30時間以上なら、日数が少なくても前の見出しの表(10日~20日)が使われます。

比例付与の表が使われるのは、週の所定労働時間が30時間未満で、かつ週の所定労働日数が4日以下(または1年間の所定労働日数が48日から216日まで)の場合です。

比例付与の表

週所定労働日数1年間の所定労働日数6か月1年6か月2年6か月3年6か月4年6か月5年6か月6年6か月以上
四日百六十九日から二百十六日まで7日8日9日10日12日13日15日
三日百二十一日から百六十八日まで5日6日6日8日9日10日11日
二日七十三日から百二十日まで3日4日4日5日6日6日7日
一日四十八日から七十二日まで1日2日2日2日3日3日3日

この表は労働基準法施行規則第24条の3第3項の条文中の表を、そのまま書き写したものです。

厚生労働省のよくある質問のページにも、同じ数字の表が「表2」として載っています。

週1日の勤務でも、6か月続けば1労働日の有給休暇が発生します。

⇒ 退職時に「アルバイトだから有給は無い」という説明が出てきたら、この表と突き合わせて確かめられます。

退職の有給消化に会社が対抗できる唯一の手段が時季変更権です

ここが、この記事のいちばんの中心です。

条文のただし書

第39条第5項には、本文のあとにただし書が付いています。

ただし、請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる。

(出典:労働基準法 第三十九条第五項ただし書(e-Gov法令検索))

これが「時季変更権」と呼ばれているものです。

読みどころは、条文が与えている効果が「他の時季にこれを与えることができる」でしかない点です。

⇒ 有給休暇を消す権利ではなく、日をずらす権利です。

⇒ ずらす先が無ければ、この権利は行使しようがありません。

「事業の正常な運営を妨げる」の中身

厚生労働省の「確かめよう労働条件」は、この要件の中身を次のように説明しています。

「事業の正常な運営を妨げる」とは、例えば、年末等特に業務繁忙な時季を指定する場合や同一時期に多数の労働者の年次有給休暇指定が競合したため、その全員に年次有給休暇を付与し難いという場合などを指します。

(出典:年次有給休暇|確かめよう労働条件|厚生労働省)

同じページは、判断の仕方についても書いています。

「請求を行った労働者の所属する事業場を基準として、個別的、具体的に客観的に判断されます」という書き方です。

つまり「忙しいから」という会社の一般的な感想では足りず、その事業場の具体的な事情に照らして客観的に判断されます。

退職時の有給消化に時季変更権が効かないのは、振り替える先が無いからです

結論は、退職が決まっている人には時季変更権が働かない、です。

厚生労働省が明記している一文

また労働者が会社を退職した場合、退職日をもって年次有給休暇の権利は消滅します。退職間近に労働者が残存年休の全てを使い切って退職したいと申請する場合がありますが、退職をもって年休権が消滅することから、使用者は時季変更権を行使しえず、同年休取得を認めるほかありません。

(出典:年次有給休暇|確かめよう労働条件|厚生労働省)

理屈は単純です。

時季変更権は「他の時季に与える」権利です。

退職日を過ぎれば有給休暇の権利そのものが消えるので、「他の時季」が物理的に存在しません。

⇒ 振り替える先が無い以上、行使できる余地がありません。

これは会社が親切かどうかの話ではなく、条文の構造から出てくる結論です。

「引き継ぎがあるから退職日を延ばして」と言われたとき

同じページは、その先まで書いています。

会社側が業務の引き継ぎなどが必要な場合、ときに退職日を遅らせるなどの打診がされることがありますが、これに応ずるか否かは労働者に委ねられています。

(出典:年次有給休暇|確かめよう労働条件|厚生労働省)

⇒ 退職日を延ばすかどうかは「打診」であって、命令ではありません。

⇒ 応じるかどうかを決めるのは労働者の側です。

引き継ぎを理由に有給消化を拒めるとする条文はありません。

退職時の有給消化を金銭で買い上げることは、原則として認められていません

「消化しきれない分はお金で払う」という運用には、条文の側からの制約があります。

労働局が公開している回答

労働基準法では、「有給休暇を与えなければならない」と規定されていますので、金銭を支給しても与えたことにはなりません。また、買上げの予約をして請求できる年次有給休暇日数を減らしたり、請求された日数を与えないことはできません。

(出典:年次有給休暇 Q8 年次有給休暇の買上げをしても法律違反にはなりませんか。|鹿児島労働局)

ポイントは「金銭を支給しても与えたことにはなりません」という部分です。

お金を払っても、会社の「与える義務」は消えません。

⇒ 買い上げを理由に有給消化の申し出を断ることはできません。

条文が認めている例外

同じ回答には、続けて例外が書かれています。

ただし、法を上回る日数の年次有給休暇についてはこの限りではありません。

(出典:年次有給休暇 Q8|鹿児島労働局)

労働基準法が定めているのは最低基準です。

会社が法定より多い日数を独自に上乗せしている場合、その上乗せ部分は労働基準法39条の規律の外にあります。

⇒ 買い上げが問題にならないのは、この上乗せ部分についてです。

退職時に残った法定の年次有給休暇を、会社の判断で一方的に金銭に置き換えることを認める条文はありません。

退職の有給消化と「年5日の時季指定義務」は、別の話として整理します

2019年4月から、会社の側にも義務がかかるようになりました。

第39条第7項の本文

使用者は、第一項から第三項までの規定による有給休暇(これらの規定により使用者が与えなければならない有給休暇の日数が十労働日以上である労働者に係るものに限る。以下この項及び次項において同じ。)の日数のうち五日については、基準日(略)から一年以内の期間に、労働者ごとにその時季を定めることにより与えなければならない。

(出典:労働基準法 第三十九条第七項(e-Gov法令検索))

対象は「有給休暇の日数が十労働日以上である労働者」です。

基準日から1年以内に5日を取らせることが、会社の義務になっています。

厚生労働省労働基準局の「改正労働基準法に関するQ&A」は、この義務の重さを次のように書いています。

使用者が5日分の年次有給休暇の時季指定をしただけでは足りず、実際に基準日から1年以内に年次有給休暇を5日取得していなければ、法違反として取り扱うことになります。

(出典:改正労働基準法に関するQ&A(平成31年4月・厚生労働省労働基準局))

会社が指定できるのは5日までです

この義務は、会社が有給休暇の日程を全部決められる制度ではありません。

労働者の個人的事由による取得のために労働者の指定した時季に与えられるものとして一定の日数を留保する観点から、使用者は、年5日を超える日数について年次有給休暇の時季を指定することはできません。

(出典:改正労働基準法に関するQ&A(平成31年4月・厚生労働省労働基準局))

⇒ 6日目以降を会社が指定することはできません。

⇒ 退職前にまとめて消化する日は、労働者が決める側の日数に含まれます。

また、施行規則第24条の6は、会社が時季を指定するときの手続を定めています。

使用者は、法第三十九条第七項の規定により労働者に有給休暇を時季を定めることにより与えるに当たつては、あらかじめ、同項の規定により当該有給休暇を与えることを当該労働者に明らかにした上で、その時季について当該労働者の意見を聴かなければならない。

(出典:労働基準法施行規則 第二十四条の六第一項(e-Gov法令検索))

会社が5日を指定する場合でも、事前に本人の意見を聴くことが省令で義務づけられています。

年度の途中で辞める場合

同じQ&Aは、期間の途中で義務の履行が難しくなる場合についても書いています。

ただし、残りの期間における労働日が、使用者が時季指定すべき年次有給休暇の残日数より少なく、5日の年次有給休暇を取得させることが不可能な場合には、その限りではありません。

(出典:改正労働基準法に関するQ&A(平成31年4月・厚生労働省労働基準局))

この一文は育児休業から復帰した労働者についての問答に置かれたものです。

退職時に有給消化できずに残った日数は、そのまま消えます

有給休暇の権利が消えるタイミングは2つあります。

1つ目=2年の時効

労働基準法第115条は、次のように定めています。

この法律の規定による賃金の請求権はこれを行使することができる時から五年間、この法律の規定による災害補償その他の請求権(賃金の請求権を除く。)はこれを行使することができる時から二年間行わない場合においては、時効によつて消滅する。

(出典:労働基準法 第百十五条(e-Gov法令検索))

厚生労働省の「確かめよう労働条件」は、この条文を年次有給休暇に当てはめて説明しています。

年休権の時効消滅については、労基法第115条に基づき2年の消滅時効にかかると解されており、年休発生日から2年間は行使可能です。

(出典:年次有給休暇|確かめよう労働条件|厚生労働省)

⇒ 今年の分と、去年の残り。手元にあるのは最大でこの2年分です。

同じページは、就業規則で繰越を禁じても権利は消えないと書いています。

「就業規則において年次有給休暇は翌年度に繰り越してはならない旨を定めたとしても、年度経過後における年次有給休暇の権利は消滅しません」という書き方です。

2つ目=退職日

前の見出しで引用したとおり、退職日をもって年次有給休暇の権利は消滅します。

時効の2年がまだ来ていなくても、退職日が来れば残りは消えます。

⇒ だから、退職時の有給消化は「退職日をいつに置くか」とセットで決める必要があります。

消える場面根拠消えるタイミング
使わずに時間が経った労働基準法第115条年休が発生した日から2年
会社を辞めた退職により労働契約が終了退職日
就業規則で繰越を禁じた―消えない(権利は残る)

退職の有給消化を組み立てるとき、民法627条の2週間が効いてきます

有給消化は「退職日から逆算する」ものではなく、「辞めると伝えた日から先に積む」ものです。

期間の定めのない雇用の場合

当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。

(出典:民法 第六百二十七条第一項(e-Gov法令検索))

読みどころは「いつでも」と「二週間」です。

期間の定めのない雇用であれば、申し入れから2週間で契約が終わります。

⇒ 逆に言えば、2週間しか残っていない状態で20日分の有給消化を組むことはできません。

残日数が多い人ほど、辞めると伝える日を前に置く必要があります。

有期契約の場合

期間の定めがある契約については、労働基準法第137条に別の定めがあります。

期間の定めのある労働契約(一定の事業の完了に必要な期間を定めるものを除き、その期間が一年を超えるものに限る。)を締結した労働者(第十四条第一項各号に規定する労働者を除く。)は、(略)当該労働契約の期間の初日から一年を経過した日以後においては、その使用者に申し出ることにより、いつでも退職することができる。

(出典:労働基準法 第百三十七条(e-Gov法令検索))

⇒ 契約期間が1年を超える有期雇用では、初日から1年を経過した日以後はいつでも退職を申し出られます。

この条文には、対象から除かれる労働者の定めが付いています。

自分がどちらに当たるかは、契約書の期間と職務の内容を見て確かめる必要があります。

退職の有給消化を理由に不利益な扱いをすることは、条文で禁じられています

「消化するなら退職金を減らす」という運用には、名指しの条文があります。

附則第136条

使用者は、第三十九条第一項から第四項までの規定による有給休暇を取得した労働者に対して、賃金の減額その他不利益な取扱いをしないようにしなければならない。

(出典:労働基準法 第百三十六条(e-Gov法令検索))

語尾が「しないようにしなければならない」である点は、条文どおりに読む必要があります。

第136条の違反に対する罰則は、条文上定められていません。

有給休暇そのものを与えなかった場合の罰則

一方、第39条の本体には罰則が付いています。

次の各号のいずれかに該当する者は、六月以下の拘禁刑又は三十万円以下の罰金に処する。

(出典:労働基準法 第百十九条柱書(e-Gov法令検索))

この第119条第1号が挙げる条文の中に「第三十九条(第七項を除く。)」が入っています。

第7項だけは別枠で、第120条に置かれています。

次の各号のいずれかに該当する者は、三十万円以下の罰金に処する。

(出典:労働基準法 第百二十条柱書(e-Gov法令検索))

第120条第1号の列挙の中に「第三十九条第七項」があります。

違反の対象根拠条文罰則
年次有給休暇を与えなかった(第39条のうち第7項以外)労働基準法第119条第1号六月以下の拘禁刑又は三十万円以下の罰金
年5日の時季指定義務を果たさなかった(第39条第7項)労働基準法第120条第1号三十万円以下の罰金
年休取得を理由に不利益な取扱いをした(第136条)労働基準法第136条条文上、罰則の定めなし

記録が残る仕組み

施行規則第24条の7は、会社に記録の作成と保存を義務づけています。

使用者は、法第三十九条第五項から第七項までの規定により有給休暇を与えたときは、時季、日数及び基準日(第一基準日及び第二基準日を含む。)を労働者ごとに明らかにした書類(略)を作成し、当該有給休暇を与えた期間中及び当該期間の満了後五年間保存しなければならない。

(出典:労働基準法施行規則 第二十四条の七(e-Gov法令検索))

これが「年次有給休暇管理簿」で、時季・日数・基準日が労働者ごとに残ります。

⇒ 何日残っているかは、会社の記憶ではなく書類で確かめられる建て付けになっています。

退職前に有給消化を組むなら、計画的付与の対象かどうかも確かめます

会社によっては、有給休暇の一部が先に日付を押さえられていることがあります。

第39条第6項=計画的付与

使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、第一項から第三項までの規定による有給休暇を与える時季に関する定めをしたときは、これらの規定による有給休暇の日数のうち五日を超える部分については、前項の規定にかかわらず、その定めにより有給休暇を与えることができる。

(出典:労働基準法 第三十九条第六項(e-Gov法令検索))

労使協定があれば、5日を超える部分の日付を会社側で決められる制度です。

厚生労働省の令和7(2025)年就労条件総合調査では、この制度がある企業の割合は40.8%でした。

⇒ 4割前後の企業で、有給休暇の一部があらかじめ押さえられている計算になります。

退職が決まっている人の扱い

厚生労働省のパンフレットは、労使協定を作るときの注意として次のように書いています。

計画的付与の時季に育児休業や産前産後の休業に入ることが分かっている者や、定年などあらかじめ退職することが分かっている者については、労使協定で計画的付与の対象から外しておきます。

(出典:年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説|厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署)

⇒ 退職が分かっている人を計画的付与の対象から外しておく、という運用が国の資料に書かれています。

退職前に有給消化を組むときは、自分の会社に計画的付与の労使協定があるか、自分がその対象に入っているかを先に確かめると、日程が組みやすくなります。

退職の有給消化を考える前提として、日本全体の取得率を数字で見ておきます

「退職のときにまとめて消化する」という発想が生まれる背景は、統計に出ています。

令和7(2025)年就労条件総合調査

令和6(2024)年 1 年間に企業が付与した年次有給休暇日数(繰越日数を除く。)をみると、労働者 1 人平均は 18.1 日(令和6年調査 16.9 日)、このうち労働者が取得した日数は 12.1 日(同 11.0 日)と昭和 59(1984)年以降最も多くなっており、取得率は 66.9%(同 65.3%)と昭和 59 年以降最も高くなっている。

(出典:令和7(2025)年就労条件総合調査の概況|厚生労働省)

付与が18.1日で、取得が12.1日です。

⇒ 差の6.0日が、毎年使われずに残っている計算になります。

取得率は過去最高でも66.9%で、3分の1は使われていません。

業種で大きく違う

取得率を産業別にみると、「電気・ガス・熱供給・水道業」が 75.2%と最も高く、「宿泊業,飲食サービス業」が 50.7%と最も低くなっている。

(出典:令和7(2025)年就労条件総合調査の概況|厚生労働省)

同じ調査から、産業別の数字を抜き出すと次のとおりです。

産業1人平均付与日数1人平均取得日数取得率
調査計(令和7年調査)18.1日12.1日66.9%
電気・ガス・熱供給・水道業19.5日14.7日75.2%
鉱業,採石業,砂利採取業18.2日13.5日74.3%
製造業18.8日13.7日72.8%
金融業,保険業19.6日14.3日72.8%
情報通信業18.9日12.7日66.9%
建設業18.3日11.1日60.7%
卸売業,小売業17.5日10.5日59.9%
宿泊業,飲食サービス業15.9日8.0日50.7%

出典は令和7(2025)年就労条件総合調査 結果の概況|厚生労働省の第5表です。

付与日数の差は3.6日ですが、取得日数の差は6.7日あります。

⇒ 業種による差は、もらえる日数よりも「使えているか」の側で大きく開いています。

企業規模でも差がある

同じ第5表には、企業規模別の数字も載っています。

企業規模1人平均付与日数1人平均取得日数取得率
1,000人以上18.5日12.8日69.0%
300~999人18.4日12.3日66.8%
100~299人17.8日11.7日65.5%
30~99人17.4日11.3日64.9%

規模が小さくなるほど取得率が下がる形になっています。

ただし、いちばん大きい区分といちばん小さい区分の差は4.1ポイントで、産業別の差ほど大きくはありません。

この記事で確かめたこと

最後に、一次資料で裏が取れたことだけを並べます。

  • 年次有給休暇は「労働者の請求する時季に与えなければならない」(労働基準法第39条第5項)。会社の承認を要件にする条文は無い。
  • 会社が使えるのは時季変更権だけで、効果は「他の時季にこれを与えることができる」に限られる(同項ただし書)。
  • 退職日をもって年休権は消滅するため、使用者は時季変更権を行使しえず、取得を認めるほかない(厚生労働省「確かめよう労働条件」)。
  • 引き継ぎを理由に退職日を延ばす打診に応じるかどうかは、労働者に委ねられている(同)。
  • 付与日数は6か月で10労働日、以後1年ごとに加算され、6年以上で20労働日が上限(労働基準法第39条第1項・第2項)。
  • 週30時間未満かつ週4日以下などの労働者は比例付与の表で決まり、週1日勤務でも6か月で1労働日が発生する(労働基準法施行規則第24条の3)。
  • 買上げは「金銭を支給しても与えたことにはなりません」。例外は法を上回る日数の部分だけ(鹿児島労働局Q8)。
  • 会社には年5日の時季指定義務があるが、5日を超える日数を会社が指定することはできない(労働基準法第39条第7項・厚生労働省労働基準局Q&A)。
  • 年休権は発生日から2年で時効消滅する(労働基準法第115条・厚生労働省「確かめよう労働条件」)。
  • 期間の定めのない雇用は、解約の申入れの日から2週間で終了する(民法第627条第1項)。
  • 年休取得を理由とする不利益取扱いは、労働基準法第136条が「しないようにしなければならない」と定めている。
  • 令和7(2025)年就労条件総合調査で、1人平均付与18.1日・取得12.1日・取得率66.9%。産業別は最高75.2%、最低50.7%。

条文と公的資料で直接示されていないのは、退職者について年5日の時季指定義務がどう扱われるかと、第136条の違反への罰則の2点です。

いずれも、勤務先の就業規則と労使協定、そして所轄の労働基準監督署で確かめるのが確実です。

条文と資料の確認日は2026年9月12日です。

制度は改正されることがあるため、最新の内容はe-Gov法令検索と厚生労働省の公表資料で確認してください。

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