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再就職手当はいくらもらえるのか──条文の名前は「就業促進手当」で、雇用保険法56条の3を確かめた

「早く決まれば再就職手当が出る」。

失業給付を受けながら転職活動をしていると、必ずこの話が出てきます。

この記事は、その手当の金額と条件が、どの条文のどこに書かれているのかを確かめます。

体験談も、伝聞も、転職サイトのまとめも使いません。

使うのは、e-Gov法令検索に載っている雇用保険法と雇用保険法施行規則の条文だけです。

先に結論を書きます。

いまの雇用保険法の本則に『再就職手当』という言葉はありません。本則が置いているのは第五十六条の三の『就業促進手当』です。

この記事はその条文を読みます。

条文の確認日は2026年9月17日です。

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再就職手当という言葉は、いまの雇用保険法の本則にありません

先に、言葉の所在を確かめます。

e-Gov法令検索が配信している雇用保険法の本文を全文検索した結果は、次のとおりです。

探した語本則での出現附則での出現
再就職手当0件17件
就業促進手当22件あり

附則に残っている17件は、平成15年の改正より前の条文を指しています。

いま動いている本則の言い方はこうです。

就業促進手当は、次の各号のいずれかに該当する者に対して、公共職業安定所長が厚生労働省令で定める基準に従つて必要があると認めたときに、支給する。

(出典:雇用保険法 第五十六条の三第一項(就業促進手当))

つまり、いま動いている条文の名前は就業促進手当で、再就職手当はその一部を指す呼び名です。

以下では、条文が第一項第一号として置いている類型を追います。

再就職手当の入口は「支給残日数が所定給付日数の3分の1以上」です

第五十六条の三第一項第一号が、いちばん多く使われる入口です。

厚生労働省令で定める安定した職業に就いた受給資格者であつて、当該職業に就いた日の前日における基本手当の支給残日数

(出典:雇用保険法 第五十六条の三第一項(就業促進手当))

そして、残日数の要件は同じ号の末尾にあります。

が当該受給資格に基づく所定給付日数の三分の一以上であるもの

(出典:雇用保険法 第五十六条の三第一項(就業促進手当))

数えるのは『職業に就いた日の前日』の残日数です。

就職した当日ではありません。

残日数が3分の1を割ってから決まった場合は、第一項第二号の側の話になります。

再就職手当でいう「安定した職業」は施行規則が1年で線を引いています

条文本体は「厚生労働省令で定める安定した職業」としか書いていません。

その省令が、雇用保険法施行規則第八十二条の二です。

法第五十六条の三第一項第一号の厚生労働省令で定める安定した職業に就いた受給資格者は、一年を超えて引き続き雇用されることが確実であると認められる職業に就き、又は事業(当該事業により当該受給資格者が自立することができると公共職業安定所長が認めたものに限る。)を開始した受給資格者であつて、就業促進手当を支給することが当該受給資格者の職業の安定に資すると認められるものとする。

(出典:雇用保険法施行規則 第八十二条の二第一項(法第五十六条の三第一項第一号の厚生労働省令で定める安定した職業に就いた受給資格者))

読み取れる線は3つです。

  • 1年を超えて引き続き雇用されることが確実であると認められる職業であること
  • または、公共職業安定所長が自立できると認めた事業を開始したこと
  • 就業促進手当を支給することが職業の安定に資すると認められること

『1年を超えて』なので、1年ちょうどの有期契約は、この条文の言葉からは外れます。

なお、第一項第二号の側の線は同じ規則の第八十二条の三にあり、こちらは「一年以上」です。

1文字違いで対象が変わるので、契約書の期間の書き方をそのまま当てはめることになります。

再就職手当の金額は残日数の10分の6、3分の2以上なら10分の7です

金額は第三項第一号に書かれています。

に支給残日数に相当する日数に十分の六(その職業に就いた日の前日における基本手当の支給残日数が当該受給資格に基づく所定給付日数の三分の二以上である者にあつては、十分の七)を乗じて得た数を乗じて得た額

(出典:雇用保険法 第五十六条の三第三項(就業促進手当))

就職した日の前日の支給残日数条文が定める割合
所定給付日数の3分の2以上十分の七
所定給付日数の3分の1以上3分の2未満十分の六
3分の1未満第1項第1号の対象外

早く決まるほど率が上がるのは、この3分の2の線が理由です。

掛ける相手である基本手当日額にも、同じ号が上限を置いています。

一万二千九十円(その額が第十八条の規定により変更されたときは、その変更された額)に百分の五十(受給資格に係る離職の日において六十歳以上六十五歳未満である受給資格者にあつては、百分の四十五)を乗じて得た金額

(出典:雇用保険法 第五十六条の三第三項(就業促進手当))

条文に書かれている一万二千九十円は、第十八条によって変更されることがある数字です。

したがって、実際の計算に使う金額は、条文の数字そのものとは限りません。

再就職手当を受けた後に、6か月続けて働いた場合の上乗せも同じ条文にあります

第三項第一号には、括弧で上乗せが書かれています。

同一の事業主の適用事業にその職業に就いた日から引き続いて六箇月以上雇用される者であつて厚生労働省令で定めるものにあつては、当該額に、基本手当日額に支給残日数に相当する日数に十分の二を乗じて得た数を乗じて得た額を限度として厚生労働省令で定める額を加えて得た額

(出典:雇用保険法 第五十六条の三第三項(就業促進手当))

上乗せの限度は十分の二で、同じ事業主のもとで6か月以上続いたことが条件です。

転職してすぐ辞めた場合には、この部分は付きません。

再就職手当の支給要件は、施行規則第82条に4つ並んでいます

条文本体が「厚生労働省令で定める基準」に投げていた中身が、ここにあります。

法第五十六条の三第一項第一号に該当する者に係る同項の厚生労働省令で定める基準は、同号に該当する者が次の要件に該当する者であることとする。

(出典:雇用保険法施行規則 第八十二条第一項(法第五十六条の三第一項の厚生労働省令で定める基準))

並んでいる要件は4つです。

  • 離職前の事業主に再び雇用されたものでないこと
  • 法第二十一条の規定による期間(待期)が経過した後に職業に就き、または事業を開始したこと
  • 給付制限を受けた場合、待期の満了後1か月の期間内は、公共職業安定所または職業紹介事業者等の紹介により職業に就いたこと
  • 求職の申込みをした日前に雇入れを約した事業主に雇用されたものでないこと

1つ目と4つ目は、転職活動の順番そのものを見ています。

在職中に次の会社と話がついてから退職した場合、4つ目の要件に当たるかどうかが問題になります。

3つ目は、自己都合退職で給付制限がかかった人向けの条件です。

再就職手当を一度受けると、次に受けられない期間があります

回数の制限は第二項です。

受給資格者、高年齢受給資格者、特例受給資格者又は日雇受給資格者(第五十八条及び第五十九条第一項において「受給資格者等」という。)が、前項各号に規定する安定した職業に就いた日前厚生労働省令で定める期間内の就職について就業促進手当の支給を受けたことがあるときは、同項の規定にかかわらず、就業促進手当は、支給しない。

(出典:雇用保険法 第五十六条の三第二項(就業促進手当))

期間そのものは『厚生労働省令で定める期間』とされていて、法律の条文には日数が書かれていません。

短い間に転職を繰り返す場合は、ここを先に確かめることになります。

再就職手当を受けると、基本手当を受けたものとみなされます

受け取った後の扱いも条文にあります。

第一項第一号に該当する者に係る就業促進手当を支給したときは、この法律の規定(第十条の四及び第三十四条の規定を除く。)の適用については、当該就業促進手当の額を基本手当日額で除して得た日数に相当する日数分の基本手当を支給したものとみなす。

(出典:雇用保険法 第五十六条の三第四項(就業促進手当))

受け取った額を基本手当日額で割った日数分だけ、基本手当を受けたものとみなす形です。

つまり残日数は、手当を受け取った分だけ減ります。

再就職した先をすぐ辞めた場合に、給付が元のまま残っているわけではありません。

再就職手当について、条文から確かめられなかったこと

この記事で扱ったのは条文に書いてあることだけです。

読んでも出てこなかったものを並べます。

  • 『1年を超えて引き続き雇用されることが確実』を、誰がどう判断するのか
  • 第二項の『厚生労働省令で定める期間』が何年か
  • 6か月以上雇用された場合の上乗せの、具体的な計算式
  • 申請の書類と提出の期限

これらは雇用保険法と施行規則の、この記事で引いた条文には書かれていません。

個別の事情に当てはめた判断は、住所地を管轄する公共職業安定所の領域です。

まとめ|再就職手当は条文では「就業促進手当」です

条文だけで確かめられたことを並べます。

  • いまの雇用保険法の本則に『再就職手当』の語は0件で、置かれているのは第五十六条の三の就業促進手当
  • 入口は、就職した日の前日の支給残日数が所定給付日数の3分の1以上(第1項第1号)
  • 『安定した職業』は施行規則第八十二条の二で『1年を超えて引き続き雇用されることが確実』
  • 金額は残日数×十分の六、残日数が3分の2以上なら十分の七(第3項第1号)
  • 基本手当日額には一万二千九十円×百分の五十(60歳以上65歳未満は百分の四十五)の上限がある
  • 同一の事業主のもとで6か月以上続いた場合、十分の二を限度とする上乗せがある
  • 支給要件は施行規則第八十二条に4つ(前職への再雇用でない・待期後・紹介経由・事前約束でない)
  • 受け取った分は、第4項で基本手当を受けたものとみなされる

『早く決まると得』という説明は、第3項第1号の3分の2の線を指しています。

残日数を数える日が『就職した日の前日』である点は、日程を組むときに効いてきます。


この記事で使った一次資料

条文の確認日は2026年9月17日です。

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