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傷病手当金はいくらもらえるのか──健康保険法99条の「3分の2」と通算1年6か月を条文で確かめる

「転職の前に体を壊したら、収入はゼロになる」。

療養で長く休むことになったとき、多くの人がまずこれを心配します。

この記事は、その期間に健康保険から出るお金の仕組みを確かめます。

体験談も、伝聞も、保険の比較サイトのまとめも使いません。

使うのは、e-Gov法令検索に載っている健康保険法の条文と、全国健康保険協会(協会けんぽ)が公開している資料だけです。

先に結論を書きます。

傷病手当金は、休んだ日から3日を経過した日以降について、標準報酬月額の平均を日割りにした額の3分の2が、通算1年6か月を上限に支給されます。

条文と公的資料の確認日は2026年9月17日です。

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傷病手当金は、健康保険法99条が定める休業中の生活保障です

最初に押さえるのは、傷病手当金が「見舞金」ではなく法律上の給付だという点です。

根拠は健康保険法第99条第1項

被保険者(任意継続被保険者を除く。第百二条第一項において同じ。)が療養のため労務に服することができないときは、その労務に服することができなくなった日から起算して三日を経過した日から労務に服することができない期間、傷病手当金を支給する。

(出典:健康保険法 第九十九条第一項(e-Gov法令検索))

条文が置いている要件は3つです。

  • 療養のためであること
  • 労務に服することができないこと
  • その状態になった日から3日を経過していること

条文に「療養のため」と書かれているとおり、療養していない期間は対象になりません。

業務上のケガは対象から外れる

協会けんぽは、対象外になるものを具体的に示しています。

ただし、業務上・通勤災害によるもの(労災保険の給付対象)や病気と見なされないもの(美容整形など)は支給対象外です。

(出典:傷病手当金|給付と手続き|協会けんぽ)

仕事が原因のケガは労災保険の側で扱われます。

この記事が何を根拠にしているか

根拠にしたのは、次の2種類です。

  • e-Gov法令検索に載っている健康保険法の条文
  • 全国健康保険協会(協会けんぽ)が公開している傷病手当金の案内ページ

条文と公的資料に書いていないことは、この記事では書きません。

傷病手当金が始まるのは、休んだ日から3日を経過した日からです

この3日間は「待期」と呼ばれ、傷病手当金は支給されません。

待期は連続していなければならない

業務外の事由による病気やケガの療養のため仕事を休んだ日から連続して3日間(待期)の後、4日目以降の仕事に就けなかった日に対して支給されます。

(出典:傷病手当金|給付と手続き|協会けんぽ)

連続という条件が効くため、飛び石で休んだ日を足し上げることはできません。

待期3日間の考え方は会社を休んだ日が連続して3日間なければ成立しません。

(出典:傷病手当金|給付と手続き|協会けんぽ)

有給休暇や土日も待期に数える

待期には、有給休暇、土日・祝日等の公休日も含まれるため、給与の支払いがあったかどうかは関係ありません。

(出典:傷病手当金|給付と手続き|協会けんぽ)

待期の判定に「給与が出ているかどうか」は関係ありません。休んだかどうかだけを見ます。

働けない状態かどうかは誰が判断するか

仕事に就くことができない状態の判定は、療養担当者の意見等を基に、被保険者の仕事の内容を考慮して判断されます。

(出典:傷病手当金|給付と手続き|協会けんぽ)

本人の申告だけでは決まらず、医師の意見と仕事の内容の両方が材料になります。

傷病手当金の額は、標準報酬月額の平均を30分の1にして3分の2にした額です

計算の順番が条文で決まっています。平均する、30で割る、3分の2にする、の順です。

条文が示している計算式

傷病手当金の額は、一日につき、傷病手当金の支給を始める日の属する月以前の直近の継続した十二月間の各月の標準報酬月額(被保険者が現に属する保険者等により定められたものに限る。以下この項において同じ。)を平均した額の三十分の一に相当する額(その額に、五円未満の端数があるときは、これを切り捨て、五円以上十円未満の端数があるときは、これを十円に切り上げるものとする。)の三分の二に相当する金額(その金額に、五十銭未満の端数があるときは、これを切り捨て、五十銭以上一円未満の端数があるときは、これを一円に切り上げるものとする。)とする。 ただし、同日の属する月以前の直近の継続した期間において標準報酬月額が定められている月が十二月に満たない場合にあっては、次の各号に掲げる額のうちいずれか少ない額の三分の二に相当する金額(その金額に、五十銭未満の端数があるときは、これを切り捨て、五十銭以上一円未満の端数があるときは、これを一円に切り上げるものとする。)とする。

(出典:健康保険法 第九十九条第二項(e-Gov法令検索))

見るのは「直近の継続した十二月間」です。

直近の給与1か月分ではありません。

協会けんぽが公表している計算例

協会けんぽは、支給額の例を数字で示しています。

手順協会けんぽの例
支給開始日令和8年2月15日
標準報酬月額令和7年3月〜令和7年8月まで16万円/令和7年9月〜令和8年2月まで18万円
平均した額(16万円×6+18万円×6)÷12=17万円
30分の1に相当する額17万円÷30≒5,670円(10円未満四捨五入)
1日あたり支給額5,670円×2/3=3,780円(1円未満四捨五入)

月給ではなく標準報酬月額で計算するため、手取りの3分の2にはなりません。

この金額に税込・税抜の区別はない

協会けんぽが示している3,780円という額は、税を引く前の額でも引いた後の額でもありません。

租税その他の公課は、保険給付として支給を受けた金品を標準として、課することができない。

(出典:健康保険法 第六十二条(e-Gov法令検索))

保険給付そのものを標準として課税できないと条文が書いているため、傷病手当金には税込・税抜という区別が生じません。

手取りの3分の2にはならない一方で、支給された額からさらに所得税が引かれることもありません。

加入して12か月に満たない場合は別の計算になる

条文のただし書が、12か月に満たない場合の扱いを定めています。

協会けんぽは、その2つの額を具体的に示しています。

30万円:支給開始日が令和7年3月31日以前の方

(出典:傷病手当金|給付と手続き|協会けんぽ)

32万円:支給開始日が令和7年4月1日以降の方

(出典:傷病手当金|給付と手続き|協会けんぽ)

この額と、実際の標準報酬月額の平均を比べ、低いほうで計算します。

傷病手当金の支給期間は、通算して1年6か月です

2022年1月から、この1年6か月の数え方が変わっています。

条文は「通算して」と書いている

傷病手当金の支給期間は、同一の疾病又は負傷及びこれにより発した疾病に関しては、その支給を始めた日から通算して一年六月間とする。

(出典:健康保険法 第九十九条第四項(e-Gov法令検索))

協会けんぽも同じ内容を案内しています。

傷病手当金の支給期間は、支給を開始した日から通算して1年6か月です。

(出典:傷病手当金|給付と手続き|協会けんぽ)

「通算して」とあるため、途中で復職した期間は1年6か月に数えません。出勤と休職を繰り返しても、支給された日数だけが積み上がります。

同じ病気かどうかで扱いが変わる

条文は「同一の疾病又は負傷及びこれにより発した疾病に関しては」と限定しています。

別の病気であれば、その病気について改めて起算されることになります。

給与が出ている間は、傷病手当金は支給されません

休んでいれば必ず出る、という給付ではありません。

第108条第1項が調整を定めている

疾病にかかり、又は負傷した場合において報酬の全部又は一部を受けることができる者に対しては、これを受けることができる期間は、傷病手当金を支給しない。 ただし、その受けることができる報酬の額が、第九十九条第二項の規定により算定される額より少ないとき(第百三条第一項又は第三項若しくは第四項に該当するときを除く。)は、その差額を支給する。

(出典:健康保険法 第百八条第一項(e-Gov法令検索))

協会けんぽの説明も同じです。

業務外の事由による病気やケガで休業している期間について生活保障を行う制度のため、給与が支払われている間は、傷病手当金は支給されません。

(出典:傷病手当金|給付と手続き|協会けんぽ)

ただし、給与の支払いがあっても、傷病手当金の額よりも少ない場合は、その差額が支給されます。

(出典:傷病手当金|給付と手続き|協会けんぽ)

全額が止まるのではなく、差額が出る形です。ここは条文にも案内にも同じ書き方で置かれています。

会社が払わなかった分を保険者が立て替える仕組みもある

前条第一項から第四項までに規定する者が、疾病にかかり、負傷し、又は出産した場合において、その受けることができるはずであった報酬の全部又は一部につき、その全額を受けることができなかったときは傷病手当金又は出産手当金の全額、その一部を受けることができなかった場合においてその受けた額が傷病手当金又は出産手当金の額より少ないときはその額と傷病手当金又は出産手当金との差額を支給する。 ただし、同条第一項ただし書、第二項ただし書、第三項ただし書又は第四項ただし書の規定により傷病手当金又は出産手当金の一部を受けたときは、その額を支給額から控除する。

(出典:健康保険法 第百九条第一項(e-Gov法令検索))

そして、その分は会社から取り立てられます。

前項の規定により保険者が支給した金額は、事業主から徴収する。

(出典:健康保険法 第百九条第二項(e-Gov法令検索))

傷病手当金は、障害厚生年金や老齢年金と同時には受け取れません

年金の側が先に立ち、傷病手当金は差額だけになります。

障害厚生年金との調整

傷病手当金の支給を受けるべき者が、同一の疾病又は負傷及びこれにより発した疾病につき厚生年金保険法による障害厚生年金の支給を受けることができるときは、傷病手当金は、支給しない。 ただし、その受けることができる障害厚生年金の額(当該障害厚生年金と同一の支給事由に基づき国民年金法による障害基礎年金の支給を受けることができるときは、当該障害厚生年金の額と当該障害基礎年金の額との合算額)につき厚生労働省令で定めるところにより算定した額(以下この項において「障害年金の額」という。)が、第九十九条第二項の規定により算定される額より少ないときは、当該額と次の各号に掲げる場合の区分に応じて当該各号に定める額との差額を支給する。

(出典:健康保険法 第百八条第三項(e-Gov法令検索))

条件になっているのは「同一の疾病又は負傷」である点です。

退職後に老齢年金を受けている場合

傷病手当金の支給を受けるべき者(第百四条の規定により受けるべき者であって、政令で定める要件に該当するものに限る。)が、国民年金法又は厚生年金保険法による老齢を支給事由とする年金たる給付その他の老齢又は退職を支給事由とする年金である給付であって政令で定めるもの(以下この項及び次項において「老齢退職年金給付」という。)の支給を受けることができるときは、傷病手当金は、支給しない。 ただし、その受けることができる老齢退職年金給付の額(当該老齢退職年金給付が二以上あるときは、当該二以上の老齢退職年金給付の額の合算額)につき厚生労働省令で定めるところにより算定した額が、傷病手当金の額より少ないときは、その差額を支給する。

(出典:健康保険法 第百八条第五項(e-Gov法令検索))

老齢年金との調整がかかるのは、退職後の継続給付を受けている場合に限られる書き方になっています。

傷病手当金は、退職後も受け取れる場合があります

転職や退職を考えるときに、いちばん効いてくるのがこの条文です。

第104条が資格喪失後の継続給付を定めている

被保険者の資格を喪失した日(任意継続被保険者の資格を喪失した者にあっては、その資格を取得した日)の前日まで引き続き一年以上被保険者(任意継続被保険者又は共済組合の組合員である被保険者を除く。)であった者(第百六条において「一年以上被保険者であった者」という。)であって、その資格を喪失した際に傷病手当金又は出産手当金の支給を受けているものは、被保険者として受けることができるはずであった期間、継続して同一の保険者からその給付を受けることができる。

(出典:健康保険法 第百四条(e-Gov法令検索))

協会けんぽは、この条文を次のように説明しています。

資格喪失の日の前日(退職日等)までに被保険者期間(任意継続被保険者、共済組合の組合員である被保険者又は国民健康保険に加入していた期間を除く)が継続して1年以上あり、

(出典:傷病手当金|給付と手続き|協会けんぽ)

そして、いったん復帰すると打ち切られます。

ただし、一旦仕事に就くことできる状態になった場合、 その後更に仕事に就くことができない状態になっても、傷病手当金は支給されません。

(出典:傷病手当金|給付と手続き|協会けんぽ)

在職中の「通算」とは扱いが逆になります。退職後は、一度でも働ける状態になった時点で終わります。

継続給付の要件を表にする

要件条文・出典
資格喪失日の前日まで引き続き1年以上の被保険者期間健康保険法第104条
資格を喪失した際に傷病手当金の支給を受けていること健康保険法第104条
任意継続被保険者だった期間は1年に数えない健康保険法第104条のかっこ書き
一度働ける状態になったら、その後は支給されない協会けんぽの案内

任意継続被保険者は、傷病手当金の対象から外れています

退職後に健康保険を任意継続しても、傷病手当金は付いてきません。

第99条第1項のかっこ書きで除かれている

第99条第1項は、冒頭で「被保険者(任意継続被保険者を除く。第百二条第一項において同じ。)」と書いています。

協会けんぽの案内も同じです。

任意継続被保険者である期間中に発生した病気・ケガについては、傷病手当金は支給されません。

(出典:傷病手当金|給付と手続き|協会けんぽ)

退職後に働けなくなった場合に頼れるのは、任意継続ではなく第104条の継続給付のほうです。

請求できる期間には時効がある

保険料等を徴収し、又はその還付を受ける権利及び保険給付を受ける権利は、これらを行使することができる時から二年を経過したときは、時効によって消滅する。

(出典:健康保険法 第百九十三条第一項(e-Gov法令検索))

条文は「二年」と書いています。

傷病手当金で、条文だけでは決まらない2つの点

条文だけでは決まらない点を並べます。

健康保険組合の付加給付

勤務先が健康保険組合に入っている場合、組合ごとに上乗せの給付があることがあります。

その内容は組合ごとに違うため、加入している健康保険組合の案内で確かめる必要があります。

申請から入金までの日数

実際に何日で振り込まれるかについては、条文にも協会けんぽの当該ページにも記載がありません。

傷病手当金についてよくある質問

傷病手当金はいくらもらえますか

直近12か月の標準報酬月額を平均した額の30分の1に相当する額の、3分の2です。

協会けんぽの例では、平均17万円の場合に1日あたり3,780円となっています。

待期の3日間にも傷病手当金は出ますか

出ません。第99条第1項が「三日を経過した日から」と書いています。

有給休暇を使った日は待期に数えますか

数えます。協会けんぽは「待期には、有給休暇、土日・祝日等の公休日も含まれる」と案内しています。

復職したら1年6か月の期間はどうなりますか

第99条第4項が「通算して一年六月間」と書いているため、在職中は支給を受けた日数だけが積み上がります。

ただし退職後の継続給付では、一度働ける状態になった時点で支給されなくなります。

会社を辞めても傷病手当金は続きますか

第104条の要件を満たせば続きます。

資格喪失日の前日まで引き続き1年以上被保険者だったことと、喪失時に現に支給を受けていることの2つが条文上の要件です。

任意継続に入れば傷病手当金をもらえますか

もらえません。第99条第1項が任意継続被保険者を明文で除いています。

まとめ:傷病手当金で確かめたこと

この記事で条文と公的資料から確かめられたのは、次の6点です。

  • 傷病手当金は健康保険法第99条第1項の給付で、療養のため働けない期間が対象である
  • 待期は連続した3日間で、有給休暇や土日も数に入る
  • 額は直近12か月の標準報酬月額の平均の30分の1に相当する額の3分の2
  • 支給期間は第99条第4項により「通算して」1年6か月
  • 給与が出ている間は支給されず、少ないときは差額が出る(第108条第1項)
  • 退職後も第104条の要件を満たせば続くが、任意継続被保険者は対象外

退職日をいつにするかで第104条の「1年以上」と「現に支給を受けている」の両方が変わるため、転職の日程を決める前に確認しておく意味があります。


この記事で使った一次資料

条文と公的資料の確認日は2026年9月17日です。

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