「海外赴任中に現地の病院にかかったら、医療費は全部自分でかぶるしかない。」
赴任の話が出ると、この説明をどこかで聞きます。
この記事は、その話が日本の法律と公的機関の資料の上でどこまで成り立つのかを確かめます。
体験談も、伝聞も、保険会社や転職サイトのまとめも使いません。
使うのは、e-Gov法令検索に載っている条文と、全国健康保険協会(協会けんぽ)・日本年金機構・厚生労働省が公表しているページだけです。
先に結論を書きます。
日本の会社に使用されたまま海外赴任する限り健康保険の被保険者資格は続き、現地で受けた診療は「海外療養費」として払い戻しの対象になります。
ただし戻ってくるのは現地で払った額そのものではなく、日本国内の診療報酬を基準に計算した額から自己負担相当額を差し引いた額です。
海外赴任でも健康保険の資格が続く理由=住所ではなく「使用関係」
最初に、いちばん取り違えられている点を置きます。
条文の主語は「適用事業所に使用される者」
この法律において「被保険者」とは、適用事業所に使用される者及び任意継続被保険者をいう。
条文が見ているのは、住んでいる場所ではなく、適用事業所に使用されているかどうかです。
住民票を海外へ移したかどうかは、この条文のどこにも出てきません。
資格を取得する時期を定めた第三十五条も、「適用事業所に使用されるに至った日」を起点にしています。
日本年金機構の同じ説明
健康保険および厚生年金保険は、適用事業所に勤務する限り、国内における住所の有無を問わず加入します。
⇒ 海外赴任で住民票を抜いても、それだけで健康保険の資格が切れることはありません。
⇒ 保険料も、日本の会社の給与から今までどおり引かれ続けます。
この記事が何を根拠にしているか
先に、この記事の作り方を書いておきます。
条文はe-Gov法令検索の本文を取得して、その中にある文字列だけを引用しています。
協会けんぽと日本年金機構の記述も、ページの本文を取得して、そこにある文字列だけを引用しています。
海外赴任先で受けた診療と健康保険の「療養費」=払い戻しの対象
海外療養費は、独立した制度ではありません。
健康保険法が定める「療養費」の一場面です。
根拠は健康保険法第87条
保険者は、療養の給付若しくは入院時食事療養費、入院時生活療養費若しくは保険外併用療養費の支給(以下この項において「療養の給付等」という。)を行うことが困難であると認めるとき、又は被保険者が保険医療機関等以外の病院、診療所、薬局その他の者から診療、薬剤の支給若しくは手当を受けた場合において、保険者がやむを得ないものと認めるときは、療養の給付等に代えて、療養費を支給することができる。
海外の病院は、厚生労働大臣の指定を受けた保険医療機関ではありません。
そこで「保険医療機関等以外の病院、診療所、薬局その他の者から診療」を受けた場合に当たります。
保険者がやむを得ないと認めれば、療養の給付に代えて療養費が支給される、という組み立てです。
条文は「支給することができる」と定めており、自動的に出るものとはしていません。
協会けんぽの呼び名=「海外療養費」
海外療養費の支給対象となるのは、日本国内で保険診療として認められている医療行為に限られます。
ここが、海外赴任で最初につまずくところです。
現地で受けた治療が現地では標準でも、日本の保険診療に無い行為なら対象になりません。
同行した家族が受けた診療も同じ道
被扶養者の分は、健康保険法第百十条の「家族療養費」として支給されます。
同条第七項は、第八十七条の規定を家族療養費の支給について準用すると定めています。
⇒ 本人でも家族でも、海外で払った分を後から請求する形は変わりません。
海外赴任の健康保険で戻る額の計算基準=日本国内の診療報酬
支給額の決め方は、条文にはっきり書いてあります。
条文が置いている2段構え
療養費の額は、当該療養(食事療養及び生活療養を除く。)について算定した費用の額から、その額に第七十四条第一項各号に掲げる場合の区分に応じ、同項各号に定める割合を乗じて得た額を控除した額(略)を基準として、保険者が定める。
次の第三項に、上限を定める1行が続きます。
ただし、その額は、現に療養に要した費用の額を超えることができない。
つまり「日本の基準で計算した額」と「実際に払った額」の低いほうが土台になります。
協会けんぽの説明も同じ順序
日本国内の医療機関等で同じ傷病を治療した場合にかかる治療費を基準に計算した額(実際に海外で支払った額の方が低いときはその額)から、自己負担相当額(患者負担分)を差し引いた額を支給します。
差し引く割合を決めているのは、健康保険法第七十四条第一項です。
| 区分 | 自己負担として差し引かれる割合 |
|---|---|
| 70歳に達する日の属する月以前 | 100分の30 |
| 70歳に達する日の属する月の翌月以後(次の行を除く) | 100分の20 |
| 上と同じ年齢で、政令で定めるところにより算定した報酬の額が政令で定める額以上のとき | 100分の30 |
この表は健康保険法第七十四条第一項の各号をそのまま並べたものです。
計算の順番を仮の数字で並べる
条文の順序どおりに置くと、次のようになります。
| 手順 | やること | 仮の数字 |
|---|---|---|
| 1 | 現地で実際に支払った額を円に換算する | 100,000円 |
| 2 | 同じ傷病を日本国内で治療した場合の費用の額を出す | 40,000円 |
| 3 | 1と2の低いほうを土台にする | 40,000円 |
| 4 | 土台に自己負担の割合(70歳未満なら100分の30)を掛けて差し引く | 40,000円−12,000円 |
| 5 | 残った額が支給される | 28,000円 |
数字は計算の順番を示すための仮のもので、実際の額を示したものではありません。
なお療養費の支給に係る療養は消費税法別表第二第六号イで非課税とされているため、ここでは税込・税抜の区別をしていません(消費税法)。
現地の医療費が日本より高い国では、この計算の結果、戻る額が支払額よりはるかに小さくなります。
協会けんぽ自身が、その点を注意事項に書いています。
日本と海外での医療体制や治療方法等が異なるため、海外で支払った総額から自己負担相当額を差し引いた額よりも、支給金額が大幅に少なくなることがあります。
外貨をいつのレートで円に直すか
外貨で支払われた医療費については、支給決定日の外国為替換算率(売レート)を用いて円に換算して支給金額を算出します。
基準になるのは受診日でも支払日でもなく、支給決定日です。
そして協会けんぽは、審査に通常数か月かかるとしています。
⇒ 申請から決定までの間に為替が動けば、円に直したときの額も動きます。
海外赴任の健康保険の請求で条文が定める記載事項と添付書類
「何を出すか」は運用ではなく、省令に書かれています。
申請書に書く事項は施行規則第66条第1項
法第八十七条第一項の規定により療養費の支給を受けようとするときは、被保険者は、次に掲げる事項を記載した申請書を保険者に提出しなければならない。
各号には、傷病名とその原因、発病または負傷の年月日、傷病の経過、受診した医療機関の名称と所在地、担当した医師の氏名、診療の内容と期間、療養に要した費用の額などが並んでいます。
「療養の給付を受けることができなかった理由」も記載事項の1つです。
この記載事項が、そのまま現地の医師に書いてもらう様式の中身になります。
日本語訳の義務は第3項
前項の書類が外国語で作成されたものであるときは、その書類に日本語の翻訳文を添付しなければならない。
翻訳は任意ではなく、省令の側の義務として書かれています。
海外の診療だけに掛かる第4項
海外において受けた診療、薬剤の支給又は手当(第二号において「海外療養」という。)について療養費の支給を受けようとするときは、第一項の申請書に次に掲げる書類を添付しなければならない。 一 旅券、航空券その他の海外に渡航した事実が確認できる書類の写し 二 保険者が海外療養の内容について当該海外療養を担当した者に照会することに関する当該海外療養を受けた者の同意書
この2つは、平成28年の省令改正で新しく求められるようになったものです。
厚生労働省の通知は、その趣旨をこう書いています。
旅券や航空券の写し等の提出を求めることにより、海外療養費の支給申請に係る療養が行われた期間において、海外療養を受けた者が当該海外療養を受けた国又は地域に実際に渡航していた事実を確認すること。
同じ通知は、同意書について次のようにも書いています。
海外の医療機関等から同意書の提示を求められることが想定されるため、当該同意書については、日本語以外の言語にも対応できるものとしておくことが望ましい。
⇒ 赴任前にパスポートの出入国ページを残しておく理由は、ここにあります。
海外赴任で健康保険に出す書類=協会けんぽが整理した8つ
省令の2書類に、協会けんぽの様式が乗る形です。
| 番号 | 書類 | 中身 |
|---|---|---|
| 1 | 海外療養費支給申請書 | 協会けんぽの様式 |
| 2 | 様式A(診療内容明細書)/様式C(歯科診療内容明細書) | 医科は様式A、歯科は様式C |
| 3 | 様式B(領収明細書) | 費用の内訳 |
| 4 | 領収書原本及びその日本語訳 | 原本が要る |
| 5 | 様式AまたはC及びBの日本語訳 | 翻訳者の署名が要る |
| 6 | 受診者の海外渡航期間が確認できる書類 | パスポート・査証・航空チケットの写しのいずれか |
| 7 | 同意書 | 医療機関への照会に同意するもの |
| 8 | その他書類 | 負傷原因届・第三者行為による傷病届など、事情に応じたもの |
この表は協会けんぽ「海外療養費」の「申請に関して」の並びをそのまま写したものです。
様式A・様式B・様式Cの7か国語版
様式A(診療内容明細書)と様式B(領収明細書)は、英語・韓国語・中国語・タイ語・ベトナム語・スペイン語・ポルトガル語のPDFが置かれています。
様式C(歯科診療内容明細書)は、英語・韓国語・中国語・スペイン語・ポルトガル語の5言語です。
赴任先の言語が7つに無い場合でも、独自の様式を使う道は開かれています。
同様の項目・内容が記載されていれば、独自に作成した様式をご使用されても構いませんが、日本語訳は必ず添付が必要です。
1枚で何回分もまとめられない決まり
1か月ごと、受診者ごと、医療機関ごと、入院・外来ごとに1枚ずつ、それぞれの医療機関での証明が必要です。
長く通院すると、その月数だけ様式が要る計算になります。
書く人も決まっています。
被保険者、受診者等による記入はできません。
担当医に記入・署名をご依頼ください。
⇒ 帰国してから書いてもらうのは難しいため、受診したその場で依頼する形になります。
翻訳文に必要な翻訳者の連絡先
翻訳文には、翻訳者が署名し、住所および電話番号を明記してください。
出す先は全国どこの支部でもなく1か所
紙の申請書の提出先は、協会けんぽ神奈川支部の海外療養費グループです。
各支部に出しても神奈川支部へ回送される、と同じページに書かれています。
電子申請の場合は、提出先を選ぶ必要がないとされています(海外療養費支給申請書|協会けんぽ)。
支給されたお金は、海外の口座へ直接送金されません。
協会けんぽは、事業主または日本在住の家族に受け取りを委任するよう案内しています。
⇒ 赴任前に、申請書の受取代理人の欄を誰にするかを決めておく必要があります。
海外赴任でも健康保険から払い戻しが出ない場合
対象外は、大きく4つの筋があります。
日本の保険診療に無い医療行為
美容整形やインプラントなど、日本国内で保険適用となっていない医療行為や薬が使用された場合は、給付の対象になりません。
治療を目的にした渡航
療養(治療)を目的で海外へ渡航し診療を受けた場合は、支給対象となりません。
同じページは「日本で実施できない診療(治療)を行った場合でも、保険給付の対象とはなりません」とも書いています。
赴任という渡航目的そのものは、この2つに当たりません。
仕事中・通勤中のけがは別の制度の側
健康保険法第一条は、この法律の目的を「業務災害以外の疾病、負傷若しくは死亡又は出産に関して保険給付を行い」と定めています。
さらに第五十五条第一項が、同じ傷病について労働者災害補償保険法の給付を受けられる場合には健康保険の給付を行わないと定めています。
⇒ 海外赴任先のけがが仕事中のものかどうかで、たどる制度そのものが変わります。
2年を過ぎた分
保険料等を徴収し、又はその還付を受ける権利及び保険給付を受ける権利は、これらを行使することができる時から二年を経過したときは、時効によって消滅する。
協会けんぽは、この起算点を具体的に書いています。
海外で治療費の支払いをした翌日から2年を経過すると、時効により申請できなくなります。
⇒ 3年・4年の赴任なら、帰国後にまとめて出すと最初の年の分が消えます。
海外赴任中に健康保険の資格が外れるとき=使用関係が切れたとき
資格を失う場面も、条文が限定して並べています。
被保険者は、次の各号のいずれかに該当するに至った日の翌日(その事実があった日に更に前条に該当するに至ったときは、その日)から、被保険者の資格を喪失する。 一 死亡したとき。 二 その事業所に使用されなくなったとき。 三 第三条第一項ただし書の規定に該当するに至ったとき。 四 第三十三条第一項の認可があったとき。
4つの中に「海外に住所を移したとき」はありません。
効いてくるのは第二号の「その事業所に使用されなくなったとき」です。
日本の会社との雇用契約を終わらせて現地法人と契約し直せば、日本の適用事業所に使用される者ではなくなります。
逆に、日本の会社に在籍したまま指揮命令の下で海外に勤務するなら、第二号には当たりません。
条文が見るのは肩書きではなく、日本の適用事業所に使用されているかどうかの1点です。
| 海外赴任の形 | 日本の適用事業所との使用関係 | 健康保険の被保険者資格 |
|---|---|---|
| 日本の会社に在籍したまま赴任する | 続く | 続く(第三条第一項) |
| 現地法人へ転籍し、日本の会社との雇用契約を終える | 切れる | その翌日に喪失(第三十六条第二号) |
この表は、上に引いた第三条第一項と第三十六条の文言だけから組んだものです。
資格を失ったあとに受けた診療については、健康保険法第五十二条が保険給付を「被保険者に係る」ものとして並べています。
⇒ この記事でたどった条文の範囲では、資格喪失後の診療に海外療養費が出る根拠は見つかりませんでした。
海外赴任に家族が同行するときの健康保険の被扶養者=「海外特例要件」
本人と家族では、条文の作りが違います。
被扶養者にだけ国内居住要件がある
この法律において「被扶養者」とは、次に掲げる者で、日本国内に住所を有するもの又は外国において留学をする学生その他の日本国内に住所を有しないが渡航目的その他の事情を考慮して日本国内に生活の基礎があると認められるものとして厚生労働省令で定めるものをいう。
被保険者の定義(第一項)に住所の話は出てきませんが、被扶養者の定義(第七項)には出てきます。
日本年金機構は、この要件が加わった時期を書いています。
改正法の施行日(令和2年4月1日)以降の被扶養者(国民年金第3号被保険者を含む。以下同じ。)の認定にあたっては、これまでの生計維持の要件に加え日本国内に住所を有する(住民票がある)ことが要件として追加されました。
省令が挙げる5つの例外
法第三条第七項本文の厚生労働省令で定めるものは、次に掲げる者とする。 一 外国において留学をする学生 二 外国に赴任する被保険者に同行する者 三 観光、保養又はボランティア活動その他就労以外の目的で一時的に海外に渡航する者 四 被保険者が外国に赴任している間に当該被保険者との身分関係が生じた者であって、第二号に掲げる者と同等と認められるもの 五 前各号に掲げる者のほか、渡航目的その他の事情を考慮して日本国内に生活の基礎があると認められる者
第二号が、海外赴任に同行する配偶者や子をそのまま指しています。
第四号は、赴任先で結婚したり子が生まれたりした場合を拾う号です。
例外に当たることを示す書類
日本年金機構は、5つのケースごとに添付書類を示しています。
| ケース | 添付書類 |
|---|---|
| 外国において留学をする学生 | 査証(ビザ)、学生証、在学証明書、入学証明書等の写し |
| 外国に赴任する被保険者に同行する者 | 査証(ビザ)、海外赴任辞令、海外の公的機関が発行する居住証明書の写し |
| 観光、保養またはボランティア活動その他就労以外の目的で一時的に海外に渡航する者 | 査証(ビザ)、ボランティア派遣期間の証明、ボランティアの参加同意書等の写し |
| 被保険者が外国に赴任している間に身分関係が生じた者 | 出生や婚姻等を証明する書類等の写し |
| その他、日本国内に生活の基礎があると認められる者 | 個別に判断 |
この表は日本年金機構「従業員の家族が海外居住の場合の手続き」の記載を並べたものです。
届出は、被扶養者(異動)届または第3号被保険者関係届で行うとされています。
外れる場面も書かれています。
海外特例要件に該当している方が海外居住のまま海外特例要件に該当しない渡航(労働目的、渡航先への永住等)となった場合は、被扶養者でなくなります。
⇒ 同行した配偶者が現地で就職すると、被扶養者から外れる可能性が出てきます。
海外赴任で健康保険が続く一方、止まる介護保険
同じ給与から引かれている保険料でも、扱いが分かれます。
次の各号のいずれかに該当する者は、市町村又は特別区(以下単に「市町村」という。)が行う介護保険の被保険者とする。 一 市町村の区域内に住所を有する六十五歳以上の者(以下「第一号被保険者」という。) 二 市町村の区域内に住所を有する四十歳以上六十五歳未満の医療保険加入者(以下「第二号被保険者」という。)
両方の号に「市町村の区域内に住所を有する」が入っています。
健康保険法第三条第一項には無かった住所の要件が、こちらには最初から書かれています。
日本年金機構も、この差を1行で書いています。
一方、介護保険は、国内に住所がある方のみ加入します。
手続きの名前も同じページに出ています。
海外へ住所を移すときは「介護保険適用除外等該当・非該当届」を出す、と案内されています。
⇒ 海外赴任では、健康保険料は引かれ続け、介護保険料だけが止まる形になります。
⇒ 帰国して住所を国内に戻すときは、加入する側の手続きが必要になります。
海外赴任の健康保険についてよくある質問
住民票を抜いたら健康保険証は使えなくなりますか
被保険者の資格は、住所ではなく使用関係で決まります。
適用事業所に勤務する限り、国内における住所の有無を問わず加入します(日本年金機構)。
現地で払った額は全部戻ってきますか
戻る額の土台は、日本国内で同じ傷病を治療した場合の費用の額と、実際に払った額の低いほうです。
そこから第七十四条第一項の割合に応じた自己負担相当額が差し引かれます(健康保険法第八十七条第二項)。
現地の医師が書類を書いてくれない場合はどうなりますか
協会けんぽは、被保険者や受診者による記入はできず担当医に依頼するよう書いています。
同じ項目と内容が入っていれば独自の様式でも構わないとされていますが、日本語訳の添付は求められています(協会けんぽ)。
申請はいつまでにすればよいですか
健康保険法第百九十三条第一項が、保険給付を受ける権利は行使できる時から2年で時効消滅すると定めています。
協会けんぽは、その起算点を「海外で治療費の支払いをした翌日」としています。
同行する妻や子の健康保険はどうなりますか
健康保険法第三条第七項の国内居住要件が掛かりますが、施行規則第三十七条の二第二号が「外国に赴任する被保険者に同行する者」を例外として挙げています。
この例外に当たることを示すため、査証・海外赴任辞令・居住証明書の写しなどの添付が求められます(日本年金機構)。
支給されたお金は現地の口座で受け取れますか
協会けんぽは、海外への直接送金はできないとしています。
事業主または日本在住の家族に受け取りを委任する形が案内されています。
まとめ:海外赴任の健康保険を決める「使用関係」と「2年」
条文から言えることを4行にします。
- 被保険者の資格は住所ではなく「適用事業所に使用される者」かどうかで続く(健康保険法第三条第一項・第三十六条第二号)。
- 海外で受けた診療は第八十七条の療養費として払い戻され、額は日本国内の基準で計算した額から自己負担相当額を引いたもの。
- 添付書類は施行規則第六十六条が定め、海外の診療には渡航確認書類と同意書が上乗せされる。
- 請求できる期間は2年(第百九十三条第一項)で、起算点は治療費を支払った日の翌日。
⇒ したがって「海外赴任中の医療費は全部自己負担」という説明は、条文の側からは出てきません。
⇒ ただし全額が戻るわけでもなく、差額をどう埋めるかは会社の制度や民間保険の側の話になります。
受診したその場で様式Aと様式Bを書いてもらい、渡航の記録を残す。この2つが、後から効いてくる作業です。
\健康保険と並ぶ厚生年金の扱い/
海外赴任と社会保険を条文で確かめた記事
日本年金機構の資料もあわせて確認
この記事で使った一次資料
- 健康保険法(e-Gov法令検索)
- 健康保険法施行規則(e-Gov法令検索)
- 介護保険法(e-Gov法令検索)
- 消費税法(e-Gov法令検索)
- 海外療養費|給付と手続き|全国健康保険協会
- 海外療養費支給申請書|全国健康保険協会
- 療養費|給付と手続き|全国健康保険協会
- 海外へ転勤または転職するときの手続き/海外から帰国したときの手続き|日本年金機構
- 従業員の家族が海外居住の場合の手続き|日本年金機構
- 海外療養費の支給申請及び審査等に係る事務の取扱いについて(平成28年3月31日 保国発0331第4号)|厚生労働省
条文と公的機関のページの確認日は2026年9月12日です。
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