
セクハラの相談窓口が社内に無い、という話を転職活動の口コミで見かけることがあります。
窓口を置くかどうかは会社の方針の問題なのか、それとも法律が会社に求めていることなのか。
この記事は、セクハラ対策がどこまで会社の義務なのかを、男女雇用機会均等法と労働施策総合推進法の言葉だけで確かめます。
結論から並べると、次のとおりです。
措置を講じる義務は条文にあり、しかし条文に「セクハラ」の語は0件というのが、確かめた結果になります。
条文の確認日は2026年10月8日です。
セクハラという語は条文に0件=均等法が使っている言葉は「性的な言動」
最初に確かめておきたいのは、法律の文面に「セクハラ」という語が置かれているかどうかです。
根拠になる法律は、第一条が目的を示しています。
この法律は、法の下の平等を保障する日本国憲法の理念にのつとり雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保を図るとともに、女性労働者の就業に関して妊娠中及び出産後の健康の確保を図る等の措置を推進することを目的とする。
(男女雇用機会均等法 第一条)
目的の文に並んでいるのは「男女の均等な機会及び待遇の確保」と「妊娠中及び出産後の健康の確保」で、ハラスメントという語は入っていません。
e-Gov法令検索の法令データ全文を数えると、語の件数は次のようになりました。
| 探した語 | 均等法の法令データ全文での件数 | 出てくる場所 |
|---|---|---|
| セクハラ | 0件 | なし |
| セクシュアルハラスメント | 0件 | なし |
| ハラスメント | 0件 | なし |
| 性的な言動 | 7件 | 第十一条から第十四条まで(うち4件は条の見出し) |
均等法が使っているのは「性的な言動」という言葉で、カタカナの略語ではありません。
本文に「性的な言動」が出てくるのは第十一条第一項の2回と第十三条第一項の1回で、残る4件は第十一条から第十四条までの見出しです。
だから「セクハラ」で条文を検索しても1件も当たらず、「性的な言動」で探すと第十一条に行き着く構図になります。
条文を語で全文検索して「無い」ことを確かめる読み方は、競業避止義務を条文の全文検索で確かめた記事でも同じやり方をしています。↓

セクハラ対策が会社の義務である根拠=均等法11条1項の「雇用管理上必要な措置」
セクハラ対策が会社の義務かどうかに直接答えるのが、第十一条第一項です。
事業主は、職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。
(男女雇用機会均等法 第十一条第一項)
主語は事業主で、述語は「講じなければならない」です。
努力義務ではなく、講じなければならないという言葉が置かれています。
条文が挙げている措置は2つの書き方で並んでいます。
1つは「当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備」で、もう1つは「その他の雇用管理上必要な措置」です。
| 第十一条第一項の要素 | 条文の言葉 | 読み方 |
|---|---|---|
| 義務を負う者 | 事業主 | 会社そのもの(行為者個人ではない) |
| 防ぐ対象その1 | 性的な言動に対する労働者の対応により労働条件につき不利益を受ける | 対価型として説明される形 |
| 防ぐ対象その2 | 当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害される | 環境型として説明される形 |
| 義務の中身 | 相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置 | 相談体制の整備を含む措置 |
| 義務の強さ | 講じなければならない | 努力義務ではない |
相談窓口の設置は、「必要な体制の整備」の言葉の中に収まる話になります。
セクハラを相談した人を守る条文=均等法11条2項の不利益取扱いの禁止
窓口があっても、相談したら不利に扱われるのであれば使えません。
第十一条第二項が、その点を正面から禁じています。
事業主は、労働者が前項の相談を行つたこと又は事業主による当該相談への対応に協力した際に事実を述べたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。
(男女雇用機会均等法 第十一条第二項)
禁じられているのは「解雇その他不利益な取扱い」で、理由として挙がっているのは2つです。
| 不利益な取扱いが禁じられる理由 | 条文の言葉 |
|---|---|
| 本人が相談したこと | 労働者が前項の相談を行つたこと |
| 調査に協力して事実を述べたこと | 事業主による当該相談への対応に協力した際に事実を述べたこと |
相談した本人だけでなく、調査で事実を述べた同僚も対象に入っています。
この第二項も「してはならない」で終わる言葉で、努力義務の形ではありません。
相談を理由にした解雇は禁止という線が、条文に置かれています。
取引先からのセクハラで出てくる条文=均等法11条3項の「必要な協力」
セクハラの相手が自社の社員ではなく、取引先の社員であることもあります。
第十一条第三項は、他の事業主からの協力の求めについて定めています。
事業主は、他の事業主から当該他の事業主が講ずる第一項の措置の実施に関し必要な協力を求められた場合には、これに応ずるように努めなければならない。
(男女雇用機会均等法 第十一条第三項)
ここだけは述語が「応ずるように努めなければならない」で、第一項・第二項と形が違います。
| 均等法第十一条の項 | 条文の述語 | 義務の形 |
|---|---|---|
| 第一項(措置義務) | 講じなければならない | 義務 |
| 第二項(不利益取扱いの禁止) | してはならない | 禁止 |
| 第三項(他の事業主への協力) | 応ずるように努めなければならない | 努力義務 |
| 第四項(指針) | 定めるものとする | 厚生労働大臣の権限と責務 |
| 第五項(準用) | 準用する | 手続の読替え |
同じ条の中でも、項ごとに義務の強さが違うのが第十一条の形です。
自社の措置義務は第一項で義務として置かれ、他社の調査への協力は第三項で努力義務として置かれている、という並びになります。
セクハラの措置の中身を決める指針=均等法11条4項と5項
第一項の「雇用管理上必要な措置」が具体的に何なのかは、条文そのものには並んでいません。
それを決める仕組みが第四項です。
厚生労働大臣は、前三項の規定に基づき事業主が講ずべき措置等に関して、その適切かつ有効な実施を図るために必要な指針(次項において「指針」という。)を定めるものとする。
(男女雇用機会均等法 第十一条第四項)
厚生労働大臣が指針を定めるものとする、という形です。
指針を作るときと変えるときの手続は、第五項が第四条の規定を借りてきます。
第四条第四項及び第五項の規定は、指針の策定及び変更について準用する。
この場合において、同条第四項中「聴くほか、都道府県知事の意見を求める」とあるのは、「聴く」と読み替えるものとする。
(男女雇用機会均等法 第十一条第五項)
措置の中身は条文ではなく第四項の指針に委ねられている構造です。
だから「どこまでやれば義務を果たしたことになるのか」を探すときは、条文ではなく第四項に基づく指針を見ることになります。
セクハラ対策の責務を国・事業主・労働者に置いた条文=均等法12条
第十一条のすぐ次に、措置義務とは別の責務を並べた条があります。
第十二条は、国・事業主・事業主自身・労働者の4つに分けて責務を置いています。
国は、前条第一項に規定する不利益を与える行為又は労働者の就業環境を害する同項に規定する言動を行つてはならないことその他当該言動に起因する問題(以下この条において「性的言動問題」という。)に対する事業主その他国民一般の関心と理解を深めるため、広報活動、啓発活動その他の措置を講ずるように努めなければならない。
(男女雇用機会均等法 第十二条第一項)
第一項は国の広報活動・啓発活動で、ここで「性的言動問題」という略称が条文の中に作られます。
事業主は、性的言動問題に対するその雇用する労働者の関心と理解を深めるとともに、当該労働者が他の労働者に対する言動に必要な注意を払うよう、研修の実施その他の必要な配慮をするほか、国の講ずる前項の措置に協力するように努めなければならない。
(男女雇用機会均等法 第十二条第二項)
事業主(その者が法人である場合にあつては、その役員)は、自らも、性的言動問題に対する関心と理解を深め、労働者に対する言動に必要な注意を払うように努めなければならない。
(男女雇用機会均等法 第十二条第三項)
第三項は事業主自身(法人なら役員)に向けた責務で、第二項の会社としての配慮とは別に置かれています。
労働者は、性的言動問題に対する関心と理解を深め、他の労働者に対する言動に必要な注意を払うとともに、事業主の講ずる前条第一項の措置に協力するように努めなければならない。
(男女雇用機会均等法 第十二条第四項)
| 均等法第十二条の項 | 対象 | 条文の述語 |
|---|---|---|
| 第一項 | 国 | 措置を講ずるように努めなければならない |
| 第二項 | 事業主(雇用する労働者への研修など) | 必要な配慮をするほか、協力するように努めなければならない |
| 第三項 | 事業主自身(法人は役員) | 注意を払うように努めなければならない |
| 第四項 | 労働者 | 注意を払うとともに、協力するように努めなければならない |
第十二条は4項すべてが「努めなければならない」の努力義務で並んでいます。
就活中のセクハラも措置義務の対象=均等法13条の「求職者等」
第十一条が守っているのは「その雇用する労働者」です。
採用面接を受けている人は、まだ雇用されていません。
その場面を受け持つのが第十三条です。
事業主は、求職者その他これに類する者として厚生労働省令で定めるもの(以下この項及び次項並びに次条において「求職者等」という。)によるその求職活動その他求職者等の職業の選択に資する活動(以下この項及び同条第一項において「求職活動等」という。)において行われる当該事業主が雇用する労働者による性的な言動により当該求職者等の求職活動等が阻害されることのないよう、当該求職者等からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。
(男女雇用機会均等法 第十三条第一項)
ここでの対象は「求職者その他これに類する者として厚生労働省令で定めるもの」で、条文の中では「求職者等」と略されます。
会社の措置義務は、求職活動等の場面にも置かれているという並びです。
第十三条第二項は、第十一条第二項と同じ形で不利益取扱いを禁じます。
事業主は、労働者が事業主による求職者等からの前項の相談への対応に協力した際に事実を述べたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。
(男女雇用機会均等法 第十三条第二項)
ただし第十三条第二項が守るのは「労働者」で、求職者等の相談に協力して事実を述べた自社の社員が対象になります。
厚生労働大臣は、前二項の規定に基づき事業主が講ずべき措置等に関して、その適切かつ有効な実施を図るために必要な指針(次項において「指針」という。)を定めるものとする。
(男女雇用機会均等法 第十三条第三項)
就活セクハラの責務を並べた条文=均等法14条
第十三条の次には、第十二条と同じ形で責務を置いた条があります。
国は、求職者等の求職活動等を阻害する前条第一項に規定する言動を行つてはならないことその他当該言動に起因する問題(以下この条において「求職活動等における性的言動問題」という。)に対する事業主その他国民一般の関心と理解を深めるため、広報活動、啓発活動その他の措置を講ずるように努めなければならない。
(男女雇用機会均等法 第十四条第一項)
国の責務から始まり、「求職活動等における性的言動問題」という略称がここで作られます。
事業主は、求職活動等における性的言動問題に対するその雇用する労働者の関心と理解を深めるとともに、当該労働者が求職者等に対する言動に必要な注意を払うよう、研修の実施その他の必要な配慮をするほか、国の講ずる前項の措置に協力するように努めなければならない。
(男女雇用機会均等法 第十四条第二項)
労働者は、求職活動等における性的言動問題に対する関心と理解を深め、求職者等に対する言動に必要な注意を払うとともに、事業主の講ずる前条第一項の措置に協力するように努めなければならない。
(男女雇用機会均等法 第十四条第四項)
第十四条も全項が努力義務の形で並びます。
第十一条・第十三条が措置義務、第十二条・第十四条が責務という2段構えが、均等法の形です。
セクハラとマタハラで条文の形を並べる=均等法15条と16条
均等法には、もう1つ同じ形の措置義務があります。
第十五条は、妊娠・出産等に関する言動についての措置義務です。
事業主は、職場において行われるその雇用する女性労働者に対する当該女性労働者が妊娠したこと、出産したこと、労働基準法第六十五条第一項の規定による休業を請求し、又は同項若しくは同条第二項の規定による休業をしたことその他の妊娠又は出産に関する事由であつて厚生労働省令で定めるものに関する言動により当該女性労働者の就業環境が害されることのないよう、当該女性労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。
(男女雇用機会均等法 第十五条第一項)
対象が「その雇用する女性労働者」に絞られ、害されるものとして挙がるのは「就業環境」だけです。
第十一条第一項にあった「労働条件につき不利益を受け」という部分が、第十五条第一項には置かれていません。
| 条 | 対象になる言動 | 守られる人 | 害されるものとして挙がるもの |
|---|---|---|---|
| 第十一条第一項 | 職場で行われる性的な言動 | その雇用する労働者 | 労働条件の不利益と就業環境 |
| 第十三条第一項 | 雇用する労働者による性的な言動 | 求職者等 | 求職活動等が阻害されること |
| 第十五条第一項 | 妊娠したこと・出産したことその他の妊娠又は出産に関する事由に関する言動 | その雇用する女性労働者 | 就業環境 |
第十六条は、第十二条・第十四条と同じ形で妊娠・出産等についての責務を置いています。
労働者は、妊娠・出産等関係言動問題に対する関心と理解を深め、他の労働者に対する言動に必要な注意を払うとともに、事業主の講ずる前条第一項の措置に協力するように努めなければならない。
(男女雇用機会均等法 第十六条第四項)
第十五条第一項が条文の中で参照している労働基準法第六十五条の休業は、産前産後休業の週数を労働基準法65条で確かめた記事で数字を並べています。↓

セクハラの苦情を社内で解決する条文と、その対象から外れる条=均等法21条
均等法は、紛争を社内で解決する努力義務も置いています。
第二十一条が、苦情の自主的解決の条です。
事業主は、第六条、第七条、第九条、第十七条及び第十八条第一項に定める事項(労働者の募集及び採用に係るものを除く。)に関し、労働者から苦情の申出を受けたときは、苦情処理機関(事業主を代表する者及び当該事業場の労働者を代表する者を構成員とする当該事業場の労働者の苦情を処理するための機関をいう。)に対し当該苦情の処理を委ねる等その自主的な解決を図るように努めなければならない。
(男女雇用機会均等法 第二十一条)
ここで挙がっている事項は「第六条、第七条、第九条、第十七条及び第十八条第一項」で、第十一条は入っていません。
第二十一条の列挙に第十一条は入っていないという形です。
次の第二十二条は、紛争の解決の促進に関する特例で、ここには第十一条第一項・第二項が挙がります。
第五条から第七条まで、第九条、第十一条第一項及び第二項、第十三条第一項及び第二項、第十五条第一項及び第二項、第十七条並びに第十八条第一項に定める事項についての労働者と事業主との間の紛争については、個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律(平成十三年法律第百十二号)第四条、第五条及び第十二条から第十九条までの規定は適用せず、次条から第三十三条までに定めるところによる。
(男女雇用機会均等法 第二十二条)
| 条 | 列挙に第十一条が入っているか | 条文の言葉 |
|---|---|---|
| 第二十一条(苦情の自主的解決) | 入っていない | 第六条、第七条、第九条、第十七条及び第十八条第一項 |
| 第二十二条(紛争の解決の促進に関する特例) | 入っている | 第十一条第一項及び第二項 |
| 第三十六条(公表) | 入っている | 第十一条第一項及び第二項 |
セクハラの紛争で都道府県労働局長が出てくる場面=均等法23条の援助
第二十二条が指す「次条から第三十三条まで」の入口が、第二十三条です。
都道府県労働局長は、前条に規定する紛争に関し、当該紛争の当事者の双方又は一方からその解決につき援助を求められた場合には、当該紛争の当事者に対し、必要な助言、指導又は勧告をすることができる。
(男女雇用機会均等法 第二十三条第一項)
当事者の双方または一方から求められた場合に、助言・指導・勧告ができる、という形です。
動く主体は厚生労働大臣ではなく都道府県労働局長で、求めるのは紛争の当事者です。
事業主は、労働者が前項の援助を求めたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。
(男女雇用機会均等法 第二十三条第二項)
援助を求めたことを理由とする解雇その他不利益な取扱いも禁止されています。
第十一条第二項が相談を理由とする不利益取扱いを禁じ、第二十三条第二項が援助を求めたことを理由とする不利益取扱いを禁じる、という二重の置き方になります。
セクハラの紛争の調停=均等法24条と25条
援助の次に置かれているのが調停です。
第二十四条が、調停の委任を定めています。
都道府県労働局長は、第二十二条に規定する紛争(労働者の募集及び採用についての紛争を除く。)について、当該紛争の当事者(以下「関係当事者」という。)の双方又は一方から調停の申請があつた場合において当該紛争の解決のために必要があると認めるときは、個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律第六条第一項の紛争調整委員会(以下「委員会」という。)に調停を行わせるものとする。
(男女雇用機会均等法 第二十四条第一項)
括弧の中で「労働者の募集及び採用についての紛争を除く」と範囲が切られ、調停を行うのは個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律第六条第一項の紛争調整委員会です。
事業主は、労働者が前項の申請をしたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。
(男女雇用機会均等法 第二十四条第二項)
申請をしたことを理由とする不利益な取扱いも、ここで禁じられます。
前条第一項の規定に基づく調停(以下この節において「調停」という。)は、三人の調停委員が行う。
(男女雇用機会均等法 第二十五条第一項)
調停は三人の調停委員が行う、という数字が条文に置かれています。
| 段階 | 条 | 動く主体 | 条文が置いている言葉 |
|---|---|---|---|
| 社内での自主的解決 | 第二十一条 | 事業主 | 自主的な解決を図るように努めなければならない(第十一条は列挙外) |
| 紛争の解決の援助 | 第二十三条第一項 | 都道府県労働局長 | 必要な助言、指導又は勧告をすることができる |
| 調停の委任 | 第二十四条第一項 | 都道府県労働局長 | 委員会に調停を行わせるものとする |
| 調停 | 第二十五条第一項 | 紛争調整委員会 | 三人の調停委員が行う |
調停とは別に裁判所で短い回数で決める手続もあり、労働審判の回数を労働審判法15条で確かめた記事と読み比べると違いが見えます。↓

セクハラの措置義務を守らない会社への報告の徴収と勧告=均等法35条
措置義務に従わない会社に対して、行政が動く条文も置かれています。
第三十五条が、報告の徴収と助言・指導・勧告の条です。
厚生労働大臣は、この法律の施行に関し必要があると認めるときは、事業主に対して、報告を求め、又は助言、指導若しくは勧告をすることができる。
(男女雇用機会均等法 第三十五条第一項)
主体は厚生労働大臣で、できることは「報告を求め、又は助言、指導若しくは勧告をすること」です。
前項に定める厚生労働大臣の権限は、厚生労働省令で定めるところにより、その一部を都道府県労働局長に委任することができる。
(男女雇用機会均等法 第三十五条第二項)
権限の一部は都道府県労働局長に委任できる形になっています。
条文の言葉は「この法律の施行に関し必要があると認めるとき」で、第十一条に限った条ではありません。
セクハラの勧告に従わない会社を公表する条文=均等法36条
勧告に従わない場合の条文が、第三十六条です。
厚生労働大臣は、第五条から第七条まで、第九条第一項から第三項まで、第十一条第一項及び第二項、第十三条第一項及び第二項、第十五条第一項及び第二項、第十七条、第十八条第一項、第二十三条第二項並びに第二十四条第二項の規定に違反している事業主に対し、前条第一項の規定による勧告をした場合において、その勧告を受けた者がこれに従わなかつたときは、その旨を公表することができる。
(男女雇用機会均等法 第三十六条)
公表できるのは、列挙された規定に違反していて、かつ第三十五条第一項の勧告を受けてそれに従わなかったときです。
公表は勧告に従わないときという2段の条件が置かれています。
| 公表の条件 | 条文の言葉 |
|---|---|
| 違反している規定に当たること | 第五条から第七条まで、第九条第一項から第三項まで、第十一条第一項及び第二項、第十三条第一項及び第二項、第十五条第一項及び第二項、第十七条、第十八条第一項、第二十三条第二項並びに第二十四条第二項 |
| 勧告を受けたこと | 前条第一項の規定による勧告をした場合において |
| 勧告に従わなかったこと | その勧告を受けた者がこれに従わなかつたとき |
| 行政ができること | その旨を公表することができる |
列挙の中に第十一条第一項と第二項が入っているので、セクハラの措置義務と不利益取扱いの禁止は公表の対象に含まれます。
一方で第十二条の責務は列挙に入っていません。
セクハラとパワハラで条文の形はどこが違うのか
パワハラの措置義務は均等法ではなく、労働施策総合推進法に置かれています。
第三十条の二第一項が、その措置義務の条です。
事業主は、職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であつて、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。
(労働施策総合推進法 第三十条の二第一項)
「職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であつて、業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの」という2つの絞りが入り、害されるものとして挙がるのは「就業環境」だけです。
事業主は、労働者が前項の相談を行つたこと又は事業主による当該相談への対応に協力した際に事実を述べたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。
(労働施策総合推進法 第三十条の二第二項)
第二項は、均等法第十一条第二項と一字一句おなじ文です。
| 比べる点 | 均等法第十一条 | 労働施策総合推進法第三十条の二 |
|---|---|---|
| 対象の言動 | 性的な言動 | 優越的な関係を背景とした言動であつて、業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの |
| 害されるものとして挙がるもの | 労働条件の不利益と就業環境 | 就業環境 |
| 措置義務の述語 | 講じなければならない | 講じなければならない |
| 相談・協力を理由とする不利益取扱い | 第二項で禁止 | 第二項で禁止 |
| 他の事業主からの協力の求め | 第三項に努力義務として置かれている | 第三十条の二には置かれていない |
| 指針 | 第四項・第五項(第四条を準用) | 第三項から第六項(労働政策審議会の意見を聴く) |
| 責務の条 | 第十二条(別の条) | 第三十条の三(別の条) |
| 勧告と公表 | 第三十五条と第三十六条に分かれている | 第三十三条に助言・指導・勧告と公表がまとまっている |
一番はっきり違うのは、他の事業主への協力の項があるかどうかです。
均等法第十一条第三項に当たる項は、労働施策総合推進法第三十条の二には置かれていません。
勧告と公表のまとめ方も違い、労働施策総合推進法は第三十三条の第一項と第二項で1本にしています。
厚生労働大臣は、第三十条の二第一項及び第二項(第三十条の五第二項及び第三十条の六第二項において準用する場合を含む。第三十五条及び第三十六条第一項において同じ。)の規定に違反している事業主に対し、前項の規定による勧告をした場合において、その勧告を受けた者がこれに従わなかつたときは、その旨を公表することができる。
(労働施策総合推進法 第三十三条第二項)
パワハラの側の条文に「パワハラ」の語が何件あるかは、パワハラの定義を労働施策総合推進法30条の2で確かめた記事で数えています。↓

セクハラについてよくある質問
- セクハラ対策は会社の義務ですか?
-
男女雇用機会均等法第十一条第一項が、事業主は相談に応じ適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならないと定めています。
述語は「講じなければならない」で、努力義務の形ではありません。
- 条文に「セクハラ」という言葉はありますか?
-
均等法の法令データ全文を数えると「セクハラ」「セクシュアルハラスメント」「ハラスメント」はいずれも0件でした。
条文が使っている言葉は「性的な言動」で、本文では第十一条第一項と第十三条第一項に出てきます。
- 相談窓口を置かないと違反になりますか?
-
第十一条第一項が挙げているのは「当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置」です。
措置の具体的な中身は、同条第四項に基づいて厚生労働大臣が定める指針に委ねられています。
- セクハラを相談したら不利に扱われませんか?
-
第十一条第二項は、相談を行つたこと、または相談への対応に協力して事実を述べたことを理由とする解雇その他不利益な取扱いを禁じています。
さらに第二十三条第二項は、紛争の解決の援助を求めたことを理由とする不利益な取扱いも禁じています。
- 取引先の社員からのセクハラはどうなりますか?
-
第十一条第三項は、他の事業主から第一項の措置の実施に関し必要な協力を求められた場合に、これに応ずるように努めなければならないと定めています。
こちらの述語は「努めなければならない」で、第一項とは義務の形が違います。
- 就職活動中のセクハラは対象外ですか?
-
第十三条第一項が、求職者等の求職活動等が阻害されることのないよう、相談に応じ適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならないと定めています。
- 会社が対策をしないとき、どこが動きますか?
-
第二十三条第一項により都道府県労働局長が助言、指導又は勧告をすることができ、第二十四条第一項により紛争調整委員会への調停の委任があります。
第三十五条第一項では厚生労働大臣が報告を求め、または助言、指導若しくは勧告をすることができます。
- 社名が公表されることはありますか?
-
第三十六条は、第十一条第一項及び第二項などの規定に違反している事業主に勧告をした場合で、その勧告に従わなかつたときに、その旨を公表することができると定めています。
セクハラを条文で確かめた結果の一覧
- 均等法の法令データ全文に「セクハラ」「セクシュアルハラスメント」「ハラスメント」は0件
- 条文の言葉は「性的な言動」で7件(うち4件は第十一条から第十四条までの見出し)
- 措置義務の根拠は第十一条第一項で、述語は「講じなければならない」
- 相談したこと・事実を述べたことを理由とする解雇その他不利益な取扱いは第十一条第二項で禁止
- 他の事業主からの協力の求めは第十一条第三項で、述語は「応ずるように努めなければならない」
- 措置の中身は第十一条第四項の指針に委ねられている
- 国・事業主・労働者の責務は第十二条で、4項すべて努力義務
- 求職者等への措置義務は第十三条、その責務は第十四条
- 紛争は第二十三条の援助と第二十四条の調停(調停委員は三人・第二十五条第一項)
- 報告の徴収と勧告は第三十五条、公表は第三十六条
- パワハラ側の労働施策総合推進法第三十条の二には、他の事業主への協力の項が無い
会社に対策を求める根拠を1つだけ挙げるなら、均等法第十一条第一項になります。
転職先を選ぶときは、相談窓口があるかだけでなく、相談したあとの扱いが社内規程にどう置かれているかまで見ておくと判断材料が増えます。
個別の事情への当てはめは、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)か弁護士に相談する領域です。
あわせて読みたい
行政の窓口がどこまで動くのかは、労働基準監督署への相談で動く範囲を条文で確かめた記事で権限の条文を並べています。↓

労働条件そのものを会社が変えてくる話は、労働条件の不利益変更を労働契約法9条・10条で確かめた記事にまとめています。↓

参考文献
- 雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(e-Gov法令検索・デジタル庁)
- 労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(e-Gov法令検索・デジタル庁)
条文の確認日は2026年10月8日です。

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