
教育訓練給付金がいくらになるかは、1つの条文では決まりません。
法律が置いているのは幅だけで、実際の率は省令の側にあります。
この記事で確かめるのは、どの数字がどこに書いてあるのかだけです。
パンフレットも、講座の広告も、解説書も見ません。
使うのはe-Gov法令検索の条文だけです。
先に答えを書きます。
法律の幅は百分の二十以上百分の八十以下で、率の実物は施行規則にあります。
条文の確認日は2026年9月26日。
教育訓練給付金の額を決めている条文=第六十条の二第四項
金額の出発点は、雇用保険法第六十条の二第四項です。
教育訓練給付金の額は、教育訓練給付金支給対象者が第一項に規定する教育訓練の受講のために支払つた費用(厚生労働省令で定める範囲内のものに限る。)の額(当該教育訓練の受講のために支払つた費用の額であることについて当該教育訓練に係る指定教育訓練実施者により証明がされたものに限る。)に百分の二十以上百分の八十以下の範囲内において厚生労働省令で定める率を乗じて得た額(その額が厚生労働省令で定める額を超えるときは、その定める額)とする。
この項に出てくる数字は、百分の二十と百分の八十の2つだけです。
率も上限額も、厚生労働省令に預けられています。
| どこ | 書いてあること |
|---|---|
| 雇用保険法 第六十条の二第四項 | 百分の二十以上百分の八十以下という幅と、省令への委任 |
| 施行規則 第百一条の二の七 | 6段階に分かれた実際の率 |
| 施行規則 第百一条の二の八 | 6段階に分かれた上限額 |
| 施行規則 第百一条の二の六 | 計算に入れてよい費用の範囲 |
| 施行規則 第百一条の二の九 | 支給されない下限=四千円 |
計算の骨格そのものは、この第四項に書いてあります。
支払った費用に率を掛け、上限額で頭を打つという形です。
教育訓練給付金の率が省令で6段階に分かれている
率の実物は、施行規則第百一条の二の七にあります。
法第六十条の二第四項の厚生労働省令で定める率は、次の各号に掲げる者の区分に応じ、それぞれ当該各号に定める率とする。
いちばん基本になるのが第一号です。
一 法第六十条の二第一項に規定する支給要件期間(以下この条において「支給要件期間」という。)が三年以上である者であつて、雇用の安定及び就職の促進を図るために必要な職業に関する教育訓練として厚生労働大臣が指定する教育訓練(次号及び第四号に規定する教育訓練を除く。以下「一般教育訓練」という。)を受け、修了した者百分の二十
一般教育訓練は百分の二十です。
次の第二号が、特定一般教育訓練を定めています。
二 支給要件期間が三年以上である者であつて、雇用の安定及び就職の促進を図るために必要な職業に関する教育訓練のうち速やかな再就職及び早期のキャリア形成に資する教育訓練として厚生労働大臣が指定する教育訓練(第四号に規定する教育訓練を除く。以下「特定一般教育訓練」という。)を受け、修了した者百分の四十
第三号から第六号までは、資格の取得と就職の有無で率が上がります。
| 号 | 訓練の種類と条件 | 率 |
|---|---|---|
| 第一号 | 一般教育訓練を修了 | 百分の二十 |
| 第二号 | 特定一般教育訓練を修了 | 百分の四十 |
| 第三号 | 特定一般教育訓練を修了し資格取得と就職 | 百分の五十 |
| 第四号 | 専門実践教育訓練を修了 | 百分の五十 |
| 第五号 | 専門実践教育訓練を修了し資格取得と就職 | 百分の七十 |
| 第六号 | 第五号に加えて賃金が百分の百五以上に上がった | 百分の八十 |
八割に届くのは第六号だけです。
第六号は、訓練の前後で賃金日額を比べる形になっています。
教育訓練給付金の上限額は十万円から百九十二万円まで
率を掛けたあとには、上限額が待っています。
第百一条の二の八が、号ごとに金額を置いています。
法第六十条の二第四項の厚生労働省令で定める額は、次の各号に掲げる者の区分に応じ、それぞれ当該各号に定める額とする。
一 前条第一号に掲げる者十万円
一般教育訓練の頭打ちは十万円です。
第二号は二十万円、第三号は二十五万円と続きます。
専門実践教育訓練の側は、けたが変わります。
| 号 | 上限額 | 対応する率 |
|---|---|---|
| 第一号 | 十万円 | 百分の二十 |
| 第二号 | 二十万円 | 百分の四十 |
| 第三号 | 二十五万円 | 百分の五十 |
| 第四号 | 百二十万円 | 百分の五十 |
| 第五号 | 百六十八万円 | 百分の七十 |
| 第六号 | 百九十二万円 | 百分の八十 |
第四号から第六号までには、さらに括弧書きが付いています。
二支給単位期間ごとの限度額と、一の支給限度期間ごとの限度額です。
百九十二万円は一度に出る額ではないことが、その括弧書きから分かります。
支給限度期間については、同条第二項が定めています。
前項の支給限度期間とは、基準日から十年を経過する日までの一の期間をいう。
区切りは十年です。
この十年の間に二回目の基準日があると、ただし書によってそこから新しい期間が始まります。
教育訓練給付金の計算に入る費用の範囲
率を掛ける相手は、払った金額の全部ではありません。
第百一条の二の六が、範囲を2つに絞っています。
一 入学料及び受講料(短期訓練受講費の支給を受けているものを除く。)
教材費や交通費という言葉は、この号に出てきません。
もう1つが、キャリアコンサルティングの費用です。
- 入学料及び受講料(第一号)
- 受講開始日前一年以内に受けたキャリアコンサルティングの費用(第二号)
- ただしキャリアコンサルティングは二万円が頭打ち
第二号の括弧書きが「その額が二万円を超えるときは、二万円」と切っています。
さらに第四項の本文が、費用の額について指定教育訓練実施者の証明を求めています。
領収書を自分で持っているだけでは足りない書き方です。
教育訓練給付金がもらえる人=第一項の2つの号
そもそも誰が対象かも、第六十条の二第一項に列挙されています。
一 当該教育訓練を開始した日(以下この条において「基準日」という。)に一般被保険者(被保険者のうち、高年齢被保険者、短期雇用特例被保険者及び日雇労働被保険者以外の者をいう。以下同じ。)又は高年齢被保険者である者
二 前号に掲げる者以外の者であつて、基準日が当該基準日の直前の一般被保険者又は高年齢被保険者でなくなつた日から厚生労働省令で定める期間内にあるもの
第一号は、いま雇用保険に入っている人です。
第二号は、辞めたあとの人を拾う号です。
何日以内なら第二号に入るかは、ここでも省令に預けられています。
第一項の本文は、支給の場面も限定しています。
厚生労働大臣が指定する教育訓練を受け、修了した場合という条件です。
指定されていない講座は対象外になります。
雇用保険に入っているかどうかの線は、雇用保険の加入条件を条文で確かめた記事にまとめています。↓

教育訓練給付金の支給要件期間が三年以上という条件
第一項の末尾には、期間の条件が付いています。
支給要件期間が三年以上であるときに支給する、という形です。
その中身は第二項が定めています。
前項の支給要件期間は、教育訓練給付金支給対象者が基準日までの間に同一の事業主の適用事業に引き続いて被保険者として雇用された期間(当該雇用された期間に係る被保険者となつた日前に被保険者であつたことがある者については、当該雇用された期間と当該被保険者であつた期間を通算した期間)とする。
過去に被保険者だった期間は、括弧書きで通算されます。
ただし、ただし書が2つの期間を切り落とします。
- 被保険者でなくなった日から一年を超えて空いている場合の、それより前の期間(第一号)
- 前に教育訓練給付金を受けたことがある場合の、その基準日より前の期間(第二号)
第二号があるため、受けるたびに数え直しになります。
二回目からは、前の基準日より後の期間だけで三年を積む必要があります。
教育訓練給付金が支給されない2つの場合
計算した結果が小さすぎると、支給そのものが止まります。
第一項及び前項の規定にかかわらず、同項の規定により教育訓練給付金の額として算定された額が厚生労働省令で定める額を超えないとき、又は教育訓練給付金支給対象者が基準日前厚生労働省令で定める期間内に教育訓練給付金の支給を受けたことがあるときは、教育訓練給付金は、支給しない。
その金額も省令にあります。
法第六十条の二第五項の厚生労働省令で定める額は、四千円とする。
四千円を超えない計算結果は、切り捨てではなく不支給です。
一般教育訓練の率は百分の二十なので、受講料が二万円ほどだとこの線に届きません。
| 場面 | 条文 | 結果 |
|---|---|---|
| 算定額が四千円を超えない | 第五項+施行規則第百一条の二の九 | 支給しない |
| 前回の受給から省令で定める期間内 | 第五項 | 支給しない |
| 算定額が上限額を超える | 第四項の括弧書き | 上限額まで |
教育訓練給付金の上限額が上がる長期の訓練
第百一条の二の八には、第三項という読み替えの規定もあります。
対象は、法令で四年の修業年限が決まっている訓練です。
条文での呼び名は長期専門実践教育訓練です。
読み替えによって、第四号の百二十万円が百六十万円になります。
支給限度期間ごとの百九十二万円も、二百五十六万円に置き換わります。
| 読み替え前 | 読み替え後 | 対象 |
|---|---|---|
| 百二十万円 | 百六十万円 | 第一項第四号 |
| 百六十八万円 | 二百二十四万円 | 第一項第五号 |
| 百九十二万円 | 二百五十六万円 | 第一項第四号から第六号まで |
ただし、第三項は3つの条件を全部満たすことを求めています。
基準日から三年が経過していること、その基準日が支給限度期間の初日であること、そして賃金の日額が一定の額未満であることです。
上限の引き上げは、長く通っていれば自動で付くものではありません。
教育訓練給付金とは別に置かれた教育訓練休暇給付金
第六十条の三には、別の給付金があります。
こちらは費用ではなく、休暇中の生活費に当たるものです。
教育訓練休暇給付金の日額は、教育訓練休暇給付金の支給を受けることができる一般被保険者(次項において「教育訓練休暇給付金支給対象者」という。)を受給資格者と、休暇開始日の前日を受給資格に係る離職の日とみなして第十六条から第十八条までの規定を適用した場合にその者に支給されることとなる基本手当の日額に相当する額とする。
日額の基準は、基本手当の日額です。
率を掛ける教育訓練給付金とは、決め方がまったく違います。
| 給付金 | 何に対して出るか | 額の決め方 |
|---|---|---|
| 教育訓練給付金 | 受講のために支払った費用 | 費用に率を掛ける(第六十条の二第四項) |
| 教育訓練休暇給付金 | 教育訓練休暇を取得している日 | 基本手当の日額に相当する額(第六十条の三第五項) |
第六十条の三第一項は、休暇開始日前二年間のみなし被保険者期間が通算十二箇月に満たないときを除いています。
教育訓練給付金の申請期限は修了の翌日から一箇月以内
金額が決まっても、出さなければ受け取れません。
一般教育訓練の期限は、第百一条の二の十一第一項にあります。
教育訓練給付金支給対象者は、一般教育訓練に係る教育訓練給付金の支給を受けようとするときは、当該教育訓練給付金の支給に係る一般教育訓練を修了した日の翌日から起算して一箇月以内に、教育訓練給付金(第百一条の二の七第一号及び第二号関係)支給申請書(様式第三十三号の二)に次の各号に掲げる書類を添えて管轄公共職業安定所の長に提出しなければならない。
起算点は修了した日の翌日です。
特定一般教育訓練はさらに手前から始まります。
第百一条の二の十二第一項が、開始する日の十四日前までの受給資格確認票の提出を求めています。
受ける前に出す書類があるという点が、一般教育訓練との違いです。
訓練のあとに就職したときの手当は、再就職手当を条文で確かめた記事で整理しました。↓

教育訓練給付金の支給要件期間に準用される条文
支給要件期間の数え方には、もう1つ短い項が付いています。
第二十二条第四項の規定は、前項の支給要件期間の算定について準用する。
準用されるのは、基本手当の所定給付日数を決める第二十二条の一部です。
被保険者であった期間の数え方を、そのまま借りてくる形になります。
同じ物差しを2か所で使い回す書き方です。
| 条文 | 何のための期間か | 数え方 |
|---|---|---|
| 第二十二条第三項 | 基本手当の算定基礎期間 | 第二十二条第四項で調整 |
| 第六十条の二第二項 | 教育訓練給付金の支給要件期間 | 第二十二条第四項を準用 |
条文が短いぶん、元の第二十二条まで戻らないと中身が読めません。
準用の一行が、期間の計算を丸ごと引き連れています。
教育訓練給付金の側だけを読んでも、期間の全体像は出てきません。
教育訓練給付金の受給中に訓練を続けられなくなった場合
第六十条の二の隣にある第六十条の三には、中断の規定があります。
対象は教育訓練休暇給付金ですが、期間の伸ばし方が具体的です。
第一項の教育訓練休暇を取得していることについての認定は、厚生労働省令で定めるところにより、公共職業安定所長が、休暇開始日から起算して三十日に一回ずつ直前の三十日の各日について行うものとする。
三十日ごとに認定を受ける形です。
妊娠や出産などで三十日以上訓練を受けられない場合は、第三項が期間を加算します。
加算後の期間は、四年が上限として括弧書きに置かれています。
- 原則は休暇開始日から一年の期間内
- 三十日ごとに公共職業安定所長の認定を受ける
- 訓練を受けられない日数は一年に加算(上限は四年)
加算しても四年で頭を打ちます。
教育訓練給付金について条文から確かめられなかったこと
条文だけでは決まらない部分も並べておきます。
- どの講座が厚生労働大臣の指定を受けているかの一覧
- 第一項第二号の「厚生労働省令で定める期間内」が何日か
- 第五項の「厚生労働省令で定める期間内」が何年か
- 資格の取得等に当たるかどうかの具体的な判断
- 指定教育訓練実施者の証明の様式
これらは第六十条の二にも第百一条の二の七にも置かれていません。
条文で分かるのはここまでです。
教育訓練給付金についてよくある質問
- 教育訓練給付金はいくらもらえますか?
-
支払った入学料と受講料に率を掛けた額です。
率は施行規則第百一条の二の七が百分の二十から百分の八十までの6段階で定めています。
- 法律には何パーセントと書いてありますか?
-
雇用保険法第六十条の二第四項が書いているのは「百分の二十以上百分の八十以下の範囲内において厚生労働省令で定める率」という幅だけです。
具体的な率は省令の側にあります。
- 上限額はいくらですか?
-
施行規則第百一条の二の八が、十万円・二十万円・二十五万円・百二十万円・百六十八万円・百九十二万円の6段階を定めています。
どれに当たるかは、前条のどの号に該当するかで決まります。
- 教材費や交通費も対象になりますか?
-
施行規則第百一条の二の六が挙げているのは、入学料及び受講料と、キャリアコンサルティングの費用の2つです。
キャリアコンサルティングの費用は二万円が頭打ちです。
- 計算した額が少ないと出ないことはありますか?
-
あります。
第六十条の二第五項と施行規則第百一条の二の九により、算定額が四千円を超えないときは支給されません。
- 何年働いていれば対象になりますか?
-
第六十条の二第一項が、支給要件期間が三年以上であるときに支給するとしています。
支給要件期間の数え方は同条第二項にあります。
- 二回目も同じように受けられますか?
-
第六十条の二第二項第二号が、前に受けた給付金の基準日より前の期間を支給要件期間から除いています。
前回より後の期間だけで三年を積み直す形になります。
- 会社を辞めたあとでも対象になりますか?
-
第六十条の二第一項第二号が、基準日が被保険者でなくなった日から厚生労働省令で定める期間内にある者を対象としています。
その期間が何日かは、条文の本文に置かれていません。
- 申請はいつまでにすればよいですか?
-
一般教育訓練は、施行規則第百一条の二の十一第一項により修了した日の翌日から起算して一箇月以内です。
特定一般教育訓練は、第百一条の二の十二第一項により開始する日の十四日前までの提出が別に求められています。
- 八割もらえるのはどんな場合ですか?
-
施行規則第百一条の二の七第六号に当たる場合です。
専門実践教育訓練を修了して資格を取得し、就職したうえで、訓練後の賃金日額が訓練前の百分の百五に相当する額以上であることが条件になっています。
教育訓練給付金を条文で確かめた結果の一覧
条文と省令だけで確かめられたことを並べます。
- 法律が置いているのは「百分の二十以上百分の八十以下」という幅だけ(第六十条の二第四項)
- 実際の率は施行規則第百一条の二の七の6段階
- 上限額は施行規則第百一条の二の八の十万円から百九十二万円まで
- 率を掛ける相手は入学料及び受講料とキャリアコンサルティング費用だけ
- 算定額が四千円を超えないときは不支給(第六十条の二第五項)
- 支給要件期間は三年以上で、二回目からは前の基準日より後だけで数える
- 一般教育訓練の申請期限は修了した日の翌日から一箇月以内
金額そのものを法律の条文から読み取ることは、できませんでした。
率も上限額も申請期限も、全部が施行規則の側にあります。
| 知りたいこと | 見る条文 |
|---|---|
| 何割か | 施行規則 第百一条の二の七 |
| いくらまでか | 施行規則 第百一条の二の八 |
| 何が対象の費用か | 施行規則 第百一条の二の六 |
| 出ない下限はいくらか | 施行規則 第百一条の二の九 |
| いつまでに出すか | 施行規則 第百一条の二の十一・第百一条の二の十二 |
法律の側だけを読むと、幅と枠組みしか出てきません。
逆に省令だけを読むと、なぜその幅に収まっているのかが分かりません。
2つを並べて初めて、金額の根拠がつながります。
あわせて読みたい
同じ雇用保険の給付で率が条文に直接書かれている例は、育児休業給付金を条文で確かめた記事が対応します。↓

参考文献
条文の確認日は2026年9月26日です。

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