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転職のリファレンスチェックは断れるのか。転職 リファレンスチェックで会社側が守るルールを条文で確かめます

「最終面接の前に、リファレンスチェックをお願いします」。

外資系や英語を使う職種の選考では、この一言が途中で入ってきます。

この記事は、転職のリファレンスチェックが法律の上でどう扱われているのかを、条文と官公庁の公式ページだけで確かめます。

体験談も、伝聞も、転職サイトのまとめも使いません。

使うのは、e-Gov法令検索に載っている条文と、厚生労働省・個人情報保護委員会が公表している資料だけです。

先に結論を書きます。

日本の法律にリファレンスチェックを禁止する条文はありません。

ただし、それを実施する側には、本人の同意を軸にした具体的な制限がかかっています。

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転職のリファレンスチェックを直接禁止する条文は、日本の法律には見当たりません

最初に、いちばん誤解されている点から書きます。

「リファレンスチェックは違法だ」という説明を見かけますが、e-Gov法令検索で条文を探しても、リファレンスチェックという語を名指しで禁止した規定は見当たりませんでした。

効いているのは「個人情報の集め方」を縛る条文

代わりに効いているのは、採用する側が求職者の情報をどう集めてよいかを定めた条文です。

軸になるのは次の3本です。

何を縛っているか根拠条文の場所
採用側が求職者の情報を集める範囲と方法職業安定法 第5条の5職業安定法(e-Gov法令検索)
前職の会社が第三者へ情報を渡すこと個人情報保護法 第27条個人情報の保護に関する法律(e-Gov法令検索)
集めてはいけない情報の中身と、同意の取り方平成11年労働省告示第141号厚生労働省の指針本文

この記事が何を根拠にしているか

先に、この記事の作り方を書いておきます。

条文はe-Gov法令検索で本文を開いて確認したものだけを引用しています。

官公庁の資料は、リンク先のページを実際に開いて、そこに書かれていることだけを書いています。

転職のリファレンスチェックの土台にあるのは、職業安定法第5条の5です

求職者の個人情報について、いちばん近い位置にある条文がこれです。

条文はこう書かれています

公共職業安定所、特定地方公共団体、職業紹介事業者及び求人者、労働者の募集を行う者及び募集受託者、特定募集情報等提供事業者並びに労働者供給事業者及び労働者供給を受けようとする者(次項において「公共職業安定所等」という。)は、それぞれ、その業務に関し、求職者、労働者になろうとする者又は供給される労働者の個人情報(以下この条において「求職者等の個人情報」という。)を収集し、保管し、又は使用するに当たつては、その業務の目的の達成に必要な範囲内で、厚生労働省令で定めるところにより、当該目的を明らかにして求職者等の個人情報を収集し、並びに当該収集の目的の範囲内でこれを保管し、及び使用しなければならない。ただし、本人の同意がある場合その他正当な事由がある場合は、この限りでない。

(出典:職業安定法 第五条の五)

読み方は3つに割れます。

1つ目は、対象に「求人者」がはっきり入っていることです。

つまり、転職エージェント経由でも、応募先の会社が自分でやる場合でも、同じ条文の中にいます。

2つ目は、集めてよいのは「業務の目的の達成に必要な範囲内」だけということです。

3つ目は、その目的を明らかにしたうえで集めなければならない、という手順が条文に書いてあることです。

「必要な範囲」を超えたものは、同意があっても条件にできません

ここが実務でいちばん重要な線引きです。

指針(平成11年労働省告示第141号)は、同意の取り方についてこう定めています。

業務の目的の達成に必要な範囲を超えて個人情報を収集し、保管し、又は使用することの同意を、職業紹介の条件としないこと

(出典:平成11年労働省告示第141号 指針(抄))

同意も、次のように定められています。

求職者等の自由な意思に基づき、本人により明確に表示された同意

(出典:同上)

「同意しないと選考を進めません」という形の同意は、この条文が想定している同意とは形が違います。

転職のリファレンスチェックで、そもそも集めてはいけない情報が決まっています

指針は、収集そのものを禁じる情報を3つ挙げています。

収集してはならない3類型

類型指針の記載
イ人種、民族、社会的身分、門地、本籍、出生地その他社会的差別の原因となるおそれのある事項
ロ思想及び信条
ハ労働組合への加入状況

出典は平成11年労働省告示第141号の指針本文です。

各都道府県労働局も同じ内容を配布しています(例:群馬労働局「求職者等の個人情報の取扱いについて」)。

集め方そのものにも決まりがあります

指針は、収集の手段についてこう書いています。

本人から直接収集し、本人の同意の下で本人以外の者から収集し、又は本人により公開されている個人情報を収集する等の手段であつて、適法かつ公正なもの

(出典:平成11年労働省告示第141号 指針(抄))

リファレンスチェックは「本人以外の者から収集する」形です。

この形が許されているのは、条文の側で「本人の同意の下で」という条件が付いているからです。

同意が先で、照会が後です。

順番が逆になっているものは、この指針の書き方に沿っていません。

転職のリファレンスチェックで前職が答えてよいかは、個人情報保護法第27条で決まります

ここは、応募者ではなく「聞かれる側」の話です。

前職の上司が個人として答えるのか、会社として答えるのかで扱いが変わります。

条文の柱書

個人情報取扱事業者は、次に掲げる場合を除くほか、あらかじめ本人の同意を得ないで、個人データを第三者に提供してはならない。

(出典:個人情報の保護に関する法律 第二十七条)

例外として並んでいるのは、法令に基づく場合、人の生命・身体・財産の保護に必要な場合、公衆衛生や児童の健全育成に特に必要な場合、国や地方公共団体の事務に協力する必要がある場合、学術研究機関等に関する場合の7号です。

採用選考の照会は、この7つのどれにも当てはまりません。

つまり、前職の会社が在職時の人事情報を応募先へ渡すには、原則として本人の同意が要ります。

「本人の同意」は何を指すのか

個人情報保護委員会のガイドライン(通則編)は、本人の同意をこう定義しています。

本人の個人情報が、個人情報取扱事業者によって示された取扱方法で取り扱われることを承諾する旨の当該本人の意思表示

(出典:個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編))

同じガイドラインは、同意の取得について「本人が同意に係る判断を行うために必要と考えられる合理的かつ適切な方法によらなければならない」としています。

ガイドラインや法令の一覧は個人情報保護委員会の法令・ガイドラインのページにまとまっています。

応募者の側から見ると何が変わるか

前職に照会が入るかどうかは、自分が同意した範囲で決まります。

同意書に「現職を含む」と書かれていれば現職に連絡が行く可能性があり、「前職まで」と書かれていれば前職までです。

同意書の対象範囲の欄が、実務上いちばん大事な1行です。

転職のリファレンスチェックと「身元調査」は、厚生労働省の資料では別の扱いになっています

ここを混ぜている説明が多いので、公式の資料で切り分けます。

厚生労働省が挙げている「採用選考時に配慮すべき事項」

厚生労働省は公正採用選考の特設サイトで、就職差別につながるおそれのある事項を3つの区分で示しています。

区分中身
本人に責任のない事項本籍・出生地、家族、住宅状況、生活環境・家庭環境など
本来自由であるべき事項宗教、支持政党、人生観・生活信条、尊敬する人物、思想、労働組合や学生運動などの社会運動、購読新聞・雑誌・愛読書など
採用選考の方法身元調査などの実施、本人の適性・能力に関係ない事項を含んだ応募書類の使用、合理的・客観的に必要性が認められない健康診断の実施

出典は厚生労働省「採用選考時に配慮すべき事項」です。

何が違うのか

3つ目の区分に「身元調査などの実施」が入っています。

身元調査は、本人の適性・能力とは関係のない生い立ちや家庭環境を調べにいく行為を指します。

一方でリファレンスチェックは、職務上の実績や働き方についての照会です。

厚生労働省は採用選考の基本として、応募者の適性と能力のみを基準として行うことを求めています(公正な採用選考の基本)。

同じ内容は各労働局も案内しています(例:東京労働局「公正な採用選考を行うために」)。

⇒ 職務の実績を聞くのが照会、職務と関係のない属性を調べるのが身元調査です。

⇒ 前者は同意を条件に行われ、後者は配慮すべき事項として挙げられています。

転職のリファレンスチェックを断ると不利になるのか。条文で言えることと言えないこと

ここは、はっきり書き分けます。

条文で言えること

同意は「求職者等の自由な意思に基づき、本人により明確に表示された」ものでなければならないと指針に書かれています。

また、業務の目的の達成に必要な範囲を超えた収集への同意を条件にしてはならない、とも書かれています。

したがって、範囲を超えた照会を断ることは、指針の側が想定している行動です。

条文で言えないこと

「必要な範囲内」の照会を断った応募者を、会社が採用しない判断をすることまで禁じた条文はありません。

採否そのものは会社の判断に属します。

⇒ つまり、「断っても法律違反にはならない」ことと、「断っても選考に影響しない」ことは別の話です。

⇒ 前者は条文で言えますが、後者は条文からは言えません。

断る前にできること

断るか受けるかの二択にする前に、同意書の中身を確認する余地があります。

確認する項目は次のとおりです。

確認する欄なぜ見るか
照会先の範囲(現職を含むか)現職に在職中であることが伝わるかどうかが決まる
照会する項目職務の実績以外が入っていないかを見る
利用目的職業安定法第5条の5が「目的を明らかにして」と求めている
保管期間と廃棄の方法収集の目的の範囲内でしか保管・使用できない
実施の主体(応募先か、委託先か)委託先がいる場合は個人情報保護法第27条第5項の委託の扱いになる

転職のリファレンスチェックを受けるときの手順

順番に並べます。

同意する前

同意書の対象範囲と利用目的を読みます。

現職を照会先に含むかどうかを確認します。

推薦者を自分で指名できるかを聞きます。

同意した後

推薦者に、どの会社から、いつ頃、何を聞かれるかを先に伝えます。

推薦者自身も、会社の人事情報を答える立場なら個人情報保護法第27条の側に立ちます。

在職時の評価データそのものではなく、自分が直接見た事実を答える形になるかを、推薦者と確認しておきます。

終わった後

照会の結果は、収集の目的の範囲内でしか使えません。

目的外の使い方をされたと感じた場合の相談先は、個人情報保護委員会と、都道府県労働局の職業安定部門です。

転職のリファレンスチェックで、法令に定めがない点と公表されていない統計

条文に定めがない点と、公表されていない統計もまとめます。

リファレンスチェックの実施率は、官公庁の統計として公表されていません。

リファレンスチェックという語も、法令の条文では定義されていない言葉です。

外資系企業に限った実施ルールを定めた告示や通達も、出されていません。

「同意しなかったことを理由とする不採用」を禁じた条文も、無いのが現状です。

転職のリファレンスチェックについてよくある質問

同意なしで前職に連絡されることはありますか

会社が保有する個人データを本人の同意なく第三者へ提供することは、個人情報保護法第27条第1項が原則として禁じています。

例外は同項の7つの号に限られており、採用照会はそこに含まれていません。

現職に連絡されて、転職活動が知られてしまいませんか

照会先の範囲は同意書で決まります。

現職を含むかどうかは、同意する前に確認できる項目です。

推薦者は誰でもよいのですか

推薦者の要件を定めた法令の規定はありません。

会社ごとの運用に委ねられている部分なので、募集要項か採用担当者に確認する形になります。

家族構成や信条を聞かれたら答える必要がありますか

平成11年労働省告示第141号は、思想及び信条、労働組合への加入状況、人種・民族・社会的身分・門地・本籍・出生地その他社会的差別の原因となるおそれのある事項の収集を禁じています。

厚生労働省の「採用選考時に配慮すべき事項」でも、これらは把握すべきでない事項として挙げられています。

英文で照会される場合もルールは同じですか

日本国内の事業場で行われる募集・採用であれば、使う言語にかかわらず日本の職業安定法と個人情報保護法が適用されます。

同意書が英文であっても、確認する欄は同じです。

まとめ:転職のリファレンスチェックは、禁止でも自由でもなく「同意の範囲」で決まります

条文から言えることを3行にします。

  • リファレンスチェックを名指しで禁じた条文は見当たらず、実施そのものは違法とされていません。
  • 採用側は、職業安定法第5条の5により、目的を明らかにしたうえで必要な範囲内でしか集められません。
  • 前職が情報を渡す側では、個人情報保護法第27条により、原則として本人の同意が要ります。

⇒ だから、応募者が実際に読むべき紙は求人票ではなく、同意書の対象範囲の欄です。

⇒ そこに何が書かれているかで、現職に連絡が行くかどうかまで決まります。


この記事で使った一次資料

条文と資料の確認日は2026年9月8日です。

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