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失業保険の給付制限は今も3か月?雇用保険法とハローワークの一次資料で確かめる

「自己都合で辞めると、失業保険は3か月待たされる」。

退職の話になると、ほぼ必ずこの言い方が出てきます。

この記事は、その話が今の法律と公的資料の上でどこまで成り立つのかを確かめます。

体験談も、伝聞も、転職サイトのまとめも使いません。

使うのは、e-Gov法令検索に載っている雇用保険法の条文と、厚生労働省とハローワークインターネットサービスが公表している資料だけです。

先に結論を書きます。

正当な理由がない自己都合退職の給付制限は、退職日が2025年(令和7年)4月1日以降であれば原則1か月です。

3か月になるのは、5年間に自己都合退職を繰り返した場合と、重責解雇の場合に限られます。

条文と資料の確認日は2026年9月12日です。

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失業保険の給付制限は、2025年4月1日以降の退職なら原則1か月です

いちばん知りたいところから置きます。

厚生労働省が書いている期間

厚生労働省は、雇用保険制度のページで次のように書いています。

雇用保険の被保険者が正当な理由がなく自己の都合によって退職した場合には、基本手当の受給資格決定日から7日間の待期期間満了後1~3か月間(※)は基本手当を支給されません(「給付制限」といいます)。

(出典:令和7年4月以降に教育訓練等を受ける場合、給付制限が解除され、基本手当を受給できます|厚生労働省)

この「※」の中身が、今回いちばん重要な部分です。

退職日が令和7年4月1日以降である場合は原則1か月、同年3月31日以前である場合は原則2か月です。

(出典:同ページ|厚生労働省)

⇒ 退職日が2025年3月31日以前なら原則2か月です。

⇒ 退職日が2025年4月1日以降なら原則1か月です。

つまり、境目は「退職日がいつか」であって、ハローワークに行った日ではありません。

「3か月」が広まっている理由

厚生労働省の雇用保険部会に出された資料は、改正前の状態をこう説明しています。

自己都合離職者に対しては、失業給付(基本手当)の受給に当たって、待期満了の翌日から原則2ヶ月間(5年以内に2回を超える場合は3ヶ月)の給付制限期間がある。

(出典:令和6年雇用保険制度改正(令和7年4月1日施行分)について|厚生労働省)

改正前の原則は2か月でした。

その2か月も、もとは3か月だったものが令和2年10月から短縮されたものです。

⇒ 「3か月」は、2020年9月以前の退職を前提にした言い方です。

この分野は5年で2回短縮されているので、古い説明が残りやすいところです。

短縮の根拠は法律ではなく通達

同じ資料の「見直し内容」には、次の一文が付いています。

このほか、通達の改正により、原則の給付制限期間を2ヶ月から1ヶ月へ短縮する。ただし、5年間で3回以上の自己都合離職の場合には給付制限期間を3ヶ月とする。

(出典:令和6年雇用保険制度改正(令和7年4月1日施行分)について|厚生労働省)

同じ資料は施行期日を「2025(令和7)年4月1日」と記載しています。

⇒ 1か月という数字そのものは、法律の条文ではなく行政の運用基準の側にあります。

では、法律の条文は何と書いているのか。

失業保険の給付制限の根拠は、雇用保険法第33条の一文です

条文そのものは「1か月」とは書いていません。

第33条第1項の本文

被保険者が自己の責めに帰すべき重大な理由によつて解雇され、又は正当な理由がなく自己の都合によつて退職した場合には、第二十一条の規定による期間の満了後一箇月以上三箇月以内の間で公共職業安定所長の定める期間は、基本手当を支給しない。

(出典:雇用保険法 第三十三条(e-Gov法令検索))

読みどころは3つあります。

1つ目は、対象が「自己の責めに帰すべき重大な理由によつて解雇」された人と「正当な理由がなく自己の都合によつて退職した」人の2種類だけであることです。

2つ目は、期間の幅が「一箇月以上三箇月以内」と条文で決まっていることです。

3つ目は、その幅の中で実際の長さを決めるのが「公共職業安定所長」であることです。

法律は幅だけを決めていて、幅の中のどこに置くかは運用で決まる、という構造になっています。

⇒ だから「原則1か月」は通達の改正で動かせます。

⇒ そして、条文の上限が3か月なので、これより長くなることはありません。

起点は「第二十一条の規定による期間の満了後」

第33条第1項は、給付制限の起点を第21条に預けています。

この第21条が、いわゆる待期の条文です。

失業保険の給付制限の前に、誰にでも7日間の待期があります

待期は、退職理由に関係なく全員にかかります。

雇用保険法第21条

基本手当は、受給資格者が当該基本手当の受給資格に係る離職後最初に公共職業安定所に求職の申込みをした日以後において、失業している日(疾病又は負傷のため職業に就くことができない日を含む。)が通算して七日に満たない間は、支給しない。

(出典:雇用保険法 第二十一条(e-Gov法令検索))

条文を分解すると、次の3点が出てきます。

まず、7日の数え始めは退職日ではありません。

「最初に公共職業安定所に求職の申込みをした日以後」と書かれています。

⇒ 退職してから手続きを遅らせると、そのぶん待期の開始も後ろへずれます。

次に、数えるのは「失業している日」であって、暦の7日ではありません。

「通算して七日」と書かれているので、間に働いた日があればその日は数に入りません。

3つ目に、病気やけがで働けない日は、かっこ書きで待期の日数に含まれると明記されています。

待期と給付制限の順番

第33条第1項が「第二十一条の規定による期間の満了後」と書いている以上、順番は固定です。

順番何が起きるか根拠
1離職—
2ハローワークで求職の申込み・受給資格決定雇用保険法第21条
3待期(失業している日が通算7日)雇用保険法第21条
4給付制限(1か月以上3か月以内で安定所長が定める期間)雇用保険法第33条第1項
5基本手当の支給対象期間雇用保険法第22条ほか

⇒ 待期の7日と給付制限の1か月は、重ならずに順番に来ます。

2025年4月1日以降の自己都合退職なら、待期7日+給付制限1か月が最短の並びです。

失業保険の給付制限が3か月になるのは、2つの場合だけです

3か月という数字は消えたわけではありません。

厚生労働省が挙げている2つの場合

ただし、退職日から遡って5年間のうちに2回以上正当な理由なく自己都合退職し受給資格決定を受けた場合、給付制限は3か月となります。また、自己の責めに帰すべき重大な理由によって解雇(重責解雇)された場合、給付制限は3か月です。

(出典:令和7年4月以降に教育訓練等を受ける場合、給付制限が解除され、基本手当を受給できます(リーフレット)|厚生労働省)

1つ目は、退職日から遡って5年のうちに2回以上、正当な理由のない自己都合退職で受給資格決定を受けている場合です。

数えるのは「退職した回数」ではなく「受給資格決定を受けた回数」である点が読みどころです。

2つ目は、重責解雇です。

条文の側では「自己の責めに帰すべき重大な理由によつて解雇され」がこれに当たります。

期間の場合分けを表にする

状況給付制限の期間根拠
2025年4月1日以降の退職・正当な理由のない自己都合原則1か月厚生労働省ページの※書き
2025年3月31日以前の退職・正当な理由のない自己都合原則2か月同上
退職日から遡って5年に2回以上の自己都合離職で受給資格決定3か月厚生労働省リーフレット
重責解雇3か月厚生労働省リーフレット
倒産・解雇など(特定受給資格者)給付制限の条文の対象外雇用保険法第33条第1項

自分がどの行に入るかは、退職日と離職理由の2つだけで決まります。

失業保険の給付制限が丸ごと解除される仕組みが2025年4月にできました

これは2025年4月からの新しい取り扱いです。

教育訓練を受けると給付制限が外れる

厚生労働省は、根拠として「雇用保険法等の一部を改正する法律」(令和6年法律第26号)を挙げています。

令和7年4月以降にリ・スキリングのために教育訓練等を受けた(受けている)場合、給付制限が解除され、基本手当を受給できるようになりました。

(出典:令和7年4月以降に教育訓練等を受ける場合、給付制限が解除され、基本手当を受給できます|厚生労働省)

解除の対象になる訓練は、リーフレットで4つに整理されています。

番号対象となる教育訓練等
①教育訓練給付金の対象となる教育訓練
②公共職業訓練等
③短期訓練受講費の対象となる教育訓練
④①〜③に準ずるものとして職業安定局長が定める訓練

出典は厚生労働省のリーフレットです。

いつ受けた訓練が対象になるか

リーフレットは、対象者を次のように書いています。

次のいずれかの教育訓練等(令和7年4月1日以降に受講を開始したものに限る)を離職日前1年以内に受けた方(途中退校は該当しません) または 離職日以後に受けている方

(出典:同リーフレット|厚生労働省)

⇒ 辞める前に受けた訓練でも、離職日前1年以内なら対象になり得ます。

⇒ 途中でやめた訓練は該当しないと明記されています。

そして、重責解雇の人はこの取り扱いの対象外だとリーフレットの注2に書かれています。

申し出には期限がある

リーフレットは、申し出の時期についても書いています。

受講開始以降、受給資格決定日や受給資格決定後の初回認定日(初回認定日以降に受講を開始した場合は、その受講開始日の直後の認定日)までに申し出る必要があります。

(出典:同リーフレット|厚生労働省)

⇒ 受けただけでは自動的に解除されません。

⇒ 期限までにハローワークへ申し出る、という手続が要ります。

条文の側にも、この解除は書き込まれています。

雇用保険法第33条第1項のただし書は、公共職業安定所長の指示した公共職業訓練等を受ける受給資格者などを、給付制限の例外として並べています(雇用保険法 第三十三条)。

失業保険の給付制限と所定給付日数は、別々に決まります

給付制限は「いつから出るか」、所定給付日数は「何日分出るか」の話です。

雇用保険法第22条第1項

一般の離職者の日数は、条文が3行で決めています。

一 算定基礎期間が二十年以上である受給資格者 百五十日 二 算定基礎期間が十年以上二十年未満である受給資格者 百二十日 三 算定基礎期間が十年未満である受給資格者 九十日

(出典:雇用保険法 第二十二条第一項(e-Gov法令検索))

ハローワークインターネットサービスは、これを被保険者であった期間の区分で表にしています。

被保険者であった期間所定給付日数(1・3以外の離職者)
1年未満90日
1年以上5年未満90日
5年以上10年未満90日
10年以上20年未満120日
20年以上150日

出典はハローワークインターネットサービス「基本手当の所定給付日数」です。

給付制限が1か月になっても、この日数が増えることはありません。

全体の幅

ハローワークインターネットサービスは、所定給付日数の決まり方をこう書いています。

受給資格に係る離職の日における年齢、雇用保険の被保険者であった期間及び離職の理由などによって決定され、90日~360日の間でそれぞれ決められます。

(出典:基本手当について|ハローワークインターネットサービス)

360日まで伸びるのは、雇用保険法第22条第2項が定める就職が困難な受給資格者の区分です。

条文は、45歳以上65歳未満で算定基礎期間1年以上の場合に360日、45歳未満で300日と書いています。

1日いくら出るか

ハローワークインターネットサービスは、基本手当日額の上限額を年齢区分ごとに公表しています。

年齢区分基本手当日額の上限額
30歳未満7,450円
30歳以上45歳未満8,270円
45歳以上60歳未満9,110円
60歳以上65歳未満7,830円

同ページは、この表に「(令和8年8月1日現在)」という注記を付けています(基本手当について)。

この金額は税込・税抜という区分のある金額ではなく、支給される額そのものです。

雇用保険法第12条が、そのことを条文で押さえています。

租税その他の公課は、失業等給付として支給を受けた金銭を標準として課することができない。

(出典:雇用保険法 第十二条(e-Gov法令検索))

失業保険の給付制限がそもそもかからない離職理由があります

第33条第1項の対象は2種類だけでした。

そこに入らない離職は、給付制限の条文の外側にあります。

特定受給資格者

倒産や解雇で辞めた人は、雇用保険法第23条第2項の特定受給資格者に当たります。

ハローワークインターネットサービスは、その範囲を「倒産」等と「解雇」等の2群に分けて公開しています。

解雇等の群には、たとえば次のものが挙げられています。

労働契約の締結に際し明示された労働条件が事実と著しく相違したことにより離職した者

(出典:特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要|ハローワークインターネットサービス)

同じ群には、賃金の3分の1を超える額が支払期日までに支払われなかった場合や、一定の時間外労働が続いた場合も並んでいます。

自分から退職届を出していても、理由がここに当たれば自己都合ではありません。

正当な理由のある自己都合

同じページには、正当な理由のある自己都合として特定理由離職者になる場合も列挙されています。

体力の不足や疾病による離職、父母の疾病による離職、結婚に伴う住所の変更で通勤が困難になった場合などが挙げられています。

同ページは、この「正当な理由」について次のように注記しています。

給付制限を行う場合の「正当な理由」に係る認定基準と同様に判断されます。

(出典:特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要|ハローワークインターネットサービス)

⇒ 特定理由離職者の判定と、給付制限がかかるかどうかの判定は、同じ基準を見ています。

つまり「正当な理由」が認められれば、給付制限の条文の対象から外れます。

失業保険の給付制限があると、受給期間の側で調整が入ります

給付制限で後ろへずれた分を、そのまま損にしない条文があります。

原則の受給期間は1年

ハローワークインターネットサービスは、受給期間を次のように説明しています。

雇用保険の受給期間は、原則として、離職した日の翌日から1年間(所定給付日数330日の方は1年と30日、360日の方は1年と60日)です

(出典:基本手当について|ハローワークインターネットサービス)

この1年の枠は、給付制限の有無にかかわらず離職日の翌日から動き始めます。

はみ出す分は足される

雇用保険法第33条第3項は、待期と給付制限と所定給付日数を足した期間が1年を超えるときに、超えた期間を受給期間に加えると定めています。

⇒ 給付制限のせいで所定給付日数を消化しきれなくなる形は、条文の側で手当てされています。

ただし、これは自動で無限に伸びる仕組みではありません。

条文が足すのは、あくまで「超える期間」の分だけです。

⇒ 手続きを遅らせるほど有利になる、という読み方はできません。

失業保険の給付制限で、条文に書かれていない数字

条文に書かれていない数字と、公表されていない統計をまとめます。

「1か月」という日数を条文の文言として書いた規定は、雇用保険法の本文にはありません。

条文にあるのは「一箇月以上三箇月以内の間で公共職業安定所長の定める期間」という幅だけです。

給付制限の対象になった人の人数を年度別に示した統計も、公表されていません。

失業保険の給付制限についてよくある質問

自己都合退職だと今でも3か月待つのですか

退職日が2025年4月1日以降なら原則1か月です。

厚生労働省は、退職日が令和7年4月1日以降なら原則1か月、令和7年3月31日以前なら原則2か月と書いています(厚生労働省)。

待期の7日は給付制限に含まれますか

含まれません。

雇用保険法第33条第1項は、給付制限を「第二十一条の規定による期間の満了後」と書いています(e-Gov法令検索)。

給付制限の間に働いたらどうなりますか

この記事で確かめた範囲の資料には、給付制限期間中の就労の扱いを網羅した記述はありませんでした。

個別の扱いは管轄のハローワークが判断するため、そこで確認してください。

給付制限を1日でも短くする方法はありますか

2025年4月以降は、対象の教育訓練等を受けて期限までに申し出れば給付制限が解除される取り扱いがあります。

対象と手続は厚生労働省のリーフレットに整理されています。

給付制限があると所定給付日数は減りますか

所定給付日数は雇用保険法第22条と第23条が決めており、給付制限の有無は日数の条文に出てきません。

さらに第33条第3項は、1年の受給期間からはみ出す分を加える調整を定めています(e-Gov法令検索)。

まとめ:失業保険の給付制限は「退職日」と「離職理由」で決まります

条文と公的資料から言えることを3行にします。

  • 給付制限の根拠は雇用保険法第33条第1項で、条文が決めているのは「一箇月以上三箇月以内」という幅だけです。
  • 幅の中の運用は、退職日が2025年4月1日以降なら原則1か月、2025年3月31日以前なら原則2か月です。
  • 3か月になるのは、5年間に2回以上の自己都合離職で受給資格決定を受けた場合と、重責解雇の場合です。

⇒ 給付制限の前には、退職理由に関係なく7日間の待期が入ります。

⇒ そして2025年4月以降は、対象の教育訓練等を受けて申し出れば、給付制限そのものが解除されます。


この記事で使った一次資料

条文と公的資料の確認日は2026年9月12日です。

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